魔法科高校の落第生   作:超高校級の切望

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九校戦前日

「で、お前の名前は?」

「8号です」

「……………あ?」

 

 意識を乗っ取る働き蜂の名乗りに、マダラは首を傾げる。

 

「あれ? ああ、えっと………人間として名乗っている名前は九野村八偸戯(くのむらやつぎ)って名乗ってます。やっちゃんと呼んでくれても良いんですよ?」

「その口調は?」

「この子のものですよ。安全設計で出力を落としてるから、感情を完全には塗り替えられないんです。女王蜂は一匹だけですから」

 

 一匹はいるらしい。

 

「軍の関係者に仕込むチャンスですし。あ、でももう前みたいなことにならないですよ」

 

 反省しましたから、と八偸戯は語る。

 

「寄生先を選ばず、第一高校の方々にもご迷惑をおかけしました。近々、男女を送るので。あ、安心してください、ちゃんと何をしても問題ない犯罪者やスパイを送りますので」

「お前何いってんだ?」

「? この年頃の少年少女の共通の妄想は交尾では?」

「否定はしねえが知らねえ奴とやりたいって奴は少ねえんだよ」

「そうなんですね………」

 

 世間を人々から読み取った感情でしか認識していない。浮世離れなんて言葉では片付かない。そして、8号という名前………。

 

「人工サイキッカーか?」

 

 九島烈ですら手にしていない技術を、何処かが作ったのか?

 

「正確には調整体ですよ。PSIに目覚めたのは、偶然ですから」

 

 調整体魔法師。遺伝子操作で魔法師として優れるように作られた命。魔法を使うための脳も特にいじられている。

 

 その脳を100%使い発動するPSIなら、なる程確かに規格外のプログラムを組み込めるわけだ。

 

「なんだか、親近感が湧きますね」

 

 魔法科高校に通っているサイキッカーだからだろうか?

 

「で? 謝罪だけが目的じゃねえだろ?」

「はい。篠村マダラさん、私達の仲間になりませんか?」

「…………………」

 

 八偸戯の蜂に寄生されていた男は自分こそが優れていると証明したがっていたが、その方法の中にサイキッカーを探すという目的意識も植え付けられていた。

 

 それは八偸戯がより強力なサイキッカーを求めているからだ。その点で言えば、マダラは確かに強力なサイキッカーであり、彼女の求めるものに相応しい。

 

「貴方さえ仲間になってくれるのなら、私の目的は果たせますから。今は保護に専念できます」

「保護?」

「保護です。余裕があるなら、手を差し伸べるべきでしょう?」

「つまり余裕がなかったと? なら、その余裕をなくすほどの事態ってのはなんだ」

「宇宙から来る侵略者に対抗する戦力探し、ですかね」

「……………………………」

「あ、信じてませんね」

 

 逆に信じてもらえると思っているのだろうか、この女は。

 

「まあ証明は確かに難しいですからね。でも、そのうち分かりますよ。何かが起きているんだって………その時は改めて力を貸してください」

「…………………」

「そんなに睨まなくても。あ、じゃあ、敵意がない証拠に一つ良いことを教えてあげます」

 

 と、八偸戯は内緒ですよ、と指を唇に添えて笑う。

 

「この九校戦の運営の一部、どうも一高に負けてほしいみたいです。様々な妨害があると思いますが、どうぞお気をつけて」

 

 

 

 

 

「って言ってたが、どう思う?」

「警戒するに越したことはないが、おそらく言ったところで………」

「情報源が彼奴じゃなあ」

 

 達也とマダラは早朝、互いを相手に鍛錬をしていた。

 達也は力のベクトルを分解し、或は自分でも使える魔法でマダラを翻弄しマダラは人間の限界すら超越した身体能力で動く。

 

 どちらも本気を出していない。マダラは技術を封印し、達也は防御とカウンターのみという縛りを課している。

 

「よっと」

「ふっ!」

 

 マダラの蹴りをかわし、足首を掴み投げる。片手で衝撃を受け止め、体を回転させ達也の拘束を弾くと蹴りを放つ。

 

 達也は敢えてベクトルの全てを分解せず吹き飛ばされるように距離を取る。

 

「時間だ」

「ちぇ」

 

 ピピピピとアラームが鳴り響く。結局決着は付かなかった。

 

「そう悔しがる必要はないだろ。ろくに魔法の使えない俺では、どのみちサイキッカーには勝てないんだから」

「『あれ』使えば勝てるだろ」

「相手が人の居ない開けた場所でのんびりしてくれていたならな」

 

 成る程、確かに前提条件が違った。

 

「まあいざとなったら俺と達也の合体技があるけどな」

「あれはお前が近くにいないと使えないだろ」

 

 と、その時………

 

「お兄様、マダラさん」

「深雪」

「おー、深雪」

 

 水とタオルを持って、深雪が現れた。

 マダラと達也は互いに目を合わせる。

 

 視線だけで行われた会話は「九校戦中、早朝の鍛錬はなしな」「ああ、選手の深雪にはしっかり寝てもらわないとな」である。

 

 因みにテレパスではない。

 

 

 

 

 前々日は懇親会。前日は休息。

 皆、明日に備えて英気を養う。とは言え新人戦は四日目から。

 

 1年生達は緊張より興奮が先に来る。

 

 夕食後、達也とマダラの部屋に深雪、ほのか、雫、エイミィが遊びに来たりした。

 

 

 

 

 そして、達也達が作業に入ったので4人は部屋に戻り、エイミィが何かを思いついたように何処かへ行った。

 

 暫くすると雫とほのかの部屋に来た。地下の温泉を使えないか聞いていたようだ。行動力の化身である。

 

 

 

 

「わぁ………」

「な、なによ……」

「意外。ほのかスタイルいい〜」

 

 エイミィは豊満なほのかの胸を見つめ近づく。後ずさるほのかは、しかし直ぐに壁際に追い詰められた。

 

「剥いても良い?」

「いいわけないでしょ!?」

 

 目は笑っている。悪ふざけのつもりだろうが、冗談で済ませる気はなさそうなエイミィに、ほのかは周りに助けを求める視線を送る。

 

 しかし、皆エイミィみたいな視線を向けるのみ。

 

「良いじゃない、ほのか、胸大きいんだから」

「そういう問題!?」

 

 目は笑っているが、剣呑な光が宿っている気がしたほのかは親友に助けを求める。

 

「雫、助けて!」

「いいんじゃない? ほのか、胸、大きいから」

 

 そういってサウナに向かおうとする雫は、しかしサウナが開かないことに気付いた。どうやらサウナはやっていないようだ。

 

「何を騒いでいるの?」

 

 と、そこへ深雪が現れる。途端に静まり返り、誰もが深雪に目を奪われた。

 

「な、なに?」

「駄目よ皆! 深雪はノーマルなんだから!」

 

 

 

 なんて会話の後に、女子達がする事と言えば恋バナである。

 やれバーでかっこいい人を見た、やれ頼りがいのある男がいい、やれなら十文字は? やれそういうレベルじゃなくない。

 

 などから、一条将輝について。深雪に見とれていたがどう思うと尋ねれば、深雪は写真でしか見たことないし、会場の何処にいるかも知らないと応えた。

 

 これを三高に伝えればクリムゾン・プリンスのやる気は大きく削がれることだろう。

 

「なら深雪はどんな人が好みなんだい? やっぱりお兄さんみたいな人が好みかな?」

 

 からかいを含んだ声に深雪ではなくほのかが肩を震わせる。

 

「何を期待しているか知らないけど、私とお兄様は実の兄妹なのよ? 恋愛対象に見たことなんてないわ。それに、お兄様みたいな人なんてマダラさんしかいないじゃない」

「ええ、そうかな?」

 

 と、ほのか。マダラと達也が似ているとは思えないのだろう。

 

「う〜ん。私、深雪のお兄さんとはあまり話したことないけど、確かにマダラさんと似てるかも? 何ていうか、雰囲気?」

「お兄様とマダラさん、最初は仲が良いとは言えなかったけれど、それでも昔から息は合っていたのよ。今でもたまに同じようなことを言ったりして、なんだか可愛いわよね?」

 

 それは解ると、ほのかと雫は思った。

 

 

 

 その頃のサウナ室。

 

「……………おい」

「俺のせいじゃねえ。朝、使えないか聞いたぞ俺は」

「………その事が連絡されてなかったのか」

 

 エイミィと同じくホテルスタッフに温泉の利用許可を求めたマダラは、しかしエイミィと違い尋ねたのは朝飯の後。

 

 どうやら夜に尋ねたエイミィはそのことを知らなかったようだ。

 

 電気を達也が分解し、マダラが超能力で扉を押さえる。

 

 入り口から見えない位置はサウナストーブと一番近い場所。達也とマダラは女子達の気配が消えるまでの数十分、サウナから出ることは出来なかった。

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