だから農家だつってんだろ!   作:一般通過魔法の水

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1-2 牢屋と日常

 

 

 モモイとミドリに野宿を禁止された翌日。

 

 

 「あの~カンナさん…うち農家なんですけど?」

 

 「ええ、分かっています」

 

 「いやわかってんなら帰らせろや!?なんでこんなッ、こんなもん土木屋にでもやらせりゃいいでしょうが!!」

 

 

 ホシはヴァルキューレの尾刃カンナからの頼みで、矯正局の修復作業を手伝わされていた。

 

 

 「大体さァ島の方の連中もだけどなんで私に頼むかね!!こちとら一通り資格取ってはいるけど農家だっつってんの!!」

 

 「は、はぁ……」

 

 カンナはホシの気迫に驚く。

 決して思ったより怖かったとかそういう理由ではない。快諾してくれた筈の少女が、さも「お前勘違いしてんじゃねえのか?」と言わんばかりの勢いで逆上し始めたからだ。

 

 140cmもあるかどうか微妙な背丈の自称農家がギャーギャーと文句を垂れる様を見せられては、普段から「狂犬」の異名で恐れられているといっても流石にひるまずにはいられない。

 しかも、彼女が修理のために使っている道具がおもちゃのようなサイズであれば多少は安心できたのに、いま手に握られている道具は大人でも持つのに苦労する大きさのハンマーひとつ。

 

 

 小さいリフォーム業者の姿が言外に語る言葉はただ一つだけ。

 

 

 "邪魔すんなら殺す"

 

 

 「____それで、修復のめどは?」

 

 公安局の局長は、最大限の笑顔と共に問いかけた。

 

 目の前の建築家気取りは容易く人を殺せる存在だ。どういう意図で作られたのか分からない銃と、いつ、どこから取り出したか全く不明な道具さえあれば。

 だからこそにこやかに、棘の無い口調をできる限り意識して、目の前の怪物を刺激しないよう念には念をといった具合に徹底する。

 

 「ふむ、そうだなー……」

 

 平穏なければ死あるのみ。

 

 公安局の人間として___目の前の子が人殺しになってしまわぬよう、ひたすらに注意を払うと決意した。

 

 

 ■□■□■□■

 

 

 私だ、物凄い警戒されている私だ。

 

 ぶっちゃけ口の悪さは「どっちがチンピラか分からん」でおなじみ須加先輩の口調が若干感染した結果の末期症状だし、自分の性格の都合上、多少好ましく思われないのも覚悟の上。なので怯えた表情を見せる「狂犬」が可哀そうで仕方が無かいったらありゃしない。というか心境は便利屋の某紫状態である。

 

 

(ごめんなさい!!やっぱこの感じ怖いですよね?!でもなんか最近これ以外で喋るのきつくなってて…!!!あぇっと、これが終わったら後でスライディング土下座でもなんでもしますから!!!!)

 

 

 今こんな事を言うと、なんというかもっと混乱させてしまいそうで…………ええい、とにかく仕事に集中!

 

 

 

 

 __できない。

 

 

 

 

 

 集中力に関しては精神統一心頭滅却すればどうとでもなるのだが、私の心は無になるまでが長い。

 初代復興委員長にも言われたことだけど、仕事をする上で雑念が多いのはまずいらしく、何度も「落ち着いてやってね」と注意されたことがあった。

 

 というかなんで復興委員に入ったのだろう。

 

 たしかあの学園を有名にしたいから入ったんだっけ?それともあの学園を大きくしたいから?

 

 

 『ぼくはここを、より素晴らしい学園にしたい。それから特産品なんかも外部絵売りに出したりしちゃってね?』

 

 『…でも今日でぼくは卒業するから、全部の夢をかなえられるわけじゃない。だから____

 

 

 それとも、私はあの人の居場所を奪うつもりなの?

 

 

 私も奪われた側なのに、なんの理由もなく。ただ居場所を得るために…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの、大丈夫ですか?」

 

 「___へ?」

 

 

 気が付くと夕方だった。日は傾き、カラスが鳴いている。

 

 

 「あっ、はい。大丈夫だとは思います?」

 

 「いやなんで疑問形なんすか!しかもふらっふらで!」

 

 

 全ての檻の修理が終わってから気絶してから随分長いこと寝ていたのか、ヴァルキューレの人達が心配そうにこちらを見つめている。

 最近なんだか寝落ちすることが多くなった。特に疲れてるわけでもないのだけど、それでも気が付けば夜というのがいつものパターンだ。

 

 「あっそうだ!」

 

 そういやトリニティへあっちで作っといたケーキを、ゲヘナにもコーヒーを届けに行くんだった__と大事な用事を思い出して、時間を確認できるようなモノが近くに無いかと探す。

 

 やっと見つけた壁掛け時計は五時を示していた。コーヒーはともかくとしてケーキはまずい、悪くなってしまう前に早く届けなければ。

 

 「こりゃやばい…!」

 

 「なにがやばいんです?」

 

 「ちょっと約束をしてて急がないとって、あっごめんなさい!もう行きますね!!」

 

 廊下を急ぎ、矯正局を出て。ついでに何か忘れてるなとスマホを見ると連邦生徒会長の失踪の噂が誠であったという、この頃同じものばっかりのニュース通知が表示されていて安堵した。

 まだ怒られるような時間ではないというのを、確実にスマホが教えてくれたのだから。

 

 

 「けど、のんびりと歩いてくのは駄目だよね」

 

 

 先輩から貰ったブーツの紐がほどけてしまって、一度赤信号で止まって結びなおす。

 青に変わると同時に猛ダッシュ。駅に着いたら定期なんか持ってないのでまず切符を買い、目的の列車に乗る。

 

 席に座れず立ちっぱなしというのも辛く、拙い操作でモモトークを開くと『ファン・オブ・サップ』というユーザーから数件の通知が来ていた。

 

 「なんだろ。 "どーしましたー?" っと」

 

『このおバカ、どーしましたーじゃないの!ホシの家になんかとんでもない物あったんだけど、あれなんなの!?』

 

『とんでもない物?』

 

『そうよ!!なにあの鉄の塊は?!』

 

 「鉄の塊?……あ゙!!」

 

 忘れていた事が何だったかを思い出して、急激に汗が噴き出る。

 そういやお祭りのために輸入した大型トラクターを隠す布、掛け忘れてた!

 

 「やばいって!!須加じゃなくてよかったァー!!!」

 

 見つけたのがファームファンで本当に良かった。

 

 これでもし今日の納屋担当が須加だったらと考えると、それだけで背筋が凍る。掃除と技術にうるさいオリベ先輩があんなものを発見して、果たして正気で居られるだろうか。

 

 鬼の形相の先輩が「お前のようなバカ者が自治区を汚くするから、俺のとこの部活が委員会になれないまま使いっ走られるんだぞ!!」などと叫びながら箒で私を叩いている姿が、はっきりと脳裏に浮かぶ。

 

 

 「あぁ恐ろしや、くわばらくわばら。」

 

 

 とりあえず見つかったものはしょうがないので、向こうに帰り次第タルトをおごる約束でリエ先輩を買収しつつ、できたらでいいのでトラクターに布を被せといてくださいとだけお願いする。

 向こうは納得がいかないようで、しかしここでごねても意味が無いと察したのか、十秒ぐらい経ってから『しょうがない、わかった』と許諾。

 

 ____『その代わり500ペタルを要求するからね!』のおまけと、不機嫌そうな牛のスタンプを送ってきた。

 

 

 「ペタルってマジ?」

 

 

 どれだけ貯金残ってたかな…なんて車内の天井を仰ぎ見た直後、列車が停止。配達先までどのくらいかかるかを地図アプリで確認する片手間に、鞄を背負いなおす。

 

 

 空は青かった。

 

 


 

 

 「それで、ホっちゃんはどうして帰ろうとしているのかな?」 

 

 「あのちょっと!放してください!」

 

 

 さて、トリニティのスイーツ部なる部にケーキを送り届けてさっさと次の配達先へと向かおうとしたところ、ピンク髪に捕まり色々と質問攻めにあった。

 

 

 「ああもう、はやく開放してください!!」

 

 「いやだねー。このケーキは、これを食べてくれる人なしには。決してその万人を癒す、とても穏やかな甘味を伝えることは無いんだから」

 

 やれ「どの学園から来た」だの、やれ「どんなスイーツが好き?」だの、しまいには学園でのあだ名なんかについても聞いてきて本当にうっとおしかったが、あだ名を除いたどの問いにも答えないと分かるとより本格的に拘束され現在に至る。

 

 私はこういう奴が大っ嫌いだ。や、本気で嫌いかと問われるとむず痒いというか違うのだけど…でも、嫌いだ。

 

 「分かったから放せこら、こちとらただの配達だっつってんだろ!」

 

 「放課後スイーツ部へようこそぉ~、椅子どうぞー」

 

 仕方が無い。このまま逃げようとするよりかは従った方が解放されるのも早いだろうと渋々椅子に座る。時刻は午後の5時半とかなり危機的状況ではあるが、まぁ次の場所はゲヘナだし。

 ちいとばかり遅れても、最悪なんかどっかに居るって噂の便利屋のせいにすればいい。というかその便利屋に護衛を頼むってのもひとつの手だ。

 

 「いやはやスイーツ仲間が来てくれてよかった。他の仲間を待つ間ひとりで黙々とお菓子を食べるというのは、なんとも哀しい事だからね~」

 

 「さいですか。」

 

 だったら開放してくれないだろうか。こっちは忙しいんだよ!

 ただ腹の立つことに、この瞬間がなんだか居心地よくおもえてしまう。

 

 「自称天邪鬼なのにずいぶんおとなしいね、きみは」

 

 「は?そりゃそうでしょうよ、だってここじゃ帰らせろったって帰らせちゃくれねえんですから!おらっ帰らせろこら!!」

 

 「はっはっはー、そんなことしたって私は張っ付いたガムの如くはなれないぞぉー?」

 

 「なんか嫌!!」

 

 「奇遇だね、このたとえは私もなんかやだ

 

 というかどこで()()()()()()だと知ったのだろうか。一度も話していないのに。

 

 「なんでわかるのかって顔だね。でも簡単なことさー。キミはスイーツの何たるかを知っていて、なのにその素晴らしさに従おうとしていないんだ」

 

 人生はスウィートでビターショコラなお味なのに、もったいないなあ……と彼女は嘆く。曰くもう少し素直になれとも。

 けれども鬱陶しいものは鬱陶しい。己の我慢の限界が近いのを感じて壁に立てかけていた銃を取ろうとした手は、部室にやってきた新しい顔たちに阻止された。

 

 

 「ちょっ、待て待て?!こんなとこでぶっ放そうとしないの!!」

 

 「チッ!」

 

 「舌打ちすんな!ここでドンパチ騒ごうってんなら大変なことになるでしょうが!」

 

 

 また厄介なのが増えおって…この辺で退散するか。

 

 一度は掴み損ねた銃の肩掛けベルトを掴んで銃を引き寄せて、そのまま窓を蹴破ってドテドテ走りだした。幸い体を鍛えてはいたので、銃を引き摺るダサいフォームに似合わずかなりの速度が出せる。

 復興部の以前の委員長ならともかく、あいつら相手であれば決して追いつかれやしない。

 

 

 「うっそ、アイツ窓ブチ破りやがった!!

 

 「冗談でしょヤバいって!!!」

 

 「お、追いかけた方が良いのかな!?」

 

 

 騒がしい四人組をしり目に、私は暗くなりつつある外の景色へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってゲヘナ。

 

 

 「あなたがトリニティのある部室で窓を破壊したっていう子ね?」

 

 「…ッス、はいッス…」

 

 

 まさか受取人が風紀委員だとは思いもしなかった。

 

 ゲヘナの風紀は私が清掃委員、いや清掃部、いやどっちだったか忘れたが、ともあれ須加とそのシンパ連中と同じくらい恐れている組織。噂じゃ地下牢がどうだとかって聞いたことがある。

 

 「あの、殺されるんでしょうか?」 

 

 「殺すわけないでしょ、というか殺人は犯罪よ」

 

 命だけは見逃してもらえるのだろうか。

 

 ひとまず持ってきたコーヒー豆の入った袋二つと、とっておきのもう一個を机に置く。豆入り袋は中身(品種)自体は同じで、一応粉末タイプも持ってっといた方がいいかというちょっとした配慮だ。

 

 「すごい………こんなもの、どこで手に入れたの?」

 

 「あっ、知り合いが「お偉いさん相手でいい顔しなきゃならんから持ってけ」ってくれたんです」

 

 正直に買いましたと暴露すれば政治的に大変な騒ぎになり兼ねないので、無難に知り合いから渡された物とでっち上げた「とっておき」の正体は、トリニティ自治区のアンティークショップで入手した一級品のコーヒーミル。

 お店の人が中々手に入らない物だからと、大切に扱うようくぎを刺してきただけあってかなり高額ではあったものの、改めて構造や色合いなんかを観察すれば成程たしかに素晴らしい代物だと実感できる。伊達に8万クレジットをしていない。

 

 

 …ちなみに実を言うとトリニティの方へ持ってったケーキとこの豆。それからコーヒーミルもなんですけど、須加先輩からのアドバイスなんですよね。比較的安心できる派閥を選んでおいたから挨拶しに行ってこいって役割を押し付けられて…今度であったら文句の一つや二つは吐いてやんなきゃ。

 

 ___ってそっちはどうでもよくって、此処へはあいさつのために来たんだよ私ゃ。

 

 

 「さてではちょーっとだけお話宜しいでしょうか?」

 

 「勿論よ。でもこんな時間だから、なるべく手短にお願い」

 

 「はい!」

 

 明るく返事をする。先代の委員長からの指導はつまらなかったけど、いやに役に立ってるのがもどかしい。

 

 いつかあいつにまた会えたら一発殴っとこう。そんぐらいやっても許されるはず。

 

 

 「それじゃぁ」と言ってこちらを見たヒナ委員長。しかしそこに顔はなく、向こうが透けて見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミレニアムへ着いたんだって安堵した時もそう。一体どうして、誰かが貴女を助けてくれると思ったの?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『起きて、悪夢は終わりだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が落ちる寸前に、懐かしい声が聞こえた。

 




主■■が■の学校の■■や■羽■■だったりをディスっている姿を見たそこのお前、ざんねん騙されたな!■■ホ■とはこういう生き物(■■成分多量のちょい天邪鬼)だ!!

「クソ銃押し付けんじゃねぇや( ゚д゚)、ペッ」とかキレておきながら、なんやかんやでTHE-20の事を気に入っているぞ!!モ■■と■■■のことも大好きだぞ!!

そして前話で■■■の■■がバケモン呼ばわりしたTHE-20の元となった銃、NTW-20は■■■の固有武器の元と同じだったりします。ただしあちらと違って原型は完全にありません。

形状なんてもの、■■の技術者共の努力と追加パーツと連射機構のせいで跡形もないんじゃよ。■■■■(■■会■)と■■■■■ァ■(■■部の■長)は加減を知らなんだ。



だ■らこそ私は■く、■

























「へくちっ!」

「おや! ネガイくん、風邪でも引いたかい!?」

「いやあ、多分だれかがボクのことを噂してるんだとおもいますう」

「なるほど…。いやはや私もこの仕事は長いがね、バイトとはいえ部下が褒められているとは感激だよ!」

「ヨシ社長ぅ、ボクはただのゲーム販売屋ですから多分違うんじゃないですかねえ」

「まぁいいじゃないか」

「やーよくないですよお。ひょっとしたら、だれか後輩が困ってるかもしれないしい」

「ん…? あぁ――」





「…ええ、もう分かりますよねえ。ボクの後輩に居たあの子お、すごい緊張に弱いんですよお………ひどい時は変な夢や、悪夢を現実と間違えるくらいに。」
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