地響きのような歓声が周囲に響き渡る。トリニティとゲヘナ、両校の学園旗が掲げられ、はためいている。そして、この場にはキヴォトスの各地から集結した生徒たちがひしめいていた。
その数、なんと驚異の5万人。大学園自治区3つ分に相当する人数だ。
「キキキ!! 実に良い気分だ!! 今頃、マダムとやらも吠え面をかいているに違いない!!」
群衆の中心、ゲヘナ戦車隊総隊長車「虎丸」の砲塔上でマコトは叫ぶ。アリウス側の奇襲によって始まったエデン条約会場へのテロは、大多数の予想に反した結末を迎えようとしていた。
一方、未来視で結末を見たセイアは連勤明けのサラリーマンみたいになって布団へ潜り込んだ。
「諸君らの活躍によってアリウスの手勢は壊滅した!! だが、これで終わりではないよなぁ!?」
ゲヘナ学園総領主、羽沼マコトが祭りの続きを促す。これこそが羽沼マコトの真骨頂。彼女は瞬く間に集結した生徒たちの人心を絡め取り、扇動する。
「我がゲヘナ学園の姫が負傷し、慈愛の君は未だ目覚めない。この落とし前をどうつける!?」
「「「「「「「潰せ!! 潰せ!! 潰せ!!」」」」」」」」
「そうだ!! 高みの見物を決め込んでいるであろう黒幕を引きずり落とし!! 蹴り倒し!! 吊るし上げる!!」
「そうだ!!そうだ!!」「ゲヘナ最高か!? 今日から盟友だろ!!」「私、拷問とかやりたいです!!」「イブキちゃんが味わった恐怖を身体に刻み込んでやらないと!!」「ナギサ様に代わって黒幕ブチのめしたいです!!」
テンションが上がりすぎた群衆の中から聞こえちゃいけないワードが聞こえ始める。青春テクスチャ剝がれちゃう!
ちなみに、演説のダシに使われているナギサだが、一度は目覚めたものの、地上がクレーターだらけになったという報告を受け、スゥっと意識を飛ばした。
「そうだッ! その意気だッ! 我々は慈愛の君の代理人ッ! 我々の怒りは彼女の怒りだッ!」
「「「「「「「うおおおおおっっっ!!!」」」」」」」」
歓声とともに無数の拳が天に突き上げられる。せめて銃にしろよ。布団にくるまったセイアは思った。
「斥候としてSRTを使いたい。構わんな? 不知火カヤ防衛室長」「ええ、構いませんよ」「指揮は任せる。得た情報はミレニアムに渡せ、後で共有する」
「分かりました。各隊集合!! 点呼!!」「SRT全隊、防衛室長の指揮権に服します。お任せください」「ヴァルキューレの指揮権はカンナさんに」「はっ、ヴァルキューレをお預かりします」
「ミレニアム!」
〈何かしら? 羽沼議長〉
「情報共有を円滑にしたい。通信機器に類するものは無いか?」〈簡単なものでいいなら3分で用意するわ〉「任せるぞ、必要ならティーポットも使って構わん」〈了解〉
「ハイランダー! エンジニア部、及びトリニティの砲兵隊と連携してシェマタを移動。いつでも撃てるように準備しておけ!」「「「了解!」」」
「両校の戦車部隊は即時集結!! 弾薬を再分配し、『
〈羽沼議長、完成したわ。モモトークの機能を拡張したものだからすぐに使えるはずよ〉
「よし、『カヨコ』『アヤネ』『ハナコ』『アコ』の4名は仮設駅に移動しろ。ホシノを除いた対策委員会と便利屋68が護衛につけ」「「「了解」」」
「ゲヘナ生、及びスケバン・ヘルメット連合は銀鏡イオリ、杏山カズサ、狐坂ワカモ、栗浜アケミを小隊長として動け」「分かったァ!! お前らぁ!! 行くぞォ!!」
「レッドショルダー、美食研究会、温泉開発部、正義実現委員会、聖堂騎士団、ヴァルキューレ、お前たちが前衛だ! 合図と同時に殴り込め!!」「うおおおッ!!!」
「ヒナッ! 我々は搬入口から侵攻する。お前たちは先生と合流し、別ルートから進め」「分かったわ。行きましょう、イト」
「残りの生徒は桐藤ナギサを含む首脳陣と給食部を始めとする兵站の防衛だ。同時に予備戦力でもある、文句は無いな?」「私たち小自治区の風紀委員がナギサ様をお守りできるなんてッ!」
「再配置は済んだな。仮設駅の4名はSRTからの情報を元に、指揮官として小隊長を通じて歩兵を指揮しろ。目標はアリウス自治区に潜んでいる『マダム』だ!!」
「始めるぞっ!!!」
マコトの号令でシェマタが放たれる。
* * * * *
──火の灯った棒を水面に落としたような、ジュッという音がした。直後、オーバーテクノロジーによって再現された擬似太陽が、効果範囲内の全てを貪欲に貪る。赤でも青でもない、白い炎が暴れ狂う。膨れ上がった絶熱が大気すらも灼き尽くしていく。
着弾地点は搬入ゲートごと消し飛んだ。エンジニア部によって完璧に修復されたシェマタを限界までチャージして発射したのだ。無理もない。
「キヴォトスの歴史に刻まれる戦いの始まりとしては十分じゃないか、キキキッ!」
高笑いするマコト。もう連邦法とか知ったこっちゃない。相手は大人だし、これだけガンギマった生徒が居れば黒も白になる。搬入ゲートと一緒に生徒たちの遵法意識も消し飛んだ。
「突入しろッ!」
「「「「「「「 ワァァァァァァァ!! 」」」」」」」」
アリウス自治区に生徒たちが侵攻する。迎え撃つは盗み出されたスーパーアバンギャルド君ターボカスタム44機とそれに随伴するアリウス学兵の精鋭たち。
だが、FOX小隊を始めとするSRT特殊学園の手によってトラップは事前に破壊され、学兵の配置やセントリーガンの位置も筒抜けになっている。加えて、シェマタの砲撃によって地面が駐機場まで融け落ちていた。
結果、狭い通路を活かして大軍の展開を制限するアリウス側の目論見は瓦解。マダムに忠実な、戦闘マシンさながらのアリウス学兵たちといえども、数には勝てない。十全に装備を整えた正義実現委員会やヴァルキューレによって袋叩きにされ、次々と撃破されていく。
アバンギャルド君もイオリやカズサ、アケミに殴り飛ばされたり、ワカモが指揮するスケバン・ヘルメット連合に銃床で滅多撃ちにされたりして一体、また一体と確実に破壊され、数を減らされていく。
無論、アリウス学兵もセントリーガンでアバンギャルド君を援護しようとする。だが、援護射撃はレッドショルダーや聖堂騎士団によって悉く防がれてしまう。それどころか、カウンターで銃座ごと撃破される有様だ。
更に、温泉開発部が給電システムを始めとする機材や設備を破壊。操作要員と護衛のアリウス生も美食研究会によって撃破されてしまう。その結果、電磁装甲が停止。満を持して「UZ」が操作するRSCが投入。圧倒的な性能差と超反応によって残存する盗難アバンギャルド君を全て蹂躙し、アリウスは組織的な抵抗力を喪失。戦闘は終息した。
同時刻、12使徒を始めとした特記戦力たちがアリウス自治区を火の海に変え、消し飛ばした。更地になったアリウス自治区を見た生徒たちはすべからくドン引きした。もうこうなったら虚しさすら感じないよ。笑うしかないよ。もうお前らが真のラスボスだよ。
元アリウス生は瓦礫の山に変わった故郷と12使徒にボロ雑巾みたいになるまでボコボコにされ、十字架に磔にされた「マダム」ことベアトリーチェを見て何かを悟った。
そして、先生やホシノたちと一緒に遠い目で体育座りしていたミカが呟く。
「もう好きにするじゃんね……」
12使徒を除くその場の全生徒が同意した。
━━こうして、アリウスの戦いは幕引きを迎えた。
以後は本編通り、ベアおばが棺桶ダンスをされたのち、星になります。
アリーヴェデルチ(サ ヨ ナ ラ だ)。