艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」   作:黒瀬夜明 リベイク

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夜間砲戦

夜間砲戦の火蓋が切られてからしばらくした後、深海連合棲艦の旗艦である「標準型戦艦棲姫」は苛立ちを募らせていた。

砲戦に先んじて飛び立った偵察機からの報告では、艦娘側の艦隊陣容は戦艦二隻、巡洋艦八隻乃至九隻、駆逐艦二〇隻から二五隻だ。深海東洋艦隊の「四連装砲塔搭載型戦艦ル級」、「戦艦タ級」と合流し、深海連合艦隊は標準型戦艦棲姫を筆頭に、「近代化戦艦棲姫」、「戦艦棲姫」、「戦艦新棲姫」、そこに多数の「戦艦ル級」を合わせて、十二隻の戦艦部隊だ。そこに護衛として、イロハ級の巡洋艦が八隻、駆逐艦が二八隻が付いている。艦娘の弱小艦隊など、数回の斉射で一網打尽に粉砕できると思っていたのだ。

しかし、深海連合艦隊の戦艦部隊は、思うように命中弾を得られずにいた。標準型戦艦棲姫や戦艦棲姫、戦艦新棲姫、近代化戦艦棲姫、戦艦ル級の16inch三連装、同連装砲は元より、深海東洋艦隊の四連装砲塔搭載型戦艦ル級も、戦艦タ級も砲弾を無駄に海中へと投げ捨てているだけだった。このまま無駄に砲撃を続けては、いずれ弾切れを起こして艦娘どもを取り逃すことになる。

まして今いるこの海域、ハイナン島は、自分たちの聖域であるハワイ島から遠く離れている。真珠湾からマニラ湾へ移動する際に搭載していた砲弾を撃ち切ってしまえば、それで終わりなってしまう。

いっその事見逃してしまいか。

そんな考えが標準型戦艦棲姫の脳裏によぎる。日本という列島を拠点とする艦娘艦隊の主力と戦った方が早く決着がつくのではないのか?だが、彼女のプライドのようなものがそれを許さなかった。ましてや自分たちが、戦力の劣る艦娘どもに背を向けて逃げ出してはそこに付け込まれて、やられるがままに被害を受けてしまうかもしれない。

そこまで標準型戦艦棲姫が考えた所で、彼女たちの上空に月明かりを思わせる朧げな光が降り注ぎ、自分たち戦艦部隊の姿を闇夜に浮かび上がらせた。次の瞬間、ハイナン島の手前に多数の発射炎が閃いた。艦娘どもが反撃を開始したのだ。右六〇度方向には戦艦の艦娘の姿が見て取れた。発射炎の光で照らし出された艦娘のシルエットから、彼女は艦種を識別したのだ。

標準型戦艦棲姫は金切り声とも思えるような叫び声をあげて右手を大きく振った。それを合図にして、戦艦ル級を三隻ずつ割り振って部隊と、標準型戦艦棲姫と戦艦ル級二隻を割り振った二つの戦隊が、敵戦艦への砲撃を開始した。敵戦艦を確実に葬るのであれば、近代化戦艦棲姫や、戦艦棲姫、戦艦新棲姫の方が確実だろうが、標準型戦艦棲姫をはじめとした戦艦ル級五隻は戦艦部隊の前方に位置していた為、照準しやすい位置にいたのだ。少数を多数で叩き潰す。戦術の常とう手段で敵戦艦を破壊する、と標準型戦艦棲姫は決めたのだった。

自分たちが砲撃を始める前に艦娘の射弾が着弾し、標準型戦艦棲姫の右舷側と後ろの戦艦ル級に巨大な水柱を奔騰させる。どうやら敵戦艦は自分と、後方を進む戦艦ル級を狙ってきたようだ。

「コシャクダナ」

標準型戦艦棲姫の口からそんな言葉が零れると、彼女の主砲が火を噴き猛然とした砲声が響き渡る。標準型戦艦棲姫の砲撃に倣うように、後方から連続した砲声が鳴り響く。後続する戦艦ル級も各個に砲撃を開始したのだ。砲声の余韻が収まってしばらくしたが、前方に命中弾炸裂の閃光はない。今度の砲撃も全弾が虚しく海中へと消えていった。艦娘どもは島を背にして砲撃してきている。照準が困難だった。

艦娘側にも発射炎が閃く。しかし今回の砲撃も空振りに終わり標準型戦艦棲姫と後方の戦艦ル級の右舷側に水柱が奔騰する。すると、標準型戦艦棲姫が再び金切り声で叫んだ。

その金切り声を聞いた戦艦部隊全艦が、右に一斉回頭を始めた。艦娘の艦隊は今、ハイナン島の南東岸に沿って七五度の針路を取っている。対して深海連合艦隊の針路は二五五度。艦娘艦隊と、深海連合艦隊は反航戦の状態で戦っているのだ。

このまま戦い続けては艦娘どもを取り逃すことになる。

標準型戦艦棲姫はそのように考え、戦艦部隊の針路を七五度に定め、同航戦で艦娘の艦隊を叩き潰すことに決めたのだ。

「イッセキノコラズ、シズメテクレル」

標準型戦艦棲姫はそのように呟き、回頭が終わるのを待った。その間に、二個巡洋艦戦隊と一個水雷戦隊が艦娘艦隊の退路を塞ぐべく前進を開始していた。

 

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