だから農家だつってんだろ!   作:一般通過魔法の水

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1-1『都会は恐ろしい場所』

 

 

 あの日の事は今でも思い出す。

 

 

 『村田、今日からしばらく外出控えて』

 

 『えっ?』

 

 

 自治区の発展・整備という一大プロジェクトを終えた私は、ある日突然ファームファン(リエ先輩)から外出禁止を言い渡された。

 

 「いっつもこんなに物騒なんですか?」

 

 「うーん……ここが特殊なだけじゃないかな」

 

 当時は理由を聞いても『私が教えたくないから、ぜーったいに教えない!』と適当にはぐらかされたが、今ならわかる。私が島の外に興味を抱いてしまわないかと、ただ只管に心配でならなかったのだろう。

 

 

 拝啓。島の皆様。

 

 私は今、元レッドウィンター生だという島の商人(マーマー)に案内されて都会に訪れております。ですがこの街というものは。とりわけブラックマーケットなる地域は。随分と女蛮族共の狩場な様子です。

 

 

 「ハッハァー!!金目のモン全部置いてきなァ!!」

 

 「ああもう、こんなイカレポンチな銃を持たされた理由がこれですかって!」

 

 「ウヴォアッ!?」

 

 「これはいい戦果だね」

 

 「言っとる場合じゃないでしょうが?!」

 

 どうしてこうなった。

 いかついハンドガンを片手に持って暢気に歩く瓦井(もとい)カグヤ。彼女は私が撃って気絶させたスケバンを平然と蹴り飛ばす。これで服装が違えば、完全にガラの悪いヘルメット傭兵だ。

 

 「というか、なんでこんなとこに来たんですかね私らは!」

 

 「マーマーセンターってのがあって、そこに書類を提出しにいくのは話した通り。…けど厄介なことに本部がブラックマーケットにあるんだよね

 

 「なんなんですかその暗黒メガコーポはァ!?!?」

 

 正気か?

 

 いわばトレードセンター的な本部を、一番あっちゃいけないブラックマーケット辺りに設置って正気か??

 

 考えてみれば島でペタルなる独自通貨が流通していたし、それにペタルをクレジットや円に。逆にクレジットや円をペタルに換算するシステムが存在するという噂を聞いたことがあったけど、まさかマネロンだったりしないだろうか。

 いや、絶対違うと信じよう。飼い猫のクランベリーと飼い犬のレックスの餌の仕入れ先として世話になっていたレオ先輩が、よりによってマネロンの片棒担ぎだなんて縁起でもない。

 

 「あの~つかぬ事を伺いますがね先輩。マネーロンダリングなんかをやってるような組織、じゃないですよね…?」

 

 「マネーロンダリングは聞いたことないかなあ……あっ、でも露店の()たちはみんな「市場価格に合わせる理由なんてない」とはよく言ってたよ!

 

 別の疑惑が浮上した。

 

 そういえば事前通知も無しに価格が変動してた時もあったような、けど値段の下がった商品もあったような。もしやその場のノリか何かで変えるモノなのだろうか。だとすれば納得がいく、きっと後ろめたい理由や事情なんて無いはず。

 

 そう信じて引いた引き金は、いつにもまして重たい。

 

 「なんだか辛そうだけど悪いものでも食べた?もしお腹痛いとかだったら早く言ってね?」

 

 「多分、大丈夫だと思います。」

 

 あぁそっか、と力が抜ける。

 

 ___ってちょっと!!ホっちゃんどうした!?ホントに大丈夫!?!?」

 

 病み上がり早々に完徹連勤をやってから、一切の休息を取らず此処へ来た私の体は___予想の倍くらい睡眠欲求に従順だった。

 

 


 

 

 __ってことで、ホントマジすんません!」

 

 先輩の声だ。ここはどこだろう?

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。幸い聞いていた時間よりも数分ほど速い到着でしたし、具合の悪いこに無理をさせるのも良くないですから」

 

「やぁ~そうはいっても会議をパーにしちまったってなあよ…でもそうか、わかりやした。本当に申し訳ねえでさぁ!」

 

 会議。

 

 確か先輩が言ってた話だと、まず先にマーマーセンターへ書類を提出しにいって…それからミレニアムへ行って。着いたらセミナーの人たちと会議をする、というのが今日の午前中の用事だった。

 

 「ぅ…んうっ…」

 

 けれども瞼が一向に開かないんじゃ会議に臨むことは難しい、と私は悔いる。

 でも、心のどこかでは(いつも通り忙しかったから、いつも通り貫徹しただけですけど?)とかなんとか。とにかく子供みたいな言い訳ばかりが浮かんできて、恥ずかしくなった。

 

 

 「おおっ、ホシさん起きたよ!」

 

 「ちょっとモモイ!?そんなに揺らさないの!!」

 

 なんか揺れてる気がしたけど、至近距離にピンク色の猫が居る。

 モモイというのは確か家路エミ*1先輩のネッ友、で合ってるのかどうか。多分合ってる。

 

 あの先輩もつれてくるべきだったかな?なんて思っていると、彼女は私に声を掛けてきた。

 

 「寝不足は駄目だよ!ちゃんと寝なきゃ!」

 

 まずひとつ。どの口が言う。

 

 「エミ先輩曰くミネラルクラフトのとあるマルチサーバーでモモイさんと知り合い、24時を超えてなお終わらない大冒険をした事があるそうで。」

 

 「らしいけど…なにかいう事は?」

 

 「ええ!!なんでユウカとグルなわけ、こっちは心配してあげたんだよ!?」

 

 そしてふたつ。当たり前だろ。

 

 忘れもしませぬ、あれは私が自治区の完全整備記念のパーティーを企画した日の事!

 エミ先輩が寝坊したせいで開催できずお流れになったのはまだ許せます、でも原因がコイツってのは納得できねえなぁ!!

 

 せっかく、せっかく用意したパイが!ケーキが!用意が全部パー!!

 三宅エリ*2先輩が鬼電かけてくるのを知っていながら一人で片したあの日を死んでも忘れることはないでしょう、二度と許さねえゾタココラ★

 

 「心配するくらいならなァエミ先輩と長々と遊んでんじゃねぇよアーホゥ!!」

 

 「んなっ、だれがアホですと?!というかエリ先輩ってだれさ!!」

 

 「ジェイミーだよ。あいつに聞いたらあんたのゲームアカウント、ちゃ~んと教えてくれたんだからね!」

 

 「…なんですと!?!?」

 

 許さない、ええ絶対に許しませんとも。具体的にはウェーブキャットのぬいぐるみをバチボコにされるよりも酷い所業ですゆえ、どうして許せましょうか。

 というか許す価値もない!!私が島内でおいしいチョコレートケーキを手に入れられる店のうち一か所を出禁になったのも、ひとえにお前のせいだなモモイ!!

 

 「記念パーティーがおじゃんになったのも、エミ先輩がダウンしたのも、エリ先輩がバチギレしてたのも、全部お前のせいだ!!」

 

 「待ってよ、エミ先輩のことは謝るけどさぁ!ほとんど私と関係ないじゃん!」

 

 「あぅ…今ちょっとだけくらっとした…。」

 

 「ウワーッちょっと!!あぶないから寝な!!」

 

 いやです、わたしは、あの日の屈辱を晴らさなければなりません。

 

 ここ最近は甘味にも恵まれず、狂ったようにチョコケーキを量産していた自分にとって………最早モモイは敵以外の何者でもない。

 

 さてどうしてやろうかと、近くに置かれていた私の銃に手を伸ばす。

 しかしあとちょっとの所で__

 

 

 「あたしらもさ、病人を殴り飛ばすのは御免なんだわ」

 

 

 __誰かに腕を掴まれた。

 

 

 「誰ですか…?」

 

 「C&Cの美甘ネルだ。アンタを会議場まで案内しろって頼まれてンだけど……まあその状態だと、ちっとばかし時間かかるか」

 

 

 ■□■□■□■

 

 

 さて皆さん問題です。予定していた到着時刻より大幅に遅れて現地に到着、する以前にぶっ倒れて更にタイムを引き延ばした場合どうすればよいでしょうか。

 

 

 「まっこと申し訳ございませんでした!!!!」

 

 「あの、別に構いませんので。ですからその、これからあなたを消すと誰かが宣言しそうな土下座をですね、やめてください?

 

 そうだねスライディング土下座だね、これは我らがSTAXEL学園(仮)の伝統芸でもあるのだ!

 

 ちなみになんで学園(仮)となってるかというと、なんと我らが生徒会長が勝手に学校名を決めたせいで、未だに他の旧名がいくつも使用されているのだ!あーマジで禿げそう!!

 さらに私が外に出ていくまでは、書類的には旧名こそが正しいとされていたのだ!どれが正しいんですか生徒会長!

 

 ちなみに更新は勿論、登録や申請も全部カグヤ先輩が私の代わりにやってくれました。まじ感謝なのだ!

 

 「ということでこちらの先輩にも土下座しときましょっかね」

 

 「別にああいった代理・代行は慣れてるから、そんなに謝らなくったっていいんだよ?」

 

 んじゃま、取っ散らかった脳内で練り上げられた某豆の精霊モドキを封印しまして…………よし、あとはあれですね。先輩方からアレをお聞きせねば。

 

 「ところでなんで特異現象捜査部まで来たんでしたっけ?」

 

 「えっ、逆に何も知らずに来たんですか?!」

 

 「テメーそこは知っとけよなぁ!?!?」

 

 しょうがないしょうがない。だってホっちゃん、寝落ちして起きると走れない・だるい・ド忘れするの三拍子だもの。瞬間寝起き知能はダチョウよりも酷いんだな!

 

 それはそうと瓦井さんが何か言ってた覚えがあるけどなんだったかな~なんてわざとらしく先輩に話を振ると、はぁと溜息をつきながらも教えてくれた。

 

 「ここへ来た理由は単純。ホっちゃ…じゃなくって村田さん、あなたはなんで外部にモノを売り出そうって考えたの?」

 

 「そりゃあの学園の自治区のために町おこし的な______

 

 はい、気付いちゃいましたっと。

 気づいちゃったついでにね、我が校の歴史をテキトーに説明いたします。

 

 スタクセル学園。いいえフルストゥムステラ女学院。ああもう分かんないから一番新しいのでいいや、とにかくスタクセル学園は設立当初から大ピンチ。

 

 あっちもこっちも自由人が多く、皆が皆して自治区の管理よりも自分の管轄__というよりも、自分のやりたい計画__ばかりを最優先事項として進めていたので、最低限をのぞけば生活に必要なものの多くが存在していなかった。なのに商人や専門家が多く居たもんだから、発展に似合わずお金が湧き出る一方。

 

 しかもマクシー…櫛見先輩は、得られる利益の大きさでなんらかの安定期に突入したと勘違いしたのか、なんと施設建設と治安組織の設立を同時進行でおっ始めた。ちな本人談だよ。

 

 で、金でゴリ押しできてる間は良かったんだけど、時が経つにつれて資金が底をついたみたいで治安組織は解体。他のも解体するつもりだったとか。

 

 __でもどれも解体できなかった。なんでだとおもう?

 

 __あっ、こういう形の質問だと分かりずらいよね。じゃあこう聞こうか。

 

 

 もしも明日、自分の住んでる地域が完全な陸の孤島になるとしたらどうする?

 

 

 もしも今日。近くのコンビニやスーパーやレストランなんかが全部無くなって。ついでに憩いの場も失うとしたら、どうかな?

 

 当然そんな暴挙を許してくれる人は滅多に居ない。しかもあの自治区の民度を鑑みるに無くなった分だけ激しい反発があるか、或いはゆっくりと衰退していくだろう。

 

 そこである委員会が発足した、名前は復興委員会

 自治区や学園の何でも屋さんとしての意味合いが大きい復興委員は、人の少ない当時でも運営できるように人数が絞られていたのだけど……もう分かったんじゃないかな?

 

 

 「______ほらほら、ぼけっとしないで自己紹介!」

 

 「…初めまして。私は旧フルストゥムステラ女学院、現在はスタクセル学園で復興委員会の委員長をしています、村田ホシです!」

 

 

 島から飛び出すための文句は全部嘘。本当は学校に活気を取り戻すため。

 

 私は唯一のメンバーなんだから、再び停滞したあの自治区を動かさなきゃ。

 

 

 もう一度あの自治区を誇れる場所にするために。

 

 


 

 

 あれからまた月日が経って。

 

 

 

 

 「連邦生徒会長が行方不明!?」

 

 「らしいんだよね。ひと探すの得意でしょ、見つけてきてよ!

 

 「んぃや流石に無理だわ、勝手知ったるスタクセル学園ならともかく……」

 

 「すたくせる?」

 

 「駄目だ全ッ然新しい名前が浸透してない!!」

 

 

 

 

 私は今、何故か才羽姉妹の世話になっています。

 できればこ奴等よりも瓦井先輩とシェアハウスに住みかったのだけど、あの人はいつもの雨曝し100%な露店とも呼べない露店に置いてあるカート…というよりテントの方がぐっすり寝れるみたいで、用事が終わるとすぐ帰ってった。薄情者め。

 

 

 「あっちじゃ忙しくて鏡を見ることも滅多になかったもんな……私ってこんな感じなんだ」

 

 私の橙の瞳、私のエルフ耳、私の茶色く長い髪____猫耳ヘッドフォンのあ奴等と比べて違和感のある姿が鏡に映る。

 可愛げのないジト目が特徴という特徴を追いかけ、最後は後ろで何やら悪戦苦闘している姉妹に持たれている自分の銃を、まるで親の仇でも見るかの如く凝視した。

 

 そんなに嫌か自分の銃が。当たり前だろ自分の銃だぞ?

 

 デカい長い重たい筒、あんなサイズ大根は愚かかぼちゃでも見たことがない。

 __や、決して見たことが無い訳ではない。たしかマンドラゴラを量産しようとして、魔法部の作った栄養剤をこれでもかと畑に撒いた時だったか。

 

 『足が八つだ、ヤマタノマンドラゴラだコイツ!売りモンにならねえ!!』

 

 『おかしいでしょ八本脚って!あなた、いつの間に畑で化物を生産してたの?』

 

 『しかもツクシみたいに根っこだけで上手いこと繁栄したみたいで……ほらアレ!』

 

 『うそぉナニアレ、納屋の方の地面が完全に群生地になってるじゃない!!』

 

 あれはまさにこのサイズだった。巨大なるヤマタノマンドラゴラ、恐ろしい化物め。

 いやマンドラゴラはどうでもいい。あの後しばらくマンドラゴラ料理ばっか食ってたけど、でもあのデカブツは銃じゃないか。

 

 「ねえまだなの!?この銃すっごい重くてさぁ、いい加減疲れて来たんだけど!!」

 

 「はぁ…。」

 

 学校の旧い名を冠した銃「THE-20:Frustum stellae(フルストゥム・ステラ)」は控えめに言って、背の小さい者が持つべき火器ではない。

 

 NTW-20だかなんだかをベースとした実質的な狙撃銃ではあるが、その本質はフルオート連射が可能なアサルトライフルである。つまりはコイツを持って前線に突っ込んで暴れろといった、まるで正気の沙汰ではない能無しが考えたような代物だという事。

 既に何度かぶっ放した身としては、今すぐにでも向こうの馬鹿共に返却したい。ただ先輩方の気持ちでもあるのでずっと私が持っておかなければならない。さながらエミ先輩が嫌っていた呪の装備である。

 

 重そうにしている二人からTHE-20を受け取って、直ぐにマガジンを空の物に替えた。まさかボルトアクションだった銃にマガジンを使う日が来るとは。というかそも銃を使ったこと自体無かったけど。

 

 

 「ありがと。すっごい重たかったでしょ?」

 

 「うん、なんだか鉄筋コンクリートの柱を持たされてるみたいだったよ。……でもホっちゃんすごいね、こんなものを持てるだなんて」

 

 「ちなみにこれ、元対物の分際でアサルトライフル気取ってるんっすよミドリさんや。いやマジなんですよこれ。」

 

 「え?」

 

 

 素頓狂な声が就寝時間を告げる。時刻は22時くらい。今頃我が家の牛や鳥たちも、きっとぐっすりと眠っている。

 

 「それじゃあ今日はありがとうございました。私はちょっと外へ出掛けてきますので___あっ泊まりは心配しないでください、野宿は慣れてますんでね」

 

 「いや、JKが野宿はヤバいでしょ!!!!」

 

 明日は何があるだろうか。明日はどんな一日になるだろうか。今日よりもいい日になるだろうか。翌朝スマホの画面に表示された速報を見るまでは、新生活に浮かれていた私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「連邦生徒会長が行方不明だぁ!?!?」

 

 

 

 

 

 

*1
ゲーム科学部所属の生徒。数少ない知り合いと協力してミレニアム並みのトンデモ技術が使われたゲームを開発することもあるが、基本はゲーム三昧の片手間にその辺のキノコや木の実を回収し売り飛ばす事で生活費を稼いでいる、いわゆる変人の類。

*2
調理部の副部長であり、趣味で洋菓子店を営んでいる経済学部部員としても有名な一人。おっとりとしている割に怒るとコワイ。スイーツを雑に扱う外道は出荷よ~!





主人公が島の学校の先輩や才羽姉妹だったりをディスっている姿を見たそこのお前、ざんねん騙されたな!村田ホシとはこういう生き物(正直成分多量のちょい天邪鬼)だ!!

「クソ銃押し付けんじゃねぇや( ゚д゚)、ペッ」とかキレておきながら、なんやかんやでTHE-20の事を気に入っているぞ!!モモイとミドリのことも大好きだぞ!!

そして前話でアリサの後輩がバケモン呼ばわりしたTHE-20の元となった銃、NTW-20はヒヨリの固有武器の元と同じだったりします。ただしあちらと違って原型は完全にありません。

形状なんてもの、学園の技術者共の努力と追加パーツと連射機構のせいで跡形もないんじゃよ。マクシー(生徒会長)とファームファン(農業部の部長)は加減を知らなんだ。
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