「さて、お腹空いてるか?」
「…なんのようだ不死身」
「なんで一人で来ちゃったの?そりゃ私達死神にやられて弱ってるけど、隙をついて貴方を喰べるかもしれないでしょ」
一人で鵺と鈴鹿を捕らえている部屋に来る傀偽、負けたからなのか注意喚起をする鈴鹿、
「いや、喰わないだろ、その気があるならとっくに美波は食べられてる。俺と同じ不死身だからな、お前らの目的は、俺等不死身を殺すこと、違うか?」
「子供ねぇ、齢にそぐわない頭の回転、死神とは別の恐ろしさね、」
「まるで、鬼縁だな」
ある意味正しい、それが傀偽だからだ、
「それで?結局何をしに来たんだ?悪いがお前の言う通り、私達は不死身を喰らうつもりは無いぞ」
「そういう事、傀儡にはできないわよ」
「いや、冗談はその体制を戻してからにしたら?」
死強は捕縛のために綱引きの縄に気を込めて拘束をした。そのため鈴鹿の体勢は相手に背を向ける形、そのせいで本来の覇気がない。
「それなら解いてくれないかしら」
「それは少し難しい話だな、まあ、真面目な話…俺は少し苛ついてんだ何か事情があるのかもしれないが、それでも命を折るというのなら少しは反撃しないとね」
死ぬことはない傀偽、人としてもっとうな死は望むが、不死身としての死は望まない。
「ほう、なら拷問でもするか?」
「面白いことを言うな、鵺。拷問と来たか、たかが子供にはできぬと侮っているな、鵺」
「はっ?出来るっていうのか?」
「拷問とは繰り返し痛みを与えるということ、人ならば殺さぬように手加減が必要だが、怪異であるお前らには気を使う必要はない」
傀偽が懐から出したのは岩塩、邪気を持つ怪異にとっては激痛が伴い、動けなくなる。何の力のない人間でも、部屋の四方に置けば結界に、人に振りかければ憑いた霊を払うことが出来る。
「おいっ、辞めろ」
「痛みは好きじゃない、でもそれは夜廻をするうちに覚悟を決めた、」
鉈の刃を岩塩に滑らせ、足に振り下ろす。
「ァ゙ァ゙ァァァァァァァ」
「怪異と言えど、殺しをするんだ覚悟はしてないとは言わせないよ」
ただ切られるだけなら我慢できるのだろう。だが人も傷口に塩を塗れば痛みが伴うように、怪異にもそれが引き起こされる。
「ほら、まだ行くよ」
「い、嫌だ、これ以上は」
「平気で人を指しておいて何をいうんだが」
「なんてことを、死なない以外は普通だと思っていたのに…不死身とは心もないのか…」
心があるかは別として、他を傷つける覚悟をした傀偽と、もとより差があるからこそ慢心をして、覚悟を決めていない鵺、両者には決定的なさがあった。
「もう辞め」
「傀偽!!」
「死強…」
「どういうつもりだ」
両足をおとされて、次は腕と言うとこで、死強がやって入る。
「悲鳴が聞こえるから、来てみれば何をやっている」
「拷問、死強だけじゃ許せなくてね、何より覚悟が見えなかったから」
「だとしてもだ、拷問はするな、戻れなくなるぞ」
不死を傀偽を人間と思うからこその言葉、怪異でも必要以上の攻撃は心身に傷が残る。
「わかったよ、でも、悪魔退治をするのなら、覚悟はしないとね」
―――――――――
打撃音が夜闇に響く。
「鬼縁、あんたに譲るわ。百鬼家の仲間と弟さんの仇でしょコイツ、」
「…えぇ、人の心の自由を奪い、怪異に喰わせてエサとする、その所業を認めるわけにはいきません」
「貴様らだって豚や牛を食べるだろう、餌を与え、一番うまい状態まで育てる、それと何が違うという」
鬼縁と巫女そして子供、三人が悪魔と対峙している、人を傷つける悪魔を倒すために来た三人、それを人に当てはめ反論をする悪魔。だが人間とはそういうものだ。
「ならば地獄で学ぶといい、人間はエゴが強く家畜には不向きだとな」
「そういう事。人間を見誤ったわね」
―――
『忌々しい』
「これで終わりだ…仇は取ったぞ、雪草」
『まただ』「なぜ怪異のお前が人間の味方なんて」
「俺が一番驚いてるよ、絆、
鎌を構えた死強、相対するはやはり悪魔、死強の言葉に悪魔は驚く。
「人間と怪異の間に?あはははははははははは、なるほど、それはいい、次はうまく使うとしよう」
「次なんざねぇよ、てめぇは地獄墜ちだ。じゃあな雪草」
―――
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
海底洞窟で息を切らすフードの、不死身、そこに
「あら、随分と悪い夢を見たようね、薬…は必要ないわね」
弓を携えた悪魔が一体、フードの不死身と話をしている。
「二度と殺される夢を見ました、あれは過酷の記憶のようでした」
「ふっ、安心しなさい【あの妖術】が定着してきた証拠よ…発言するのは傀偽だと思っていたのだけど」
「神は私を選んだようですね、安心してください、私は必ずやり遂げます、他のエサとは違うこと、証明してみます、ですから【先生】」
「ええ、傀偽は隙にしていいわ、それこそ煮るなり焼くなり【喰べるなり】…ね」
―――――――――
「え?!もう宿題終わったのか?」
「うん!」
「今日の分だけですけど」
「君たちが手伝ったのか?」
島民会から戻ってきた沢慧は美波と風音が宿題を終わらせたことに驚いていた。
「いや、わからない所の解き方を教えただけで、代行はしてないぞ」
「急に呼ばれたから何かと思えば、まさか勉強を教えることになるとは」
「助かったぞ、新聞記者なだけはあるな、国語関係が分かりやすかった」
そこには、別行動をしていた風奈達もいる。夏休みの宿題を今ここで終わらせたのだ。
「しかし、傀偽の数学と社会は異常だったがな」
「宿の経理はよく代行させられたからな、いやでも覚える、社会は怪異と歴史を当てはめれば覚えられる、日本についてレポートをまとめろだったから古事記で神道書いときゃしっかり取れる」
文字通り命をかけて学んだこと、そのためか、社会特に日本史は学年一位をとっていた傀偽、まぁだから歴男と呼ばれたのだが、
「そうだ、今日の夏祭り行ってもいい?」
「旅行はいいのか?」
「終わったのは今日の分だけですし、」
『まぁ、不死が狙われている以上、あまり出歩けないしな』
「そうだ、お前らもこい、怪異絡みで心にきてるだろ?」
美波の提案に、風音が補足する。それ便乗するように傀偽が誘ったのは、穂香と沙也加の二人だった。
連日の人の死、新たな友がエサという事実。これにより二人の心身は限界だった。
「…いや、さすがに」
「来たほうが良い、夏黄泉の島の夏祭り
始まるは夜のお祭り、怪異が寄らない陽の夜、怪異蠢く島には何がある。
―――――――――
「あっちは楽しそうね」
「ふぅ…」
「落ち着いたみたいね……黄泉傀偽、あの雰囲気、鬼縁にているのは単なる気のせい?前にどこかで…?」
傀偽に脚を切られた鵺は落ち着きを取り戻していた、何もされなかった鈴鹿は傀偽の気配に疑問を覚えていた。怪異の記憶には人が映ることはほとんどない、移るのは百鬼家の鬼縁ともう一人、鬼縁の弟だけだ…その縁はどこで結ばれるのか。