艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」   作:黒瀬夜明 リベイク

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序章

亜熱帯圏の肌を焼くような陽光の(もと)、二十数隻分の航跡が眼下の海を彩っていた。その航跡を引く主が深海棲艦なのか、敵対生命体である艦娘の物なのかはすぐに判別がついた。航跡を引く艦娘艦隊の速度はせいぜい十四、五ノット*1だ。その程度の速力では航跡はさほど長く伸びない。

艦隊の陣容は巡洋艦と思われる艦娘が七隻、残りは全て駆逐艦の艦娘で固められており、艦隊中央の旗艦と思われる巡洋艦の艦娘を、残りの巡洋艦と駆逐艦の艦娘が囲っている。典型的な輪形陣だ。防衛対象を中央に配置し、他の艦娘が防衛対象の周囲を囲って守る陣形。特に航空機に威力を発揮する陣形だ。

その艦娘艦隊を眼下に望んでいるのは、深海棲艦の重爆撃機である「深海空要塞(重爆型)*2」の編隊だ。その数は四機、爆弾槽に無数の爆弾を抱え、刻一刻と眼下の艦娘艦隊へと向かっていく。

その内の一機、隊長機と思われる「深海空要塞Ace(重爆型)*3」が、獲物とする艦娘を決定したのか、後続していた三機の「深海空要塞」が「深海空要塞Ace」を先頭に縦一列にの陣形に展開した。艦娘がいる方向に進路と速度を合わせ、約七〇〇〇メートルの高度を維持して、眼下の艦娘艦隊、中央に位置する旗艦と目される艦娘に真一文字に向かって進んでいく。

これ以上高度を下げないのは、艦娘からの対空砲火を避けるためなのだろうと予測できるが、事ここに至り眼下の艦娘艦隊に発射炎は観測されていない。

高度七〇〇〇メートルともなれば、対空火器の射程外なのか。あるいは「深海空要塞」の水平爆撃など当たる筈もない、と余裕を見せ、挑発しているのか。そこの所だけは、まだ判然としなかった。

やがて、「深海空要塞Ace」が腹の下の爆弾槽を開いた。爆弾槽が開いたことで空気抵抗が大きくなり「深海空要塞Ace」を含めた他三機の速度が僅かに落ちた。しかし、そんな事など気にも留めていないかのように四機の「深海空要塞」は眼下の艦娘艦隊へ距離を詰めていく。そしていよいよ「深海空要塞」が爆弾槽に抱えた爆弾を投下しようとした、その瞬間だった。

輪形陣の右側。巡洋艦とおぼしき艦娘の元に赤い光が閃いた。

その僅か数秒後には別の艦娘の元にも赤い光が閃めき、直後に「深海空要塞Ace」の左下で爆発が起こった。爆発から生じた爆風で「深海空要塞Ace」が大きく煽られ、その僅か二秒後に、今度は右方向から横殴りの爆風が襲い掛かった。「深海空要塞Ace」は左に大きくよろめきながらも直進を続けていたが、やがてその爆風は後続していた二機目、三機目の「深海空要塞」にも襲い掛かった。

「深海空要塞」の編隊の周囲に更なる爆発が起こり「深海空要塞Ace」を激しい衝撃が襲う。

「深海空要塞Ace」だけではない。後続する三機の「深海空要塞」にも更なる爆発と衝撃が襲っていた。そして、何度目なのか、数え忘れる程の衝撃が襲い掛かった時、最後尾に位置していた四機目の「深海空要塞」が黒煙と炎を噴いて高度を落としていった。

直後に次の爆発が後ろ後方で炸裂し、蹴り上げるような衝撃が「深海空要塞Ace」を襲った。かと思えば、すぐさま次の爆発が至近距離で炸裂した。「深海空要塞Ace」の機体が乱気流に巻き込まれたように激しく揺れる。機体は激しくグラつき、爆風に煽られて右往左往する。

更に「深海空要塞Ace」は、右主翼の相当する箇所に被弾したのか高度があっという間に落ちていく。「深海空要塞Ace」は左旋回をかけて、艦娘艦隊の後方に回り、そのまま逃げ出そうとした。これ程の弾幕射撃に、爆撃のことなど忘れて遁走するような動きに見えた。

炸裂する敵弾が「深海空要塞Ace」から一旦は遠ざかったが、それもすぐに終わりを迎えた。

再び至近距離で爆発が起こったのだ。艦娘が装備する対空砲は、射程は長く、狙いも正確、その上更に動きも早いときた。

「深海空要塞Ace」は艦娘艦隊から更に遠ざかろうと更なる旋回をかけようとした。しかし、「深海空要塞Ace」の進行方向正面に先程から自分たちを襲っていた爆発と全く同じものが現れた。鋭い断片が「深海空要塞Ace」の制御に携わる箇所を激しく傷つけたのか、「深海空要塞Ace」は原形を留めたまま、真っ逆さまに海面に向かって落下していった。

後続していた残りの「深海空要塞」が、「深海空要塞Ace」の後を追って海上に墜落するのに、それ程時間は掛からず、気がつけばそこには亜熱帯圏の肌を焼くような陽光に照らされた、二十数隻の艦娘の姿しか残っていなかった。

 

*1
1ノットは時速1.852キロメートル

*2
以降、「深海空要塞」と表記

*3
以降、「深海空要塞Ace」と表記

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