「傀偽!」
「記事だか、なんだか知りませんけど、【不死身】に付いてでしたっけ?ここにそんな伝説はありませんよ」
「いや、あるはずですよ、現に……あの、そちらの、海から出てきた人は…」
「ん?あぁ戻ってきたのか死強」
「これはどういう状況だ?」
死強が海岸につくと、【今の時代に似合わない霊力をもった】胡散臭い女性と傀偽が話し合っていた。
―――――――――
「ふぅ、もうナンパとかしないでくださいよ」
「あ、ああ。あんな思いはしたくない、」
「たぶん大丈夫ですけど早めに島を出たほうがいいですよ、夜はああいうのがでますから」
「わ、わかった」
男を浜に担ぎ上げ、連れの男に渡して一応の忠告をし追えた傀偽。もう一度洞窟に行く気にはなれないのか、海を見つめて待っている。
『宿の制服は、特殊だからすぐ乾くけどなぁ、あまり濡らしたくはないしなぁ、塩水はベタつくから待つ一択だな』
その場で立っていると声をかけてくるものが一人。少しだが霊力をもった、胡散臭さを感じる一人の女性。
「こんにちは、私ここにある噂があると聞き、聞き込みをしているのですが、その様子、この島の住民ですよね」
「…そうですが、噂、怪談巷説とかならありますけど」
「ええ、そうですか、怪談巷説に付いて聞きたいのです。【不死身】に付いて知っていることは有りますか?」
―――――――――
「というわけだ、」
「なるほどねぇ」
「しかし、ここは不思議な場所ですね、不死身以外にもいろんな伝説がありますから…」
女性の声に、言葉に、張り詰める空気、当たり前だ人間こんなことを聞くなど普通ない。
「こんな場所です。貴方がたの知り合いに不死身がいたりして…」
言葉が終わると同時に武器を取り振るう死強。冗談には聞こえない的を得た言い方。傀偽も死強も言葉には気をつけていた、何よりカエデのような形の扇を出した女性の霊力がましたことに、さらなる警戒心を生む。
「いやはや、危ないですねぇ。まるで何か知られたくはないものを知られてしまったかのように」
「お前、何者だ。わずかに感じていた霊力。その扇子を持ってからは特にだ」
「それはそうでしょう私は天狗の末裔ですから、まぁ今ではほとんど血は残ってませんけど」
「なるほど、どうりで感じる霊力が少ないわけだ。ならもうひとつ不死身を探してどうするんだ?」
「……決まってます、密着取材です!なぜ不死身になったのか、不死に何を感じ、どう生きるのか、気になりませんか?」
「はっ?」
「…どうやら、武器は収めてもよさそうだな」
不死身を喰らうことが目的ではないことを知り、その場は落ち着く、場所を変えるため、海の家で待つフルールも交えて話すことに、
「ちょっと早いわよ」
「海に帰れ!」
「いや来ちゃだめだろ、いろんな意味で」
そこに死強を追ってきたのか、人魚の佐木が顔を出す。アマビエみたいになるならまだしも、人を喰らおうとしていたものは人前に出せない、そして傀偽とは無関係ではあったが人魚は不死と深く関わりがある怪異だ。
「…あ、ああぁ、に、人魚、これは一大事です!……すいません!写真一枚いいですか?」
「……事務所を通してちょうだい」
「…いや…ないだろ」
『死強もツッコミとかするんだ』
至極当然な死強のツッコミ、だが、このやり取りからは先ほどまでのシリアスさは感じない。それでもこんなやりとりは楽しいと感じる傀偽がいた。
不死身、死神、鴉天狗、人魚、という人外魔境ではあるものの人といることは楽しいと思えるのだ。
「アポさえ取っていれば…」
「通用するんだ。まぁ人を喰わなければいいんじゃないか。手、だせ引き上げる」
「あら、ありがとう」
「ん?」
傀偽が人魚を引き上げると、傀偽の目に赤い糸が結ばれる光景が映る。その不自然な反応に死強が声を掛けるが不確かなことは話さない。
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない」
断りを入れ、海の家に。馴染みの店員と、フルールは人魚に驚いたが、ここならあるのかと納得をしている。あまりなれては欲しくないと感じながらも、傀偽は疑問に思うことが増えていた。
『……フルールや店員ともかくなんで人魚が視えるんだ?天狗女は…いや、失礼か』
「そういえば名前は?」
「おや、言っていませんでしたね、私は群馬県に本部があるジャーナリストをやっております。名を
「なんだお客さんか、」
「おや、そうでしたか、いやぁいい宿ですね、不死身はさておき宣伝させてもらいますよ」
「店の主人に確認を取っておくよ」
「はいっ」
サービスで貰った海の家のかき氷を食べながら、一同は異様なほどに【静かな】浜に佇む小屋の中で、話し込む。
「相変わらずおいしいな」
「ありがとうございます!」
フルーツがたくさん乗っているが、島の市場で売っているものを詰め込んだだけのものだ。海の家の人気メニューで、あまりゆっくりすることはできない、普段なら。店の中も外の浜辺も何一つ音のしない浜辺だ。
「ねぇ、ここってこんなに静かなの?」
「いや、人がいなくても声は聞こえるはずだけど…」
傀偽への質問をしたフルールの言葉に空気が変わる。そう、海の家に客がいなくても、砂浜の中央にあるこの場所に声一つしないのは夜間と何もできることのない冬だけだ、まるで全員が【神隠しに遭っま】ように、何も聞えない。耳を澄ませなくても波が聴こえるくらいに静かだった。
「あ〜あ、コイツも違う、美味しくないし、お腹いっぱいにならないし、不死身は、どこなの…」
異変を感じた一同が浜に出ると、ボロボロの、つぎはぎのもんぺを来た少女が人をむざぼっている。血がしたたり落ちる生首が、ぶら下げたその手にあった。
ドチャッ
そんな音を立て咥えていた四肢が落ちる。
「見るなっ!」
傀偽や死強ならともかく他の人間に見せるには刺激が強すぎる光景。人の姿形が見えない浜には、おびただしいほどの血痕が散らばっている。
「考えるに、全員食われたみたいだな」
「悪い死強…こいつは知らない」
「そうか、怪異に食われて死ぬのは、【普通】じゃないよな」
島にいない怪異、他とは一線を隠すほどの圧、死強の警戒がより一層強くなる、それは死強が唯一求めるもの、普通の死から逸脱した死者の形を見たからだ。
「なんだ、まだいたんだ。いただきます」
だが、そんな警戒も意思も胃に関せず、食べるものがまだあることに、無邪気に喜ぶ子供の怪異、見た目通りに純粋でただ食べたいものを求めるように、霊気が動き、闇が広がる。
死強達の眼前に広がる闇、どれだけ大きいのかも、近づいてくるのかもわからない、その中で風菜が気づいたのは触れれば死ぬということだけだった。
『あっ、死んだ』
「危ないな、距離の分からない常闇攻撃、防御は不可、当たれば即死、回避は難関、一階の怪異が持てるもんじゃないな」
死を覚悟した風菜が瞬きすると場所が視界が変わていた。少女の怪異からかなり離れている事がすぐに分かるほどの距離を瞬時に移動したのだ。回避できたとて、ここからどうするかという問題だが。死強の頭には怪異の殺し方とは別にもう一つ、
目の前の怪異と同じくらいの背丈の子供達の泣く光景、泣きながら石を積んでいく子供達の姿。敬意は不明だが、それでも相手が子供である以上、賽の河原は避けること難しい。それでも今生きる者たちを守るために死強は鎌を握り直す。
「