艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」   作:黒瀬夜明 リベイク

21 / 35
四連装砲塔搭載戦艦ル級

青葉が射弾を撃ち込んでいたのは深海東洋艦隊の旗艦「四連装砲塔搭載戦艦ル級」だった。この時、四連装砲塔搭載戦艦ル級と後続する「戦艦タ級」は、「標準型戦艦棲姫」の命令に従い、他の戦艦と共に右一斉回頭を行っていた。

しかし、戦艦である彼女たちは舵が効き始めるまでに相応の時間が掛かる。そんな中で、四連装砲塔搭載戦艦ル級は艦娘からの砲撃を浴びたのだ。最初の内は空振りを繰り返していた艦娘の砲撃だったが、四連装砲塔搭載戦艦ル級が回頭を始めた頃から艦娘の砲撃が命中し始めたのだ。

命中時の衝撃から、彼女は艦娘が放っている砲弾は小口径の砲弾であると見抜いていた。艦影から巡洋艦に分類される艦娘なのだろうが、放ってくるのは専ら小口径砲弾だ。戦艦である彼女の装甲は、飛来する小口径砲弾を受けてもビクともしなかった。主砲である「深海14inch四連装砲」二基と「深海14inch連装砲」一基は言うに及ばず、主要防御区画(バイタルパート)は艦娘の小口径砲弾を弾き返していた。

しかし、それ以外の部分――機銃座や揚錨機などがけたたましい音を上げて粉砕されていく。

なんなんだ、あの艦娘は?

四連装砲塔搭載戦艦ル級は低く唸りながら、前方で小口径砲弾を雨あられのように撃ちまくってくる艦娘を見据えた。見た目は巡洋艦だが、撃ってくるのは小口径砲弾だ。そんな疑問が浮かんだが、それは一瞬にして消えさった。

その小口径砲弾を撃ち込んでくる艦娘に後方からもう一隻、同じような姿の艦娘が突入してきたのだ。その後方には無数の駆逐艦が続いている。艦娘の水雷戦隊だ。

直後、四連装砲塔搭載戦艦ル級は金切り声を上げた。その声を聞いた、彼女に後続する戦艦タ級は困惑の表情を一瞬浮かべた。四連装砲塔搭載戦艦ル級は戦艦タ級に、舵を戻し、現在の針路を維持するように指示を出したのだ。しかし、標準型戦艦棲姫――もとい、深海太平洋艦隊からの指示を無視した行動に戦艦タ級は困惑したのだ。

四連装砲塔搭載戦艦ル級が再び金切り声を上げる。その金切り声を聞いた戦艦タ級は四連装砲塔搭載戦艦ル級に続くようにすぐさま舵を戻した。先程の金切り声には、魚雷が来る。という言葉が含まれていたのだ。

深海棲艦戦艦部隊の数は十二。対する艦娘艦隊の戦艦は二。この戦力差を覆せる物は、魚雷をおいて他にない。それをくらってしまっては元も子もないのだ。四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦タ級は舵を中央に戻し、突入してきた艦娘たちに正面を向けた。二隻の巡洋艦の艦娘と十隻の駆逐艦の艦娘は、四連装砲塔搭載戦艦ル級の正面を左から右へと抜けていく。

直後、四連装砲塔搭載戦艦ル級の主砲が火を噴いた。十発の14inch砲弾が夜の大気を震わせながら、正面を横切っていく艦娘に降り注ぐ。

僅かに遅れて戦艦タ級の「深海15inch連装砲」も砲声を上げる。艦娘の水雷戦隊は、小口径砲を乱射しながら彼女たちの前を横切っていく。そんな中、四連装砲塔搭載戦艦ル級の砲弾が駆逐艦の艦娘。その隊列中央に落下した。

その瞬間、強烈なオレンジ色の閃光が走り、夜の海面をパッ!と明るく照らした。明かりはやがて炎となって海面を照らしたが、炎は一瞬の出来事のように消え去り、白い水蒸気へと変わった。十発放たれた14inch砲弾が、駆逐艦の艦娘に直撃し、轟沈させたのだ。艦娘側から「アカツキ!」という声が聞こえてきた気がしたが、彼女は気にする素振りも見せず二度目の砲撃に踏み切った。「深海14inch四連装砲」が猛然とした砲声と共に14inch砲弾を叩き出す。

しかし、二度目の砲撃は命中弾を得られなかった。海面に巨大な水柱が奔騰しただけだったが、前方を横切ろうとしていた最後尾の駆逐艦の艦娘が、勢いを失ったように失速し始めた。四連装砲塔搭載戦艦ル級の放った砲弾は、直撃こそしなかったものの、駆逐艦の艦娘の機関部を爆圧によって痛めつけ、落伍させたのだ。

艦娘側から「アラシオ!」と叫び声が上がったが、彼女は失速した艦娘に止めを刺そうと主砲を向けた。だがその時、四連装砲塔搭載戦艦ル級の耳に、泡を食ったような金切り声が届いた。

金切り声を発したのは、後続していた戦艦タ級だった。戦艦タ級があげた金切り声の意味を理解した瞬間、四連装砲塔搭載戦艦ル級は左後方を振り返った。そこには、こちらに接近してくる「戦艦新棲姫」の姿があった。

艦娘の雷撃を予想し、深海東洋艦隊だけで回避行動を取ったこと。そして深海太平洋艦隊への連絡を怠ったが仇となり、一斉回頭を続けていた深海太平洋艦隊戦艦部隊の最後尾にいた戦艦新棲姫が、四連装砲塔搭載戦艦ル級の横腹に向かってくる形となったのだ。

しくじった…

四連装砲塔搭載戦艦ル級の顔面は一瞬にして蒼白となった。慌てて取り舵を切り、衝突を避けようとするが、戦艦新棲姫は白波を立たせながら急速に近づいてくる。

四十メートル…三十メートル…四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦新棲姫との距離は、まるで引き合う磁石のように縮まっていく。そして四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦新棲姫との距離が十八メートルに迫った直後、四連装砲塔搭載戦艦ル級の舵がようやく効いたのか、戦艦新棲姫の姿が視界から消えた。

四連装砲塔搭載戦艦ル級は、ギリギリの所で戦艦新棲姫との衝突を回避したのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。