何故会場に現れたのか、とか、異変の原因はお前達ではないのか、などという質問は烈がやってきた時点で終わった。
「流石じいちゃん! ケンリョクバンザイ!」
「……………あまり変な言葉を覚えさせないでほしいんだがね?」
「さーせん」
カムイの言葉に烈が呆れたような視線を向ける。
「それで、下手人は?」
「魔法師」
ふむ、と顎に手を当てる烈。サイキッカーの可能性を考えたのだろう。それだけ、あの数の魔法師の目を誤魔化すのは難しい。
「戻りました、ジジ様、マダラさん」
と、凛と共にリュウが唐突に室内に現れる。スルリとリュウの体に絡みつくように現れるアナコンダのようなサイズの東洋龍。
「精霊魔法と区分される古式魔法です。相当協力な思念が施されていました。気付かなかったのは僕の不徳です」
「違うな、大会実行委員の不徳だ」
落ち込むリュウの頭を撫でてやるマダラ。
「思念は追えそうか?」
「いえ………ですが詳細は把握しました。連中の目的は一高の優勝阻止。動機は掛け金の回収です」
「掛け金…………?」
九校戦にそんなのあったか、と烈に視線を向ける。烈は呆れたように肩を竦めた。
「何事にも違法賭博というのは発生しうるものさ」
「『
「この大会にどれだけ混じってる?」
「大会に?」
マダラは機械を操作し試合の映像を映す。
「七高選手の過剰加速。CADに細工されたとみるべきだろ。んなことが出来るのは担当エンジニアと、CADの最終チェックを行う委員会……………追えるか?」
「現行犯でもなければ捕縛できないのでは?」
借りにも軍関係者も多い大会の委員会に入り込んだ相手が証拠を残すとは思えない。
「そこはほら、行方不明者が出るってことでよくねえ?」
「!!」
バッとリュウがマダラから距離を取る。
「…………暗闇」
「ん?」
「マダラさん………何か、ありました。心境の変化とか」
「んなこと言われてもなあ。あ、最近封印してた俺の本来のバースト使いこなす為の練習始めたな」
「お、マダラ。大丈夫だったか?」
「ああ、問題ない。ちょっと話を聞かれた後、知り合いと話が盛り上がっただけだ」
委員会に連れて行かれたマダラが戻ってきて、レオが声をかける。
「尋問とか、されなかった?」
「ドラマの見すぎだ、雫。何故現れたのかとか、察知できたのかと聞かれたが………まあ、烈さんとこの子供達っていやすぐに引き下がった」
「あの子供達?」
「ああ」
本当に彼、何者なんだろうという視線が集まる。
「親父がかなり腕のいい名医だからなあ。軍医でもあるし………その関連で結構名家と繋がりがあるんだよ。九島はその中でも、俺と関係もある家の一つってだけだ」
年の近い孫がいる、と紹介されたのがきっかけではあるが、烈も子供達の遊び相手となる若いサイキッカーを探していたのが大きいだろう。
「なにか掴めたか?」
「あー………精霊魔法ってのは、達也も掴んでんじゃね? CADが委員会に細工されたのも」
「ああ」
目新しい情報はなしか? と視線を向けてくる克人。
「目的は一高の優勝阻止。理由は掛け金の回収だってよ」
「……………そこまで調べたのか」
「優秀なサイコメトラーがいるんでね」
「九島子飼いのサイキッカー達か」
ふむ、とマダラに絡んでいた子供達を思い出す克人。
「瞬間移動、か………」
魔法として存在するそれは瞬間的な移動であり、空間を跳躍したものではない。だがサイキッカーはあのような子供が魔法で再現不可能なそれを行う。
「渡辺と七高の選手を救った雪といい、残留思念で詳細を把握するサイコメトリーといい……この国の後進は頼もしいな」
「なにせ俺の弟分達なもんですので」
マダラは自慢気に笑う。同じサイキッカーとして、仲がいいのだろうか。そんなマダラの服の裾を引っ張る雫。
「…………私は?」
「ああ、自慢の弟子だ」
頭を撫でられた雫はほぼ無表情ながら満足気だと一目で解る顔をした。深雪がムッと顔を顰めた。
「弟子と言っても、雫のPSYの指導は篠村さんでは?」
「親父も忙しいからな。俺も空いた時にみてんだ。まー、俺も広い練習場所使わせてもらえて助かってるがな」
「私は、旭さんじゃなくて、マダラさんがこのまま指導してくれてもいいけど」
多彩なバーストを使うマダラは、それだけPSYを使いこなしている証拠。PSY初心者の雫にとって、それは十分以上に尊敬に値する。ただ、PSYに長く触れた人間からすれば、それは異質である事を彼女はまだ知らない。
PSYとは本人の意思の具現。
万能型と呼べるような形も存在するが、基本的に一人が持つ性質は一つだ。むろん、高熱の剣と万物切断可能な剣という『剣』の一括りや、『有線トランス』による武装などといった基礎の応用などによる複数能力も存在する。
ただし、
或いは
高い素質故にPSY第四性質にして、他3つより更に上の領域へと自力で辿り着けてしまったが故に施された封印。自身すら巻き込んで全てを滅ぼす破壊の力……それがマダラの本来のPSYだ。
その発動の
「…………………」
リュウは先程のマダラを思い出す。
トランスに優れた彼は人の思念を読み取り本質の
あの時、リュウがマダラに見た
あらゆる存在を黒く染め上げ暗闇の一部に変える、全ての存在を許さぬ『闇より黒い月の浮かぶ夜天』。
「感情の制限による封印………本当に、出来ていたのか?」
事実として『暴王』は未だ健在。虎視眈々と現実へ姿を顕現する時を待ち侘びていた。なら、そのトリガーとなる筈の
「おいリュウ! 早く寝ようぜ、明日から新人戦! マダラの活躍がみれんだからな!」
「……………そうだな」
あの人が怒りなどといった感情を取り戻すのは寧ろ喜ぶべきだ。怒らないのではなく怒れないは、言葉が似ていてもまるで違う。
マダラが優しい人間である事はリュウ達が良く知っている。
「PSY解放していいんだろ? 思い切ったよな」
「魔法師が世界に認知された時と同じだ。俺達の存在を隠せなくなる日は近い」
「おー。そういやなんかテロ起きたんだっけ?」
「テロの鎮圧、だ。この前もテストに出ただろ」
「そーだっけ? そん時からサイキッカーも居れば、今とは違ってたのかもなー」
「サイキッカー自体はいたと思う。BS魔法師と区別させてなかっただろうが………事実、マダラさんの能力も過去に存在したらしいしな」
しかし、改めて妙な話だ。
PSY能力とは類似するものはあっても本人の意思の具現である限り全く同じ物は存在しない。
だが『