ある冬の日の日常風景

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第1話

春、春分の日には昼夜の長さが等しくなり、桜が咲き雪が解ける。出会いの季節であり別れの季節でもある。

 

夏、夏至の日には昼の長さが長くなり、向日葵が咲き道路が焼ける。海が合う時期であり雨の季節でもある。

 

秋、秋分の日には昼夜の長さが等しくなり、コスモスが咲き穀物が実る。紅葉が色付く時期であり草が枯れる時期でもある。

 

冬、冬至の日には夜の時間が長くなり、大抵の花は枯れ雪が積もる。生物の活動が収まる時期であり植物の活動が始まる時期でもある。

 

 

主に日本ではこの4つの季節を1年を周期として代わる代わる訪れる。気象庁の基準では月に依って決められているがそれをはみ出すような気候が現在続いている。

 

夏の主張が激しくなり春秋のざわめきが抑えられている今日。ただこれはあくまで日本の話である。

 

極に近付くほど冬の主張が激しくなり赤道に近付くほど夏の主張が激しくなる。

 

基本的にそういう地域は"季節が無い"とよく言われる。

 

ならば"季節が滞る"とはどういう状況なのだろうか。

 

そもそもそれは"状況"なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ある日、12月だったか、あるいは1月だったか確かその位のある日。瞳に隈を残し台所に向かった。

 

新しい食パン袋を切り裂き2枚程取り出し食べる。特に何の変哲も無いただのデンプンの塊。食パンはデンプンが含まれている故、噛み続けると甘みが出るらしい。

 

米も同様だが、米は元々の粒が大きい為よくすり潰さないとブドウ糖まで分解されない。それによって腹持ちが良いというメリットにも繋がっている訳だが。

 

そんな事を考えながら食べ終わりリビングの椅子に身を投げる。

 

窓を見るとガラス面の6割程を白が占めていた。そこそこ降る地域では無かった筈だが、何故か昨日もその昨日もそのまた昨日もそうだった気がする。

 

別に雪が好きな訳では無い。殆どの植物は枯れる……何故か嫌悪感を感じる、本能…とでも言うのだろうか。体が拒否している感じがする。植物が枯れる事自体はどうでも良い。

 

だが、何故か嫌悪感を感じる。何か大脳に引っ掛かる感触と言うべきか、何かを感じる。

 

小一時間考えたが全く答えは出なかった。

 

─椅子に背を預け目が乾き始めた辺りでふと時計を見る。時刻は昼を回ろうとしていた所だ。

 

窓を見ても記憶があった頃と殆ど何も変わっていない。言われてみれば少し明るくなっただろうか。

 

間違い探しで出されたら中々に酷いレベルの違いだ。近所の屋根には雪が降り積もっては地面に落ちていた。

 

この地域はそこまで雪が降る訳では無い。むしろ降る地域ではトップクラスに降雪量が少ないと言って良いだろう。

 

その為、屋根も特段普通の瓦屋根が殆どである。

 

そんな事を考えながら白い鏡に映った自分の顔を見つめ、視界から外した。

 

そう言えば今は正午を回った所だ。そろそろ昼食の時間であるが、何も準備していなかった。正直準備するのは面倒臭い。

 

そのため朝食と同じ食パン、及びデンプンの塊を3枚口の中に放り込む。気分で枚数は変えるがまあ昼食なのだから多くても良いだろう。

 

キッチンから出てまた椅子に座る、と何か多少嫌な音が耳に入る。

 

この椅子は組み立て式であるためボルトが緩んだようだ。確かこのボルトは六角レンチで締めるタイプだった筈だ。

 

六角レンチは何処に仕舞ったか…確か……ここの棚だったか…

 

6段の棚を上から順に開け、探して行く。もし泥棒なら下から開けていたが、下には書類等が入っているため期待値が低い。

 

上には使い古した携帯など色々な物が入っている。あるならこの辺りだろう。

 

一番上の段をガサゴソと探る。浅い所に無い様だ。六角レンチは最近使った記憶が無い。

 

いつの間にか奥に行ってしまったのだろうか。

 

面倒臭がりつつ、奥に向けて色々な物を掻き分けて行く。

 

その時、一番最奥に何か平べったい物を見つけた。特にしまった記憶も無い、長らく出して無いだろう。

 

六角レンチは置いておき、それを奥から引っ張り出す。これは…、額縁…?だろうか。

 

裏に立てるための物と蝶番が見えるため額縁で間違い無いだろう。写真は少し埃を被っており見えにくい。

 

手でパッと埃を払って写真を見る。

 

そこには自分と記憶に無い女性が写っていた。先程感じた大脳に引っ掛かる感触がした。

 

誰だろうか、自分と一緒に写っているのだから少なくとも顔位見たことがある筈だ。

 

なのに、何も見覚えが全く無い。ここまで距離感が近いのだ、最低限初対面では無い。確実に友達の距離感だ。

 

だが、女友達など居ただろうか。もしかすると自分は何か忘れているのでは無いだろうか。

 

……彼女…、?なのか…?

 

一瞬、使い物にならない大脳に一瞬浮かんだとある説。

 

彼女だとするならばこの距離感にも納得だ。

 

しかし……しかしだ…彼女だとして、この俺が忘れる事があるのか…?

 

俺にはそんな記憶は無い、全く無い、断じて無いと宣言出来る。欠片も無いとは正にこの状況であると言える。

 

だがその時、吹雪の音が耳に入り思い出す。

 

─そうだ、俺の彼女は─のせいで、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、その記憶に蓋をし、ずっと忘れていた。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬、冬至の日には夜の時間が長くなり、君は花を諦め雪で遊んだ。一緒に家に籠もり新しい花を育てた。

 

秋、秋分の日には昼夜の時間が等しくなり、コスモスに囲まれ穀物を食べた。君と紅葉狩りをし枯れ葉を惜しんだ。

 

夏、夏至の日には昼の時間が長くなり、向日葵を眺めて肌が焼けた。君と海に行っては雨で足止めを食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春、春分の日には昼夜の時間が等しくなり、花見をし壁を解かした。君と出会った季節であり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君と別れた季節でもある。 

                   〜完〜




今作はまあまあ出来が良いかなと思ってる。伏線的にも。

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