『……なぁ、なんで行かせた……ねぇ!』
神風特別攻撃隊、桜花の乗組員を称える墓石の前で一人の女性が、酒を片手に言葉を紡いでいた。どんな世界でも通用する美貌を持つ彼女は、酒を墓場に垂らして、背を向ける。
『すまない、俺が止めるべきだった!だがアイツは止まるつもりはなかった、だから…!』
背を向けた女性は、何かに気づいて、そのまま喋る。
『風師、届いているかはわからないけど、あなたは、自分の責任だと言うかもしれない、でもこういうのはなんだけど、アイツは止まるような覚悟に見えた?あなたの責任じゃないよ』
互いに分かっているが、受け入れきれない、人間はもろいそんなことは最初からわかっている、分かっていたはずなのに。それでも止められず、別れの言葉も伝えられず、
『またね、今更だけど』
そう言って涙ながらに女性は去っていった。
去っていく背中を見つめる、形なき意志の風はそれに小さく頷いた。
『ああ、』
―――――――――
「……貴様らには覚悟がない!命を賭け、命を賭してまで勝とうとする覚悟が!」
戦争を死んででも国に貢献するという時代を生きた天傲、戦争の狂乱を知らぬ今の時代の者を、彼は否定する。何も理解していないと、あの日の死が今を作っていることを、今の者は理解していないと。
「だから、なんだ!覚悟がなくても、痛みを受け罰を受け、罪を背負う、その意思が覚悟がないと言われても進み続けるしかないんだ、今を生きる者が努力し進まなければ何も変わらない!」
「変えるだけの覚悟がないと言っている、貴様のような半端者についていくつもりはない、霊縁のような、気楽で、それでも言葉に重みがある奴にお前はなり得ない!」
一度は彼も、霊縁を突き放した、それでもその言葉に惹かれたのだ。今亡き偶像は残りしものすべてを縛る糸なのだ。
―――――――――
『……立派な桜だな…なぁお前は何を思いここに残る、何を残す…』
『……あの
『そうだね、知らないね、それでも君と仲良くなりたいだから声をかけた、それじゃだめかな?』
一昔の夏黄泉の島、満開の桜に百鬼霊縁が語りかける。それに否定の言葉が返ってくる。それでも霊縁はカラカラと笑い、否定に反論する。
『なら、ぶつかるだけだね』
『来いっ!』
相容れないそう決めつけた怪異との間に得も言われぬ縁を作る霊縁、それが霊縁の無意識的に持つ潜在能力、相手を見て、十を知り、百を知ろうとさらに踏み込む。
鬼の剛腕と天狗の風がぶつかる。ひらりと交わす風師に構わず拳を打ち込む酒吞、それを補佐するように、緑髪の悪魔が、酒吞に薬を打ち込む。それは【無双を誇る怪力】に【無限の回復支援】をもたらして、さらに【肉体限界を破壊する】というもの、当たらずにただ消費されるはずだった拳が、無限にはなてるようになり、威力も増す。
ソレに対して、
『仕方ない〈
懐から取り出した脇差しは、黒い櫻の花弁を寄せ集め、鈴の音とともに、振り下ろさせる。それは概念ごと断つ妖刀、
輪を縁をなした家族から託された脇差しは、また縁を運ぶものを寄せ手繰りよせる。
『流石…酒吞、こっちに寄せて』
『うむ…』
短い言葉で最善を尽くす彼らは、天傲には到底理解できぬものではない、未練は絶った。関わらない、それなのに、胸に心に落ちていく、そのやりとりは、彼の壁を壊すに十分のやりとり。
『なぜ笑う、なぜ共にいようと言う、我ら怪異と、人の間にある、大きな壁、
『その短い時間をどう生きるかだ、確かに君達怪異と比べれば、その老い先は短い時間、それでも行きた証は消えない、だから共に歩もうと、この縁を手繰る、それが僕の生き方だ』
生きた証。生きた意味、それを悠久を生きるものに託すというもの、何をなしたかは興味のない霊縁ただ、ともに生きた、そこにいたという事実が好きなのだ。怪異にとって瞬き一つの
『……そうか……貴様は変わっているな、』
『時間はなくとも、人の尺度ははかれない、突き放せないものもいるからな、それじゃあ、風師……
『俺の名か?』
『ああ、天から人を見下ろす、まさに傲慢だ』
『そいつは、皮肉で名前を決めるから気をつけろよ』
―――――――――
ほんの少し共にいただけ、霊縁が化け物と言われるまでの短い時間、それでも人の友と三度別れた天傲は目の前にいる人間が、天命を全うすることを、してくれるのかとそういう疑問符をだいていた。特攻隊として散った、風師の風の軍師という名をあたえた友、
「なんともまあ、変わった縁だ、あいつと同じ目をしている、周りを助けるつもりでいるし、自分が助かる気のない目、嫌になる。いくら死ねないといえども己は大切にしろ」
「……そうか、なら、答えは?」
「付いていこう、それに、エゴを貫けるようだしな」
「なんだ、最初から分かってたのか、見下してるようでムカつくなぁ」
「それが傲慢だ」
新たに縁が結ばれた傀偽、残る縁は後幾つあるのか、姿を消した記者はどうなっているのか。事は序章に過ぎない、