はがない性転換-僕は友達が少ないアナザーワールド-   作:トッシー00

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第9話です。


就職活動手伝います

 ある休日、小鷹は買い物に出ていた。

 今日は夜空と星奈が家に遊びに来ており、冷蔵庫を確認したが飲み物がなく、じゃんけんの結果小鷹が買ってくることになった。

 家の近くにあるコンビニまでおよそ十分。小さな川がある橋を越えたもう少し先にそれはある。

 出始めは青天の良い天気だったのだが、買い物が終わりコンビニから出るとそれはドシャ降りに変わっていた。

 傘を持ち歩いていなかった小鷹は、風邪をひく前に急いで家に帰ることに。

 

「あ~、すっごい振ってるわこれ……」

 

 まさに青天の霹靂とはこのことか、天気予報をきちんと確認していなかったが故にこうなってしまったのである。

 走る小鷹。そして容赦のない雨。小鷹はどちらかというと不幸体質な方であった。

 コンビニから道の通りを進み、あともう少しで家に付くというところにある一本の橋。

 下は川となっておりこのドシャ降りの日には非常に危なくなっている。その橋で、小鷹は一人の女性の姿を見る。

 

「急げ……ん? なんだあの人?」

 

 このドシャ降りの中、橋の片隅に立ちつくす女性。

 金髪セミショートの碧眼の女性。格好はスーツと清楚な雰囲気が身を包んでいた。

 だがこのドシャ降りの日にスーツでは寒く、こんなところに立っていては風邪をひいてしまうだろう。

 なのにもかかわらず、なにやら女性は遠くを見て、動こうとしない。

 

「なんだろう、あの人」

 

 小鷹は気になり、その女性に近づこうとした……時だった。

 ファ……。

 なんと女性は何のためらいもなしに、この豪雨の中の川に飛び込んでしまった。

 小鷹は悟った。これは自殺だと、やばいと思った小鷹はすぐさま女性のいた所までダッシュする。

 

「ちょっ!? なにやってるんですか!?」

 

 このまま放っておくのは危ない。

 小鷹は買い物袋を置き、羽織っている薄手のジャンパーを脱ぎ棄て、女性を助けるため川に飛び込む。

 川の流れはすさまじかったが、小鷹が本気を出せば特に問題ではなかった。

 小鷹は女性を抱えたまま川の流れに逆らって進み、間一髪のところで救出に成功。

 今の天気と同じくこの日の小鷹はまさに青天の霹靂だった。陸に出て小鷹はすぐさま女性に声をかける。

 

「ちょっと大丈夫ですか!? と……とにかく家に運ばないと……」

 

 小鷹は河川の坂を上り買い物袋とジャンパーを回収した後、とりあえず女性を家に運ぶことにした。

 

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「……迷惑をかけて申し訳ございませんでした」

 

 家に付くや否や、ドシャ降りの中女性を抱え戻ってきた小鷹になにがあったと驚く夜空と星奈。

 そして事情を説明した数分後、女性は目を覚まし、小鷹から話を聞き状況を確認した後、改めて謝罪をする。

 

「にしてもただ飲み物を買いに行っただけなのに川に落ちた女性を助けて帰ってくるとは、小鷹は奇想天外なやつだな」

 

 面白おかしく言う夜空に、笑い事ではないと小鷹はジト目で見る。

 

「申し遅れました。"ステラ"と申します」

 

 女性の名はステラさんといい、外見からわかる通り立派なガイコクジーンである。

 名前を聞き終えた後、小鷹はどうしてあんなことをしたのかとステラに尋ねる。

 

「どうしてあんなことを……?」

「その、私は今"就職活動"の真っ最中でして、上手くいかない日常に対しやけになって、あんなことをしてしまいました」

 

 話を聞くと、ステラはここ日本にやってきて、現在就職活動中だという。

 日本は良いところと聞き意気揚々とやってきたのだが、中々就職することができず小さなアルバイトをし続け数ヶ月。

 貯金もほぼ無くなってきて、厳しい日常に追い詰められあんなことをしてしまったのだという。

 今は深く後悔をしているステラであるが、またいつ何時あんなことに走るかは分からない。

 小鷹たち三人は社会の大変さを痛感しつつ、なんとかしてあげたいと心の中で思うのであった。

 

「う~ん、就職難か……」

「まぁ今時よくある話ね、正直あたしたちも笑い事じゃないわよ」

 

 星奈の言う通り、小鷹たちももうすぐは高校を卒業し、道を決めなければならない時が来る。

 例え進学したとしてもその時はいずれくる。そして今の彼女らは友達が少なく、このままではいずれはステラのような場面に遭遇する可能性もある。

 この学生生活すら満喫できていない彼女らにとって、予想外のところで突きつけられた現実の厳しさであった。

 

「まぁまぁ外人さんよ、色々と厳しいことはあるかもしれないがよ。だからって命を粗末にしちゃあいけねえだろ」

 

 夜空ははげますようにステラに声をかける。

 現実は厳しいが諦めてはいけない。これは彼の体験が物語るような一言にも聞こえた。

 その言葉には他の二人も同感で、同様にステラをはげます。

 

「そうだよステラさん。色々あるかもしれないけどがんばろうよ」

「そうよ、死んだら元も子もないんだから!」

 

 小鷹と星奈の言葉も重なり、久しぶりに人の優しさを噛みしめるステラであった。

 

「ありがとうございます。私も私なりに頑張ってみようと思います」

「その域だぜ外人さんよ、あんた美人だし雇ってくれるところなんていっぱいあるって」

「美人だなんて夜空さん、やめてください子供ができてしまいます」

「言うじゃねぇか……。じゃあ今からイッパツやりまぐふぉ!!」

 

 流れるまま最低な行為に走ろうとする夜空に小鷹は腹パンを一発ぶち込み黙らせた。

 

「おめぇは黙ってろ……。それでこう就職のあてとか、希望の職業はあるんですか?」

 

 小鷹がステラにそう質問をすると、ステラは首を横に振り答えた。

 

「とりあえず今はこちらで働き口を見つけることに専念しています。お金を貯めたらいずれは何か始めたいなとは思っておりますが」

「そうですか、何かこう良い職場ないのかな?」

「そのいい職場を見つけようと小競り合いになるから就職難なんだろうが。良い職場だなんて人それぞれだし、大抵その"良い"が意味すんのは楽であまり人と関わらなくても大丈夫なところなんだよ」

 

 夜空の言う通り、良いの意味は人によって良くも悪くも聞こえてくる。

 自分にあった仕事など、そう簡単には見つからないのである。

 それぞれの意見を述べている最中、星奈が突発的にこんなことを言ってきた。

 

「ねぇ? 実はいい仕事紹介できるんだけど?」

「あぁん? 牛肉加工場か? それとも屠畜場か?」

「違うわよ!! つか肉から離れろ!!」

 

 己のあだ名とは特に関係のない職場らしい。

 その職場は何か、小鷹が星奈に問う。

 

「それで? その職場って何?」

「うちの家政さんよ。つい最近一人やめて現在人員募集中なのよ」

 

 その職場とは、柏崎家の家政、すなわちメイドさんである。

 つまりは自分の家で働かないかというお誘いであった。

 それを聞いた夜空は、鼻で笑った後意地悪そうにステラに忠告をする。

 

「やめとけ外人さん。この柏崎さんはそりゃあ我儘で融通のきかない温室育ちのお嬢様だ。くだらない失敗ですぐクビだなんだと叫びを上げる。きっと今以上に死にたくなるぞ」

「ちょっと!! 何をろくでもないこと吹き込んでるのよ!?」

「優しく手を差し伸べておいてボロ雑巾のように使い倒した後あっさり捨てやがる。ブラック企業を通り越してデス企業だ」

「人ん家を悪く言うんじゃないわよこのクソ皇帝!!」

 

 どうやら先ほどの発言で夜空のスイッチが入ったらしい。

 散々ぼろっくそに罵りまくり、星奈の評価を下げにいった。

 星奈は確かに我儘で融通のきかなくて性格が悪いのは確かであったが、そこまで言われては否定の一つもするだろう。

 

「まぁまぁ皇帝。そこまで言うことはないと思うよ」

「ほぉら! 小鷹はあたしのことを理解してくれてるんだから!!」

「……我儘で融通のきかないところは残念だけどフォローできないなぁ」

「ん!?」

 

 事実なところは事実なので、そこは違うとは言い切れないのは仕方がない。

 夜空はやれやれと呆れ、一応ステラに柏崎家の家政はどうかと聞いてみることに。

 

「働き口をくださるのであれば、私としても嬉しい限りです。やるからには全力でやらせていただきます」

「わかったわ。じゃあ帰ったらパパに言っておくから、後日この電話番号に連絡をちょうだい」

 

 色々あったが、ステラは後日柏崎家に面接に行くこととなった。

 これでうまく事が運べば全ては解決。

 と、そこで夜空はステラにある提案をした。

 

「外人さん。準備不足のままやつの城に面接に行くのは不用心だ。世話する本人がここにいるんだ。予習しておいた方がいいんじゃねぇか?」

 

 色々と裏がありそうな物言いだったが、正論だとステラは納得のいく顔をした。

 

「予習ってなにするの?」

 

 小鷹がそう聞くと、夜空は一から順に説明を開始する。

 

「この肉はくだらないことで怒る。だから色々シチュエーションしておいて、なるべくお気に触らないように振舞う練習をしておかないと。くだらないことでキレられては外人さんが可愛そうだからな」

「くだらないことで怒らないわよ!!」

「ほーら怒ってんじゃねぇか。言ってることとやってることが違うぞ便器」

「誰か便器よ!! 肉と便器で分けるならせめて肉で呼べ!!」

「自分から肉で呼べと進言するとは、よほど自分を高級なオ○ホだと自負してやがる」

「うがぁぁぁぁ!!」

 

 くだらないことで始まっては、数分は終わらないこのくだらない喧嘩。

 ステラは困惑していたが、小鷹はいつものことですと心配しないよう促す。

 そして三分、終わりそうになかったので小鷹は夜空の首をつかみねじ伏せ、圧力で喧嘩を終わらせた。

 

「つまり、今ここで実演をさせろと言うことね。ってことはあたしがここで日常的に振舞ってステラさんの対応を見ればいいのね?」

「いや、貴様はそこで見てろ」

 

 夜空のそれを聞いて、星奈ははぁ?と首をかしげる。

 本人がいるのに本人を使わないとは、どういうことなのだろうか。

 

「お前はこれからその人の雇い主になるかもしれないんだ。ならばここは第三者の目で見た方が直に伝わるだろう」

「なるほどね。対応を見るのではなく全体を見渡せと。あんたもたまには頭を働かせるじゃないのよ」

「ま、おめぇほどじゃねぇけど俺も頭はいいんでな」

 

 さりげなく星奈を褒めながら会話を進める夜空。はたしてその意図とは……。

 

「……じゃあ、誰がステラさんの相手役をやるの?」

「相手役、すなわち星奈役をやるのは誰か……。俺がやろう」

「…………」

 

 夜空のその発言を聞いて、途端に嫌な顔をする星奈。

 小鷹自身も、夜空が普通に星奈を演じるとは考えられなかった。

 嫌な予感しかしない。二人は夜空をジト目で見つめる。

 

「そんな目で見るなよ。あれだよ、もしドラで主人公を元となった峰岸がやんないであっちゃんが演じたのは、第三者の目で元となった人を観察している人の方が役に徹せるって意味合いがあったかららしいぜ」

「……要はなに? 柏崎星奈を本人であるあたしがやるよりも、日常よくあたしを見ているあなたがやった方が上手く再現できるとでも?」

「物分かりがいいじゃねぇか、その通りだよ」

「絶対違うと思うんだけど……」

「小鷹もそう言うなよ。女王のあたしがぁ、世界で一番お姫様ハァッ!! よし完璧」

「完璧じゃないわよ!! あきらかにふざけてやってるでしょ!!」

 

 このまま話が進めば確実に星奈は心に傷を負って家に帰ることになるだろう。

 絶対に認めるわけにはいかない、星奈はそう否定をするが。

 

「んもう! 小鷹もこのバカになんとか言ってやってよ!!」

「……くっ! あはははははは!! こ、皇帝それ面白よぉ……」

 

 なんと、今の夜空のモノマネは小鷹のツボに入ってしまったらしい。

 まさかの味方がいなくなってしまった。焦る星奈。

 

「ちょっと小鷹!! なに笑ってんのよ!!」

「ちょっとこだはぁっ!! なにはらってんのよぉっ!!」

「ぐふっ!! あははははははははははは!!」

 

 小鷹が大笑いするのを見て、夜空はドヤ顔を決め込む。

 小鷹はこちらに引きこんだぜと、高らかに勝ち誇る夜空。

 

「さてと便器、これで貴様に味方はいなくなった」

「だから便器はやめなさいよ!!」

 

 というわけで、夜空が星奈を演じるになった。

 夜空を星奈に見立て、実際に粗相のないように家政業をするシチュエーションが始まった。

 ステラは夜空に言われるがまま、まずは食堂でのこんなシチュエーションから始まる。

 

「えぇと最初は柏崎家の食事中に、料理を運んできたという感じでやってみよう」

「あんたまずあたしの家にきたことないでしょ!!」

「大体想像でわかる」

「観察はどこに行ったのよ!! ほぼ当てつけでしょうが!!」

 

 星奈は色々抵抗するが、もう止めようがない。

 頼りになる小鷹も笑いをこらえて楽しみにしている以上、あてにはならない。

 

「したらオーナー。スタートの合図をくれ」

「……スタート」

 

 どよんとした気分で、星奈は合図を送った。

 

「あぁ、今日のサーロインは格別だなぁハァッ!!」

「さっそくおかしいじゃないのよ!!」

「ぶふぉ!! くぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!」

 

 夜空はフォークを二つ持ち、下品にサーロインを食いちぎる動作を取る。

 当然星奈は激しく抵抗を見せるが、彼女一人だけではこの茶番は止められない。

 ふざける夜空、大爆笑して床に転げ周る小鷹、そしてなぜか真面目なステラ。

 

「お嬢様、付け合わせのサラダです」

 

 と、そこにステラがサラダを運んできた。

 すると星奈を演じる夜空は、テーブルを叩いて怒りを露わにする動作を取る。

 

「ちょっとステラァ!!サーロインの付け合わせはサーロインだろハァッ!!」

「付け合わせにサーロインってなによ!!」

 

 高級肉に高級肉を付け合わせろと無茶をいう夜空。

 

「柏崎家の食卓は前菜はサーロインに始まり、メインディッシュにサーロイン、デザートにサーロインって相場が決まってんでしょうがぁ!!」

「どんだけ肉づくしなのよ!! てかなんでしゃべり方がカッキー風なのよ!!」

 

 もはや想像を通り越して侮辱に変わり果てている夜空。

 ぐむむと苛立ちを募らせる星奈。小鷹は噴き出しまくっている。

 結局食事中のシチュエーションはそこで終了、改めて夜空はステラに感想を求めてみることに。

 

「まぁそんな感じなんだけども、どうだった外人さん?」

「なるほど、星奈さんはよほどのサーロイン好きで……」

「ほら誤解されてるじゃないのよ!! 違うからどっちかというとあたしベジタリアンだから!!」

 

 このまま間違った情報ばかりだと、逆に面接に支障をきたすのではないかと星奈は心配になる。

 が、スイッチが入った夜空は止まることを知らず。次のシチュエーションに映る。

 

「次はティータイム中の星奈をイラつかせない気配りというシチュエーションで」

「あたしそんなに怒るイメージあるかしら。……てか皇帝、今あたしを名前で」

「それじゃあいってみよう」

「ちょ、ちょっと!!」

 

 どうでもいいことはさらっとながした夜空。

 またしても食堂のテーブルを使い、夜空は役者モードに入る。

 変な動作と時より出る奇声、星奈はうがぁと怒りを表に出してなお堪える。

 

「ハァッ! サーロインおいしいなぁ!!」

「なんでティータイムでサーロイン食ってんのよ!!」

 

 先ほどは食事中、そして今度はティータイムのはずなのだがなぜかまた出てくるサーロイン。

 もはや星奈=サーロインがイメージとして固まりそうな勢いであった。

 

「お嬢様、お茶をお持ちしました」

 

 ステラが持ってきたのはハーブティーという設定。

 だが星奈を演じる夜空は、またもサーロインを食いちぎり怒りのモーションを取る。

 

「ステラァッ!! あたしが飲みたいのはハーブティじゃなくてデミグラスソースよぉ!!」

「それ単にサーロインにつけるソース要求してるだけじゃないのよ!!」

 

 もうティータイムはどこへ行ってしまったのか。

 結局ティータイムも食事中だったということになり、予習は最後の段階へ。

 

「最後は……くっ……星奈が部屋の中にいるというシチュエーションで……」

「なにあんた自分でやっておいて自分で笑ってんのよ!!」

 

 もう星奈は涙目になっている。小鷹も笑いすぎて涙目になっている。

 だがこれで最後だ。最後くらいは真面目にやってくれるだろう。

 夜空とてそこまで外道ではない。最後くらいは、星奈の中で最後の希望が膨れ上がる。

 そして、最後のシチュエーションが始まった。

 

「やっぱり星奈も女の子だ。女の子の部屋に入る際はノックは必須だ。星奈だって部屋の中でなにやってるかわからねぇからな」

「なんか言い方は少々あれだけど……」

「ってことでノックをしないで入るとどうなるか、レッツスタート」

 

 星奈が部屋にいるというシチュエーション。

 場所を小鷹の部屋に移動し、実際に夜空が小鷹の部屋に入りスタンバイする。

 そして、ステラはノックをせずに部屋に入り一言。

 

「お嬢様、失礼します」

「ちょっとステラァッ!!」

 

 案の定星奈(を演じる夜空)は怒る。

 ステラの名前を叫び、恥ずかしそうな表情でもじもじしながら怒号を撒き散らす。

 

「勝手に部屋に入らないでよぉ!! 今オ○ニー中だったんだからぁっ!!」

「あんたなにしてくれてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 どうやら星奈は部屋の中で※※※なことをしていたというシチュエーションだったようだ。

 確かにやっている最中に部屋に入られれば、みんな怒ることだろう。

 最後の最後であまりにもひどいその結末に、いつも以上に星奈は怒りをぶちまける。

 

「夜空ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! あんたいい加減にしなさいよ!!」

「だから言ったじゃないか、ナニしてるかわからないって」

「ほんとにナニしてたじゃないのよ!!」

 

 もう涙目どころか泣きながら夜空に迫る星奈。

 これには小鷹も笑うことをやめ、呆れ表情で二人を見る。

 ステラも色々と戸惑っていた。

 

「あ、あたしが……こんな。許さない、さすがに許さないわよ……」

「ぐっ……。そ、そんな泣くほどじゃねぇだろうがよ」

 

 ぎろりと睨みつける星奈。

 さすがにここまで泣かれるとは思っておらず、後ずさりして顔を反らす夜空。

 

「いつもいつも肉○器だのオ○ホだの性玩具だの……」

「そ、そのでけぇ乳が悪いんだろうがよ……」

「そうやっていつもいつも身体身体って……」

 

 さすがに今回はやりすぎた。

 珍しく反省の色を見せる夜空。だが星奈は怒りを抑えずなおの事迫る。そして……。

 

「そんなにあたしとヤリたいなら、いつでもヤラせてあげるわよーーーーーー!!」

「は、はぁ!?」

 

 星奈のその発言に、羽瀬川家が一瞬で凍りついた。

 そして数秒後、自分が何を言っているのかあらためて理解したらしく。

 星奈は顔をトマトのように真っ赤にし、ぼろぼろと泣き出し……。

 

「よ……夜空のばかーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 逃げ出すように、ドシャ降りの外へと疾走した星奈。

 その一連の流れに、三人は口をあけてただただ呆然としていた。

 

「……あ、なんだったんだ今の……ぐはぁ!!」

「さすがにやりすぎ。最低……」

 

 小鷹にひじ打ちを喰らい、もだえる夜空。

 最終的にぐだぐだになってしまったが、二人は最後にステラに感想を聞いてみることに。

 

「それで、どうでしたステラさん?」

「私にあの人のお世話がつとまるでしょうか……」

 

 確かに夜空が植え付けた星奈の印象はひどいものばかりだった。

 当然星奈はサーロインをむさぼったりはしない。

 夜空はほとんどが想像の範疇で、やりすぎではあったが悪ふざけだったことを追記した上で、こう言葉を口にし最後を飾った。

 

「ま、心配すんな外人さん。星奈は……いいやつだからよ」

 

 それを聞いて、小鷹は少しだけ笑みを浮かべた。

 気が付けば外は晴れており、綺麗な夕日が出ていた。

 最後にステラは感謝の会釈をし、またいつかと小鷹の家を後にした。

 後日、星奈の話では正式にステラは柏崎家で働くことになったという。


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