煤墨とアズライトがおしゃべりしてるだけです。

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第1話

「どもどもーどうもです。薬物投与実験を自分にしてきたばかりで体調最高潮のアズライトです。本日はどのような要件ですか?煤墨さん」

 

「はははっ、どうもね。いつも通りお薬大好きアズライトさん。今日は久しぶりに暇ができたから来てみたんだ」

 

「あれあれ、そうなんですか?煤墨さんには先日の怪盗騒ぎでのレポートの提出とか、鉉覇さんに血液サンプルを提供させるよう促す役割とかがあった気がします」

 

「あぁ、ね。なんか闇虹ちゃんが全部やってくれるって言うから、お言葉に甘えてきたんだ」

 

「さすがは闇虹さん。ランヴィリズマ随一の働きやさんの称号は伊達じゃないですね」

 

「ほーんと。第六起源魔術協会(シックス)は闇虹ちゃんさまさまだよ。…っと、早速だけど要件話しちゃっていい?」

 

「えぇどうぞ。どんな薬でも理論上可能なものなら大抵つくれますよ。どんと来いです」

 

「いや、今回は薬じゃなくて、アズライトさんに質問をしに来たんだ」

 

「私に、質問?なるほど。よりにもよって私ですかぁ~変わってますねぇ」

 

「そう?僕の質問はメイズラボの人にしたいものなんだけど、メイズさんは話をはぐらかすとこあるし、ラビリスちゃんは怖いし、カハルさんと舞護ちゃんは忙しそうだし、ついさっきまでそこで倒れてたアズライトさんが適任かなって」

 

「つまり、暇そうだったからってことですか」

 

「それと、おしゃべりだし薬づけだから、重要なこともぽろぽろ答えてくれるんじゃないかなって」

 

「おやおやどうやら、私舐められてるようですね。まぁ、確かに口は風船のように軽いですけどね。軽い女です」

 

「そりゃあ良かった。そんな素敵なアズライトさんに単刀直入に質問なんだけどさ」

 

「はい、どうぞどうぞ」

 

「ぶっちゃけ、僕たち騎士の脳みそイジってるよね?」

 

「??…はい、もちろん」

 

「………あぁ…質問内容が広すぎたね。具体的に言うと、僕たちの脳内メモリを定期的に整理してるよね?」

 

「ふむふむ。どういうことか、もう少し詳しく聞いても?」

 

「そうだね。まず騎士ってさ、不老不死なわけじゃん?不死のところはちょくちょく怪しくなるけど、とりあえず不老の部分は間違いない。永続年齢が同じ16歳の第一軌道人類史のカノンちゃんと、第八軌道人類史のプロブレムちゃんに本来の年齢の差は全く感じられないもんね」

 

「ですね。カノンさん美魔女です」

 

「それでさ、見た目だけならまだしも、内面の経年劣化ってのがまるでないってのが気になっちゃったんだよね」

 

「なっちゃいましたか」

 

「カノンちゃんはプロブレムちゃんよりも多くのことを体験しているはずで、その分、決して少なくない心のダメージを負ってるはずなんだよ。永遠にすら感じられる軌道修正達との戦いで人が死んだり、人を殺したり、そういったことを長年経験しているはずなのに、決して人の死に慣れることはない。これってカノンちゃんの性格がいいから、ってだけなわけないよね」

 

「そうですね。逆に、人の死に慣れていてあの性格なら少し怖いです」

 

「だから、カノンちゃんの記憶は定期的に圧縮なり、削除なりされてるんじゃないかな~って思ったんだよ。もちろん、カノンちゃん以外の騎士全員も」

 

「はい、そうですよ」

 

「…すごいあっさり答えるんだね」

 

「正直者ですからね。ただ、こういう話はどうしても人権がどうのーって言ってくる人がいるので、人に話す際は今回みたいに相手を選ぶようにしています」

 

「へ~。そう言うってことは、人権団体だとかに怒られたことがあるの?」

 

「怒られましたが、一瞬で我らがキングが黙らせました」

 

「ひゃ~怖い。母は強し、だね」

 

「その母も、脳をイジるのを止めて数百年ほど待てば脳みそが壊れるって考えたら、可愛く見えますよ」

 

「今の発言、メイズさんに伝えとくね」

 

「やめてください。死んでしまいます」

 

「やっぱり、不死って部分は怪しいね…」

 

「それで、どうするんですか?」

 

「ん?」

 

「煤墨さんは、こんな人格形成に悪影響がでるような話を聞いて、どうするおつもりなのでしょう?」

 

「別に?どうもしないよ」

 

「そうですか。煤墨さんの記憶を消す手間がなくなってよかったです。誰かに話すようなら、私の手持ちの薬が火を吹いていました。それはそれは、熱い火を」

 

「言わないってば…むしろ、絶対に言いたくない」

 

「どうしてですか?煤墨さんって、そんないい子ちゃんでしたっけ?」

 

「失礼な。僕はただ、いつまで経っても若々しいみんなが好きなだけだよ。何回も同じことで喜び、何十回も同じことで怒り、何百回も同じことで哀しみ、何千回も同じことを楽しむ。でも、確実に成長し続けるみんなが大好きなんだよ。余計なことして、みんなを壊したくない」

 

「…なんというか、そうしみじみと語る煤墨さんはあまり若々しくないですね」

 

「んー。まぁ、僕は生まれが特殊だしね。キラキラしてるみんなが眩しいんだよね」

 

「いや、そういう意味ではなくて、若々しくないっていうのは、いい意味で言ったつもりですよ。あなたほど唯一無二な人は、そういない」

 

「僕が、唯一無二……。いやいや、買いかぶりすぎだよ。みんなの方が僕なんかよりずっと特徴的で、強くて、輝いてる。みんなが燦々と煌めく太陽だとしたら、僕はその光を真似する月みたいなもんだよ」

 

「ならば太陽が照らせないところを照らしてください。あなたにしか出来ないことが、確実にあります。例えば、」

 

「…例えば?」

 

「あそこで闇虹さんから逃げている鉉覇さんを捕まえる、とか」

 

「え?…あっほんとだ。いつも元気だね~あの二人は」

 

「さぁさぁ、ゴーゴーです」

 

「ちょ、押さないでよ。あと、さっきまで倒れてたんだから、いきなり動いたら危な…あぁー言わんこっちゃない…」

 

「あ!煤墨みっけー!おーい!こっちだこっちー!」

 

「もー!遊んでるわけじゃないいんだけどっ!!?」

 

「はははっ。アズライトさん医務室に運んでからねー!!」


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