大学生探偵福来あざみ   作:あざジャス派の猫

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大学教授殺人事件2

 留守番電話から特定した来客を、教授の家に呼び集める。

 そこで警察が事情聴取を行う。

 

 当たり前だが一通り聞き終えても、事件に関与していた疑いのある三人は、誰も罪を認めていない。

 

 むしろ逆に窓も扉も鍵がかかっていて、完全な密室だったのだ。

 教授は自殺ではないかと主張するのが一般的だった。

 

 その間に私は事故現場を念視で調査し、怪しい箇所を発見していく。

 

 具体的には、扉から電話までの直線ルートだ。

 犯人像は周囲にモノを散らかしてるのに、そこだけしゃがみ込んで何かをしている。

 

 細かいところはわからなくても、何かしらの密室トリックを仕組んでいたのは明らかだ。

 

 私は両手を頬に当てて真面目な顔で考え、状況を整理していく。

 

「鍵はノートの下にあって、すぐ近くにはチェスの駒。

 それに少し伸びていた電話の録音テープは不自然だし、扉までの直線ルートは何も落ちていない。

 周りは酷く散らかっていたのに、受話器は外れてなくて正常に動いていたし──」

 

 それらの状況を順序立てて考えていく。

 密室トリックを完成させるために、犯人が何をしていたのか自ずとわかってくる。

 

 私はしばらく考えて、やがて結論を出す。

 

「きっと犯人は、電話の留守録機能を使って、鍵をノートの下にいれたんだ。

 うん、きっとそう」

 

 近くで暇そうにしているジャスミンさんが、私の推理が完成したのを見て声をかける。

 

「でも電話の留守録で、どうやって鍵をノートの下に入れるんだ?」

「それを今からやってみるから、警察と関係者を呼んでくれない?」

「わかった。他に何をすればいい?」

「留守録と同じカセットテープと、白手袋が欲しいかな」

 

 ジャスミンさんに他に入り用な物を頼む。

 私は自分の推理が正しいことを証明するために、準備を始めるのだった。

 

 

 

 その後は携帯で留守電を入れて、チェスの駒を逆さに立ててノートを支え、巻き取ることで扉の隙間から鍵を入れる。

 さらにノートの下に落とすトリックを実践した。

 

 犯人の白倉さんも逮捕されて、警察に連行されていく。

 

「いや~! 見事な推理! 事件が解決したのは貴女のおかげですよ! 福来探偵!」

「ああ、いやまあ、それより阿笠博士が取りに来たフロッピーを、すぐに返すことって出来ますか?」

「ふっ福来探偵の頼みでも、駄目ですよ! 証拠物件は一応、署で調べてからでないと!」

 

 まあ私も、ルール破りをする気はない。

 横溝刑事にも、犯罪行為をさせるわけにはいかなかった。

 

 コナン君をチラリと横目で見ると、どうやらこの場は諦めるようで、一度出直すことに決める。

 

「……どうして? どうしてお姉ちゃんを、助けてくれなかったの?」

「お姉ちゃん?」

 

 灰原哀ちゃんが、泣きながら私を真っ直ぐに見つめている。

 そしてコナン君はそんな彼女の声を聞いて疑問を口にするが、この場でその発言は流石に不味い。

 

「ジャスミンさん!

 哀ちゃんは気分が優れないようですし、今すぐ病院に送っていきましょう!

 ほらっ! コナン君も一緒に!」

「えっ? そうなのか? ……まあ、あざみーが言うなら、そうするけどさ」

 

 ジャスミンさんに言って、こんな何処に何があるかもわからない他人の家で、とんでもないことを口走りそうになっている哀さんを素早く保護する。

 そして阿笠博士に彼女とコナン君は私たちが送っていくことを伝えて、一足先におさらばさせてもらうのだった。

 

 

 

 出発する前に、乗用車を念入りにチェックするのは習慣になっている。

 何しろ味方だけでなく敵も多いので、一応警察が二十四時間体制で見張っていてくれていても決して油断できない。

 

 なので、焦っているときこそ冷静に調べないと駄目だ。

 取りあえず今回も問題ないとわかって、コナン君たちと一緒に車に乗り込む。

 

 ジャスミンさんに車を出してもらうと、哀ちゃんは取り乱しはしないが、まだシクシクと泣いているようだ。

 きっと私が姉を殺した黒幕と思っているのだろう。

 

 何やかんやで誤解されてる恨まれるのも慣れているが、気分が良いものではない。

 

「今から話すのは、他言無用にお願いします。

 家族や友人にも、決して話してはいけません。

 でないと貴方たちだけでなく、秘密を知った相手も危険になりますから」

 

 私は座席にもたれながら大きく息を吐き、ぐずっている哀さんに説明していく。

 

「確かに私は貴女のお姉さんである広田雅美さん、いえ……宮野明美さんを殺しました」

「やっぱり! 貴女ほどの! 貴女ほどの推理力があれば!

 お姉ちゃんのことぐらい! 簡単に見抜けたはずじゃない!

 なのに! なのに! どうしてよお! うわああああん!!!」

 

 大泣きしている哀ちゃんには悪いが、いくら推理が得意でも私は神様ではない。

 

 助けようとして行動してはいるけれど、全てを救えるわけではないのだ。

 宮野明美さんもその一人で、私が力不足だったせいで彼女は死んでしまった。

 

「おっ、おい、灰原。宮野明美さんは──」

「コナン君、彼女は死んだのです。どんな形であれ、それは事実です」

 

 そして私が殺したのだ。

 あのときは時間もなかったし、黒の組織の追跡を振り切るには、それしかなかった。

 他に何か良い手があっても、時間は決して戻らない。もう終わったことなのだ。

 

「ですが、もし彼女が生き返れるとしたら、どうです?」

「お姉ちゃんが? 嘘……嘘よ! 死んだ人間が、生き返るなんて!」

 

 普通はそうだが、宮野明美さんは一般的な死ではない。

 書類上や死体などは偽装したので、社会的には完全に亡くなっている。

 

「生き返りますよ。ただし、黒の組織が壊滅したら、ですけど」

「どういうこと? もしかして、それって!」

「ああ、灰原。お前の姉ちゃんは生きてる。

 ただ顔も名前も変わっちまって、別人になってるけどな」

 

 コナン君が補足してくれたが、この発言が下手をすれば教授の家で出た可能性もあるのが怖いところだ。

 

 敵地とは言わないが見知らぬ他人の家で、機密情報をベラベラ喋っては命がいくつあっても足りない。

 敵だけでなく、味方からも裏切り者扱いされて付け狙われるのは、マジ勘弁である。

 

「福来探偵が助けてくれたんだよ」

「そっそんな、私! お姉ちゃんの恩人に! なんて酷いことを!」

「気にしてませんよ。私が貴女のお姉さんを殺したのは、変わりありませんしね」

 

 正確にはシティハンターに依頼して、死ぬほど痛い目に遭わせただ。

 とにかく、社会的には完全に死んでいる。

 

「今言ったことは己の胸の内に留めて、絶対に口外しないでください。

 また黒の組織が壊滅するまで、連絡や面会も禁止です」

 

 哀ちゃんは黒の組織に追われているのに、そんな危険は冒せない。

 彼女もわかっているのか、泣き止んで今はしょんぼりしているが、何処か嬉しそうだ。

 

「今はお姉ちゃんが生きてるとわかっただけで、十分だわ。……ありがとう」

 

 最初はどうなるかと思ったが、納得してくれたようで良かった。

 

「問題は黒の組織は隠蔽工作やトカゲの尻尾切りが上手くて、滅多に表に出てこないことだけど。

 まあ、定年を迎える前には何とかなるでしょう。……多分」

「それはまた、随分と気が長いわね」

「焦って状況が好転するなら、いくらでも焦るけどね」

 

 黒の組織が関わっていると思われる事件や事故を調べても、いつも手がかりは途中で途切れていた。

 犯人や情報を握っている人も殺されていることが多く、全然尻尾を掴めていない。

 

 それでも三歩進んで二歩下がるように、少しずつだが追い詰めている。

 

「私は「結果」だけを求めてはいません。

「結果」だけを求めていると、人は近道をしたがるものです。

 近道した時、真実を見失うかもしれないし、やる気も次第に失せていきます」

 

 取りあえず焦りは禁物ということを伝えるために、コナン君と哀ちゃんにある台詞を口にする。

 

「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っています。

 向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかは辿り着けますよね?

 向かっているわけですからね。……違いますか?」

 

 二人は何も答えなかったが、鏡に映った顔を見ると真剣な表情だ。

 取りあえず私の忠告は伝わったようで、これにて一件落着だろう。

 

 だがそう思いきや、今度は先程から運転に集中して一言も喋らなかったジャスミンさんが、困った表情で私に尋ねてくる。

 

「あのさあ。アタシには何のことか良くわからないけど。

 宮野明美とその子は、姉妹なんだよな。

 もしかして、黒の組織に所属してた? でも、子供だろ?」

 

 姉だけが黒の組織に所属していたのかなど、ジャスミンさんがあれこれ考えている。

 せっかく哀ちゃんの問題が解決したのに、また別の厄介事ができてしまった。

 

 私はどうしたものかと考えて悩んだ末に、正直に話すことにした。

 

「ジャスミンさん、今から話すことも他言無用にして欲しいんだけど」

「それって上に報告するなってことか? 別にいいよー。

 正直、黒の組織の手が、公安や警察に及んでないとは考えられないしな」

 

 なので宮野明美さんを助けるときは、信用できる人にしかお願いしていない。

 しかし危険な賭けだったし、絶対に情報が漏れないとは言い切れなかった。

 

 何よりいくら元高校生探偵とはいえ、コナン君はまだ未成年だ。

 哀ちゃんが成人しているかはまだわからないが、二人共今は子供である。

 危険に晒すのは心苦しいし、もし正体がバレて襲われでもしたら、ろくに抵抗もできずに殺されてしまう。

 

 なので今はまだ、秘密にしておいたほうが良いと考えた。

 その辺りの事情もジャスミンさんに話すと、薬で子供に戻ったことが信じられないのか、驚いて冷や汗をかいていた。

 だが最後には信じてくれたし、誰にも話さないと約束する。

 

 一先ず情報を共有できたので、コナン君と哀ちゃんを送り届けたあとに、私も自宅に戻って今度こそゆっくり休むのだった。

 




そろそろモチベが低下してきたので、ここで一旦完結とします。

このあと色々あってコナン君たちをサポートして、原作で死亡するキャラを救済していったということでお願いします。
それではここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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