「こんな部屋、早く出るに限るわ」
狙われた、ショートボブの女性は、すぐに部屋を出ようとする、まぁ命を狙われたのだ、離れるのは当たり前だ。
「…そういえば、結局、【不帰の部屋】って、どんな怪談だだ?」
「今さらそれを聞くのか?」
「そういえば、最後まで話してなかったな」
まともに伝承を知らない死強は、今更ながらに深く話を聞く、話を知っている、傀偽は答えようとするが、ノイズがかかり、思い出せない。
「確か、最終的に浮気をした旦那が奥さんに復讐される話なんだ、ようやく部屋から出れると思ったら」『oyfdwpu258いgxgci357いhcigc350火cciy358いhciyc328いtぉh緒cohc』
「……なんだっけ?ああ?でてこないな」
傀偽が薄れて、靄のかかった記憶から最期を思い出そうとしていると、ショートボブの女性は扉を開ける。扉の先には、緑髪緑眼の弓を携えた女性が立っていた。ショートボブの女性と目が合うと、すぐに詰め寄り。
「ごきげんよう
「待って、まさか本当に……」
「それじゃあ代金をいただくわね」
不穏な会話の後、弓を携えた女性が三ツ木と呼ばれたものに手を伸ばす。それを止め、割ってはいるのは鎌を持ち戦闘態勢に入った死強だった。誰よりも、危機を感じて、動いたのだ。
「……人には者を向けるのはよくないことよ」
「……職業柄、人の生き死にには敏感でな、どこの誰だか知らんが殺すつもりだったろ、お前、」
「そういう契約だもの、こちらは責務を全うした、ならその分の代金はきちんといただかなくては」
先程も言った【代金】そして【契約】。契約とは違えてはならない絶対の決まりだ。ソレはどの時代、どの宗教でも同じだ。嘘を吐けない絶対の盟約。
「お前、このいかにもな奴と何を契約した!」
「…………」
「おいっ!なんとか言った……ら…」
死強が問い詰めようと数度揺すると、血をまき散らし、四散して、死ぬ。魂が何かにとらわれ、冥府に行くことなく、女の手の中へと吸い込まれる。
「はいっ、確かにいただきました、魂、きっちり一人分ね」
「あ…あ、にくにくにく、」
「店長!お客様が一瞬で肉塊に」
「ちょっと待ってくれ、先生。じ自体がのみ込めない…」
一連の現象を見たものは、事態を飲み込めず、動けなくなっていた。魔術を持っていた男は女性と面識があるのか、近づいて問い詰める。
「あなたが魔術を処方されたように、彼女もまた私を頼ったということ、おかしいと思わなかった?彼女がいなくなってから思考が極端に狭くなり、何も上手くいかず、まるであなたの幸せを、彼女が全て持ち去ってしまったような。妬ましさと同時に思い出したかしら、彼女への愛を」
「お、お前が、全部仕組んだことなのか?」
『なんだ…この感覚…、何もかも掴み取られているような、この雰囲気は…!!』
女の言葉に死強は、ある不信感を覚えていた、どこかで知っている、嫌な雰囲気、そして死強が動けないうちに女は次の魂を回収する。また血肉が散らばり、嬉しそうに、嘲笑うように、死強に語りかける。
「さて、それではあなたからもいただくわ。 はいっいただきました。来世でもよろしくね……斬り掛かってくると思ったけど、急におとなしくなったわね」
「【悪魔との契約】……だろ、魂と引き換えに魔術を与えたか、古くから契約というのは違えてはならない絶対的なものとされる、故に助からない。なぁそうだろ【不死身の「……さん、かあさん」「っ!」
死強の予想は正しかった。助からない命に手を伸ばすことはできない、だが、傀偽の言葉は、予想することができなかった。そして、死強の他に動くものが一人。この部屋の本来の持ち主である水橋途焦だ。
妖術 不帰の部屋
「久しぶりね、クソ悪魔、再開して早々だけど、私の部屋で勝手した罰、とくと受けてもらうわ」
「久しぶりね、嫉妬の橋姫。相変わらず強力な結界術……私では逃れるすべはありませんね。ですが」
「術を解いて、途焦、今すぐに!」
霊術 怪と人の縁糸
「何のつもりよ……あなた…」
怪と人の縁糸は縁強制的に従えるけど可能、その力を持って、傀偽は途焦の作り出した結界を、本人に強制的に解かせた。命令されれば従うしかない、毒を吐きながらも、結界は解かれる。
「何のつもりも、息子が母を助けるのは当然でしょう、改めまして、黄泉
「母親、だと?それにしか黄泉だと?!」
「ああ、【病院では】
島の悪魔、不死身の母、それは傀偽の母親、衝撃の事実に死強は動揺が隠せない。それでも希望をと、語りかける。それにうつろな表情、視線が返ってくる。
「傀偽!そいつこそが、そいつこそが島の悪魔なんだぞ、」
「…………」
「無駄よ、もう戻りはしないわ、当然でしょう。傀偽は肉人形なのだから」
「そうだね当然だ。でもまだ戻るつもりはないけどね〈
霊術 怪と人の縁糸
✕
妖術
まだ知らぬ妖術、だが、アズミーだけが覚えている、自身の眼を切り裂いた、黒き風を、友を失った夜のことを、
「なんで…?!!桃の香り、なるほど桃には退魔の力があるものね、抵抗できても不思議ではないわ、少し早まったのが悪手だったわね、また来るわ」
そう言い残し、島の悪魔は消えていった。生き残った全員は、その場に崩れ落ちる。そして視線が傀偽に向けられる。
「……悪かったな黙ってて」
「いや、いい、今はどっちだ?」
「今は、人形じゃないよ、まぁ人形だったときの記憶なんで何もないけど、」
「そ、そうか……」
重たい空気が流れる、当たり前だ。今まで不死身にされ、怪異の餌となってしまったかわいそうな、人間、そして不死身を治そうとする者から、悪魔の操り人形ということが発覚したのだが。
周りは言いたいことを飲み込んで、死強と、途焦に全てを任せた。
「なんでわざわざ結界を解かせたの、」
「それじゃ気づかれるから、それに一か八かの賭けだったから…」
「じゃぁ最後の黒い風は?」
「十年前に触れた怪異の妖術、うろ覚えだけど七不思議の一つだから、聞くかもしれないと思って…」
また、音が、会話がなくなる。欠けるべき言葉が見つからない、今相手をしているのが傀偽なのか、人形なのか、その判断ができないからだ。同じ不死であるアズミーにもその疑念は振りかけられていた。出生も親も分かっているそれでも、不確定予想を警戒しないことはできない。
何とか、傀偽に話しかけたのは、同じ不死のアズミーだった、疑念の疑いが晴れない今接触は避けたいが、それを振り切ってもアズミーが、傀偽に触れに行く、怒るのでもなく、同情するでもなく、ただ、平手が一発、傀偽の頬に炸裂する。
「…………」
「……バカっ」
乾いた音に、傀偽は打たれたところを触る、痛みなどすぐに消える。たたかれた事実のみが過ぎていく、たが、肉人形と言われても、たたかれたことへの【罪悪感】は芽生えていた。
ソレすなわち、人形ではない、ここにいるのは黄泉傀偽だという確固たる証拠だった。
「……悪い」
「だったら、離れないでよ、私はまだ何も返せいていない」
「……妬まし「今じゃない」
傀偽を庇って、視力を失い、その責任と操られて、不死になるきっかけであっても、それでも恩義を感じ、何か助けになれないかと、考えて、それでも見鬼を持っただけで何もできず、お荷物となって、罪悪感を覚えたアズミー。恩を返すために、自分に何ができるかわからない、それでも返せぬまま、己から離れるのは嫌なのだ。
「うん、死強、途焦、アズミー、ついてきてくれるか?」
「ええ、問題ないわ」
「俺もだ」
「うん!」
悪魔の人形という不穏はあったものの、それでも進むと、決めたのだった、次は細く、弱い、七不思議と縁を結びにゆく。