艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」   作:黒瀬夜明 リベイク

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六戦隊、次発装填

金剛と榛名が敵戦艦に命中弾を得ていた頃、海南島から離脱を図る隊列の先頭では、巡洋艦、駆逐艦同士の熾烈な戦闘が繰り広げられていた。

「くそぉ、回り込まれた!」

青葉は長10センチ高角砲を撃ちながら唸った。というのも、深海棲艦の巡洋艦、駆逐艦の集団は、三十ノットの速力で、六戦隊の頭を抑えに来たのだ。

見張り員妖精からは「前方に巡洋艦六、駆逐艦十隻以上!敵進路三十度!」と報告が上がっている。南遣艦隊は海南島の南東岸沖を七五度の進路を取っているから、「イ」の字を裏返ししたような位置関係だ。

前方から進路を塞ぎにかかっている敵巡洋艦と駆逐艦の後方からは、深海東洋艦隊の四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦タ級が砲撃を浴びせてきている。

「まずいぞ青葉!」

加古も今六戦隊、もとい南遣艦隊が置かれている状況に危機感を覚えていた。金剛と榛名は最後方から追ってくる深海太平洋艦隊の戦艦部隊と撃ち合っているが、同様に深海太平洋艦隊の戦艦部隊も、金剛、榛名との砲戦に拘束されている。

だがそれでも、進路を塞がれた上で四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦タ級が迫ってきている。

「このままじゃ、袋叩きにあっちまうぞ!」

後方から聞こえてきたのは嵐の声だ。今のところ、四連装砲塔搭載戦艦ル級と戦艦タ級は南遣艦隊の巡洋艦部隊、鳥海や愛宕たちに砲を向けてきているが、彼女たちが倒れれば次は自分たちが、その巨弾に襲われることになる。青葉は長10センチ高角砲を連射しながら、ほんの一瞬だけ考えを巡らせた。そして青葉は野分に問いかけた。

「野分!魚雷の次発装填は!?」

「あともう少しです!」

間髪入れずに野分が返す。それを聞いた青葉は、覚悟を決めた様子で表情を引き締めた。

「青葉に考えがある!六戦隊全艦、我に続け!主砲、左砲戦。目標、敵駆逐艦!」

「左砲戦だと!?正気か青葉!」

青葉に言葉に加古が驚いて聞き返す。

それもその筈だ。現在の位置関係で、敵艦隊に左砲戦を挑むなら、敵駆逐艦と深海東洋艦隊の戦艦二隻の間に割り込むしかないのだ。敵弾の渦中に飛び込む、まさに自殺行為ともいえる動きだ。だが青葉は退かなかった。

「加古お願い!青葉を信じて!」

いつもはふざけがちの青葉だが、この時の彼女からはそんな様子は感じられない。まるで「歴戦の兵」とでも呼ぶべき風格さえ加古には感じていた。それ故に、加古も青葉を信じると決めた。

「分かった!敵中突破でもなんでも、やってやるよ!」

ありがとう加古。行くよみんな!」

青葉はそう言って面舵を切った。舵を切ってからしばらくの間、直進を続けた青葉はやがて右方向へと進路を変えた。青葉に続くように加古が面舵を切って後続し、八人の駆逐艦たちも続く。

「高角砲、左砲戦!目標、敵駆逐艦!交互撃ち方!」

青葉は直進に戻る直前に、右手の長10センチ高角砲を左舷側へと向けた。体自体も左側へ向け、左手で艤装の長10センチ高角砲を支える。

直後、青葉の左前方に多数の発射炎が閃いた。僅かな間をおいて、青葉の目の前に小さな爆発が起こり、冷たい海水の水滴が体を打つ。

(やっぱり食いついてきた!)

青葉たちが変針し、駆逐艦と四連装砲塔搭載戦艦ル級の間に割って入ったことで、敵駆逐艦が青葉に向けて砲門を開いたのだ。夜の闇で見えにくいが、眼前の海では駆逐イ級やロ級が海面から飛び跳ね、口部に格納された5インチ砲を撃ってきているだろう。

「幸運ですね!敵巡洋艦も戦艦も、愛宕さんや鳥海さんを狙ってるみたい!」

「今がチャンスってわけだねー!」

後続する四駆の萩風と舞風が、端的に現状を口にした。中、大型艦に狙われていなければ、それだけ自分たちはこの乱戦をモノに出来る。青葉は長10センチ高角砲の引き金に指をかけた。

「高角砲、撃ち方始め!」

青葉の掛け声と共に引き金が引かれ、長10センチ高角砲の一番砲が発射炎を閃かせた。

「砲撃を集中だ!いっけぇー!」

「やってやります!()ぇー!」

「それ、ワンツー!」

青葉に続くように四駆、六駆、八駆の艦娘たちが、次々に発砲する。青葉の二番砲が咆哮し、更に第三射、第四射、第五射と畳みかける。

すぐに直撃弾を得ることはできなかったが、青葉は第七射で命中弾を得た。直撃弾を受けた敵駆逐艦に閃光が走った瞬間、光は炎へと姿を変える。

ものの数秒で直撃弾を受けた敵駆逐艦は動きを止め、炎を消しながら波間に沈んでいく。

「命中!まだまだ行くぞ!」

「おっしゃ!俺のも命中だ!」

「萩風、やりました!命中確認です!」

加古、嵐、萩風に続くように、後続する駆逐艦の艦娘たちから、砲撃命中の報告が上がってくる。

青葉の砲撃が二隻目の敵駆逐艦を捉えた――と見るや、その敵駆逐艦はみるみる爆炎を上げて波間に消えていく。青葉に負けじと、加古や駆逐艦たちも主砲を奮い立たせ、更に四隻の敵駆逐艦が被弾炎上、沈没していく。そんな乱戦の渦中にあって、敵の矢面に立つ青葉と加古には未だ被弾がない。敵駆逐艦部隊も主砲を放ってくるが、まるで「弾がこちらを避けて飛んでいく」とでも言うかのようだ。

(もしかして青葉、武運に恵まれちゃってます?)

青葉は心の奥底でニヤケ面を見せた。先ほどの雷撃は失敗したが、今は敵戦艦部隊からの砲撃もなく、青葉が考えた通りに事が運んでいる。

もし違う未来があるのであれば、そこでも幸運に恵まれていそうな青葉だが、この時ばかりはそう思わずにはいられないだろう。

だが青葉の思考は、左方向に瞬いた複数の発射炎によって中断された。十秒ほど間を置いた時、敵弾の飛翔音が青葉の頭上から鳴り響いた。

目の前に水柱が奔騰し、飛翔音を発していた砲弾が、敵駆逐艦から放たれた砲弾ではないことを、青葉は即座に理解した。見張り員妖精が、声を荒げて報告する。

 

左四五度、敵巡洋艦接近!

 

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