英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。

お待たせしました、ちょっと着地点に迷いました。



105.すぐバレて

 

 

「雷神脚!」

先に動いたのはリン、グレンに向かって助走をつけて跳ぶと鋭いかかと落としを放つ。

 

 

しかしグレンは避けること無く腕を交差してそれを受け止めた。

「相変わらず良い蹴りしてんなぁ!」

「そう言いながらしっかり防御してるじゃないか!」

一切揺らぐこと無く防御しきるグレンにリンは悪態をつくと今度はしっかりと構えて掌底を真っ直ぐ放つ。

 

「月華掌!」

白く輝いた重々しい掌底の一撃、だがグレンも同じように拳を突き出してそれを止めた。

 

「やっぱり鋭いな」

「だからなんで相殺出来るんだよ!?」

しっかり入った、そう思えたリンだったが全く動じないグレンの様子にまたもや悪態をつくと彼女の後ろから声が聞こえる。

 

「リン!伏せて!」

その声にリンが伏せると声の主、エオリアがグレンに向かって何か銀色に光る物を投げつける。

 

 

「うぉ!?」

すんでのところで身体をそらしグレンが避けるとそれはちょうどグレンの後ろにいたミナズキへと飛んでいき、そして─────

 

 

「え?」

「は?」

「おぉ・・・」

エオリア、リンそしてグレンが間の抜けたような声をあげた、何故かと言うと─────

 

「っと、危ないな・・・」

ミナズキが飛んできたそれをあっさり指で摘んでキャッチしていたのだ。

 

「いや、どういう動体視力と反射神経してるのよ・・・」

「エオリアのメスがキャッチされる所なんて初めて見たぞ・・・」

「やっぱりそれくらいやるよな、事前情報の通りだ」

呆れた顔で言うエオリア、リンも驚愕の色を隠せていなかったが事前情報があるグレンだけは特に驚く事はなかった。

 

そしてそんなグレンの呟きは2人の耳に入った。

 

「は?」

「事前情報?」

リンもエオリアもグレンの言葉を聞いて手を止める、そしてまじまじと深く帽子を被った青年を見る。

「まて・・・そうだ、思い出したぞ・・・こいつは!」

「えぇ、クロスベルタイムズに載ってたわ・・・特務支援課が会った帝国のアランドール特務大尉が言ってた凶暴な男・・・全身黒服に帽子で顔がよく分からなかったけど・・・ってまさか」

 

1つの結論に辿り着いたエオリアがグレンに勢い良く振り向く。

「ねぇグレン?責任転嫁に聞こえるでしょうけど、あなたさっきわざと私たちを焚き付けなかった?」

「あ、やっぱ気付く?」

エオリアの質問に軽く答えるグレン、なんなら2人が辿り着いた時に咄嗟にミナズキに被るように動きミナズキをよく見えないようにしていた。

 

「一応聞くわ、何故そんな事を?」

当然エオリアは怒りを滲ませる。

そんな彼女に対してグレンは意外にも真っ直ぐな答えを返す。

 

「まずは、まぁこのミナズキって男が戦う姿を見たかったのが1つ。出来れば俺が戦いたかったが意外と不戦主義っぽくてな、クリストフとの戦いも見てたけどそもそも戦う気も無かったみたいだしな」

そう言って少しつまらなそうにするグレン、そこにミナズキがツッコんだ。

 

「おい待て、あんたさっき見てないって「悪いが嘘だ、クリストフとお前の会話は一通り聞いてた」・・・えぇ」

先程までのバカ正直そうな会話が実は嘘だと知りミナズキは呆れた顔でグレンを見る。だがグレンは何処吹く風で話を続けた。

 

「2つ目、というよりこれが本題だが・・・ミナズキという男の人となりを知っておきたかった、もっと正確に言うならアランドールの言葉のどこまでが本当かどうかを確かめておきたかった、だな」

「アランドールって、あいつクロスベルに来てたのか・・・」

自分にとって嫌な思い出のある人物にミナズキが悪態をつく、それを一瞥するとグレンは続けた。

 

「数日前にな・・・んで、その時アランドールはあんたのことを『凶暴でおっかない男』と言った。あの男の言葉の厄介なところは嘘を息をするように吐き、逆に本当の事を嘘のように、冗談めかして言いやがる。そんで、問題はここからだ・・・」

 

 

この場合のアランドールの言葉の真偽はどちらなのか

 

 

「もし冗談だとしたらそれはそれで放っておけば良い。嘘だと言うならばむしろクロスベルにとっては味方かもしれない・・・だがもし本当ならどうだ?今クロスベルは未来がどうなるか分からない程に過去1番でピリついてやがる、そんな状態のクロスベルに何が起きるか分からない『爆弾』のような男が入ったと言うなら・・・」

そう言ってグレンは手を鳴らしてミナズキを見据える。

 

「放っておくわけにはいかねぇな。だがあんたは言ってしまえば帝国の国賓とも言える立場、そんな奴相手にクロスベルが逮捕状なんて出せる訳がない。そこで思い至ったのが・・・」

グレンが向いた先、そこには未だに気絶しているクリストフの姿があった。

 

「そこにいるクリストフだ、奴はクロスベルタイムズで帝都での事件が載って以来様子が可笑しくなった。あの記事の中で1番気を引く、というよりクリストフに関係がありそうなのは間違いなくあんたが持っていたクリストフの物とそっくりな剣だった」

 

そして次にミナズキに向き直りグレンは苦笑いを浮かべる。

「んで、お前の来る日がある程度分かっていた俺らは何とかあんたがクリストフと接触しないかを考えていた、いたんだが・・・思ったよりも早かった。恐らくギルドであんたの目撃情報を聞いたクリストフは暴走、運がいいのか悪いのかクリストフとあんたは出会ってしまった。かなり最悪な形でな・・・」

「で、警察のあんたはそこに乱入したわけか」

 

「あぁ、旧市街はそこまで広くないからな。走って逃げる2人の女、そのうち1人は裏じゃそこそこ有名な運び屋のリルル、もう1人はあんたの連れだったから場所の特定は楽だったぜ。ただ想定外だったのは思ったよりクリストフが暴走していた事と俺の方が思ったより強めにぶっ飛ばしちまったことだな・・・」

そう言ってポリポリと頭を搔くグレン、ミナズキも呆れた顔でグレンがぶっ飛ばしたクリストフを見る。

未だに目を覚まさず白目を剥いた状態の彼を見てミナズキはため息を吐いた。

 

「おまけにそこに現れたのは我が悪友、もとい普段からよく殴り合ってる喧嘩友達のリンだ・・・遊撃士は仲間意識が強いし何よりクリストフをやったのが俺だと一発でバレた。だからもういっそのこと喧嘩しようと思ってな、あんたの事をよく見えないように俺で隠してリンたちを挑発して喧嘩に持ち込んだ訳だ!」

「冷静さを欠いた私も悪いがそこで喧嘩に持ち込もうとするな!そもそもお前は昔から・・・」

 

笑って言うグレンにリンが突っかかりそのまま言い合いが始まる。

ミナズキはその様をなんとも言えない顔で見る、その近くにエオリアがやって来て頭を下げた。

 

「ごめんなさい、冷静でなかったとは言え貴方に暴力を・・・」

「いや、別に良い・・・褒められた人間じゃない自覚はあるしこっちも騒ぎは起こしてたし・・・」

エオリアに謝られるとミナズキは特に気にした様子も無く首を横に振りそのまま言い合っている2人を見る。

 

「だいたいお前はいつもいつも・・・!」

「へいへいすみませんねー、お堅いリンさんよー」

「誰がお堅いだ誰が!?」

リンが噛み付くような勢いで罵声を浴びせそれをグレンが煽り更にヒートアップしていく。

 

「そろそろ止めた方が良さそうね・・・」

「いや、もう大丈夫だと思うよ・・・」

2人を止めに行こうとしたエオリアをミナズキが止める。

不思議に思ったエオリアがミナズキの方に視線を移すと彼は1つの曲がり角を指差す、やがてそこから1人の男性が姿を現した。

 

「あ・・・」

「《風の剣聖》は思っていたよりは優しそうな顔してるんだな・・・」

少し青ざめるエオリアを放っておきながらミナズキはその男の風貌に声を漏らす。

黒というより暗い紺色の挑発に赤と茶のコート、そしてミナズキと同じで太刀を武器とするその男はクロスベルの住人なら知らない者はいないほどの有名人だった。

 

「あ、アリオスさん・・・・」

「現場を見てある程度の事は推測出来る、後でクリストフ、それにリンも合わせて覚悟しておくように」

「は、はい・・・!」

男の言葉にエオリアが直立不動の体勢で背筋を伸ばした。決して怒鳴るような声色ではない、だが言い訳を許すことの無い張り詰めるような圧力があった。

 

「老師からは手紙で聞いている、迷惑を掛けたな弟弟子」

「いや、遊撃士協会に行った時に待てば良かっただけの話だ・・・です。初めまして、アリオス・マクレイン先輩」

「なるほど、律儀な割に敬語が下手なのも手紙通りか」

初めて会ったリィン以外の八葉の剣士、それも大先輩で剣聖でもある男にミナズキも下手くそながらに礼節を持とうと少し背筋を伸ばした。

 

それを見た男、アリオスは少し頬を緩める。

そしてまたスっと冷静な顔で背を向けてグレンに集中している故に未だにこちらに気付かないリンと変化には気付いたが誰が来たのかは気付いていないグレンの方へと歩みを進めた。

 

 

「この前もお前は・・・!」

「だからその時の事はとっくに謝って・・・あ」

言い合いをしている中、先に気付いたのはグレン。じっと見てくるアリオスと目が合ってしまいつい言葉が止まる。

 

 

そして──────

 

 

「謝るにしたってやり方というものが「リン」ある、だろう・・・」

努めて冷静な声が自身の名前を呼んだことでリンの動きがピタリと止まる。

そしてそのままゆっくりと、まるでブリキの人形のようにギギギッと視線を後ろに向ける。

 

そして視界に予想通りの人物が映ると明らかに顔色が悪くなった。

 

 

「あの・・・アリオス、さんこれは・・・えっと、その」

「何があったのかは検討がついている、とりあえず言うことはあるか?」

しどろもどろになるリン、そんか彼女にアリオスは冷静な顔で聞くとリンはミナズキの元に一瞬で跳んで来た。

 

「この度は大変申し訳ございませんでした!」

そしてそのまま恐ろしく速いスライディング土下座を決め込んだ。

 

 

 

 

30分後、遊撃士協会クロスベル支部2F───────

 

 

「常々言っていたはずだ、遊撃士たるもの冷静でいろと」

「はい、仰る通りです・・・」

「反省しています・・・」

「なんで俺まで・・・」

リンとエオリア、グレンは3人は正座し、アリオスによって淡々と説教されていた。

 

ちなみにこの様子を見ているのはミナズキだけではない。

その後合流したマローラとリルル、昼食を食べ終わったグレン以外の特務支援課、そして仕事が終わり戻ってきた他の遊撃士たちがいた。

 

 

「とにかくミナズキが無事で良かったです」

「(あんまりカッコ良くできなかったな・・・)」

安堵の表情を浮かべるマローラと格好の付かない再会の仕方を思い出ししょぼりしているリルル。

 

「しかしまぁ見事に怒られてるな」

「どちらも自業自得なところあるけどね」

呆れた顔のランディとすました顔のワジがそう零す。

 

「・・・なんか仕事から戻ってきたらリンさんたち怒られてるべ」

「グレンさんとの喧嘩はいつも通りなんですけどね、こういう光景もなんか慣れてきました」

「そう言えばクリストフが気絶した状態でベットに寝てたけどあれも関係あるんだべかね?」

「多分あるんじゃないですかね?」

若干の訛りのある青年と少し素人さが抜けない青年もなんとも言えない顔で見ていた。

 

 

 

「・・・・説教は以上だ、今後もしっかり心掛けるように」

「ガクッ・・・」

「はぁ・・・・」

「だからなんで俺まで・・・」

あらかた説教を終わらせたアリオスの言葉に説教をされていた3人はガクリと力尽きる。

それを見届けるとアリオスは改めてミナズキに向き直った。

 

「改めて、アリオス・マクレインだ。君の事は老師から聞いている」

「ミナズキ・バンシア、現在は帝国の士官学院でお世話になっている・・・よろしくお願いします」

2人は向き合い握手をすると直ぐに手を離し力尽きている3人を他所に席に着く、それに合わせるように他の面々も2人に注意を移した。

 

 

「早速だが訊ねたい、君は何をしにクロスベルに?」

アリオスの言葉に場は静まる、特にロイドたち特務支援課は先程とはうって変わって真剣な表情でミナズキを見る。

そして聞かれたミナズキは少し考えると答えた。

 

「調査、だな・・・」

「調査?」

「そう、通商会議前のクロスベルの調査だ。ついでに俺個人の用事もな」

「誰からの依頼なんだ?帝国の人間からなのは分かるが・・・」

「言っていいのか分からないから・・・帝国側で来る人、とだけ言わせてもらおうか」

 

ミナズキの返答に特務支援課はヒソヒソと話し出した。

「エリィ、帝国側の出席者は覚えてるか?」

「えぇ、確か宰相のギリアス・オズボーン、この前会ったレクター大尉、それに皇帝の名代としてオリヴァルト殿下が来るみたいね」

「その中の誰かって事ですよね・・・?」

ロイドの質問にエリィが思い出すように答えるとノエルもムムっと顔を顰めて考える。

 

そうヒソヒソと話す特務支援課にミナズキは苦笑いを浮かべると声をかけた。

 

「大丈夫だ、その中ではまともな方だから。許可が下りたら出来るだけ話す・・・表立っては無理だけど」

「そうか、すまない・・・ところで君の言っていた『ついで』とは・・・「おい、《死の精霊》」っ・・・」

 

ミナズキの返答にアリオスが代表して礼を言いミナズキが言っていた『ついで』の内容を聞こうとした時、ベッドの方から声がした。

 

皆が振り向くとそこにはまだぐらついているのか朦朧としているクリストフがよろよろと立ち上がる姿だった。

「俺の質問にも・・・答えて、貰うぞ」

「クリストフ、今は抑えろ」

「嫌です!兄の真相を知るまでは!」

 

アリオスの静止も聞かずにクリストフはミナズキへと詰め寄り始める。

しかし彼の歩みは1人の遊撃士によって止められた。

 

「クリストフ、さっさとベッドさ戻るべ」

「ドラウス・・・退け」

「聞けねぇな」

訛りのある喋り方をする遊撃士ドラウスがクリストフの前に立ち塞がりそのまま睨み合いが始まった。

そんな剣呑さを破ったのは話の渦中であるミナズキだった。

 

「別に良い、そもそも剣を持ち歩いてたのはいつか君に返す為だったんだから過程だって話す」

「ドラウス」

「・・・んだべか?」

ミナズキとアリオスに促されドラウスはクリストフに道を譲る、それを確認したクリストフは歩き始めるが今度はいつの間にか両手に手錠を掛けられていた。

 

「ちょっ・・・ローディンか!?なんだよこれ!」

「すみません先輩、流石にそうでもしないと何かある度に暴れそうでしたので」

素人さのある遊撃士ローディンが苦笑いしながら頬をかいた。

 

「ぐっ・・・ならこのままでいい、話を聞かせてくれ・・・兄は、キルクスに何があった?死んだのか?そのくらいは教えろ・・・」

地の底から唸るような声でクリストフが聞く、他の面々がミナズキに視線を向ける中ミナズキは少し重たく口を開いた。

 

 

「死んだよ・・・でも殺したのは俺じゃない。あの日俺は・・・俺たちは」

 

 

 

 

 

 

《蒐集鬼》の襲撃を受けたんだ─────

 




ご拝読ありがとうございました。


高評価、感想、お気に入り、質問お待ちしております。

次話もよろしくお願いいたします。

今回から少しずつミナズキの過去が見えるようになります、そこで質問です。ミナズキの過去編は本作品ページに載せるべきですか?

  • この作品ページに載せて
  • 過去編用の作品ページを用意して
  • 好きにしていい
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