私は初めて人を殺す。その人物が敬愛する恩師であったとしても……
これが私達の計画だから、それが兵士としての務めだから、この事がキヴォトスの未来を生み出す可能性があるから――
「「ナイン、駄目だ!それは私が…大人が背負わなくてならない責任だよ!生徒が背負ってはいけないのもなんだ!!」」
後ろで部下に拘束されているシャーレがそう叫ぶ。
でも――私は止まらない。
私はこの重圧を、責任を背負いたい。
シャーレが諭してくるだろうけど、誰にも渡さない。
これが、この責任が……マスターの形見なのだから。
私は全てを呑み込んで潰れるかもしれない。
でも、それでも前に進む。
人柱となった恩師であるマスターの為、キヴォトスの為に輝かしい人生を捨てた兵士の為、護るべきキヴォトスの民達の為。
キヴォトスに住む全ての者達よ。私が困難の先頭を突き進み、道を切り拓きます。だから、どうか付いてきて下さい。
そして私は祈ります。
この道が正解ではなくても、間違ってないという事を。
私は正面を見据える。そこには壁により掛かる一人の人物が居た。
左手はもがれて、右目や右足は銃弾で破壊され、腹部から血が溢れて生死を彷徨う…何処までも優しかったマスターの姿を……右手に持つ銃の銃口をマスターの頭に合わせる。するとマスターは私の動きに反応した。
既にマスターの瞳は閉じている。だが、ゆったりと頭を動かして私へ顔を向け、微笑を浮かべる。
その表情はまるで聖母のような何処までも優しさのあるマスターの素顔だった。恨みや怒りなんか一切存在しない、ただ相手を想いやる表情であった。
たとえ顔が血に染まっていたとしても、私にはそれが分かる。だがそれでも不思議と銃のトリガーは重く感じなかった。
これが以前マスターに教わった、―覚悟―というものかと私は深く理解した。
「さようなら、マスター。」
周りに聞こえないくらい小さく呟いた言葉を発した後、私はトリガーを引いた。
そして悲鳴のような甲高い銃声が二回響いた。
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この世界は
だがそれでは救われない者達もいた。
その者達を見て見ぬふりをする事は出来なかった。全員を救うことは出来なくても、最終的になるべく大勢の者を護る為、一時的に激痛が伴う方法であろうと責任を持って選択する者達が現れた。それが世界から見れば大罪だったとしても……
新たに現れた世界を一言で表すなら、
――
二種類の異なる世界が混ざりあってしまえば、生み出される色は一体何色の世界になるのだろうか。