艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」 作:黒瀬夜明 リベイク
四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦新棲姫の衝突間際の光景を見ていた青葉たちは、敵艦隊に魚雷命中の水柱が上がらなかったことを確認した。
「外れた!?」
敵戦艦部隊との距離を詰め、一撃必殺の九三式酸素魚雷を放った六戦隊ではあったが、第六駆逐隊旗艦の「暁」が、四連装砲塔搭載戦艦ル級からの直撃弾を受け、声を上げる間もなく轟沈し、第八駆逐隊の最後尾を進んでいた「荒潮」は、巨弾が着弾した時の爆圧で機関が故障し落伍してしまった。青葉たちの放った魚雷は全て回避されたうえに、二人の艦娘が隊列から失われてしまったのだ。
「すまん。暁、荒潮…仇は取ってやるからな!」
長10センチ高角砲を撃ちまくりながら加古が唸り声をあげる。だが悪い事ばかりでもなかった。
魚雷を放ったことで深海棲艦戦艦部隊の隊列が大きく乱れ始めたのだ。四連装砲塔搭載戦艦ル級と衝突しそうになった新式の姫級の戦艦はその場で後進を掛け、その後方の戦艦棲姫、近代化戦艦棲姫も減速している。
惜しむらくは、魚雷の次発装填がまだ終わっていない事だ。
「青葉さんすみません!次発装填にはまだ時間が掛かります!」
「くそぉ、折角のチャンスなのにッ…」
野分が声を張り上げて、報告を上げる。乱れた隊列はいずれ立て直されてしまう。今が敵艦隊撃破の好機ではあるが、魚雷の再装填には非常に長い時間が掛かる。魚雷の次発装填装置を持つ陽炎型駆逐艦の艦娘である第四駆逐隊の四人と、その水雷課員の妖精たちは、次発装填装置を持たない駆逐艦の艦娘よりも早く魚雷の次発装填を行えるが、現在は戦闘の最中だ。深海棲艦を砲撃しながらの次発装填、再度の雷撃は、殆んど無理に近い。
青葉たちは尚も、手持ちの長10センチ高角砲と12.7センチ連装砲を奮い立て、深海棲艦戦艦部隊に砲撃を浴びせている。しかし、彼女たちの砲撃では戦艦の装甲を抜くことは出来ない。
「くそ!魚雷が外れたんじゃ、俺たちの力じゃどうにもならねぇぞ!」
12.7センチ連装砲を放ちながら、嵐が毒づいた。青葉は必死に頭を回転させ、次の行動を考えだそうとしていた。だが、魚雷がすぐに使えない以上、出てきた答えは至極単純だった。
(このまま撃ち続けて、あいつらを戦闘不能に追い込むしかない!)
青葉の右手に握られた艤装の長10センチ高角砲が咆哮する中、青葉がその事を生き残った六戦隊のメンバーに伝えようとした時、青葉の通信機にある命令電が飛び込んできた。
三水戦、突入セヨ
そして、艦隊内での短距離無線機から何度も聞いた台詞が発せられた。
待ちに待った夜戦だぁー!!
川内率いる第三水雷戦隊が、敵戦艦部隊に向けて突入を開始した瞬間だった。