「あぁ…クソっ契約も守れねぇたぁ情けねぇ、そこの二人逃げたほうがいいぞ」
「いや、さすがに見過ごせないな肩貸すぞ、」
「やさしいな、だが不用意に近づくと危険だぞ、もう少し離れて」
「がッ」
飛んできた頼光は、肩を貸そうと近づいてきた傀偽を蹴り飛ばす。それと同時に、頼光を吹き飛ばした原因がやってくる。
「……」 グチャッ
「見るなよ碧医刺激が強い」
頼光の血肉が散らばる、それを行うのはただ一人、島に滞在している純血の鬼、酒呑鬼羅だ。対象を傀偽に変更、拳を振るう。拳が来る前に碧医を突き飛ばしたためか首がとぶ。
「うわぁァァァァァァァ、」
「あ、ああ、さすがに強すぎるだろ。鬼は言葉を違えないはずなんだがな、とっとと逃げろ碧医、その前に胴体に俺を投げろ」
「う、うん」
「…………」
「だんまりか」
首を胴体と繋ぎ、右手に鉈を持って構える傀偽、以前会ったときとは違い、無言のままに拳を振るい、命を奪う。
「時間稼ぎにしかならんが、やるしかないか」
―――――――――
同刻、死強のほうでも異常事態は起こっていた。
「どうなってんだこれ、祭りは陽だろうが」
「パーティーパーティー、人肉立食パーティーだ!」
「肝臓何味」
「不死身を食べたあなたはラッキー!」
昨日死強達を襲った、枝根のような怪異が溢れていた。
「これは、多すぎるだろ」
「さすがにこっちに来て正解ね」
「鉄に鶴か、よく来たこれで守りやすくなる」
魂結死強は感づいていた、これは明らかに陽道であると、祭りの開場前に大量の怪異、これ見よがしに作為的、こっちを見ろと言わんばかり、明らかに罠である、餌である。
しかし、傀偽の元へは向かえない、祭りの会場にはたくさんの人がいる、根が優しい彼にとって、奪われるべきでわない命を見て、島民の者達を見捨てることはできなかった。
「クソが…狙いわ傀分かりきっているのにるのに…」
「傀偽が危ないのか?」
「私が行く!」
「美波ちゃんはだめでしょ同じ不死身なんだから」
「ああ、そうだな…だから急いで片付けようか、死神」
八方塞がりの状況に、歯軋りをする死神、こちらに不死身が二人いる以上、ここが堕ちれば最悪なことに強力な怪異が増えてしまう。
だがここで援軍、百鬼家より一人座敷童子の幸が死強の下へ。
「お前、童、祭りの警備はどうした!管轄は此処じゃないだろ!」
「問題ない、祭りに来ていた人は奥に集めた」
幸が指す方向には、分社ほどではあるものの、神社としての神域が展開されていた。その中心には、
「どう集めたかは知らんが助かる」
「少し、信仰心を強めただけだ」
「精神汚染は無しだぞ」
「問題ない、害はない。それと安心ついでにもう、一つ少年の方には鬼縁が向かった、早いとこ」
「〈
島の住人、そして傀偽の安全を確証した死強、それにより、縛るものがなくなり存分に動くことが出来る。
距離を詰め鎌を振るい、五体を持っていく。
「安全が保証されているのなら手を動かせ、童!切り捨て、御免」
「戦闘特化じゃないぞ僕は」
「にしても多いな、この数十分はかかるぞ」
「三桁はいる怪異を十分!?化け物か君は」
「それじゃあ遅い可能性がある!非難は済んでるんだお前らもそっちに行け、」
距離を詰めずともすぐに生えてくる怪異をなぎ倒しながら指示をする死強、それに応えるように鶴は非戦闘員を連れて下がり、鉄は武器を構える。
「手伝おう」
「助かる」
「隻眼、隻脚だが、作り手は道具を使いこなせる技量がある、木っ端程度では苦戦はできんな」
「両方化け物だな!」
多々良鉄、一本ダタラという怪異で片目片足の妖怪、人の形をしているが、義眼と義足をつけることで普段は人とともに暮らしている。
鍛冶を生業とするため、彼の作る鉄製品はどれも一級品、刀などの武器と慣ればどれもが業物とされるほどの腕前。
そして作るということは構造、形、重さを理解するということ、それさえできれば、あとは操るのみである。
―――――――――
「のっらぁ!」
「……」
「しゃべらねぇし、眼も濁ってるし。操られてるのか?これ」
腕を吹き飛ばされ、脚を吹き飛ばされ、それでも傀偽は一人で鬼と戦っていた。鬼羅の異質な行動に予想しながら血肉をまき散らす。
「ふぅ…腕もだめ、脚もだめ、何だったら通るんだてめぇはよぉ」
「……」
傀偽の悪態も聞く耳を持たず、いや鼻から届いていないのかもしれない。無言のままに拳を蹴り飛ばすを繰り出す鬼羅。その拳が鉈に当たってしまう。
「ちっ、武器なしでどう戦えばいいんだよ」
「……」
「相変わらず無言のまま…っつ」
鉈を失い、回し蹴りをくらう傀偽。首に当たり胴から離れて吹き飛んでゆく。そのまま地面には落ちずに、一人の手に受け止められる。
「ごめんなさい鬼羅さん、あなたもう、悪魔の手に墜ちていたのですね。できれば助けたかった。頼光さんには損な役回りをさせましたね」
己の判断に自問自答をする鬼縁、だが鬼の前ではそれは隙だらけだ。
「危ない危ない、鬼の一撃をモロに食らうとこでしたね」
「首体に戻してくれますか?」
「分かりました、行きますよ」
傀偽の首を持ちながら動き、体を喰らわれることはなくなった。
―――――――――
鬼縁が傀偽と合流した頃、枝根の怪異は死強と鉄の働きによって、着々と数を減らしていた。
「五十…かなり減ったな」
「流石だな鉄さん」
「貴方も大概でしょうに私の半分も削っていますよ」
「そりゃな」
背中合わせに武器を振るう二人、互いに実力を認め合うほどに、攻撃を繰り返している。
「しかし槍かよく使えるな」
「大鎌のほうが使いづらいでしょう」
「違いない、それで童、いつまでそこにいるつもりだ?いい加減に働け」
「わかっている、もう終わった下がれ」
死強が向いた先には、今まで一度もうごかなかった幸、いざ出てみれば、後ろに鬼子母神を卸して、神気を放っている。
「〈
妖術
✕
神術
家内に富と安全を生み出す座敷童子の幸と、子供に健康と幸福を守る神である鬼子母神、その組合せは敵なしである。
「これで傀偽の元に行ける、鉄さん!」
「ああ、行って来い!」
―――――――――
「〈
鬼羅の攻撃を赤い糸で止めながら語る鬼縁、その手はかなり余裕だった。
「〈赤縁糸・
霊術
鬼縁が扱う霊術は、その血に、百鬼家に刻まれたもの、それを己の名で縛り得て不得手を作ることで完成する。
「回復したとてだ、俺は不死身しか取り柄がないぞ、あの豪傑とどう戦うつもりだ」
「それは問題ありません、お手を拝借させても?今から私の霊術をあなたに使います、これで勝てるはずです」
亡き弟と瓜二つの傀偽、死神と共に過ごす姿を見て、鬼縁は一つの仮説を立てていた。今それが確実となる。
「〈赤縁糸・
「これは、」
「予想はしていましたがやはり、思い出してください貴方が関わった怪異たちのことを」
霊術 怪と人の縁糸(霊との縁)
それは、霊魂となったものと縁を結び力を借りるもの、傀偽が会った霊は一人、全てを喰らう暴食の少女、共に戦わんとその姿を現す。
妖術
「〈
ここに来て鬼羅が言葉を発する。それは鬼焔をまとった渾身の一撃、だが暴食は無慈悲にそれを飲み込む
「〈
―――――――――
「ついに、遂に覚醒したのねカイ!ならば当初の予定通り進められる!」
傀偽の覚醒を島の悪魔が感じ取る、一つ最悪な方向に進んだのである。
―――――――――
『なんだ…この…懐かしい感覚…』
「ここで別れだな霊縁、まぁまぁ退屈な旅だった、お前は、一向に戦おうとしねぇしな」
「まぁ、弱いからね、この旅も、君たちみたいな人と生きれる怪異を探すのが目的だったし」
「はっ、なんだそりゃ、調僕し従えるのもわかる、崇拝し仕えるのもわかる、だが、友とするのは理解できんな、お前の霊術があれば俺みたいな鬼どころか神すらも使役できるというのに」
本州の何処かで、鬼羅と霊縁、鬼縁の弟が話をしている。
「鬼と人の価値観の違いだねぇ、拳こそが正義じゃないんだよ」
「強いやつはモテるぞ!覚えとけ!」
「まぁ覚えとくよ…強くなったらまた会おう」
「ああ、楽しみにしてるぞ」
笑いながら二人は、別れて
―――
「はっはは、待ちかねたぞ…霊縁」
踏み込みさらに加速する鬼羅、その記憶に見たものは瞬き一つの人との過去、だがその約束は鬼羅の意識を数瞬取り戻すきっかけとなる。
「遂に、約束を果たしに来たか!!」
鬼の剛力を最大限活かし拳を振るう。対する傀偽は手を突き出して
「悪いな鬼羅さん」
「ふっ、旅はまぁまぁ退屈だったが、お前は退屈しないな」
「〈闇暗がり〉、ふぅ」
「やはり…ですか」
納得したよう、寂しそうに頷く鬼縁、それにもっともな疑問をぶつける傀偽。
「これは?」
「怪と人の縁糸、心を通わせ、心を許した魂の力を借りる霊術、私、百鬼家が代々受け継ぐもの、そして貴方のは霊との縁、我が弟、百鬼霊縁がもつ力でした」
「鬼縁さんの……弟さん…」
「ええ…容姿どころか、力まで同じとは、まるで、あの子の生まれ変わりのよう。地獄より輪廻を超えて帰ってきたのかと、ごめんなさい…涙止まらなくて」
悲しそうな表情が、言葉を紡ぐたびに重くなり、泣き出してしまう。それを見た傀偽が胸に寄せ抱きしめる。
「詳しくはわからないでも、その思いはきっと正しいものだ」
「は、い」
「傀偽!」
「死強かちょうどいい、こっちは片付いたから、座敷童子の方を」
胸に抱き、泣く鬼縁なだめる傀偽のもとに死強が飛んでくる。その現状に疑問が生まれて動くどころではなくなる。
「いや、ちょっと待てなんで常闇がここにいる」
「俺の、霊術が原因だ、それより今は鬼縁さんの方を…」
「あぁやっぱり決壊したか、悪いが死神と少年、僕たちの説明は必ずするから明日また会いに行くよ」
「え、あ、うん」
丁度そこに幸が来て鬼縁を引き取り去っていく、残された二人は、疑問を浮かべながら、ため息をつくのであった。