艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―1「連合艦隊分断」 作:黒瀬夜明 リベイク
「壮観な眺めですねぇ!」
青葉と加古の姿は、
「うふふ!青葉ちゃん、写真は撮らなくてもいいのぉ?」
と、唐突に青葉は声を掛けられた。青葉は声をした方を振り向くと、艦隊の先頭に位置していた重巡洋艦の艦娘「愛宕」が、ふわふわした笑顔でこちらを向いていた。
「愛宕、入港直前なのだからよそ見しないで!」
そんな愛宕の真後ろに位置していた彼女の姉である「高雄」が注意をする。愛宕と高雄は二人で「第四戦隊」を編成している。青葉や他の重巡の艦娘たちの様に第二次改装は受けてはいないが、それでも彼女たちは「精鋭」と呼ばれる練度を誇っており、そんな愛宕は「第二艦隊」の旗艦でもあった。すると今度は青葉たちの背後から声が響いてきた。
「イエース!高雄の言うとーり、入港直前のよそ見はデンジャラスデース!愛宕ぉ、しっかり前は見ていないと、駄目ネー!」
声高な英語交じりの声は、金剛型戦艦一番艦の艦娘「金剛」*3のものだった。金剛は日本連合艦隊の最古参と言ってもよい戦艦だが、三五・六センチ連装砲、四基八門と三〇ノットの最高速度を誇っている。その後ろには、彼女の妹である金剛型戦艦三番艦の艦娘「榛名」が続いていた。
「金剛お姉さま!榛名は艦隊の集合写真を撮るというのは、良い案だと思います!後で皆さん一緒に、写真を撮りましょう!」
榛名の艤装に取りつけられている三五・六センチ連装砲の第一、第二砲塔には多くの白線が引かれている。青葉たち六戦隊のメンバーと同じ「改二乙」と呼ばれているこの改装は、対空戦闘を主眼に置いた改装となっている。以前は砲戦能力を主眼に置いた改装である「改二丙」だったが、青葉たち六戦隊の改装を受け荒川の指示で「改二乙」への改装が行われることになったのだ。
「そのプランは、ワタシも賛成デース!青葉ぁ、後で南遣艦隊の皆で記念撮影デース!」
「はい!青葉に任せちゃってください!」
「変な風に撮るのはやめてくれよなぁ」
「分かってる分かってる!青葉にお任せ!」
すると青葉はふと、あることを思い出した。
(古鷹とガサは、大丈夫かな?)
六戦隊の第二小隊を形成している古鷹と衣笠は、一航艦の随伴護衛として今頃は北の海の只中だろう。
二式大艇が消息を絶ったことで、一時は中止が危ぶまれていた真珠湾作戦ではあったが、霜月の十五日に再度行われた二式大艇による航空偵察によって真珠湾の艦隊泊地には依然有力な深海棲艦の艦隊が入泊していることが明らかとなった。その結果を受けて、一航艦は横須賀を出港し北海道択捉島の
(何で今になって、偵察が成功したんでしょう?何か不気味―――)
「どうした青葉?もうすぐあたしらの番だぞぉ?」
青葉の顔を突然加古が覗き込んできた。
「へ?うわあぁ!?」
目の前に現れた加古の顔に驚いて、両手を大きく振り回しながら後退る青葉。そんな青葉を見て、加古は不思議そうな視線を青葉に向けてくる。
「なに驚いてんだよ?あたしの顔になんか変なもんでもついてたのか?」
「あ、いや!そ、そんなことないよぉ!今回の集合写真は、艦隊新聞で使えるなぁー!って思ってっただけだから!あははは……」
加古は少し呆れた様子で、ふーん。と呟いていた。
「やだなぁ加古!別に変な記事になんかしないってばー!」
「…お前、信頼に足らない。って、言葉知ってるか?」
「ひっど!!」
そう言って加古は踵を返し、三亜港に向かって言った。その加古を追いかけ、青葉もまた三亜港へと入港していった。