黄泉❛心縁〜咎が縁を結ぶ〜   作:紡縁永遠

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悪魔の名は

 「こんな部屋、早く出るに限るわ」

 

 狙われた、ショートボブの女性は、すぐに部屋を出ようとする、まぁ命を狙われたのだ、離れるのは当たり前だ。

 

 「…そういえば、結局、【不帰の部屋】って、どんな怪談だだ?」

 「今さらそれを聞くのか?」

 「そういえば、最後まで話してなかったな」

 

 まともに伝承を知らない死強は、今更ながらに深く話を聞く、話を知っている、傀偽は答えようとするが、ノイズがかかり、思い出せない。

 

 「確か、最終的に浮気をした旦那が奥さんに復讐される話なんだ、ようやく部屋から出れると思ったら」『oyfdwpu258いgxgci357いhcigc350火cciy358いhciyc328いtぉh緒cohc』

 「……なんだっけ?ああ?でてこないな」

 

 傀偽が薄れて、靄のかかった記憶から最期を思い出そうとしていると、ショートボブの女性は扉を開ける。扉の先には、緑髪緑眼の弓を携えた女性が立っていた。ショートボブの女性と目が合うと、すぐに詰め寄り。

 

 「ごきげんよう三ツ木(みつき)さん。浮気の復讐はできたようで何より、相手の人生は台無しですもの満足でしょう?」

 「待って、まさか本当に……」

 「それじゃあ代金をいただくわね」

 

 不穏な会話の後、弓を携えた女性が三ツ木と呼ばれたものに手を伸ばす。それを止め、割ってはいるのは鎌を持ち戦闘態勢に入った死強だった。誰よりも、危機を感じて、動いたのだ。

 

 「……人には者を向けるのはよくないことよ」

 「……職業柄、人の生き死にには敏感でな、どこの誰だか知らんが殺すつもりだったろ、お前、」

 「そういう契約だもの、こちらは責務を全うした、ならその分の代金はきちんといただかなくては」

 

 先程も言った【代金】そして【契約】。契約とは違えてはならない絶対の決まりだ。ソレはどの時代、どの宗教でも同じだ。嘘を吐けない絶対の盟約。

 

 「お前、このいかにもな奴と何を契約した!」

 「…………」

 「おいっ!なんとか言った……ら…」

 

 死強が問い詰めようと数度揺すると、血をまき散らし、四散して、死ぬ。魂が何かにとらわれ、冥府に行くことなく、女の手の中へと吸い込まれる。

 

 「はいっ、確かにいただきました、魂、きっちり一人分ね」

 「あ…あ、にくにくにく、」

 「店長!お客様が一瞬で肉塊に」

 「ちょっと待ってくれ、先生。じ自体がのみ込めない…」

 

 一連の現象を見たものは、事態を飲み込めず、動けなくなっていた。魔術を持っていた男は女性と面識があるのか、近づいて問い詰める。

 

 「あなたが魔術を処方されたように、彼女もまた私を頼ったということ、おかしいと思わなかった?彼女がいなくなってから思考が極端に狭くなり、何も上手くいかず、まるであなたの幸せを、彼女が全て持ち去ってしまったような。妬ましさと同時に思い出したかしら、彼女への愛を」

 「お、お前が、全部仕組んだことなのか?」

 『なんだ…この感覚…、何もかも掴み取られているような、この雰囲気は…!!』

 

 女の言葉に死強は、ある不信感を覚えていた、どこかで知っている、嫌な雰囲気、そして死強が動けないうちに女は次の魂を回収する。また血肉が散らばり、嬉しそうに、嘲笑うように、死強に語りかける。

 

 「さて、それではあなたからもいただくわ。 はいっいただきました。来世でもよろしくね……斬り掛かってくると思ったけど、急におとなしくなったわね」

 「【悪魔との契約】……だろ、魂と引き換えに魔術を与えたか、古くから契約というのは違えてはならない絶対的なものとされる、故に助からない。なぁそうだろ【不死身の「……さん、かあさん」「っ!」

 

 死強の予想は正しかった。助からない命に手を伸ばすことはできない、だが、傀偽の言葉は、予想することができなかった。そして、死強の他に動くものが一人。この部屋の本来の持ち主である水橋途焦だ。

 

 妖術 不帰の部屋

 

 「久しぶりね、クソ悪魔、再開して早々だけど、私の部屋で勝手した罰、とくと受けてもらうわ」

 「久しぶりね、嫉妬の橋姫。相変わらず強力な結界術……私では逃れるすべはありませんね。ですが」

 

 ()() 縁退き(えんのき)狂華(きょうばな)

 

 「術を解いて、途焦、今すぐに!」

 

 霊術 怪と人の縁糸

 

 「何のつもりよ……あなた…」

 

 怪と人の縁糸は縁強制的に従えるけど可能、その力を持って、傀偽は途焦の作り出した結界を、本人に強制的に解かせた。命令されれば従うしかない、毒を吐きながらも、結界は解かれる。

 

 「何のつもりも、息子が母を助けるのは当然でしょう、改めまして、黄泉欺魔(きま)と言います」

 「母親、だと?それにしか黄泉だと?!」

 「ああ、【病院では】薬望(やくも)で通していましたね」

 

 島の悪魔、不死身の母、それは傀偽の母親、衝撃の事実に死強は動揺が隠せない。それでも希望をと、語りかける。それにうつろな表情、視線が返ってくる。

 

 「傀偽!そいつこそが、そいつこそが島の悪魔なんだぞ、」

 「…………」

 「無駄よ、もう戻りはしないわ、当然でしょう。傀偽は肉人形なのだから」

 「そうだね当然だ。でもまだ戻るつもりはないけどね〈黒風(くろかぜ)〉」

 

 霊術 怪と人の縁糸

    ✕

 妖術 戦雷(せんらい)()墨染櫻(すみぞめざくら)

 

 まだ知らぬ妖術、だが、アズミーだけが覚えている、自身の眼を切り裂いた、黒き風を、友を失った夜のことを、

 

 「なんで…?!!桃の香り、なるほど桃には退魔の力があるものね、抵抗できても不思議ではないわ、少し早まったのが悪手だったわね、また来るわ」

 

 そう言い残し、島の悪魔は消えていった。生き残った全員は、その場に崩れ落ちる。そして視線が傀偽に向けられる。

 

 「……悪かったな黙ってて」

 「いや、いい、今はどっちだ?」

 「今は、人形じゃないよ、まぁ人形だったときの記憶なんで何もないけど、」

 「そ、そうか……」

 

 重たい空気が流れる、当たり前だ。今まで不死身にされ、怪異の餌となってしまったかわいそうな、人間、そして不死身を治そうとする者から、悪魔の操り人形ということが発覚したのだが。

 周りは言いたいことを飲み込んで、死強と、途焦に全てを任せた。

 

 「なんでわざわざ結界を解かせたの、」

 「それじゃ気づかれるから、それに一か八かの賭けだったから…」

 「じゃぁ最後の黒い風は?」

 「十年前に触れた怪異の妖術、うろ覚えだけど七不思議の一つだから、聞くかもしれないと思って…」

 

 

 また、音が、会話がなくなる。欠けるべき言葉が見つからない、今相手をしているのが傀偽なのか、人形なのか、その判断ができないからだ。同じ不死であるアズミーにもその疑念は振りかけられていた。出生も親も分かっているそれでも、不確定予想を警戒しないことはできない。

 何とか、傀偽に話しかけたのは、同じ不死のアズミーだった、疑念の疑いが晴れない今接触は避けたいが、それを振り切ってもアズミーが、傀偽に触れに行く、怒るのでもなく、同情するでもなく、ただ、平手が一発、傀偽の頬に炸裂する。

 

 「…………」

 「……バカっ」

 

 乾いた音に、傀偽は打たれたところを触る、痛みなどすぐに消える。たたかれた事実のみが過ぎていく、たが、肉人形と言われても、たたかれたことへの【罪悪感】は芽生えていた。

 ソレすなわち、人形ではない、ここにいるのは黄泉傀偽だという確固たる証拠だった。

 

 「……悪い」

 「だったら、離れないでよ、私はまだ何も返せいていない」

 「……妬まし「今じゃない」

 

 傀偽を庇って、視力を失い、その責任と操られて、不死になるきっかけであっても、それでも恩義を感じ、何か助けになれないかと、考えて、それでも見鬼を持っただけで何もできず、お荷物となって、罪悪感を覚えたアズミー。恩を返すために、自分に何ができるかわからない、それでも返せぬまま、己から離れるのは嫌なのだ。

 

 「うん、死強、途焦、アズミー、ついてきてくれるか?」

 「ええ、問題ないわ」

 「俺もだ」

 「うん!」

 

 悪魔の人形という不穏はあったものの、それでも進むと、決めたのだった、次は細く、弱い、七不思議と縁を結びにゆく。

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