We are…Lethal Protector !!   作:ヌルノルヌール

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お気に入り登録者数1000人を突破していました!本当にありがとうございます!!のんびりゆっくり更新ですが、これからもどうかよろしくお願いします!

今回のお話は幕間、ビデオ屋のありふれた1日をベースにお話を考えてみました。ちょっと長いです




閑話 ビデオ屋のありふれた一日
#18 EMERGENCY MISSION!! IN TO THE HOLLOW!!!


六分街近辺、とあるビルの屋上

 

ヴェノムはコンクリートの縁に腰を下ろして片手にチョコサンド、もう片方の手で風に揺れる新聞を広げていた

 

「結局、地下鉄改修プロジェクトは白祇重工が勝ち取ったか」

 

『2位と大差で落札…ま、前回もヴィジョンと白祇の一騎打ちみたいなもんだったんだ。そりゃそうだろ』

 

「その他は…“モッキンバード、警察署内の金庫を堂々強奪!”……“様々な街区のホームレスが行方不明”?」

 

ヴェノムが眉をひそめてページをめくるタイミングで突き刺さるようなサイレンが街に響いた

 

下を覗き込むと治安局の車両が列をなして、交差点を鋭いエンジン音と警告灯の光を交錯しながら遠ざかって行った

 

ニヤリと笑ったヴェノムはチョコサンドの残りを口に放り込み、新聞を丸めて脇へ置くと、立ち上がり進行方向を見据えながら触手を拳から伸ばし、ビルの壁を捉える

 

「ハハッ!!事件の香りだ!」

 

『この街で事件の香りしない日なんてないだろ』

 

「それもそうだな。こういう時は、“嗅ぎなれた匂いだ…!”のほうがいいのか?」

 

『かっこつけてる言葉を考えてる場合かよ! ほら行くぞ!!』

 

ヴェノムは勢いよく飛び上がり、向かいのビルの壁面を蹴り、しなやかにその身を滑らせて建物の間を駆けていった

 

 

同時刻・六分街

 

通りの出口を塞ぐ2台の治安局車両。その前で、2人の治安官が警戒態勢をとっていた

 

その視線の先、顔を青ざめさせ、強張った表情で立ち尽くす一人の青年がいた。アキラだ

 

「付近の街区で共生ホロウ災害が発生したため、六分街及び近隣街区は潜在危険区域に定められました。ホロウ緊急避難対応策に則り、臨時管制圏を立ち上げる必要があります」

 

硬質な言葉が鳴り響く中で、アキラは動けずにいた

 

(リンの通り道じゃないか…!)

 

そう、共生ホロウ災害が発生したエリアは、妹リンが仕入れに通る道の先

 

しかもアキラとリンは、とある出来事によりエーテル適性が著しく低下しているため、ホロウに長時間滞在すれば命の保証はない

 

その現実が、彼の足を地面に縫い付けていた

 

「安全のため、市民の皆さんは…っ!?」

 

その瞬間、治安官の動きが一変する。アキラに向けて構えられる銃

 

「なっ……!?」

 

しかし、よく見ると銃口はアキラの頭上を向いており、慌てて振り返るとそこには黒くぬめるような影があった

 

「ご機嫌よう、忙しそうだな」

 

ビルの壁に張り付き、ニヤリと微笑んでから降り立つ巨体…ヴェノムが、彼を真っすぐに見下ろしていた

 

「……!」

 

その白濁した目に睨まれ、アキラの背筋が凍りつく

 

威圧感に息を呑むのは彼だけでなく、背後の治安官たちも同じだった

 

(実際に会うと…これ程までに大きいのか…!!)

 

「くっ、ヴェノム!止まれ!!」

 

「止まらなければ発砲するぞ!!…六分街にヴェノム出現!至急応援を…!!」

 

銃口を向けられたヴェノムは一瞬だけ眉を細め、どこか困ったような顔をしながらため息まじりに自身に向けられていた銃口を触手で包み、そのまま地面に貼り付ける

 

「本当はこんなことしたくないんだ、アンタたちは真っ当に仕事してるだけだ。本当に心が痛むよ…だが」

 

「はっ…!?」

 

「ひぃ!?」

 

「アンタたちはもっと痛い目に合うがな!」

 

その言葉と同時に触手が伸び、2人の治安官の頭をガンとぶつけ合わせ、何が起きたのか理解する間もなく治安官2人は地面に倒れ込んだ

 

『お前…よくそんな心にもないこと言えるな』

 

「思ってるさ、砂糖の1粒くらいのサイズだが。さて、そこの……オマエだ」

 

ゴクリと喉を鳴らすアキラの前に、ヴェノムが一歩踏み出して問いかける

 

「困ってそうだな?助けはいるか?」

 

デッドエンドホロウの一件を目の当たりにしてから、アキラは確信していた

 

ヴェノムは決して無闇に人を襲う怪物などではなく、むしろ自ら危険へ飛び込み、率先して人を救おうとする、誰よりも"ヒーロー"に近い存在だと

 

アキラは拳を固く握りしめ、覚悟を込めてヴェノムに叫んだ

 

「……あぁ、僕の…大切な妹がいるかもしれない。お願いだ、助けてくれ!!」

 

「そうか。よし、オレ達に任せろ、優男。必ず助けてやる」

 

ヴェノムはそう言うと、背から伸ばした触手をコンクリートの壁に鋭く打ち込み、アキラの頭上に走らせた

 

「家で暖かいスープでも用意して待ってな」

 

そしてそのまま共生ホロウの発生した地点まで駆けて行った

 

『……なぁ、今のってデッドエンドホロウの時にボンプから出てた声じゃ無いか?』

 

「間違いないな、それにアイツは前ビデオ屋覗いた時猫又と話してた男だ」

 

「確定してんじゃねぇか」

 

 

 

入って暫くして、エンジンビホルダーやティルウィング等のエーテリアスを倒しながらホロウを進んでいくとボロボロになったオレンジ色の装備をつけている治安官と出会い、その後ろには怯えた女性が1人だけ座り込んでいた

 

「ヴェノム…!!」

 

「そう構えるな、助けに来た」

 

「お、お前の助けなど必要無い!!ぐっ…」

 

「怪我してるぞ?本当に必要無いのか?ン?」

 

ヴェノムが治安官に目線を合わせ、睨みつけていると治安官の後ろに居た女性を見て覚悟を決めた顔でヴェノムを睨み返した

 

「……食うなら私を食え。ただ、周囲の罪なき市民を庇護すると約束しろ!!」

 

「ち、治安官さん!!」

 

心配そうな声を上げる女性、そして睨みつけている治安官を交互に見てヴェノムはため息を吐いて治安官のことを掴み、そのまま肩に担ぎ上げた

 

「な、何を…!!」

 

「使い古されたボロ雑巾みたいな男を食ったところでオレたちの腹は満たされない。そこにいる牛柄服の女を食ってもな」

 

そう言ってヴェノムは怯えていた女性も触手で掴み、来た道をもどりはじめる

 

「きゃっ!?」

 

「オレたちは罪なき人を…まぁ、悪党も食わん。近くにホロウの出口があるのはお前のキャロットでわかるだろう?そこまで運ぶぞ」

 

「……あぁ、頼む」

 

「あの、ありがとうございます!!しょ、正直あの食べられるんじゃないかって気が気じゃなくて、でも逃げたら一生ホロウで迷子になって化け物になるん」

 

「自分のタンを食いたいのならそのまま喋ってるといい」

 

ヴェノムがそう言うと女性は慌てて口を閉じ、治安官は1度は解いた警戒心を更に強めていた

 

 

ホロウの裂け目へ2人を送り届けた後、ヴェノムは再びホロウ内部へと戻り、崩れかけたビルの屋上に取り残されていた男性2人を無事救助する

 

だが、肝心の"大切な妹"の姿はどこにも見当たらなかった

 

『居ないな…だいぶ奥まで移動してるのか?』

 

ひび割れた床を踏みしめながら、壊れたビルの中を進み、周囲をくまなく確認していく。しかし、そこにいたのは無数のエーテリアスたちばかりで、人の気配は一向に感じられない

 

「さっきの男2人も“見ていない”と言っていた。まさか、もうとっくにエーテリアスになってたりしないよな?」

 

『おいおい、縁起でもないこと言うなって!!あの人、根性あるタイプだろ!?』

 

そんなやりとりの最中、瓦礫の裏から微かにガラガラと崩れるような音がした

 

「……音がしたな、ここか?」

 

ヴェノムはそっと瓦礫を持ち上げる。するとその下にいたのは、ホコリまみれのショートヘアの少女。その目には大粒の涙が浮かんでいた

 

「ひっ……あぁ……」

 

「……こんにちは、お嬢さん」

 

ヴェノムの姿を目にした少女は、怯えた表情から安堵した表情になり、しゃくりあげながら彼の足に飛び込んできた

 

「うわぁあああん!!!死ぬかと思ったぁあああ!!」

 

「お、おいおい、オレたちは“ヴェノム”だぞ?」

 

いつもとは少し違う反応に戸惑うヴェノム。しかし、女性は泣きながらポツリ、ポツリと話し始める

 

「ぐすっ…ぐすっ……昔、2年前くらい。友達がホロウで貴方に助けられたって…ホロウレイダーに襲われてたのを…それからずっとずっと、『あの人はヒーローだよ。もし現れても絶対に逃げなくていい。助けてくれるから』って…」

 

その言葉に、ヴェノムは意外そうに目を見開いた。そして少し照れくさそうに触手を伸ばし、彼女の頭をそっと撫でる

 

「……そうか」

 

『2年前って…初めて俺たちがホロウに入った時の…なんか感慨深いなぁ』

 

しばらくの間、彼女は泣きながらヴェノムにしがみついていたが、ふいに思い出したように顔を上げ、真剣な目で訴えてきた

 

「……はっ!そうだ!!ねぇお願い!!“リンさん”を助けて!!パニックになっちゃった子を追いかけて、奥まで走っていっちゃったの!『線路に沿って奥へ向かう!』って叫んで…!」

 

「任せろ。だがまずは、お前を安全な場所へ送らないとな」

 

その時、背後から静かな声が響く

 

『その仕事、僕に任せてくれないか?』

 

振り返ると、スカーフを巻いた小さなボンプが瓦礫の影からひょっこり現れていた

 

「な、何このボンプ……!」

 

「心配するな、こいつはオレたちの知り合いだ。あの時以来だな、パエ…いや、ボンプ。元気だったか?」

 

『あぁ、おかげさまでね。ヴェノム、この子は僕が責任を持って連れて行く。君は“線路沿いに逃げていった女の子”を追ってくれ』

 

「あぁ、任された」

 

「ヴェノムさん!本当に、本当にありがとうー!!」

 

涙と笑顔で手を振る少女と、隣で静かに見守るボンプを背に、ヴェノムは線路に沿って、さらにホロウの奥へと足を踏み出した

 

 

 

 

「まさか…こんなところで反乱軍と鉢合わせるなんて…!!」

 

「わ、私のせいで…ごめんなさい…ごめんなさい、リンさん…!!」

 

「大丈夫、大丈夫だよ。きっと、もうすぐ…」

 

(お兄ちゃんが来てくれる…!)

 

共生ホロウの中で、リンと女学生は偶然居合わせた反乱軍の部隊と接触。瓦礫と崩れた建物を縫うように逃げてきたが、やがて辿り着いたのは視界の開けた広場。裂け目の先に進む間もなく、行き止まりとなっていた

 

「見つけたぞ、ったく。手間かけさせやがって」

 

無造作にポリポリと頭を掻きながら、反乱軍の男がゆっくりと歩み寄ってくる。その背後には重武装の兵士たち、そして一際大柄な完全武装メカ“ガーディアン”*1の姿

 

「まぁ、恨むんなら運のない自分たちを恨め。……ガーディアン、やれ」

 

反乱軍のリーダー格がそう命じると、ガーディアンは迷いもなくエーテルエネルギー銃《マーズ-74》をリンたちに向け、ゆっくりとチャージを開始した

 

銃口の先で明滅するエネルギーの光。少女は震え、リンはその身体を庇うように強く抱きしめた

 

(創作なら…きっとここで、ヒーローが現れて助けてくれる。でもこれは現実。残酷で、非情な現実!)

 

リンはぎゅっと目を閉じた。祈るように、誰かの名を心の中で呼ぶ

 

(お願い…お兄ちゃん……誰か、誰でもいい、助けて!!)

 

リンの目に涙が浮かび、エネルギーが放たれそうになった瞬間

 

「女の子に銃を突きつけるとはな……ナンセンスだ!!」

 

黒い触手が銃口を2人から逸らし、別方向へ発射させられる

 

「な、何ぃ!?」

 

リーダー格の男が驚きの声をあげると次はベゴンッ!!と鈍く響く衝撃音。何かが砕け、地に叩きつけられるような重い音が広場に響き渡る

 

「一体何が…?」

 

リンが恐る恐る目を開けると、そこにガーディアンを地面に押し潰し、その上に堂々と立つヴェノムの姿があった

 

「「ヴェノム!!」」

 

思わず歓喜の声をあげるリンと新たな驚異の出現にさらに絶望する女学生の声が重なり、その姿を見て無事を確認したヴェノムはリーダー格の男に話し始める

 

「反乱軍、ねぇ。新エリー都防衛軍ってのは、オレたちの身体よりブラックなのか? おまけに、大量の兵器と物資を盗まれて…この街の未来が心底心配になってきたな」

 

「ッ……撃てぇ!!」

 

リーダーの怒声とともに、反乱軍の兵士たちは一斉に引き金を引いた。銃声、炸裂音、叫びが周囲に響き渡った

 

だがヴェノムは、片手を悠然と前に掲げると盾のように広げて、銃弾をすべて防ぐ

 

「そ、そんなッ!?」

 

「臆するな!!撃て!撃ち続けろ!!」

 

反対の腕で地面に伏したガーディアンの左腕を引きちぎって、そのまま兵士たちの群れに向かってぶん投げた

 

「うぎゃぁああああ!!」

 

「おいおい! 音を上げて逃げ出した腰抜け共とはいえ、元軍人なんだろ? 少しは根性見せろよ!!」

 

動揺しながらも兵士たちは次々と手榴弾やバズーカを繰り出す

だがその全ては通じなかった

 

ヴェノムの触手が、腕が全てを弾き、叩き潰す。広場は一瞬で地獄と化し、反乱軍は一人、また一人と力を奪われていく

 

「悪魔だ…!」

 

「おっと、どこへ行く?忘れ物だぞ」

 

地面を這って逃げようとするリーダー格にヴェノムはガーディアンを持ち上げ、放り投げた

 

「う、うわぁああああああ!!!!」

 

数分も経たぬうちに、ヴェノムの前に立てる者はリン達を除いて誰も居なかった

 

「はぁ……所詮は腰抜けどもの寄せ集めか。何も楽しめなかったな」

 

「ヴ、ヴェノムだ…! も、もうダメ……食べられて死んじゃうんだぁ……!!」

 

「だ、大丈夫だよ!! ヴェノムさんは悪い人じゃないから!!」

 

怯える少女の手を取り、震える背中をさするリン。優しく、しっかりと

 

ヴェノムはそんな2人を一瞥して、小さく肩をすくめた

 

『……とりあえず、任務完了だな。この子たちを連れてホロウから出るぞ』

 

「おぉ、そうだったな」

 

『そうだったなってお前ッ!今の戦いで当初の目的忘れてたか!?』

 

「……ソンナワケナイダロウ」

 

『ちょっと小声でボソッと言うな、オイ』

 

「怪我は無いな、2人とも」

 

『あ、いやコラ話逸らすな…いやでもそっちの方が大事か』

 

エドワードが内心でため息をつくのをよそに、ヴェノムは歩み寄って少女たちに優しく声をかける

 

「う、うん!大丈夫だよ!!本当にありがとう!」

 

「な、なんでそんなにフランクに接することができるんですか!?あの、ヴェノムですよ!?怪物ですよ!?」

 

「心配しないで!この人はね、見た目がちょっと怖いだけで、すっごく優しいんだから!」

 

「……やっぱり見た目は怖いのか?」

 

「えっ?あー…そうだね。初めて会ったらやっぱ怖いかな。でかいし、迫力すごいし」

 

「……そうか」

 

『ちょっと傷ついてる?大丈夫だって。レインはお前のこと“可愛い”って言ってたろ?』

 

「傷ついてなんてない、全然……。ほら、さっさと行くぞ」

 

むすっとした顔のまま、ヴェノムは少女たちをそっと担ぎ上げ、ゆっくりとホロウの裂け目を抜けて外の世界へ戻る

 

「ここからなら、自力で帰れそうか?」

 

「うん!本当にありがとう!」

 

「…そ、その…ありがとうございます……」

 

「そんなに縮こまるな。オレたちが食うのは悪党だけさ」

 

「や、やっぱり人食べるんじゃないですか!?」

 

「冗談だよ。あんな連中の頭より、チョコ食った方がまだマシだ」

 

「チョコ?……そういえば前もチョコを報しゅ……」

 

リンが慌てて自身の口を塞ぎ、ヴェノムは目を細めながらジッと見つめる

 

「い、意外だねー!チョコレートが好きなんだー!」

 

((誤魔化すの下手クソだなコイツ/この子))

 

「……それじゃあオレたちは行く。治安局に電話するなり、家族に連絡するなり、ちゃんとしとけよ」

 

そう言って、ヴェノムは少女たちに軽く手を振り、建物の外壁を伝って上階へと登り、すっかり暗くなった街を駆けて行く

 

「猫又と居た時のボンプの声だった、それに完全にボロ出してたな」

 

『言い逃れの余地ゼロのやつだったな。はぁ、兄妹揃ってどっかポンコツなのかぁ?』

 

とある"兄妹のプロキシ"のことを心配しながら

 

*1
防衛軍がホロウ内での大規模作戦時にのみ出撃可能とする兵器。様々な武装を装備していることから巷では治安局の歩く武器庫と呼ばれている。




零号ホロウでニネヴェと対ホロウ6課に合わせるか、それともリンが共生ホロウ災害に巻き込まれるのを助けるところを書くか…ですっごく悩んで結果、共生ホロウ災害の方にしました。そのうえで書くの大変でした…

反乱軍同行は独自解釈です。あそこにいたってことは抜けたところ巻き込まれたんじゃないかなーと…ガーディアン持ってるし……

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