死神の協力をへて、改めてこの島の魑魅魍魎、怪異について調べ始める傀偽だがその前に宿の仕事を始める。
今は朝食の準備をしているようだが。見えるようになって出来ることが増えている、見えなかった分のクセと見えるようになってからの細かい調整。これにより仕事がやりやすくなっている。
「お前、本当に見鬼だけで生活してたのか?」
「?」
「いや、見鬼だけだと危険だから厨房に立たせず料理も、いつもやらせてなかっただろ、だから知識もなにもないと思ってたんだが」
今、傀偽は厨房でレシピを見ながらやっている。小一の手伝い以来で、しっかりとしたものを作るのは初めてだで、親なら子の行動に信用あるべきだろが今までのことを考えるとできないという考えの方が先に出るようだ。大体が今のレシピを強願が変更したのが三割ではあるが。
「まあ確かに、家事は掃除くらいしかできなかったけど、浴場の掃除やってんの八割俺だぞ、家事が出来る可能性は上がるだろ」
「掃除と炊事は別物だろ。しかしよく会話しながら出来るな」
「物を切るのは怪異相手に散々やってきたから」
「いや、どこで習ってんだよ」
本当にその通りである、しかし怪異には生物のようなやつが多いのも確かだ。だから締め方を研究することもあったのか、形に対してどこに刃を入れたりするかは文字通り命をかけて学んでいる。捌くだけなら父親にも匹敵するほどに上達している。
「うしっ、できた」
「うん、大丈夫そうだな」
食事処に運び、傀偽達も朝食を食べてゆく。夜は部屋に持って行くが朝は食事処で食べてもらっている。
「うまそうだな、いただきます」
献立は
主食 白米
汁物 沢蟹の味噌汁
主菜 鯵の塩焼き、冷奴
副菜 菠薐草の御浸し、かぼちゃの煮物
副副菜 数の子、梅干し
甘味 桃
「ガリッ……蟹?」
「沢蟹の味噌汁だからな」
「いや、こういうのは出汁で終わるだろ」
「殻も食えるぞ」
「それはそうだが」
その後は黙々と食事を摂る。
「死強、今日は視力回復に慣れるために宿の仕事をするから情報集めを頼む。他の奴らにも言っといてくれ」
「了解した」
食べ終わった人達の皿を下げて、いつもは掃除をしている傀偽だが下げた皿を水につけ、全て下げられたら洗う。漆塗りもあるので傷をつけないように洗っていく。
それが終われば、温泉の掃除、朝は八時三十分までは空いている。それが終われば閉鎖し掃除に入る。死強の方は情報を集めに行った。
―――――――――
エステル家はまた、この島に住むようで挨拶回りに行っていていないため、単独高度を取ることになった死強。物騒な伝承がある割には島の活気はよく、果物屋に声をかけられる。
「そこの兄ちゃん、観光客か?」
「そんなとこだな」
「お土産にどうだ?桃とここにはないが数の子が多いぞ」
「桃はもらおうか」
「まいど、ところでこの島に伝わる伝説は知ってるか?」
「死神の神隠のことか?」
「なんだ知ってるのか」
町、というより村を散策している気分になる死強、声をかけられた果物屋で桃をもらい島の伝承について出たので、深く聞き込む。
「それなら【夏に集まる怪異の夢語】はどうだ?」
「それは知らないが不死とか、わかりやすいやつはないのか?」
「不死ならあるぞ、つってもこの伝説の延長線だがな、この伝説は傷ついた怪異が夏に魂を癒しに島にやってくるというものでな、島にも怪奇現象が起こるんだ。そしてこれが影響してか島の周辺に人魚が住むという海底洞窟があるという伝説なんかも生まれたんだと」
「面白そうだな、試しに海に行ってみるよ」
「そうかいきいつけてな」
海、そして人魚、十分な情報を得たと思ったのか死強は宿に戻る。
宿に戻るとフードで顔を隠したものがいた。
「どうかしたのか?従業員呼ぶか?」『なんだこの違和感、人間か?こいつ』
質問にたいし、そのものは首を縦に振る。違和感を感じながらも死強は客と思い込み傀偽を呼ぶ。
「傀偽、玄関に客が来てたぞ」
「?わかった」
―――――――――
死強に言われエントランスに向かう傀偽、フードをかぶったものがいることを確認すると、宿の現状を伝える。
「宿泊ですか?でしたら今は満室でして泊まることはできないんで……えっ?」
ドスッと傀偽の腹にナイフが突き刺さる、あまりの出来事に動けない傀偽とフードのモノにの間に死強が入り込む。
「どう……し……てめぇ、なしてんだ!」
「ぐっがぁ」
死強がのぞきに来て、腹に突き刺さったナイフを見ると鎌を取り出しそのフードのモノに振るう、が避けられ新たにナイフが二つ、素早く振るい死強が振る鎌をいなしていく。その間に傀偽は、刺さったナイフを抜き逆手に持ってフードのモノに振るうがこれも避けられる。
不死であることの自覚と覚悟が傀偽を動かすが、不死であることと、人であることは違い死強が止めに入る。
「下がれ」
「騒がしいぞどうした」
「ちっ」
騒ぎを聞いて強願が宿から出てきて逃げるフードのモノ、なんだったのだろうと疑問が残る中、死強が腹の傷を心配する。不死であるのに心配するのは、死に神ながらに人の死を見てきた死強なりの優しさなのだろう。
「おいっ大丈夫が?」
「ああ、回復した」
「状況説明」
「エステル家にも伝えるから後で頼む」
「……わかった」
腹の傷には納得してくれたが騒ぎを起こしたことには変わりない、それどころか二人にはさらなる疑問が浮かんでいた。
「あいつ」
「ああ、死神の俺に短い間とは言えナイフ二本で渡り合った相当な手練だ」
フードのモノに対する実力の疑問だった。
―――――――――
「それでこう集まったのは、」
「うん、刺された」
「…そうか」
「ねぇ、その反応でいいの?刺されてるんでしょ」
「傷は塞がってるし、普通じゃないのは確実だし、この島で普通を探すほうが大変だし」
魑魅魍魎、怪異が跋扈するこの島は全体が異質だ。久しぶりに帰ってきて慣れない久愛は傀偽の傷を心配する。
そこで島をよく知る傀偽と強願はある一つのことを話す。
「夕飯にニシン出しただろ?」
「うん」
「あれ、船で捕ったわけじゃなくてな普通に川魚と同じ要領で取ったものなんだ、」
「はぁ?」
主に北海道の沿岸部や日本海沿岸、産卵期は春で水深1メートル以下ではあるが今は夏でありあくまであ産卵期だ、魚自体は沿岸から数メートル程度の浅瀬、または水深100メートル前後までの範囲、五から十トンの船で漁をする。
「なんだったら素手でも頑張れば捕れるしな。この島でほとんど漁業がやっていないのがコレの理由でな、この島の周辺の海域はいろいろと、ぐちゃぐちゃなんだ」
「ぐちゃぐちゃ?」
「生息区域が外れた生物がいたり海流が歪でまっすぐに進めなかったりする、それがこの島の異常の一つだ」
唯一の観光船は、機能するがまともに海上で動くのはそこだけでそれ以外は使えない。生態系にも異常をきたすのがこの島だ。
「少し話は変わるが明日は海に行っていいか?」
「海か」
「観光場所だっけ?」
「遊びには行かないぞ、海には不死の秘密を探りに行く」
フルールの質問に死強は否定する。だがその言葉に今度は傀偽が疑問を持つ。
「海になんかあったけ?」
「人魚の海底洞窟があったはずだ」
「そう、人魚、人魚の血肉を食べたものは不老不死になるという」
「人魚か完全に除外してたな、でもあの時は何かを食べた覚えもないし、うちにも行かなかったんだが、」
「それも調べれば分かることだ」
呪いの候補に外していたが夏に集まる怪異の夢語には繋がるためか、傀偽は納得をする。そしてここからはさらに怪異が増えることになる。
「わかった、行こうついてくるものは?」
「私もいく、行かなきゃだめな気がする」
「フルールだけだな傀偽、案内頼んだ」
「了解」