「陰祓祭り、毎年、お盆に黄泉の島で行われる伝統行事」
「おお、賑わってるな」
「りんご飴食べていい?」
「一人二千な」
夜闇の中でにぎわう祭り、年に一度のお祭りに子供二人はテンションが上がっている。
だがそれを止めるものが一人。
「ああ…悪いんだがそこまでは回れないんだ」
「え〜」
「不死身を狙う怪異がどこにいるかわからない異常、こんな人だかりで襲われたら、俺一人で守れる自身がない、だからぁ…そのぉ…」
現状戦闘できるのは五人うち一人傀偽は不死身のため除外、他にいる不死は二人だがそれを除いて非戦闘員が三人、つまり守護対象は六人、四人でさばき切ることは難しいと言えるだろう。
「わるいな、俺の力不足で」
「ヒッグ、回り…たいのに」
「ああ、その気持ちはわかるんだが」
祭りに行けないことに涙目を浮かべる美波、まだまだ子供、自分の意見が通らない時、簡単にわりきれる年ではない。
「あらあら、お祭りの夜に涙なんて何か悲しいことでもありましたか?」
「あ、あなた」
「あら、中峰さん、昼ぶりですね、急にいなくなるから驚きましたよ」
―――――――――
「鬼縁、こいつらの、頭の名だ」
「えっ!?鬼縁?本当ですか?」
「なにか知ってるのか?」
「知ってるも何もさっきまでその人と」
―――――――――
「死強さ「しゃべったら殺します」
「…風奈誰だその人、」
会話にはいってきたのは百鬼鬼縁、風奈の言葉を遮り脅す。
「お気にならさず、秒で終わりますから」『
「……あの、どうかしました?」
『姉ちゃん、怪異退治もいいけどさ、やっぱ百の鬼の縁友達になったほうがいいんじゃない、俺は相性とは別に言ってみるよ、はずれの山に鵺がいるみたいだから』
「
「どけ!」
学校での一件を知らない鬼縁は、目に映った不死身を殺そうとする。だがその手は動くことなく、傀偽をみて止まる。今はなき弟に瓜二つなのだから。
それでも一瞬の殺気に遅れて反応する死強、鬼縁を連れ、周りなどお構い無しにそのまま祭りの外へ、
「言霊ってあるんだな、次からは気をつけるよ、言った途端襲ってきやがって」
「あなたも、は地味を狙ってきたのですか?」
「俺は人間を喰わないし、罪焼き命を狩る趣味もない、お前と違ってな百鬼鬼縁」
祭りの敷地の外、人から見られることのない場所で鎌を構え動きを探る死強、挑発に対して冷静に返すがそれは鬼縁同じ事。
「道は特に踏み外しています。地獄墜ちなど百も承知」
「だったら今すぐ堕としてやるよ」
「そうはいいつつ迷いがあるのでは?不死身が本当に人間なのか、悪魔が創り出した心ない傀儡なのではないか、自分を騙しているのではないか」
挑発をやめ、言葉で揺さぶりをかけていく鬼縁、だが人の過去、思いなど、三途の川の船頭である死強には意味のないこと。
「まるで詐欺師みたいだな、説教や嘘話は、仕事常よくされるんだ、間に合っている。何と言われようと俺はあいつを、助ける。いまだ過去に捕らえられ業を背負ったままのあいつをな、傀偽達は人に戻す、邪魔はさせない」
「なるほど、よほどあの少年を気に入ったようで、いいですね、とても。私も、あなたの事を気に入ってしまいそうです。あなたのその執着、そのエゴ!非常に私好みです!」
死強の独断のエゴともいえる言葉、生まれて死ぬ、この一連を円環とする輪廻の輪、それを崩す不死身を狩るのが死強の務め。それを無視するのだからエゴと言える。
相対するは鬼縁は、もとより己が意思で道を踏み外し、それでも進んできたもの、惹かれるものはあるのだろう、それでも警戒はとかれないみたいだが
「怖いな、急な心変わり。…先ほどまでは不死身を、絶対に殺す雰囲気だったのに」
「不死身を殺す、矛盾してますがそうですね」
「都合よく改心したとでもいうか?」
「ええ、その通り、その証拠に幸、武器を納めなさい」
「はぁ…黙ってりゃやれたのにさ」
死強の後ろに音もなく姿を現す幸、子供ながら恐ろしい。
「ですが信じる証拠に放ったでしょう」
『こいつ、いままでどこに…そういう妖術か?』
「不死身を生み出す悪魔、奴を倒すには数が必要ですから」
「……何が目的だ」
あまりにも都合が良すぎる、そう思ったのか、対価を聞く死強、それに対し…
「そうですね、強いて言うなら」
―――――――――
「えっと…つまりどういう事?」
「安全に祭りを回れるということだ、用心棒が手に入ったから存分に遊んでこい、それじゃあ頼んだぞ」
「言われなくともちゃんと護さ」
「やったー」
はしゃぐ子供達、それを多田良が引率する、鶴はアズミーにつき、その他は自由行動、傀偽は自衛できるのでいったんは無しということになった。
「いいのか?信用しても」
「そうですよ、あの人が、」
「いいから行って来い、問題はない」
「何か話したのか?」
感がいい傀偽と風奈には、疑問が残り死強を問いただす。
「話したさ、祭りの警護を引き受けてもらった、交換条件付きでな」
「ほら見たことか」
「交換条件?なんだ、それ」
「祭りが終わったら、お前と話がしたいそうだ、傀偽」
「あぁハイハイまた女たらし案件ですか、流石ですね」
交換条件を聞き、傀偽の特技を幼馴染二人から聞いた風奈は女誑しと冷やかしを言う。
「ひどくないか?」
「……不憫だなあの二人」
「ええ」
「なんでだよ、まぁ俺は中心付近にいるか、なんかあったら来てくれ」
傀偽以外の二人は気づいている、鈍感は女誑しには必要ないものだ、それとは別で自分の立場を理解しているためか、場所と行動制限をかけている。その判断が恋愛に向けばいいのがそれはないだろう。
―――――――――
「……」
射的用の中を構えて撃つ、それは景品に当たることなくそれていく、
「ハズレだ、だがセンスは悪くないぞ」
「はぁ…どうも…」
「もう一度やるか?」
「いえ、結構です」
「そうか、残念だ君はいいエージェントになるだろうに」
射的をやる碧医、医者を目指し始めて間もない頃のときだ。
意味のわからない射的屋に呆れながらも、遠くを家族連れの子どもを見る。母と父と手を繋ぎ、楽しそうにはしゃいでいる。
親と自身の関わりがほとんどない碧医にとって、遠い情景だ。
「お母さん…か」『誰も見舞いに来ない部屋、代わらない窓の風景、ずっと出たいと思っていた、この場所は孤独だから』「帰って勉強しよう」『この島にも私の居場所はない』
年にそぐわず達観しているがそれでも虚無感は残っている。それを埋めてくれる人は見つからない、
「射的屋さん、僕もやっていい?」
「五十レイ、いや百円です」
「お兄さん海外の人?はい、百円」
「まいど」
「えっ?あ…」
戸惑う碧医、それを無視して【傀偽】が銃を構える。
とんだコルク弾は真っ直ぐに景品の元へ。
「はい、碧医が取りたかったやつ、狙ってたでしょ」
「そうだけど、そこまでほしいわけじゃないし、祭りに来たのだって、勉強の息抜きだし」
「じゃあもう帰るの?」
一発で碧医が外していた景品に命中させ叩き落とす傀偽、
「…いや、もう少しいる」
「じゃあ一緒に回ろう」
「うん!」
かけていたのは、一緒に隣を歩いてくれるもの、少しだが碧医の心の穴が埋まる。そして現在
「見違えたな、素晴らしい制度だ、どんな訓練を積んできた?」
「そんな大げさな何もしてないですよ」
「そうか、ところであの少年はどうした、今日はいないのか?」
「ええ…もうとって貰う必要もないので」
今年も一人で祭りを歩く碧医、久しぶりにとやってみた射的は、過去とは違い綺麗に当たる。そこに噂をすれば傀偽がやってくる。
「おっ久しぶりに見るな」
「おっ少年もきたか、久しぶりにやるか?君はいいエージェントになる」
「それ誰にでも言ってるんじゃない」
「碧医もやれば?どっちが多く取れるか勝負だな、今回は手加減無しだよ」
碧医に、景品を取ってあげた時は見鬼のみでの生活だった、今ではそれに加えて普通の視力もあるのだ。
「いいよ、私、めっちゃうまくなったから」
「医者の勉強じゃなくて射程の練習をしていたとは恐れ入ったなぁ」
「おい、そんなわけないだろ医者の卵なめんな」
「……君たちを見ていると昔の俺達を思い出すよ、あれはそう、俺がJandarmeriaに配属された初日の出来事だ」
「あちょっと別の話が、始まるんで辞めてもらっていいですか?」
「はぁ…ほら位置につくんだ、」
射的屋の意味不明な話を遮り、二人は、位置につく。
『彼は皆に好かれているか、私の居場所にはなり得ない、でも、逃げ道にするくらいなら、バチは当たらないよね』
「いや〜ギリギリ負けたな」
「あそこの店蝙蝠しか置いてないの?」
「でも楽しかっただろ?」
「そうね、島を出る前の年、一緒にお祭りに回ったの覚えてる?」
碧医は傀偽が手の届かないところにいることを理解していた。だからこれは負の念だ。
「覚えてるよ」
「二年前のあの時もこんなふうに並んで歩いた。はたから見たら私たち…恋人みたいに見えたのかな」
「えっと…それってどういう…」
ガシャン
「は?」
苦し紛れの碧医の告白、遠回しでそれに気が付かない傀偽、それを割るように、山吹の頼光が飛んでくる。
「あぁ…クソっ契約も守れねぇたぁ情けねぇ、そこの二人逃げたほうがいいぞ」