遊戯王GXリマスター放送を待つ現代の決闘者&読者ならGXに未来のカード持ち込み系テンプレに耐えられると確信していますので、制限を緩和します。

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ゲスト出演系未来のカード使用GX世界召喚決闘者

 ――異世界よりカードを召喚する。そんなオカルト話を見つけたのは誰だったのだろうか。

 

 必要なものは数十枚のカードと、石灰の粉で描いた召喚陣。

 意外と手軽に集められるものばっかりだったから、暇つぶしがてらちょっと試してみようぜ、と軽い気持ちで手を出した。

 

 ダブっていたり必要のないカードを皆で集めて、アカデミアの備品であるライン引きをこっそりと持ってきて。

 何も無ければそれでよし。本当にカードを召喚できたらそれで最強の決闘者になれるかも、なんて冗談のように笑い飛ばして。

 ただの馬鹿騒ぎで終わらせるつもりだった。

 

 ……軽々しい気持ちで手を出したのが間違いだった。

 

 他の誰にもバレないようにと準備を整えた山の中。ライン引きで描いただけの、なんの変哲もないそれが禍々しく赤く光る。

 

 円の中から現れたのはフードを被った魔法使い。

 それが杖を振りかざすと、背後からモンスターが姿を現した。

 

 悪魔が、ドラゴンが、岩石が、戦士が、機械が、獣が。

 おぞましいモノたちがこちらを見て。

 炎が揺らめき、口を開き、動き出し、剣を向け、突進し、牙が迫り――。

 

「うわあああ!!」

 

「ごめんなさーい!」

 

「助けてくれえええ!!」

 

 ――許してくれ、許してくれ!

 ――あいつがやろうって言い出したんだ、俺は悪くない!

 ――ホンモノだなんてわからなかったんだ!

 

 眼鏡の奥の瞳は泣き叫びながら逃げていった男らを途中まで追っていたが、どうでもいいと視線をずらす。

 

「え、あの、ちょっとー!」

 

 視線の先にいるのは、魔法陣の中に突然呼び出された挙句取り残され、一体全体どういうことなのか何もわかっていない女性。

 

 ぐるぐると喉を鳴らす氷のドラゴンが寄るも……反応は無い。

 魔法使いだけでなく、彼女を見つめる恐ろしいモンスターの姿のすべてが、彼女には見えていない。

 

『……』

 

 巻き込まれてしまった彼女に対して申し訳なさそうにした後、モンスターは消えていった。

 

「すいませーん! あのー!」

 

 ――加恵(かえ)鈴奈(れいな)は困っていた。

 

 帰宅途中で突然の赤い光に目が眩んで、気が付いたら山の中にいた。

 何かを知っていそうな青年たちは上の方を見上げて顔色を青くした後、何かに怯えて逃げていった。

 声をかけたけど戻ってこない。彼らが見ていたものが気になって見上げてみたが何もない。

 

 …………とりあえず待ってみるが、やっぱり戻ってこない。聞こえてくるのは木の葉の擦れる音や動物の鳴き声ばっかりだ。

 

「……GXコスプレ合わせ? 最近コスプレイベントあったっけ……」

 

 見間違えていなければ、あれはデュエルアカデミアの制服だった。オベリスクブルーの青色の制服。

 どういうドッキリなんだこれは。芸能生活なんて縁のない一般人を拉致して誰が喜ぶのだろう。

 

 もしかして撮影用カメラがあるんじゃないか、と周囲をしっかり確認するうちに不思議なものに気づく。

 

「………………何コレ」

 

 円とその中を埋めるように伸びる複雑な模様。まるで魔法陣だ。

 そして、そんな円のど真ん中の部分に自分が立っている。

 ……まさに、召喚されました、なポジションに。

 つまり……そういうことなのだろうか?

 

「そういうこと、なのかなあ」

 

 ふんわりとした理解だが、恐らく正解だろう。遊戯王GXは学園ものだが遊戯王らしくオカルトな事件が起きることもあった。

 

 魔法陣の中には自分だけでなく、少し汚れ気味な遊戯王カードが散らばっている。

 地べたに放り出されっぱなしは良くない。彼らの忘れ物なのか散らばっていたカードを集めて、集めて……異常に気づく。

 

「これは……」

 

 そういえばこんなカードもあったなあ、なGXを感じさせるカードの中にあり得ないものがあった。

 混ざっていたのは【召喚獣】に属するカード。

 

 【召喚獣】は使ったことがある。

 

 マスターデュエルで使ってた【召喚獣】はランクマ用に【ディアベルスター】とか【アザミナ】とか【クシャトリラ】とか使いやすい強めのカードを入れてたり、調べてて面白そうだった【サンダー・ドラゴン】に【ミュートリア】に【ネメシス】など除外を利用するカード群と混ぜたデッキだったり……複数持っていた。

 

 でも、ここにあるカードはそれらとは全然違う。本当に【召喚獣】関係だけしかない。

 

 エクストラデッキは15枚に満たず、しかも融合モンスターしかいない。

 まあ【召喚獣】と呼べるけども……このデッキで対人戦するのは無謀じゃない……? と反応に困るカード群だ。

 

「イリアステル仕事しろ」

 

 思わず呟く。だって、本当にここが遊戯王GXの世界だったら【召喚獣】なんてあったらいけないカードだ。れきしまもってやくめでしょ。

 

「……よし」

 

 ずっとここにいても何も変わらない。なら、いつまで経っても帰ってこないアカデミア生が逃げた方向へ進んだらなにか見つかるかもしれない。人里とか。

 そんな希望を抱いて道なき道を行く。

 

「うう、異世界のモンスターが暴れ出してる、なんて信じられない夢を見た話をした僕が言うのもなんなんですけど……本当なんですかねアニキ……?」

 

 ぽてぽて歩き出して数分、二人分の男性の声が聞こえてきた。

 

「ハネクリボーが騒いでたから多分本当だと思うんだけどな……あっ、翔! 誰かいるぞ!」

 

 テレビで聞きなれた声がする。

 駆け寄ってくる赤い制服。明るい茶色の髪。

 

 ――間違いなく、彼は遊城十代だった。

 

「すみませーん。俺たち、さっきここであった騒ぎについて調べてて」

 

「あれ、この人、学生じゃない……?」

 

 目が合う。互いに認識している。ごく自然な呼吸や瞬き。

 ふわふわとした理解が突然の重みを伴って現実に変化する。

 

 ……こんな時は何を言えばいいのだろう。

 

「お、おはようございます……?」

 

「あ、はい、おはようございます……?」

 

 混乱気味と、お疲れ気味な頭が弾き出した答えは正解だったのだろうか。判断できる第三者はいない。

 くうきゅるきゅる、とお腹のなる音が空気をぶち壊した。

 

 

 

「――えー、たぶん異世界から来ちゃった決闘者? です。よろしくお願いします」

 

 朝ごはんの時間からはズレているため、寮食の残り物なご飯とお味噌汁とお漬物をいただいた。全身にやさしさとおいしさが染み渡る。

 

 あの後、十代と翔にとりあえず落ち着ける場所へとオシリスレッドに案内され、ご飯をいただいている途中に隼人と万丈目のオシリスレッドのいつもの面々が集合。

 錬金術担任の大徳寺が大人として子供だけに任せるわけにはいかないにゃあ、と後方で見守っている。

 

「異世界の決闘者かぁ。なあなあ! デュエルしてくれよデュエル!」

 

「異世界のカード、ちょっと見てみたいんだな……」

 

 デュエル馬鹿とカードデザイナー、興味の方向性は少し違う二人だが、求めるものはデュエルと一致する。

 

「いいけど、自分のデッキじゃないからどこまで使いこなせるのかわかんないよ?」

 

「え、自分のじゃないって……盗まれたんすか!?」

 

「んー、誰かの忘れ物?」

 

「何故そこで疑問符が出る……」

 

 慌てる翔への返答に万丈目は呆れる。

 

「いや、あながち間違ってはいないと思うぞ」

 

「あれ、三沢!? どうしてここに」

 

 オシリスレッドの面々が騒いでいる中へ、なぜかラーイエロー主席である三沢大地が合流する。

 その手には古ぼけた一枚の紙が握られていた。

 

「オベリスクブルーの生徒がひどく錯乱した状態で走っていたから、保健室へ連れていくついでに話を聞いてな……そうしたら」

 

 これを見てくれ、とテーブルの上に置く。

 

「んん? これ、なんか見たことあるような……」

 

 図形、模様。その中にある複数の長方形。

 ……それを見て、普段は笑みで固められていた大徳寺の目がうっすらと開いたのに気付くものはいなかった。

 

「貴方が見覚えがあると言ったのは異世界からカードを召喚する方法、なんて眉唾な方法に必要な魔法陣だ。恐らく、彼らはこの儀式を取り行ったんだろう。そして、成功してしまった……」

 

「あれ? じゃあ僕が見た異世界のモンスターが暴れだす、って見た予知夢は」

 

「うーん、俺はどんな状況でそれを見たのかわからんから断言できないが……あり得そうなのだと、二度寝してる時に彼らの叫び声を聞いて勘違いした、んじゃないか?」

 

「そうかもしれないっす」

 

「でもなぁ……」

 

 ホッとする翔と、誰もいない場所に視線を向けつつまだ納得ができていない十代。

 

「待て。予知夢だかなんだかよくわからんのが嘘だとしても、コイツはその召喚で本当に来てしまったんだろう? どうするつもりだ」

 

 万丈目が冷静に問題点を指摘する。

 

「確かに問題はそこだ。カードを召喚する、であって異世界人が出てくるのはおかしいはずなんだ。プログラムに異常が混ざって、出力されないはずの結果を出してしまった……となると、儀式を完了させる手順が変わっているかもしれない」

 

 始まりが冗談で始めたオカルトだとしても彼女にとっては関係ない。

 異世界から召喚、なんて言えばファンタジーで物語の主人公みたく見えるが、彼女視点だとある日突然知らない場所へ誘拐された被害者だ。一刻も早く日常に帰さなければならない。

 

「だとしても、やってみたいです」

 

 家に帰りたい。それは誰だって持つ感情。

 こくり、と頷いた三沢はぼろぼろのページの最後あたりを指さす。

 

「劣化のせいで破損して読みにくいが、『役目を終えた後に帰る』……とある」

 

「えーと、つまり、」

 

「デュエルをしたら帰れるかもしれないんだな……?」

 

 その結論に至った瞬間、がしっ、と十代に腕を掴まれる。

 

「じゃあ今からしようぜ!」

 

「えっうん、はい?」

 

 狡いぞ十代! と万丈目に怒りをぶつけられるも十代は気にしていない。最初に約束したの俺だから早い者勝ちー、とカウンターを決めて悔しがらせている。

 

 話し合った結果、オシリスレッド寮の前、開けた場所でデュエルをすることになった。

 現代日本からやってきた彼女にデュエルディスクなんてものはない。大徳寺から貸してもらい腕に装着し、思ったより軽いなあなんて感想を抱く。

 

 シャッフルをした後、知らないデッキを装着。

 まさか主人公とデュエルすることになるなんて……と緊張しているが、もしかしたら勝てるかも、なんて期待も同じだけある。

 カードパワーが上な未来のカードが使える、そのアドバンテージが活かせるのなら。ぎゅ、と知らず知らずのうちに手に力が入る。

 

「「デュエル!!」」

 

 大きな声で宣言。彼女の腕のデュエルディスクがぴかぴかと光った。

 

「私の先攻、でいいのかな。私のターン……えっと、あれ」

 

 カードを置いてみるがデュエルディスクの反応がない。故障を疑い、どうしたらいいのか視線で問いかける。

 

「最初のドロー忘れてますよー!」

 

「……あ、ああ、そうだっけ?」

 

 先攻ドロー可能ルールだったんだ、そっか、と呟く。

 

「異世界って先攻のドローがないんだな」

 

 初めてのデュエルディスクで操作がおぼつかない中、へー、と年下の皆が不思議そうに見てくる。

 ……やめてください恥ずかしい。

 

「えと、それじゃ改めて、ドロー。モンスターをセットして、ターンエンド」

 

 でっかい音と、でっかいソリッドビジョンにびっくりしながらデュエルを進める。そんな反応を見て異世界人ってのは本当なんだなあ、と観客になった皆は改めて認識する。

 

「じゃあ行くぜ、俺のターン、ドロー! E・HERO(エレメンタルヒーロー) バーストレディを召喚!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) バーストレディ》

星3/攻1200

 

 手慣れた様子でカードから召喚されたのは炎を操るに相応しい、赤い女性ヒーロー。

 

「バーストレディでセットモンスターに攻撃だ! バースト・ファイヤー!」

 

 両手から炎を出し、投げつけるようにして伏せられたカードへと攻撃。戦闘破壊されるエフェクトが出たことから、守備力は1200より少ないことが確定したモンスターの正体が明らかになる。

 

「戦闘破壊された仮面竜(マスクド・ドラゴン)の効果で、デッキから2体目の仮面竜(マスクド・ドラゴン)を守備表示で特殊召喚」

 

仮面竜(マスクド・ドラゴン)

星3/守1100

 

 彼女の説明通りに、先ほど戦闘破壊されたドラゴンと同じドラゴンがデッキから飛び出す。

 

「デッキの圧縮だな。よくある戦術だ」

 

 壁モンスターを出しつつ、引きたいカードが引ける確率を上げる。壁モンスターはそのまま残してもいいし、アドバンス召喚の生贄にしてもいい。

 ドラゴン族をよく使っている万丈目としては見慣れたものだ。テンプレートな動きにうんうんと頷く。

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 ここまでは見たことのあるカードだ。観戦する皆はいつ異世界のカードが使われるのかと期待している。

 

「私のターン、ドロー。……使えるのかな」

 

 互いの墓地に何もない状態で出しても旨みが少ないため最初のターンに出さなかった手札の効果モンスターをじっと見る。

 デュエルディスクが存在しないカードをきちんと認識できるのか、不安はあるが、やってみるしかない。

 

「ええいどうにでもなれ! 召喚師アレイスターを召喚!」

 

《召喚師アレイスター》

星4/攻1000

 

 フードを被って眼鏡をかけた魔法使いが目の前に現れる。見えるのはカードイラストでは見たことのない背中ばっかりで、表情はわからない。

 

「わあ、本当に使えちゃった……あ、通常召喚したアレイスターの効果でデッキから召喚魔術を手札に加えます」

 

 アレイスターの持つ杖が青く光り、デッキから1枚の魔法カードを呼ぶ。

 

「召喚魔術を発動。この魔法カードは『召喚獣』融合モンスターを融合召喚する場合、自分フィールド及び墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。――私はフィールドの召喚師アレイスターと墓地の炎属性の仮面竜(マスクド・ドラゴン)を除外し、召喚獣プルガトリオを融合召喚!」

 

《召喚獣プルガトリオ》

星7/攻2300

 

 骨のような仮面を被った単眼の巨体な悪魔、人間の姿に似ているが手足と頭部が異形となった悪魔、丸いフォルムの不気味さと愛らしさを兼ね備えた悪魔。

 姿の異なる3体の炎の悪魔らが降臨する。

 

「墓地も使える融合魔法!?」

 

「特定のモンスターと属性の指定だけ……色んなデッキで使えそうな融合モンスターだな」

 

 ミラクル・フュージョンを使う男が墓地融合程度で驚くな、と茶々を入れるものはいない。なぜなら、ミラクル・フュージョンはモンスターを召喚して簡単に持って来れるようなカードではないからだ。

 

「プルガトリオの効果。攻撃力は相手フィールドのカードの数かける200アップします」

 

 その説明を聞き、十代は思わず自身のフィールドを確認する。

 

「俺のフィールドにはバーストレディと伏せカード2枚の合計3枚……」

 

「よって、プルガトリオの攻撃力は600上がって2900に」

 

《召喚獣プルガトリオ》

攻2300→2900

 

「墓地の召喚魔術の効果を、除外されているアレイスターを対象に発動。このカードをデッキに戻し、アレイスターを手札に」

 

 アレイスターの召喚から融合の流れの中で彼女は慣れた様子でさらりと発言したが、彼らにとっては無視できない発言だった。

 

「待て、何と言った!?」

 

「聞き間違えてなければ、モンスターを手札に戻して、融合の魔法をデッキに……って聞こえたんだな」

 

「ということは、また次のターンになればさっきと同じように融合召喚ができる!」

 

「つまり……毎ターンあんなモンスターが出てくるってことっすか!?」

 

 墓地のカードはじわじわと減っていくが、墓地さえあれば強力な融合モンスターをずっと出し続けられる。

 

「これが異世界のカード……!」

 

 十代は冷や汗を流す。

 

仮面竜(マスクド・ドラゴン)を攻撃表示に変更。……プルガトリオは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃でき、貫通効果も持っています」

 

仮面竜(マスクド・ドラゴン)

守1100→攻1400

 

 表示形式の変更と告げられる効果は、いまから攻勢に転じる意思表示だ。

 

「来るぞ十代!」

 

 外から聞こえる警告。迫る攻撃に耐えるべく、重心を低くし体に力を入れる。

 

「バトルフェイズに入ります! プルガトリオでバーストレディに攻撃!」

 

 ゲラゲラ笑いながら、悪魔は好き勝手暴れだす。バーストレディは悪魔の好きにさせるものかと必死に応戦していたが、攻撃力の差と数の差は覆せない。

 ヒーローの赤い炎を悪魔の青い炎が上回った。

 

「うわああっ!」

 

十代

LP4000→2300

 

「相手のカードが減ったことでプルガトリオの攻撃力は200ダウン」

 

《召喚獣プルガトリオ》

攻2900→2700

 

「まだだ! 戦闘破壊された時、罠カード、ヒーロー・シグナル発動! デッキからE・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマンを特殊召喚!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマン》

星7/攻2600

 

 バーストレディが残したサインに導かれ現れたのはギラギラと全身を鈍く光らせた、メタリックなヒーロー。

 

「ん、あれ?」

 

 出てきたヒーローの姿を見て彼女は首を傾げる。

 記憶が正しければ、ヒーロー・シグナルで呼べるのはレベル4までじゃなかったっけ。……あ、もしかしてアニメ効果!

 だとしても、まだプルガトリオはエッジマンの攻撃力を上回っている。

 

「じゃあ、プルガトリオでエッジマンに攻撃!」

 

「罠発動、ヒーローバリア! その攻撃を無効にする!」

 

 伏せカードが使われてプルガトリオの攻撃は止まり、さらにカードが減ったので攻撃力は2700から2500にダウン。エッジマンの攻撃力を下回ってしまった。

 

「……カードを1枚セットして、ターンエンド、です」

 

 一斉攻撃で一気にライフポイントを削ろうとしたのだが欲張りすぎた。もっと慎重にいったほうが良かったかもしれない。

 

 でも、この世界にないカードだけどちゃんと召喚できて、融合召喚もできた。これなら戦える。

 ずるっこみたいなもんだけどこれしかデッキがないんだから仕方がない、主人公に勝ってサティスファクションして帰るんだ! と拳に気合を入れる。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「えーいここで使っちゃう! 罠カード、成功確率0%発動! 相手の融合デッキから融合モンスター2体をランダムに墓地に送る!」

 

「えっ」

 

 罠による奇襲。十代の融合モンスターのうち、フレイム・ウィングマンとサンダー・ジャイアントが墓地に送られていく。

 

「て、ああっ!?」

 

「よし! よしよしよし良い落ち方よしよし!」

 

 ぎゅっ、とガッツポーズ。出されると困るモンスターと、出てきたらフレイムシュートで丸焦げにされて負けそうなモンスターを削れたのは大きい。

 それに……光属性が墓地にいったのがすごく嬉しい。召喚獣相手に光属性を残すのは命取りだ。ここを凌げばぐっと勝利は近くなる。

 

「手札から魔法カード融合を発動! フィールドのエッジマンと手札のワイルドマンを融合する! 現れろ、E・HERO(エレメンタルヒーロー) ワイルドジャギーマン!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) ワイルドジャギーマン》

星8/攻2600

 

 融合召喚されたのは左腕に装着したノコギリ状の刃が特徴的な筋肉質のヒーロー。

 

「そっちが全体攻撃ならこっちもだ! ワイルドジャギーマンも全体攻撃が可能! 仮面竜(マスクド・ドラゴン)に攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー!」

 

「うわーーーーっ!?」

 

鈴奈

LP4000→2800

 

 戦闘ダメージと共に発生する爆風で吹っ飛ばされそうになったが何とか踏ん張り、戦闘破壊されたドラゴンの効果を使用する。

 

「戦闘破壊された仮面竜(マスクド・ドラゴン)の効果でデッキから3体目の仮面竜(マスクド・ドラゴン)を特殊召喚! 守備表示!」

 

「いくらモンスターを増やしてもワイルドジャギーマンの敵じゃないぜ! 仮面竜(マスクド・ドラゴン)に攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー、二撃目!」

 

 特殊召喚されたドラゴンが再び戦闘破壊されていく。

 仮面竜(マスクド・ドラゴン)の効果にターン1の制限は特にない。なのに、効果を使わない。

 

「ドラゴン族を特殊召喚はしないんだな?」

 

「……もしや、デッキに特殊召喚できるモンスターがもういない、とか。採用理由はデッキ圧縮のためだけに、ですかにゃ?」

 

「………………」

 

 皆が疑問を抱くも、三沢だけはただじっと見つめていた。

 

「ワイルドジャギーマンでプルガトリオに攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー、三撃目!」

 

鈴奈

LP2800→2700

 

「プルガトリオ撃破! カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 プルガトリオの戦闘破壊と同時によっしゃどんなもんだ、とガッツポーズ。

 

 …………手札からポイしてパワーアップなアレイスターの効果を使えばワイルドジャギーマンを返り討ちにできたけどね、うん。

 主人公を相手に2枚目のアレイスターを素引きできるドロー運は多分ないんだ。自分のターンで召喚獣を出すためにもアレイスターはずっと手札にキープしておきたくて……ごめんねプルガトリオ。仇はとります。

 

「私のターン、ドロー。アレイスターを召喚してデッキから召喚魔術を手札に。――召喚魔術発動! フィールドのアレイスターと相手の墓地の光属性モンスター、サンダー・ジャイアントを除外して、召喚獣メルカバーを融合召喚!」

 

《召喚獣メルカバー》

星9/攻2500

 

 新たな召喚獣は白銀の戦車を操る機械。

 

「ええっ! 俺の墓地も使えるのか!?」

 

 デュエルディスクに除外ゾーンは搭載されていない。よって、召喚魔術で除外されたカードを十代はゲームから取り除くべく慌てて墓地からポッケに突っ込む。

 

「墓地の召喚魔術の効果で除外されているアレイスターを手札に、召喚魔術をデッキに。ライフポイントを800払って装備魔法、再融合を墓地のプルガトリオを対象に発動。再融合を装備してプルガトリオ復活!」

 

鈴奈

LP2700→1900

 

《召喚獣プルガトリオ》

星7/攻2300→2900

 

 相手のフィールドにカードは3枚あるため、炎の悪魔の攻撃力は2900に到達。ワイルドジャギーマンの攻撃力を超え、リベンジを果たす機会がやってきた。

 

「バトルフェイズ! プルガトリオでワイルドジャギーマンに攻撃!」

 

「速攻魔法、融合解除を発動! 対象はプルガトリオだ!」

 

 十代が伏せていた2枚のカードのうち1枚が使われる。

 

「召喚魔術は除外して行う融合召喚だ。だから分解しても融合素材はフィールドに帰ってこない弱点がある!」

 

 メルカバーの攻撃力は2500。ワイルドジャギーマンを超えていない。プルガトリオさえ何とかできればこのターンは耐えられる。

 

「上手い! これなら凌げ――」

 

「チェーンして手札から速攻魔法、法の聖典を発動! プルガトリオをリリースし、リリースしたモンスターとは元々の属性が異なる『召喚獣』モンスター1体を融合召喚扱いとして特殊召喚する――来て、召喚獣メガラニカ!」

 

《召喚獣メガラニカ》

星8/攻3000

 

 アレイスターが持つ書物のみがフィールドに現れ、一人でにめくれていく。

 書物から発せられた光に包まれて炎の悪魔は消え、召喚獣がいた場所には岩石の巨人が現れた。

 

 融合解除の対象になっていたのは召喚獣プルガトリオ。それがいなくなってしまい、融合解除は効果を発揮することなく終わってしまった。

 

「そんなっ……除去を回避しながら攻撃力3000を!?」

 

 突然現れた見上げるほどの大きさのモンスターにうろたえる。

 

「その代わり効果を持たないんだけどね……じゃあ改めて、メガラニカでワイルドジャギーマンへ攻撃!」

 

 フィールドを駆け巡る身のこなし軽やかな戦士であったが、大上段からの巨拳の振り下ろしによりぺしゃんこにされた。衝撃でずずん、と大地が揺れる。

 

十代

LP2300→1900

 

「メルカバーでダイレクトアタック!」

 

 ガラ空きのフィールドへ駆け抜ける白銀の戦車。

 

「クリボーを呼ぶ笛発動! 効果でデッキからハネクリボーを特殊召喚するぜ!」

 

《ハネクリボー》

星1/守200

 

 その道行を妨げるのはクリクリと可愛らしく鳴く精霊。

 

「なら、メルカバーでハネクリボーに攻撃。これで私はターンエンド」

 

 メルカバー、ためらうことなくひき逃げアタック。可愛い小さな精霊はクリ〜ッと吹っ飛ばされていった。

 

「俺のターン、」

 

「――メルカバーは1ターンに1度、モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、その効果と同じ種類のカード1枚を手札から墓地へ送り発動を無効にし除外する効果がある」

 

 ドロー途中に挟まる効果の説明により、十代の手が止まる。

 

「十代くんの手札は0。何をドローするか、そこでこのデュエルの勝敗は決まる」

 

「……ッ。そうか。ここが運命の分かれ道、ってわけか!」

 

 果たして無効にされるか否か。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 緊張の中使われたそのカードは。

 

「魔法カード、強欲な壺!」

 

「あっ」

 

 彼女は動くそぶりを見せないどころか驚いた――つまり、このドロー効果は通る。

 

「効果で、デッキから2枚ドローする!」

 

 2枚のドローカードを確認した十代はニヤリと笑った。

 

「――ミラクル・フュージョン発動!」

 

「ここでミラクル・フュージョン……?」

 

 何を出すつもりなんだろう、墓地のモンスターで出せる融合モンスターは……。

 

「あ、ああーっ!」

 

 十代は手札があと1枚あって、墓地にはフレイム・ウィングマンがいる。……これはまずい。利用されてしまった!

 

「手札のスパークマンと墓地のフレイム・ウィングマンを除外して融合召喚! 来い! E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フレア・ウィングマン!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フレア・ウィングマン》

星8/攻2500

 

 それは太陽のような輝きを宿す奇跡のヒーロー。近未来的な曲線の装甲に身を包み、金属翼を広げてフィールドに降り立つ。

 フィールドにたった一人のみ、かつ攻撃力はメルカバーと互角。しかし、彼は一人で戦っているわけでは無い。墓地に眠る同士達の声を受け、その力は増していく。

 

「シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃力は墓地の『E・HERO』カードの数×300アップする!」

 

 十代の墓地にはバーストレディ、エッジマン、ワイルドマン、ワイルドジャギーマン。

 

「よって攻撃力は1200アップし――3700になる!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フレア・ウィングマン》

攻2500→3700

 

「あ、ああーっ……足りちゃってる……!」

 

 手札のアレイスターの効果を使っても、メルカバーの攻撃力は最大3500。

 ……彼女の手札ではもう突破できない。

 

「メルカバーは無効化効果を持っているんだったな。なら、何で使わなかったんだろうな……」

 

「手札に魔法カードが無いからだろう。魔法を無効にするには魔法カードが手札になければならない。……おい三沢、お前、何か知っていてわざと伝えていないな?」

 

 観戦中に異様に口数が少なかった優等生へ万丈目が問う。

 

「……あの儀式に必要なものとして、不必要なカード、とあった。異世界から来たカードは一部で儀式に使われたカードをまとめてデッキにしているのならば……彼女が使っているデッキは本当にカードの寄せ集めでしかない」

 

「え、でも、融合モンスターを何体も使って」

 

「それは召喚獣のインパクトが強いから圧倒しているように見えただけだ。振り返ってみろ、展開が召喚師アレイスターに依存しすぎている。……あのデッキ、実際は酷い構築になっているはず。魔法カードの数も、きっとごくごく僅かだ」

 

 ただ、と前置きをして。

 

「同じ2枚のドローでも、もしバブルマンの効果によるものだったならば……きっと、メルカバーによって止められて、十代は負けていた」

 

「あの人の使うカードも強かったけど――あそこで強欲な壺を引ける、ドローの凄さも十代のアニキの強さの一つっす!」

 

 翔のその言葉に、皆無言で賛同する。

 異世界のカードとのデュエルは終わりを迎えようとしていた。

 

「シャイニング・フレア・ウィングマンで召喚獣メルカバーに攻撃! シャイニング・シュート!」

 

「メルカバー!」

 

 光と光がぶつかり、弾け、機械が地に伏す。

 がらがらと崩れていくモンスターの体は光の粒子となり、まとまり、彼女へと向かっていく。

 

「戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送ったため、シャイニング・フレア・ウィングマンの効果発動!」

 

 ――どうして、アカデミア入学試験スタートじゃなくてゲストキャラ的異世界召喚スタートなんだろう、とか。

 

「そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 ――どうして、知らない人のデッキでデュエルしてるんだろう、とか。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

 

 ――他にもいろいろツッコミどころはたくさんあったけど。

 

 ……でもさ。うん。

 生ガッチャ聞いて元いたところに帰れるなら、もうその辺はいっか! 対戦ありがとうございました!

 

 

 

 ………………そう、思っていたんだけども。

 

「…………えー」

 

「…………」

 

「帰れないんですけど」

 

 とても、きまずい。

 これでさよならだね……な空気になってたのに。おかしいな。

 

「なんで成功しなかったんだ……?」

 

「いや待て、まさか、そういうことか!?」

 

 思い当たる部分があるのか、三沢は慌てて異世界からカードを召喚する儀式について書かれた紙を確認する。

 

「もしや、この儀式の欠けた部分にある条件も満たさないといけない……?」

 

 失われたそれを取り戻さなければ家には帰れない。

 手がかりは古い紙一枚だけ、ほとんど無いも同然。

 ……無茶振りな修復ができて、オカルトにも対応できて。そんな都合のいいお願いが叶うとするならば。

 

「錬金術師ア――大徳寺さん……っ!」

 

「なッ!? にゃにゃ!? いや私は授業として錬金術を教えているからといって魔法みたいな錬金術が使えるわけではないんだがにゃ!?」

 

 縋りつかれるも、錬金術だとしても古文書とかの修復作業は流石に無理! と首を横に振る。

 

「修復できるまでの間、住み込みの仕事とか……ありませんかっ……!」

 

 絞り出すような、苦しむような声での懇願。大徳寺――いいや、錬金術師アムナエルは非常に困っていた。

 あれほどのデュエルができる人なら、デュエルアカデミアの仕事もこなせるだろうがちょっと待ってほしい。

 

 錬金術師ア……、と言いかけていたが、当てずっぽうではなく、名前を確信していたような。異世界で知られている……? いやどういうことなんだそれは。訳がわからない。

 

 ――飼い猫ファラオは困っている決闘者のことなぞ知らず、ふにゃあと呑気に欠伸をしていた。




加恵(かえ)鈴奈(れいな)
名が体を表してしまった。かえれない。
この後なんやかんやあってお仕事と住むところをもらい、メインキャラの後ろの背景になんかいる人となる。
召喚獣関連は全部持ってるがドロー運はそんなに良くない。毎ターンアレイスター通常召喚ウーマン。

追記
「法の聖典チャンス!」で浮かれていたため気付かなかったが、あの後「あれ? 融合解除に対してメルカバーの効果使って法の聖典を捨て無効除外からのプルガトリオアタックで勝てたのでは?」した。
けど、アニメのハネクリボーは《古代の機械巨人》の攻撃の貫通ダメージから十代を守ったことがあるためプルガトリオの貫通ダメージ効きません。かわいそう。


おうちに帰れないし、異世界召喚されちゃった設定という明らかに1話のみ出演するゲスト系決闘者なのでこの短編の続きもない。


下のリンクは今回の短編を書くにあたっての裏話とかをまとめた活動報告に繋がります。読むのは強制しませんが読んだらなるほどなって感じにはなれるかもしれません。
活動報告:GXに未来のカード持ち込むなんて間違いなくオリ主無双でヤンス〜!?

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