翡翠の劫火と生きる   作:伽華 竜魅

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ここではお久しぶりです。
約二か月、大変お待たせしました。




"傷"害物競走

 

 

 

 

入口と出口、前後両方の出入りを封じられ、閉じ込められた生徒たち。

その半数以上が混乱に満ち溢れ、暗い空間の中、生徒たちが互いを押し合い声を漏らす。

 

『さて第一関門! それは全員を閉じ込める…まさに封印!! 己を封印せし壺とかそういうのを突破するための障害!! 封印突破だァ!!』

 

『それは競技名になるのか?』

 

『今付けたァ!!』

 

『おい…』

 

前後、両方の出入り口を防がれ完全な封印状態。

半数以上の生徒たちが困惑し、中は混乱状態ともいえるだろう。

しかし落ち着いている者たちがいるのもまた事実。

 

方向は既に把握している故、残りは突破方法。

既に何人かは破壊を試みてるが、簡単には壊れることはなかった。

何故だと、破壊行動も可能な"個性"持ちはさらに困惑する。

 

『ちなみに出入口を塞いだ両方の扉は、特別な製法で造られてるから、俺たちプロでも手こずる程頑丈だぜ!! リスナーども! どう突破する!?』

 

『オールマイトさんは簡単に突破したけどな……あの人は本当に規格外だ』

 

プロすら手こずる程の代物。

それを耳にした生徒らは驚愕し、一部は無理なのではと思ってしまっただろう。

しかしそんな彼らの中で、唯一飛び出し武器を構える者がいる。

 

その者はオールマイトとは別に規格外の存在。

 

「(ホタルさん!!)」

 

『うん!!』

 

緑谷出久。

彼は鉄騎を纏う両手から劫火を漏らし、片手に集中・凝縮させ握る。

そして強く拳を突き出せば、他の者たちでは破壊できなかった扉を、劫火にて溶かしながら破壊し突破した。

 

『あれェ!? 俺らでも苦戦した扉もう突破されたァ!?』

 

『"個性"は世代を超えて進化するんだ。俺たちと今の生徒らではレベルが違うだろ』

 

『えぇ……と、とりあえず!! 早々の妨害を突破したのはA組緑谷!! 炎を纏い操りながら突破し、独走していく!! 他の生徒らも緑谷が突破した穴から飛び出て追いかけてくゥ!!』

 

現代のプロヒーローでは困難な障壁の突破。

無論生徒たちもそう簡単なことではない。

ただ一人、異分子(イレギュラー)を内包した出久がいたからこそ成し得た事。

 

ただ簡単か、困難か、力による差だけ。

元より他の者たちも時間を掛ければ突破はできただろう。

破壊された入口から、出久に続いて他の生徒たちも脱出する。

 

しかしただ後に続いて脱出するだけではない。

故に、瞬間、地の一面が氷結で凍らされ、生徒たちもその足までも凍らされて動けなくされた。

 

「悪いが遅れるわけにはいかねぇ!」

 

実行犯は轟焦凍であり、彼は遅れまい、そして抜かされまいと"個性"を発動させていた。

先頭にいる出久も止めるため氷結を繰り出したものの、彼が鉄騎と共に纏い、漏らしている劫火は氷結を届かせることなく溶かしている。

故に彼は止まらず、轟は舌打ちを漏らしながらただ出久の背中を追いかけるだけ。

 

否、前方ばかりではない。

B組はともかくとし、A組の大半は氷結を躱し、遅れまいと各々の"個性"で駆け出していた。

 

「クラスの連中は当然として、数が減ったとはいえ避けられたな……それに緑谷」

 

轟は前方の出久へ視線を戻す。

視線の先にいる出久は後方を確認もせずただひたすらルートをそって走っていた。

 

「ッ!」

 

しかし先頭にいた出久は足を止める。

それは今彼の、否、彼らの目の前に立つ"傷"害物、緑の装甲で作られた多くの人ではない機体によって。

 

「(入試の時の…!)」

 

「ターゲット……――大量!!」

 

正体はヒーロー科の入試時に彼らが合格するために配備されていた機体…仮想(ヴィラン)

それも、入試時は各フロアのどこか一か所にのみ配備されていた0ポイントの巨大仮想(ヴィラン)も多くいる。

 

『第二関門! 戦場に安全なんてもの存在しない!! つまり本気で潰しにかかるってことォ!? "ザ・デス"インフェルノォ!!』

 

デス=死。

 

そのまんま過ぎることをプレゼント・マイクは告げた。されど本当の戦場では死は唐突。

それは日常でも当然…そしてなぜデスと付けたのか。

 

それは転生者の爪痕が多く残されたこの世界故に、仮想(ヴィラン)だけでは終わらないから。

 

「お、おい! なんだアレ!? あれも仮想(ヴィラン)なのか!?」

 

誰かが言った発言に、全員が視線を下に向ける。

そこには仮想(ヴィラン)に紛れ、全く異なる機体が多く配備されていた。

全体を緑のコーティングで作られている仮想(ヴィラン)とは違い、

 

青交じりの灰色と黒を強調としたもの。

 

二つしか点灯がない、四本足の信号機擬きの機体に、同じように四本足で拳のような機体。

片腕がチェーンソーになっている細めの人型に、全体的に丸い人型の機体。

三輪搭載のタイヤ型に、一輪だけのタイヤ型の機体。

 

その機体らはこの世界では存在しない代物。

 

名を『自動機兵』。

 

ホタルたちの世界の惑星の一つ『ベロブルグ』。

その惑星に存在する自動兵器。

何故それが雄英に、それも"傷"害物として今、出久達の前に立ちふさがっているか。

 

『ちなみにこちらの自動機兵たちは、『スターピースカンパニー』の提供によるものとなっています』

 

『急に冷静な説明するな。テンションの差が激しい』

 

『シビィィィッ!!!!』

 

『スターピースカンパニー』。

ホタルたちの世界に存在した宇宙規模の企業。

その企業すらも今や出久達の世界に召喚されている。

 

元の世界同様宇宙規模まで企業を発展させているかは不明だが、雄英と繋がりがある事だけは明らかになった。

されど、一度足を止めた出久はキャストリスの大鎌を顕現させる。

すれば――

 

「大鎌に劫火を……」

 

大鎌の瞳に、ホタルの劫火を灯させ漏らさせる。

して踏みとどまり、鉄槌を纏いし両手にて握り、大きく振るう。

すれば一瞬一撃にして、前方にて妨害しようとしていた仮想(ヴィラン)と機兵の大半が破壊された。

 

「(前方に人がいなくてよかった……でももう少し調整しないと)」

 

『でもこれで妨害はなくなったから、進むなら今のうちだよ!』

 

「(うん!)」

 

大鎌を消失させ、劫火が地から燃えているその道を出久は駆け出す。

 

『A組緑谷! これすらも突破したァ!! つうかなんだ今の鎌!? ってうおぉ!? 残ってた巨大仮想(ヴィラン)が氷漬けに!? 同じくA組轟の仕業だァ!!』

 

実況が響く中、出久は一度後方を確認する。

視線の先に遅れて突破した轟が僅かに見えていた。

さらに後ろでは何人かが各々頑張って突破している。

 

「(やっぱりみんな凄い。気を付けないと!)」

 

警戒心を常に。

大鎌を消しながら出久は次なる"傷"害物へと着いた。

 

『第三関門は落ちれば終わり! それが嫌なら這い上がってでも乗り越えろ!! ザ・フォール!!!』

 

第三関門・底が深淵の如く深く、そして暗く見えない"傷"害物。

谷と谷がロープで繋がれており、まさに綱渡りで乗り越えなければいけないもの。

飛行が可能なものなどならどうさもないだろう。

 

だがそれを見落とさない程、戦は甘くはない。

 

『ちなみにただの綱渡りじゃねぇぞ! 上空で待機している仮想(ヴィラン)のドローン型が一斉に撃ち落としてくるから、それにも気を付けな!!』

 

すれば飛行機能を搭載した仮想(ヴィラン)が無数に谷の上空に現れ、中央下から殺傷能力ゼロのゴム弾が搭載された銃を展開する。

ただの綱渡りにあらず、上空から問答無用で撃ち落としてくるという、あまりにも酷い妨害付き。

しかも一斉……つまり独走した者ほど。

 

「くっ!!」

 

狙われる確率が高いということ。

だが仮想(ヴィラン)が狙うのは彼一人だけではない。

 

後続から新しい対象が来れば、その付近にいる仮想(ヴィラン)は対象を変更し、自身の近くにいる生徒を狙う。谷越えだけでも苦戦するその競技に再び魔の手が迫るのだ。

しかも空中故対処は難しい。

 

「あぁサポートアイテムがァ!!」

「痛って! 意外と痛いんだけど!!」

「お、落ちるゥ!!」

 

「うっぜぇんだよクソがァ!!」

「お、おぉ…! おォォ!!!」

「普通に走るより厳しすぎる!!」

 

生徒たちが声を漏らし、結果として撃ち落とされ、落下していく者もいた。

飛行系やそれらの対処をすることが出来る者たちは、各々のやれることをやり乗り越えようとしている。そんな中独走し先頭にいた出久は――

 

『緑谷ァ! ゴム弾を気にもせずただひたすら谷を越えていく!! てかなんで当たんねぇんだ!?』

 

『よく見ろ。周囲に高度の炎を出してゴム弾を着弾する前に塵にしてる。自身を焼けごねないようにしながらも飛来物を燃やし尽くしてるんだ。とんでもない調整が必要なはずだ』

 

周囲に高温度の劫火を漏らすことで着弾前にゴム弾を燃やし尽くしていた。

出久自身への影響はほぼない。

元々焦土を作る程の劫火を用いるホタルが中におり、今では"個性"として宿している。

 

故に彼自身もまた、劫火への耐性が格段に上がっていた。

だがそれは谷と谷をを繋げる綱を燃やしてしまうこともにも繋がる。

それを考慮した出久は綱を使わず、脚部の鉄騎から放出する劫火で谷を越える。

 

防御と移動の両方を器用に調整しながら出なければ即突破はできない。

しかし出久は未だ独走状態で突破した。

 

『緑谷、第三関門ももう突破した!! 後続組も負けじと追いかけるが空中からのゴム弾に苦戦してるぞ!!』

 

『クリアさせる気あるのか疑問になってきたな』

 

当初はここまでしなかった。

それが校長の感想であり、これらすべては女帝、カイザーの指示である。

故に今年の一年生は大きく災難で難関な壁を作られた。

 

されどそれを突破すれば、女帝直々に認められたヒーローとも言えるだろう。

最もそれは、心まで真に戦士であることを示せればの話。

結果だけで心、精神が成長してなければ意味はない。

 

それで言えば出久は元の"無個性"時から、その条件を揃えてはいる。

そんな出久はついに最後の"傷"害物へと辿り着いた。

 

『さぁ最終関門は…まさかの一面地雷原! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚酷使しろ!!』

 

『どうせそれだけじゃないんだろ?』

 

『と思うじゃん? ソーリーマスメディアァ!!! 流石にこれ以上は後々に響きそうだからここだけ地味だ!!』

 

『そこはやり通せよ』

 

ただの地雷原。

ここにきてただの…否、本来の殺傷能力はなく派手なだけな地雷原。

しかし先頭程不利なものでもあるがために、突破は難しい。

 

全てを破壊して突破するのも一つの手だろう。

だがそれをすれば後続に道を作り、接近され抜かれるという大幅なデメリットを生じることになる。

如何にして突破するかで勝敗を分けるというのがこの地雷原。

 

ある意味ではただの地雷原でも障害物だ。

 

『ここはどう突破しますか? 飛べばすぐに終えられますが……』

 

『ん~でも裏がありそうなのよね』

 

「(なら賭けです。ホタルさん)」

 

『わかった』

 

出久は一度足を止め、脚部の鉄騎の装甲を開きながら、同時に背面にのみ同じ鉄騎を顕現させて纏い、劫火を点火させる。

その場で踏みとどまり、限界まで上げていき――

 

「――ふっ!!」

 

一気に地雷原の上を高速で通過した。

傍から見れば劫火のような色が地雷原の上を真っすぐ、光のように進んだように見えるだろう。

通過した出久は地に着地してそのまま到着地点へと駆け出す。

 

『み、緑谷! あっさり地雷原を突破!! というかなんだあの速度!? 見えなかったぞ!?』

 

『恐らく自身の炎を限界まで溜め続けたのを、一気に放出したんだ。その勢い…噴射力で身体を一気に押し出して通過……時間はかかるがある意味合理的な考え方だな』

 

『おぉナイス解説!!』

 

地雷原は一個も爆破してない。

故に後方にいた轟たちは地雷原を初期状態で突破しなければならない。

唯一救いなのは、ここだけ原作と同じ作りなとこだろう。

 

しかし先頭に出久がいる以上、轟は地雷原の、自身の走るルートだけを後続を気にせず凍らせて走り、爆豪も轟の妨害せず出久を追いかけ飛ぶ。

されど二人が地雷原を突破する頃には――

 

『雄英体育祭一年ステージ! この展開を一体誰が想像できたか!? いやずっと独走だったから出来たか!! 今一番にスタジアムに帰ってきたのは――』

 

 

『――緑谷出久だァァアアッ!!!!!!!』

 

 

プレゼント・マイクの声に続き会場全体が歓声で響き渡る。

そう、彼らがまだ地雷原を通過しようとしている間に、出久はゴールしたのだ。

それを耳にした轟と爆豪の表情は明らかに曇り、片方は多少に、もう片方は大き表情にく怒りが染み出る。

 

されど気にせず観客たちは歓声を上げ続け、息を荒くしていた出久は呼吸を整えながら、己の手を見つめた。

憧れの母校に踏み入れ、例年の大競技祭で最初の競技であろうと一位を手にした。

嬉しいわけがないだろう。

 

その証拠に彼は涙をその目に溜め、溢れさせていた。同時に内にいる三人の"個性"からも祝福の言葉を送られていた。

 

 

——◆——

 

 

一位として到着した出久に大きく遅れながらも、二位、三位と生徒たちが"傷"害物を乗り越え到着する。その様子を見ていた女帝は静かに女剣士へ告げる。

 

「剣旗卿、あの者を見てどう思う?」

 

「一見すれば他よりも優れている緑のイソギンチャクだろう。だがこの世界の者たちは気付いていないが、あの緑のイソギンチャクは……」

 

「どう見ても僕たちの世界の力を使っている。転生者は既に絶命している情報は得ているから、姿を偽っているわけではない。となるとだ」

 

女帝は目を細め、出久を見つめる。

しかし出久にあらず、その目は出久の中にある力に目を向けていた。

 

「………剣旗卿、次の種目の後は休息になる。その間に接触し、今から言うことを伝達しろ」

 

「心得た。その時に昼食を取って来よう」

 

緑谷出久は転生者の爪痕の一つ。

故に――女帝に目を付けられた。

 

 

 

 






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