透き通るような世界でも悪魔は泣く   作:エヴォルヴ

12 / 13
ビジネスってのは難しいよな


Chapter12 Negotiation

 柴関ラーメンでの便利屋68との邂逅を果たした今日。俺はアビドス高等学校の面々へ先に帰るように伝え、柴関ラーメンの店内にまだ残っている便利屋68と対面する。ちなみに大将に頼んで黒見も帰ってもらった。だから、今ここにいるのは俺と大将、そして便利屋68のメンバーのみだ。

 

「改めて自己紹介だ。俺はビアンコ。元移動式便利屋『Devil May Cry』の所属、現在は連邦捜査部シャーレの先生だ」

 

「『Devil May Cry』……?」

 

「悪魔も泣く、ね」

 

「ああ、そこは別に気にしなくていいぞ。今は先生だからな」

 

 広いテーブル席で、俺と向かい合う便利屋68の中で、状況を把握して一番警戒しているのは鬼方……次点で浅黄か。社長らしい陸八魔は状況を部分的に把握しているが、って感じで、伊草は……何だろうな? よく分からんが、ネガティブ思考と陸八魔の呼び方を考えると、スイッチが入ると何をしでかすか分からない怖さがある。

 

「んでもって、今はアビドス高等学校廃校対策委員会顧問でもある。ま、アビドスの協力者ってやつさ」

 

「………………アビドス?」

 

「ああ。お嬢さん達がさっきまで楽しく話をしてたのが、アビドス高等学校の生徒だぜ」

 

 俺がそう言うと、陸八魔が何とも言えない表情を浮かべてアビドス、という言葉を繰り返す。まるで、どこかで聞いたことがあるような単語を口にして思い出すかのような────

 

「ななな、なっ、何ですってぇえええええっ!!?」

 

「あはははっ、やっぱり気付いてなかったんだ。ウケる~」

 

 陸八魔の絶叫に対して浅黄は楽しそうに笑う。まさか陸八魔の反応が楽しみで情報伝達をしなかったのか? マジかよ。ゲヘナ学園ってのはこういう連中が多いのか? そうすると、火宮みたいなのはゲヘナ学園じゃマイノリティなやつなのか? 

 

「はぁ……本当に気付いてなかったんだね」

 

「……と、ということは、私達のターゲットってことですよね? わ、私が始末してきましょうか!?」

 

「あははは、遅い遅い。どうせ先生とのお話が終わったら攻撃仕掛けるんだし、その時暴れよ?」

 

 物騒だなおい。というか、陸八魔だけじゃなくて伊草もアビドス高等学校のことを知らなかったみたいだな。

 ……にしても、伊草は中々ドライな性格してんだな。さっきまで談笑してたってのに、躊躇いなく引き金を引ける……そういう性分なのか、そうなっちまったのかは、よく分からねぇが……危ういようにも感じるが、伊草の陸八魔への忠誠を考えれば、陸八魔が間違えなければ問題は起こらない……はず。はずだよな? 

 

 ところで陸八魔はいつまでショックを受けてんだ? 確かに楽しく話せた友人が実は敵だった、なんてことは悲しいことではあるが……

 

「嘘でしょう……あの子達がアビドスで、しかも私達の目の前にいる先生はアビドスの顧問……? 何という運命のいたずら……!?」

 

「情報収集とかしてなかったのか? 情報は武器だぞ?」

 

「そうだね。……先生に吐いてもらうってこともできるわけだけど……」

 

「おいおい、そういうのは口に出さずにやるもんだぜ?」

 

「冗談。ここ、先生の間合いでしょ? その義手も、SNSで見たよ」

 

「あの時のとは違うけどな」

 

 あの時使っていたデビルブレイカーは、先の黒見拉致未遂事件で最大出力を使ったせいでぶっ壊れた。今のこれは攻撃に使えるタイプのデビルブレイカーではないが……それを知っているのは守秘義務を守っているエンジニア部以外にはいない。つまり、鬼方はこの『Sweet Surrender』を『OVERTURE』のような攻撃的なものだと勘違いしているわけだ。これはブラフとして限りなく強い。

 

「さて、お喋りはこの辺にして交渉と行こうか」

 

「交渉、ね」

 

「ああ、交渉だ。お互いフェア……とまではいかねぇが、妥協点ってやつを探していこうじゃねぇの」

 

 便利屋68の面々が銃を構える様子はない。俺を撃った時、何が起こるのかが分からないというのが一番、俺という存在が何なのか計りかねているのが二番ってところか。目の前にいる何かが何なのか分からないから下手に動かないってのは、正解だろう。真っ先に引き金を引きそうな伊草は陸八魔と俺を交互に見ながらオロオロしているが……今のところ脅威ではないと考えていい。いざとなればアロナがバリアを張れるらしいから、それに頼る形になる。

 

「俺の要求はアビドス高等学校への攻撃取り止めだ」

 

「それは無理だね」

 

「ああ、だろうな? 無条件にやめてほしいって言ってるわけじゃねぇさ。取り止めてくれるんなら、かかった費用を全て俺が払う」

 

 交渉役は基本的に鬼方が行っているようで、他の三人は静かにこちらを見るのみに留まっている。

 俺が提示した条件と、依頼の内容と依頼主、そしてかかった費用などのあれこれを頭の中で計算していたのか、少しの間黙っていた鬼方は考えがまとまったように口を開く。

 

「確かに私達はお金さえもらえれば何でもやる……けど」

 

「信頼は金じゃ買えねぇ……か?」

 

「うん。依頼の失敗と裏切り、天秤にかけたら失敗の方がまだ軽い。雇い主を裏切ったら、他の人達は裏切られるかもしれないことを前提に物事を考える」

 

「金で裏切り、裏切られが多々ある傭兵ならまだしも、何でも屋として食っていくなら、信頼は金より重いか」

 

 なるほど、分からんでもない。理屈も理解できるものだ。裏切りを行うやつと、失敗はしたものの依頼をこなしてくれたやつでは印象が大分変わる。次も雇いたいと考えるのは断然後者だ。

 

「一応、こっちも仕事でやってる。中途半端なことはできないよ。そうでしょ、社長」

 

「うっ……」

 

 最終決定は陸八魔が担ってんだな。社長だから当然と言えば当然ではあるが……土壇場で輝くタイプの人間と見ていいのかね、陸八魔は。構成員が四人ではあるが、三人が何だかんだと付いていくのであれば、カリスマは持っていると見ていい。今のところ見栄っ張りな女の子ってイメージが固まりつつあるんだが……まだ時期尚早かね。

 

「そ、そうよ。便利屋68のモットーはお金さえもらえば何でもやること! 例えどんな内容であっても、必ず遂行するわ!」

 

 俺が陸八魔の評価を考えていると、陸八魔が少しだけ震えた声で言う。なるほど、腹を括った状況────逆境で輝くタイプの人間だったか。

 

「というか先生、本当に払えるの~? 私達結構高いよ?」

 

「Hmm……どれくらいかにはよるが、まぁ、300万くらいなら支払えるな」

 

「さっ────!!?」

 

「シャーレってのは結構激務でな。仕事を毎日ちゃんと消化してると金が貯まるわけだ」

 

 ほら、と言っていくつかに分散して貯金している通帳の一つを開いて見せる。そこに記載されている金額は1000万。こっちがメインで使っている通帳だから、ここから色々差し引かれたりするが……300万程度であれば支払える。というか仕事ばっかやってるせいで生徒に飯を奢るくらいでしか金を使えていないので、そのうち使わねぇと……とは思っているんだが……

 

「お~! 確かにこれなら納得だけど……先生休んでる?」

 

「睡眠時間を削るなんて愚行はしねぇよ。効率が落ちるからな。それで……支払い能力の有無は確認できたわけだし、俺の条件とお嬢さん達の目的……その妥協点ってやつを探すお時間だ」

 

「……裏切りなんてしないよ」

 

「ああ、もちろんそれは十分承知してる。便利屋68はアビドス高等学校を襲撃しなきゃいけない。俺はそれを止めたい。ここまではいいか?」

 

 四人が頷いたので、俺は俺が思う妥協点を述べる。

 

「俺が考える妥協点は、俺が費用を支払い、便利屋68は依頼を失敗したことにする……ってとこか?」

 

「先生、それは裏切りと同じじゃないかしら……?」

 

「いいや? お嬢さん達は確かにアビドス高等学校を襲撃したが、情報にない俺が仕掛けた罠によってやむを得ず撤退した────そういう筋書きなら、裏切りじゃねぇだろ?」

 

 屁理屈に近しい話ではあるが、この筋書きであれば、雇い主も文句は言えないだろう。だって、俺がアビドスにいる、ということを知らなかった────もしくは知っていて話していなかったのだから。文句を言ってきたのなら、手元にある情報をケチって雇った便利屋68を危険に晒したというレッテルが張り付くわけだ。もしそれを便利屋68が裏の住人達に情報として売れば、雇い主は自分の首を絞めることになる。

 

 持っている情報を渡さず捨て駒の様に扱うやつを、人は信用するだろうか? 信頼するだろうか? そんなやつの仕事を引き受けたいと思うだろうか? 俺だったら絶対に受けない。例えその依頼人が大企業や、どこかの重鎮であったとしても。

 

「……はっきり言って、汚いやり方だね。本当に先生?」

 

「生徒を……子供を守るためならヘドロにまみれてでも動くのが先生ってお仕事で、大人ってもんだろうが」

 

「先生ってそういうものなのでしょうか……?」

 

「俺はそう思ってる。そうありたいと思ってる」

 

 生徒を助けられるなら猛毒でも飲むぞ俺は。そもそも毒効かねぇし。教団でニコの父親に付き合って色々実験してたしな。あの頃の俺は大分荒れていたから、自分の体がどうなろうと構わねぇとか考えてたし。お陰様で人間が一口飲んだら即死するような劇毒も効かないのだ。これが悪魔の血によるものなのか、実験のお蔭なのかは分からないが。

 

「で、どうする? 俺の話に乗るか、乗らないか。俺はそっちの選択に委ねるぜ?」

 

「二つに一つってこと、知ってて言ってる?」

 

「え? カヨコ、どうして二つに一つなの?」

 

 鬼方が頭が痛そうに言った言葉に、陸八魔が問う。目の前のことしかまだ状況が追い付いていないのか、陸八魔は混乱しているようだ。

 

 そんな陸八魔を見かねて────いや、面白がっての方が正しいか? とにかく浅黄が陸八魔に声をかける。

 

「アルちゃん、シャーレってどこの所属?」

 

「へ? 連邦生徒会長が作った組織だし、独立してる……はずよね?」

 

「違うよ、社長。連邦生徒会の直轄の組織。……権限が強いSRT学園に近いかもね」

 

「他の学園からシャーレの部員として戦力を持ってくることができるからね~。先生がアビドスに味方するってことは、シャーレの部員もとい、他の学園との戦争が起こるかもってこと!」

 

「楽しそうに話すことでもねぇぞ、浅黄」

 

 楽しそうに話す浅黄に対し、陸八魔の狼狽の仕方がとんでもないことになっている。目が左右に凄まじい速度で揺れ動いているのを見ると、動揺で思考力が低下していると見ていい。腹を括れば輝くタイプの人間なのだろうが、その腹を括るタイミングは本当に逆境や土壇場の状況なのだろう。

 

「ま、だからカヨコちゃんは二つに一つって言ったわけだし、先生はそれを分かってるから私達に提案してるってことでしょ?」

 

「まぁ、シャーレの部員動員するつもりはねぇけど。早瀬含めて、あいつら案外重鎮らしいからな」

 

「早瀬って……ミレニアムのセミナー会計の早瀬ユウカ?」

 

「超大御所じゃん」

 

「ぁ、あぅ……ど、ご、ぉ……」

 

「Hey,深呼吸しろよ。チョコ食うか?」

 

「お、これ美味しいやつだ! も~らい!」

 

 陸八魔に渡そうとしたチョコレートは浅黄が持っていって────あ、陸八魔の口にチョコレートが捻じ込まれた。魂が抜けかけて、白目を剥いていた陸八魔はチョコレートを捻じ込まれたことで意識を取り戻したのか、土気色になった顔で俺を見た。

 

「先生、さっきの話、乗らせてもらいたいのだけれど、いいかしら?」

 

「オーケィ。とりあえず金を振り込む。口座どこだ?」

 

「あ、うち口座凍結されてるから、現金でお願い」

 

 ……大丈夫かよ、便利屋68。




ビアンコの操作

基本的にネロと同じだが、操作感がバージルに近い。ブルーキングのイクシードが攻撃では消えないが、カウントダウン制。戦闘開始時、ブルーキングから『COUNT DOWN』と音声が流れ、カウントダウンが始まり、最も威力が強いのはラスト五秒間。イクシードが切れたらもう一度付ける必要があるが、MAXアクトなどのネロと同じスキルがあるのでそれを活用することになる。火力は出るが上級者向けキャラ。バルログに近いかもしれない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。