だから農家だつってんだろ!   作:一般通過魔法の水

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異常な日常の始まり

 

とある学園の自治区。

その中心に位置する飲食店の中で醜い争いが起きていた。

 

「だからあんたまだ未成年だろ料理部長が困ってんだろうが!」

 

「いいでしょうがマグ・オブ・サップのひとつやふたつくらい!!」

 

「言い訳ゃ無エだろこの瓶底眼鏡女がァダぁホォ!!」

 

「二人とも、ちょっと?……部長*1が困ってるからやめなよ!!」

 

 

まっことどうでもいい口論である。一方は未成年の身で「酒類」を要求し、もう一方はそれを鬼の形相で叱っているのだ。

当然この店にいる店員や店長―――言い換えれば料理部員や料理部の部長―――も未成年のため、この場にいる部外者全員もまた、「だからどうしろと」とでも言いたげな苦悶の表情で突っ立っている。

 

争いと苦悶。

 

聴く『我が子を喰らうサトゥルヌス』とでもいえる地獄の景色は、既におおよそ数十分ほど続ていた。

 

「あーもうわかった、わかったわ!」

 

「やっと落ち着いた……「あなたのD.Uへの出奔は認めません、農地に縛り付けます!」――いや出奔ではねえよ!?!?」

 

「まあまあお二人ともその辺で…。あまりうるさいようですと、私の方から須加さんに報告しますよ?」

 

「「清掃委員*2は勘弁してください町長様!」」

 

なぜこんな闘争が起きたのだろうか。

その理由は、この学園で唯一まともに転入してきた村田ホシの外出許可。の筈なのだが。

気が付けばグダグダと関係のない会話が展開されており、危うくその流れで外出許可の合否を判断する時間も消え去ってしまう所だったのである。

 

「というかなんでそんなに外に行きたいわけ?」

 

農業部部長(ファームファン)の田川リエは訝しんだ。

これまで自治区と学園の()()()()に追われてばかりで、この地域の外へ出たことはないホシ。

 

そういえばアビドスとやらに似た名前の女が居たような…………ああ、ホシノだったか。

つまりはそういう事だ。女だろう、知らんけど。

 

「絶対許さないからねそんなの!」

 

「何がだよ。あと多分想像してるのとちげーよ!」

 

「そうですよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()なのですから!この自治区を出て帰ってこない、なんてことは()()()ありえません!!」

 

「あの櫛見さん泣きます。私泣いちゃいます、そんな貶され方。」

 

違ったらしい。

平謝りついでにホシから書類を受け取った櫛見マイ(生徒会長)を睨むファームファンは、ヨーロピアン・サンセットにノールックで大量の蜂蜜を混ぜて呷った。

 

「ふむ、記入漏れもミスもありませんね。ではこちらの書類はちゃんと預かりましたので、あとは数日程お待ちください」

 

「ありがとうございます!」

 

「それにしても不思議ですね……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ちがいますよ?!此処の復興というか発展も一区切りついたとこですし、せっかくだから外でも農作物や酪農品なんかを売り出そうかなって考えただけですからね!?」

 

今宵も夜が更けていく。

生徒会長の容赦ない、悪気の無い純粋さ100%の天然嫌味を響かせながら。

 

 


 

 

建築部の部長である大橋アリサは頭を抱えた。

 

 

「どーしろっていうんだよこんなの!!」

 

 

櫛見マイが持ち込んできた銃火器の改造依頼を快諾した彼女。

 

だが、後日届いた肝心の品は――――

 

 

()()じゃんかよもぉーーーー!!!!」

 

 

――――パッと見で14.5×114mmはくだらない、ボルトアクション・アンチマテリアル(ボルトアクション式大口径ライフル銃)

 

「ええ……これをカスタムって、他のとこに持って行けよぉ……アタシは建築と建材が専門なんだぞ、分かってんのかあの町長様は?」

 

しかも依頼書の内容曰く、『アサルト(A)ライフル(R)として扱いたいのでフルオート射撃が可能な構造に変えて欲しい』という。

「ショベルカーにF1のエンジン積んでスポーツカーと言い張れ」みたいな冗談じみた、それでいてトリニティの嫌がらせとゲヘナの無法っぷりがまだ可愛く見える意味不明な要求である。

 

「死ぬよ!だれが使うのか知らないけどこれ使う人死ぬよ!?いくらなんでもコイツをフルオートでぶっ放すとか正気じゃないって!!」

 

「ぶちょ~う、今大丈夫です――うっっっっわ化物!

 

「お前もそう思うよな…。しっかしコレを反動軽減が付いてるっぽいとはいえ、フルオートか……使用者にゃ自殺願望があるのかもしれん。」

 

「いやそれは…………。」

 

アリサに頼み事を頼もうとやって来た部員はしかし、「違うんじゃないでしょうか」とは言えなかった。なにせ当銃対応の弾丸の口径は、ものによっては重機関銃なんかでも使われているのだから。

 

 

対物銃を重機関銃に変え、さらにそれを突撃銃として押し通す。

 

 

誰がどう見ても様子がおかしい。

何を考えてこんな正気を疑う改造を、ただのARとして望んだのだろうか。まだMGと宣った方が通用しそうなのに。

 

「やるか。」

 

「えっ本気ですか!?」

 

「しょうがないだろ。あの転入生を頼りたいけどさぁ、アイツ今寝込んでるんだよなあ~……」

 

できればあの戦力を頼りたい。しかしその肝心の戦力は、昨晩のバカ騒ぎが祟ったのか体調を崩していて頼れない。

 

アリサは現実逃避をすべく天井を見つめた。

 

 

()()()()()こそが、この銃の持ち主となる人物とも知らずに。

 

 

 

 

*1
料理部部長の湾路ミホ。誰かの困りごとから旧ゲマトリアの正体まで、噂であれば大抵はなんでも知っている。

*2
須加オリベ部長と愉快な仲間達。どんなやつが相手であれ、ポイ捨てと汚れと無法者をほうき一本で鎮圧せしめる狂気と老害に汚染されきった集団。こと掃除にかこつけた戦闘に於いては、たとえ本気のネルだろうがガチヒナだろうが臨戦ホシノだろうが圧勝する。しかしそうでないと当然ボロ負けする。

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