はがない性転換-僕は友達が少ないアナザーワールド-   作:トッシー00

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第21話です。


柏崎星奈の呪い

「柏崎星奈ねぇ……」

 

 噂する理事長の娘、柏崎星奈との初の対面。

 というか良く今まであんな目立つ生徒と出会わなかったものである。

 夜空から見た感じ、柏崎星奈は確かに他の女子以上の魅力を持っていた。その容姿の良さは異常といってもいい。

 しかし、それ以上に夜空の頭に焼きついたのは、そのでかい胸であった。

 星奈と目が合った日の放課後、かつての学友である遊佐葵からメールがあり、久しぶりにファミレスで会うことになった。

 

「そうです。自分が夜空くんに用があったのはその柏崎星奈さんの事についてです!」

 

 珍しく張り切っているように見える葵の様子。

 

「どうしたの? まさかおめぇもいじめられてんのか?」

「いじめ? なんのことですか。夏に全国学力テストがあったじゃないですか。そのテストにて自分は……不覚にもこの県内にて"三位"だったんです!!」

「いやいや充分だと思うよぬりかべ」

「てめぇそれ胸の事言ってんのか? 今胸の事関係ないですよね? さっきから大きい胸だのでかい乳だのうるさいですけど間違いなく自分の胸の話題は関係ないですよね!?」

 

 相変わらず葵は夜空に胸の事をバカにされてしまった。

 葵は少し恥ずかしがりながらゴホンと咳を一回鳴らして、本題に戻る。

 

「一位は言わずともわかる通り、我らが日向さんです!」

「まぁわかりきったことだな。ここら地区であいつの学力その他もろもろに勝てる女子生徒はまずいないわな」

「そして自分、遊佐葵を抜き去ったのが。聖クロニカの柏崎星奈なんです!!」

 

 葵の学力はこの地区一帯の中でも圧倒的に高い。

 中学時代は夜空の学年では全クラス通しての一位だった。それは夜空でさえ認めている(※ちなみに夜空は静かに暮らしたかったため三位で甘んじていた)。

 が、日高日向には勝てなくとも、葵に勝った女子。それが柏崎星奈だという。

 

「ま、さすがは学園の理事長の娘といったところか」

「はい。それでどんな人物か会いに行ったのですが。それは夜空くんが先ほどおっしゃっていたように天に恵まれたような美しい容姿の持ち主でした」

「あまり認めたくないがな。それ認めちまったらなんかあいつの下僕どもと同じになっちまいそうで」

「下僕? とにもかくにもそれなりに話してみたのですが、やはり星奈さんも二位という立場には苦汁を舐めるほどの屈辱を味わったそうです。そして次こそは日向さんに勝つことを宣言していました」

「無理だな。例え柏崎星奈でも日高日向には"絶対に勝てない"。あいつは全ての頂点に立つために生まれてきたような奴だからな」

 

 夜空はそう断言する。それほど日高日向という女の実力を認めているということだろう。

 三日月夜空が他人をほめるのは本当に珍しいことだ。故に、彼の魂を揺るがすことなど、ごく一部の人間にしかできない。

 その魂を揺るがした人物は過去に二人いる。死神と呼ばれた少女と、日高日向の二人。

 話を聞く限り、葵はすっかり星奈の事を心酔してしまっているようだ。夜空からすれば別に、葵が誰を褒めようが湛えようが関係はなかった。

 だが、自らの友達が褒め称える人物の"裏"を知ってしまうことは、あまりにも可哀そうだなと思った。

 

「夜空くんが羨ましいです。そんな柏崎さんとご学を共にできるとは」

「おめぇはその上にいる日向と一緒にいんだろうが。それで充分だろ」

「まぁそうなんですけどね。とにかく夜空くん。星奈さんを身体目的で近づくのは自分が許しませんからね」

「誰が近づくか。あいつは一発見ただけで合いそうにないってわかったからな」

 

 夜空からすれば、柏崎星奈は胸だけの女であった。

 まず第一に、たくさんの男子を引きつれて女王様ぶっているような女を、夜空が気にいって近づくわけがなかった。

 きっと会話をしてしまえば、喧嘩に発展するかもしれないなと、夜空はむしろそれを恐れていた。

 夜空にとって柏崎星奈との喧嘩は、その父親である理事長の柏崎氏に迷惑をかける行為にあたる。

 自らの尊敬する氏にはあまり迷惑をかけたくない、彼の中にあるのはその想いだけだった。

 

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 翌週。

 

「また柏崎が調子に乗ってんの!?」

「超ウザい。あいつまたうちらのこと見下してるし!」

「前なんかうちの友達、2組の男子に告白するために頑張ってさ。いざってときにあいつその男子を下僕に加えたの。マジで殺したいんですけど!!」

「理事長の娘だからって調子に乗んなあのメス豚!!」

 

 ……だの色々と、夜空が教室に行くと星奈に対する悪愚痴が聞こえてくる。

 相変わらず夜空の近くにはたくさんの女子(※自称、皇帝親衛隊のみなさま)。その取り巻きの女子もその話に入り始めた。

 こりゃ自分にも来るなと、思ったのもつかの間。

 

「皇帝もそうおもうでしょ!? 本当にウザくないですか!?」

「あいつの取り巻きの男子どもぶっ潰してあいつをぼっちにしてやってくださいよ!!」

「……そんなことして楽しいのかおまえら?」

 

 色々と物騒なことを言う女子共を、夜空は一喝する。

 

「うっ……でも」

「……でも確かに日に日にあいつの被害者は多くなっていくな」

 

 先週初めて、星奈が学園中の女子共を見下しているという話を聞いてから。次々と相次ぐ星奈への批判と悪口。

 夜空からすれば、それらは自分たちで解決するものだし、自分が関わることではないのは明確。

 しかしこうも彼女の悪評が集まると、いつかそれは理事長に行ってしまうだろう。

 ここに通う生徒の何割かは、あの理事長の学園に方針にほれ込み入学した者もいるだろう。

 その氏の娘がこれでは、学園の信用問題にも関わるかもしれない。夜空からしてみれば、それが気に食わなかった。

 

「……その、柏崎は今どこにいるんだ?」

「そ、そろそろここらへんを通ると思いますけど……」

「しゃあねぇな……弔い合戦だ」

「皇帝ぃぃぃぃぃぃぃん☆」

 

 夜空のその奮起に、皇帝親衛隊の皆は己の信念の元さらに多く集った。

 その数は柏崎帝国(※勝手に命名)にも劣らない。まさしく聖クロニカの一大勢力だった。

 夜空は多数の女子を連れ廊下に出る。するとその瞬間に、柏崎帝国の面々と出くわす。

 このまま向かえばやがて二つの勢力は激突する。

 が、夜空は止まることがない。当然余裕に満ちている柏崎帝国も止まらない。

 一つ、また一つと間が狭まっていく。

 顔にしわを寄せながら怒り顔で向かう女子ども、やがて柏崎の下僕である男子の一部が、その状況に気がついた。

 そして、星奈まで夜空たちの勢力に目を向けた。そして……。

 

「……ちょっとそこの汚らわしい連中、そこどきなさいよ。このあたしが教室に入れないでしょ?」

 

 衝突していきなりのこの物言い。

 これには夜空も苦笑い。どうしてこう集団に出くわしいきなりここまで言えるのだろうか。

 続いて下僕である男子どもも、「そうだそうだ!」「おめぇらなに星奈様の邪魔してんだよ!」などと乗っかってくる。

 そんな中で、夜空が一人集団から前に出る。

 

「あ、あんたは確か……」

「……おめぇが柏崎星奈か?」

 

 そう夜空が強張った顔で尋ねると、星奈が首を縦に振る。

 緊迫とした状況の中で、夜空がとった行動は……。

 

 パチンっ!

 

「いたっ!!」

 

 夜空、いきなり星奈のおでこにデコピンする。

 星奈はおでこを押さえて痛そうにしている。そして……。

 

「タッチ~!」

 

 と、夜空はおどけて見せた。

 その一連の行動に、星奈はおろか、他の人たちまでただただ唖然として見ていることしかできなかった。

 

「なっ……」

「おいおい間抜けな面だな柏崎さんよ。普段は人様を足で踏みつけていい気になってるあんたでもそんな顔するんだなぁ」

 

 確かに、その星奈の同様にも似た表情は、今までどの生徒でも見ることができなかったものだった。

 と、改めて状況が読めてくると、夜空の後ろの女子たちがクスクスと笑いだした。

 

「ぷっ、今の見た?」

「いきなりデコピンされて、「いたっ!」だって~」

 

 これで女子たちの鬱憤は少しは晴れただろう。

 が、問題はここからである。星奈も我に帰ると、突然足を地面に踏みつけた。

 

「な、なにすんのよこの庶民!!」

「おぉ、こっわ!」

 

 憤慨する星奈に対し、夜空はなおもおちょくるように返す。

 これは夜空の思った通りの展開だった。人を下僕だといって常に他人の上に立つような人間だ。きっとくだらないことで怒るやつに決まっていると。

 

「このあたしがこんな……」

「おいてめぇ! 星奈様にたいしていきなりなにすんだ!!」

「星奈様の美しいおでこに軽々しく……羨ましい!!」

「おい殺すぞこのロン毛!!」

 

「あぁん!?」

 

「(男子一斉に)ひぃ!!」

 

 と、星奈を庇うように夜空に対して迫る男子どもを、夜空は一睨みで黙らせる。

 星奈の外見だけに惹かれてヘコヘコしているようなやつら。きっと口だけで何もできない奴らの集まりだろう。

 中学時代、この遠夜市の荒れた中学生たちと喧嘩に明け暮れた夜空からすれば星奈の取り巻きの男子どもなど敵にもならない。

 

「せ、星奈様。こいつが噂の"皇帝"ですよ!」

「星奈様! こんな不良さっさと学園から追い出しましょう!!」

「んだこら……」

「す、すいません!!」

 

 やはり星奈の下僕は口だけ、夜空が少し睨むだけで怯み謝る始末。

 そしてその状況もまた、星奈からすれば滑稽以外のなにものでもない。

 

「下僕四十二号、あんたはこのあたしに幾度恥をかかせれば気が済むの?」

「す、すいません星奈様! どうぞあなたの美しい足で私目を踏みつけてください!!」

「ふんっ!」

 

 下僕がそう懇願すると、星奈は本当にその男子を踏みつけて黙らせた。

 ここまで絵に書いたようにお嬢様をされると、夜空から見ても引くものがある。

 下僕を踏みつけてせいせいした後、星奈の視線は夜空に向かう。

 

「それでさ、あんたはあたしを怒らせてどうしたいのよこの不良」

「怒らせたぁ? てめぇが勝手に怒ったんだろ? 考えすぎだろ柏崎さんよ」

「……あんた本気でむかつくわね。誰のおかげでこの学校に通っていられると思っているのよ。パパに言って退学にするわよ!」

「おいおい柏崎さんよ、そうやって次々とこの学園の生徒を脅しているが。あなたの父上が汗水たらしてここまで発展させた学園の質を、娘自ら落とすつもりなのか?」

「なっ!?」

「学校は生徒が多く通うから儲かるし名が上がる。あなたの父上が我々庶民でも過ごしやすいようにと配慮をしてくださっているのに肝心の娘は庶民をバカにする。あぁなんという親不孝者だ。そしてその偉大なる父上から生まれ学園の見本となるべき御方がこのように男子引きつれて有頂天になって。あれ? その時点でそちらさまも立派な不良ではないのでしょうか?」

「うぐぐ……。あんた本当にいい加減に……」

 

 夜空は武力による喧嘩だけでなく、口による喧嘩も長けていた。

 相手の立場にのっとり、相手のペースを握り、少しずつ崩していくのが夜空のやり方。

 相手を怒らせるやり方、そして相手が武力に身を任せても、武力的解決ならば夜空の専売特許。

 最も相手は女子であるため、暴力をふるうつもりはない。

 

「ちょ、あの柏崎が押されてる」

「やっだ。親不孝者ですって……」

「超ウケる……」

 

 と、夜空がペースを握っている事をいいことに、後ろの女子どもも騒ぎ始めてきた。

 星奈の目から徐々に悔し涙が浮かび上がる。

 夜空はそれを見て、「やっべやりすぎた」と頭をかきはじめた。

 後ろでじゃじゃ馬のように星奈をバカにする女子のやり方にも気に食わない。そろそろ潮時かと、夜空は星奈から背を向けた。

 

「……俺帰るわ」

「ちょ、あんた逃げんの!?」

「逃げる? そりゃおめぇ……勝負になってから物を言いやがれ。柏崎、一つだけ忠告しておく」

「な、なによ。余計なお世話よ」

「良いから聞け。おめぇそろそろここらで終わらせておかねぇと後に痛い目見ることになるぞ。お前は知らないだろ? 汚らしい集団のやる"汚いやり方"のえげつなさをな……」

「ふざけないでよ! そんなことやられたらただじゃおかないんだから!!」

「……バカなやつだ」

 

 そう呟いて、夜空は今日は学校をさぼって家に帰った。

 

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 その翌日。

 

「皇帝、先日はありがとうございました!」

「うちら超感動しました! あの柏崎の悔しがる顔を見られただけでもう!!」

 

 学校に行くと、多くの女子から夜空に歓声が巻き起こっていた。

 だが、夜空は別に嬉しくとも何ともない。むしろ……嫌な気分が自分を支配していた。

 何かを頼りにしないと、憎むべき相手も倒せない弱い連中のやり方に対して。

 

「……お前らもいい加減にしておけ。これ以上あの女には関わるんじゃねぇよ、それで自分から墓穴掘っても今度は助けないからな」

「いやいや皇帝、あんな調子に乗ってるやつはもっと痛めつけた方がいいんですよぉ」

 

「……ふざけんな」

 

 そう低い声で睨むと、周りの女子が一斉に押し黙った。

 

「先日の件で全く反省しないならあのバカもその程度だが、いつまでもあいつに執着するお前らもその程度のバカだ」

「こ、皇帝は柏崎の味方なんですか!?」

「違う。俺はあいつの味方じゃねぇ。だが……お前らの味方でもねぇ」

 

 そう言うと、夜空は一人席を立った。

 

「皇帝、どちらに?」

「……一時間目出んのもめんどくさくなった」

 

 そう言って夜空は、一人寂しく学校の外へと出てしまった。

 そして三時間目には教室に戻った。その際もまた数人の女子が群がってきたが、今日ばかりは追い返した。

 が、四時間目の終了時に一人の女子がどうしても夜空に話したいことがあると、しつこく迫ってきた。

 それは、先日星奈にいじめられたと言う、アキコという女子生徒だった。

 

「こ、皇帝。どうしてもその……言いたいことが」

「なんだよ、くだらないこと言ったらマジでキレんぞ」

「その、私……あの時柏崎さんが皇帝に言い負かされていた時、ちょっと嫌な気分になったんです」

 

 アキコは、その胸の心情を明かした。

 この話に関しては、夜空も聞いてみる気になり話すことを促した。

 

「……続けろ」

「その、確かに私は柏崎さんに散々言われました。けど、それでやり返すのはおかしいかな……って」

「……それで?」

「だからその、私の友達がまだ彼女に対して偏見を持っていることがその……そ、それ言ったら私仲間外れにさてちゃうかもしれないけど、私は……ちょっと見てられないっていうか」

「そうか。怖いならそれは心の底にでもしまっておけ。でも……俺にはよく言ってくれたな。ありがとよ」

 

 いじめられたはずのアキコが抱いた純粋なその想いに、久しぶりに心温かいものを感じふっと夜空の顔から笑みがこぼれた。

 気がつけば昼休み。どこで過ごそうかなと、夜空が考えていた時であった。

 

 ガラガラガシャン!!

 

 と、勢いよく夜空の教室の扉が開いた。

 その音に反応し、夜空たちは一斉に扉の方を向く。

 すると、そこにいたのは、先日夜空に言い負かされた柏崎星奈だった。

 扉を開け、ずんずんと他の生徒の視線など気にもせず、夜空の方へ向かって行く星奈。

 

「ねぇ、確か三日月とか言ったわよね?」

「んだてめぇ、復讐でもしに来たか?」

 

 夜空が半分冗談そうにそう尋ねると、星奈はひくついた笑みを浮かべ夜空こう言葉をかけた。

 

「いや違うわ。お誘いに来たのよ。これからちょっと……食堂で一緒にランチでもいかが?」

 

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 ランチに誘われた夜空。

 当然断る、と思ったが、あえて夜空はその誘いに応じた。

 いったい星奈がどのような手を繰り出すのか、そして少しでも変化はあったのか。

 それらを確認するためである。

 

「いいのか? 俺みたいな学園の除け者がお前みたいなご立派な方とお食事なんてな~」

「いいのよ。あなたはこの学校の皇帝、あたしはこの学校の女王。それで充分釣り合うわよ」

 

 そんなくだらない話をした後、二人はそれぞれ食べたいものを頼む。

 夜空はカレー。星奈はオムライスである。

 

「して……目的は何だ?」

「別に、ただこのあたしにあれだけの口を聞けたあんたが……珍しかっただけよ」

 

 星奈はそんなことを言いながら、頼んだオムライスを食べ始めた。

 なお、この状況はこの学校のあらゆる生徒が釘付け状態となっていた。

 星奈の下僕達、そして皇帝の取り巻き。

 皆が自身の昼ご飯を食べることも忘れ、二人のやり取りに見入っていた。

 

「……こんな注目の的に晒されながら飯食えとか」

「気にしすぎよ。それともあんたの肝はそれだけ小さいってこと?」

 

 星奈にバカにされ、夜空はちょっとむっとする。

 と、二人でご飯を食べていた時。夜空の視線に異様に映るそれ。

 

 ……肉、もとい胸である。

 

 星奈の大きな胸が、否が応でも目に映る。

 夜空は巨乳が好きだった。最近本屋で買うエロ本も全て巨乳の女性が載っている本ばかりだった。

 本屋でエロ本を買う際にそこの長い黒髪をした美人店員に幾度も嫌な目を向けられたが、夜空はまったく気にはしていない。

 とにかくそれだけ巨乳が好きだった夜空。

 

「……でかいな」

「なにが?」

「いや、このカレーに入っている"肉"が」

 

 確かに大きいのは肉だ。色んな意味でそれしかない。

 しかしこの様子では、本当に星奈は夜空と食事をしたかっただけなのかもしれない。

 夜空は何かされるのかと思っていたのだが(柏崎の下僕に一斉に襲われるとか)、この様子では心配なさそうである。

 

 パチャン!

 

「あっ……」

 

 と、星奈は傍に置いてある水の入ったグラスをこぼしてしまった。

 星奈の服に水がかかってしまう。その際に浮き出た胸のラインがまた夜空の男子としての欲望に響かせる。

 

「……大丈夫か」

「平気よ、ごめんちょっとタオルかなんか取って来てもらえる?」

「自分で取りに行けよ」

「ふふ、このあたしがこうやって人にものを頼むのって珍しいのよ? それに……あんたとは仲良くしたいと思ってるし」

 

 実にわざとらしい言い回しだった。

 しかしそこに1%の可能性でもあるならば、このくだらない争いに終止符を打てるのなら。

 夜空は仕方なくタオルを取りに行き、そして星奈にタオルを渡す。

 

 ……と、その時であった。

 

 がしっ!

 

「なっ!?」

 

 突如、星奈が夜空の腕を強く掴んだ。

 そして油断している隙に、その手をなんと……自分の胸に充てたのであった。

 

「て、てめぇ!!」

「仲良く……ですって? あははそんなわけないでしょ!!」

 

 そこで本性を露わにする星奈。

 今、夜空の手は星奈の大きな胸にあたっている。

 少し指を曲げればそこで"揉める"。この美しいラインの巨大な胸を揉む寸前まで夜空が来ているのである。

 

「な……なんのつもりだ?」

 

 と、夜空がその気になれば、その手を振り払うこともできる。

 星奈は女子、夜空の方が圧倒的に力があるからだ。

 だが……夜空はそれが"できない"。なぜならそこに巨乳があるからだ。

 登山家が山を目の前にして登らざるを得ないのと同じように、そこに理想の胸があるなら、"揉まざるを得ない"。

 それは男としての欲望、本能。夜空は星奈に逆らうことができないのではない、己の本能に逆らうことができないのだ。

 

「こ……このやろう」

「どうしたの皇帝? 早く揉みなさいよ。この大衆が見ている中で、あたしの胸を揉みなさい」

「そ、そんなことできるか。そんなプライドも減ったくれもない……屈辱を」

「その屈辱とあなたの本能が戦ってるわよ? どうするのよほれほれ~」

 

 と、更に星奈は夜空の手を胸に引きよせた。

 すでに胸の弾力が夜空の手を練り込ませている。感触が直に、夜空に伝わってくる。

 

「この……※※※女が!!」

「なんとでも言いなさいよ。あんたはあたしに跪くのよ……。己の欲望のまま、あたしの身体に跪くのよ!!」

「ふっざ!!」

「体が正直よ皇帝……」

 

「く……くっそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 こうして夜空は、己の本能と、柏崎星奈に敗れ去った。




あの胸がそこにあったら揉むしかないですよね(笑)。

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