ぼざろ二期おめでとう!(遅い
久しぶりの投稿です。本当は2月には投稿したかったけどどうにも進まずズルズルと3月下旬になってしまいました。もうコタツ仕舞いしてる人も多いだろうに炬燵ネタ……。
そしてその間にぼざろも2期制作決定しましたね。本当にめでたい!アニメでぼ虹の絡み増えると良いなぁ。
虹夏side
「おふぁよ~ぼっちちゃん」
「あ、おはようございます虹夏ちゃん」
朝の6時半。起きると先に起きていたぼっちちゃんがコタツに入っていた。
「ぼっちちゃんは朝早いね」
「で、ですね。高校に通ってた頃は通学に2時間掛かってましたから」
「そっか。でももうウチに住んでるんだからもう少しゆっくり起きても大丈夫なんだよ?」
「な、中々習慣が抜けなくて」
高校を卒業したぼっちちゃんは今は私とお姉ちゃんが住んでいるSTARRYの上の家に一緒に暮らしてる。
事の発端は高校を卒業したぼっちちゃんがお母さんから
「少しは生活力を身に付けるために一人暮らししてみましょうか」
と言われてリョウと同じ理由で実家を出る事から始まったんだよね。
生活費なんかはギターヒーローの収益があるから問題なかったけど、ぼっちちゃんは自分が一人暮らしなんかして生きていける訳が無いって絶望してて、その様子はリョウの比じゃなかった。まぁリョウの場合は住まいが埼玉な事に不満は持ってたけど過保護な親から離れられる事に関しては嫌がってなかったからね。
でもぼっちちゃんは一人暮らしそのものに対して怯えてたからそれはそれは酷く落ち込んでて見ていられないレベルだった。
そんなぼっちちゃんを見かねてつい私が
「じゃあウチで暮らす?」
って言っちゃったんだよね。
リョウの時には言わなかったのにそういう提案をするのは良くないかもと思ったんだけど、ぼっちちゃんには生活力以前の問題があったからそれを考えたらそう言わざるを得なかった。
ぼっちちゃんの生活力以前の問題というのは、ぼっちちゃんが作詞やギターの練習を始めると没頭してしまうことだった。
ぼっちちゃんは今まで学校だったり家族との生活リズムもあって問題なく過ごしていたけど、歯止めがなくなってしまうと延々とギターを弾き続けるのが目に見えてる。そうなれば家事どころか食事さえも疎かにしてしまいそうでそれが怖かった。
リョウの場合は食事自体が好きだからそういう心配はいらないと思って一緒に暮らす案までは出さなかった。家事はたまに私がサポートすれば良いかなって思ったし。
でもぼっちちゃんが時間や食事を取るのも忘れてギターだったり作詞だったりとそうやって自分を追い込むのは火を見るよりも明らかで、流石に私が一人暮らしに待ったをかけたんだ。
とは言えぼっちちゃんが家を出るのは生活力の向上の為だから私が面倒を見てたら意味が無いので、ぼっちちゃんには生活費を入れてもらいながら私が家事を教えて、家事をわたしとぼっちちゃんで分担して行う事にした。ぼっちちゃんも一人暮らしに絶望してたから飛びつく様にその案に乗って、今は一緒に暮らしてるって訳だ。
……ただそれらは半分建前で、もう一つここで暮らす提案をした理由がある。
「今洗濯機をかけてますので」
「うん、ありがと。私もちょっとコタツで温まったら朝ご飯作るからね」
「あ、でもコタツは……」
温もりを求めてぼっちちゃんの隣に座ってコタツに入る。が、コタツの中に私の求める温もりは無かった。
「え、温くない」
「まだ電源を入れたばかりなので……」
ああ、そういうことか。でもそれなら……。
「ぴぇ!? 虹夏ちゃんの足冷たい!」
「へへー。ぼっちちゃんの足で暖まっちゃおーっと」
ぼっちちゃんの足に私の足を絡めて暖を取る。ふふふ、ぼっちちゃんの足はスベスベですなぁ。
「つ、冷たいしくすぐったいですよ」
「仕方ないじゃん。恋人を置いて一人だけ先にベッドから出てるんだもん。寒かったんだからね」
そう。もう一つの理由というのは、私とぼっちちゃんが恋人同士ということだった。
ぼっちちゃんからの告白を受けて、去年の夏休み頃から私とぼっちちゃんは交際を始めた。勿論リョウと喜多ちゃんや、お姉ちゃんやぼっちちゃんの家族にも伝えてる。
まぁそういう訳で、ぼっちちゃんが実家を出ることになって一緒に暮らす提案をしたのも私がぼっちちゃんと一緒に暮らしたかったからでもあったんだよね。
「え、えと、そういうことなら……」
ぼっちちゃんが私の両手を取ったと思ったら自分の口の所まで持ってきて。
「あ、やっぱり手も冷えてますね。はああぁぁぁ……」
と、温かい息をかけてきた。
「ぼ、ぼっちちゃん!?」
「こ、こうしたら手も温かいかなって思って……」
うへへ、とだらしなく笑って息をかけながら手を温めてくれるぼっちちゃん。
まったくぼっちちゃんは突拍子もなくとんでもない事してくるよね。こんなんされたら手どころか恥ずかしくて全身熱くなっちゃうっての。
「ど、どうですかね?」
「……まぁ温かいけどさぁ」
「あ、い、嫌でしたか……?」
恥ずかしさを誤魔化す為にどもって返答するとぼっちちゃんが落ち込んでしまった。
いやだってこんなんバカップルじゃん! そんなデレデレしながら「温かいよ〜♡」なんて言えないし!
「ちょっと恥ずかしいだけだよ。だからこっちで温めさせてもらおうかな?」
私の手を握っていたぼっちちゃんの手を離して、ぼっちちゃんのぷにぷにのほっぺを両手で挟んだ。
「あ、わわ……!」
「ぼっちちゃんのほっぺあったかいね。それに柔らかくて触り心地も最高だよ」
むにむにとほっぺを撫で回すとぼっちちゃんの顔が真っ赤になる。可愛いなぁぼっちちゃんは。もうキスだってそれ以上のことだってしてるのにこういう触れ合いでも顔を赤くしちゃうんだから。
そして暫く撫でまわしているとぼっちちゃんの目がトロンとしてきて熱が籠って、期待しているような視線を私に向けてくる。
あ、あれ? もしかしてキス待ち? 確かに手で顔を挟んで私の方に顔を向けさせてるしキスする前っぽいかも。
いやーもうぼっちちゃんってば甘えん坊さんだなぁ。朝からキスだなんて私達別にバカップルじゃないのにこんなんじゃ勘違いされちゃうよまったくまったく。でもぼっちちゃんがキスしたいなら仕方ないってもんだよね。
じゃあぼっちちゃん目を瞑ってね。んー……。
「おいそこのバカップル。そういう事は部屋でやれ部屋で」
ぼっちちゃんとキスをする直前声のした方へ顔を向けると、珍しく朝早く起きたお姉ちゃんがいた。
「あれ、お姉ちゃん起きるの早いね」
「なんか目が冴えちまってな。どうせ今日休みだし二度寝するのも勿体ないから起きたんだよ。そしたらバカップルのイチャイチャを見る羽目になっちまったけど」
バカップルだなんて失礼な。そんなにベタベタしてないんだけど。多分。
「あ、おはようございます、店長さ……」
「ん? 店長?」
「あ、いえ、お、お姉ちゃん……」
「良し。おはよう、ぼっちちゃん」
満足気に頷くとお姉ちゃんがぼっちちゃんの背中から抱き着きながら炬燵に入る。
「あばば……!」
「あーぼっちちゃんあったけー」
「ちょっとお姉ちゃん! ぼっちちゃんにくっつかないでよ!」
私の彼女なんですけど!?
「いいじゃん別に。毎晩ベッドでよろしくヤッてんだろ?」
「そんなにしてないし!」
週に一回はしてないもん!
「それにこんなの可愛い妹との団欒だよ」
「まだ妹じゃないでしょ! お姉ちゃん呼びまでさせて!」
「似たようなもんだろ。どうせ将来そうなるだろうし」
「それは……! まぁそうだけど。てか可愛い妹の団欒なら私で良いじゃん!」
「……お前は私とぼっちちゃんのどっちに嫉妬してるんだ?」
両方だけど悪い!?
「悪いなぼっちちゃん。こいついくつになっても甘えん坊でさ」
「い、いえ。そんなところも可愛いので」
でへへ、とだらしなく笑うぼっちちゃん。え、なに? 私ぼっちちゃんにまで甘えん坊って思われてたの?
「そら良かった。……ところでお前らさ、今日休みだろ? どっか出掛けたりしないのか?」
「え? うーん、特にお出掛けの予定は無いね」
「は、はい。なので今日はお家でゆっくりしようかと……」
「あーそうなのか……」
うーん、と考え込むお姉ちゃん。どうしたんだろう。
「悪いんだけどさ、今日は二人共適当にどっか出かけてくれないか?」
「え? なんで?」
「いや今日は私も休みなんだけどさ、今週は結構忙しかったから疲れてるんだわ。だから家でダラダラして疲れを取るつもりなんだが……」
「なんだが?」
「絶対お前らイチャイチャするじゃん? 見てるだけでシンドいから外出してほしい」
「はぁ!?」
どんな理由!? 私達だってバンド活動が忙しくて疲れてるからゆっくりしたいんだけど!?
「いやだって妹のイチャイチャ程見てて萎えるもんは無いしさぁ」
「じゃあお姉ちゃんも出掛けたらいいじゃん」
「一人で目的もなく歩き回っても仕方ねえだろ。ほら、タダでとは言わないからさ」
そう言ってお姉ちゃんがぼっちちゃんから離れて財布から諭吉さんを2枚取り出す。……え!?
「こ、こんなに!? 良いの!?」
「言ったろ、今週は忙しかったって。そんだけ売れたって事だよ。どうせ金の使い道なんて無いし、それなら可愛い妹達のデート代くらいはな。私から出掛けてくれって無理言ってる訳だし」
「お姉ちゃん……」
「それにさ、家でイチャついてても基本的にバンドに時間当ててるからデートとかあんまりしてないんだろ? 本気なのは伝わってるけどちゃんと恋人との時間も大切にしろよ。それでパーッと遊んで来い」
「……うん」
お姉ちゃん私達の事よく見てくれてるんだ。普段あんまり私達の事聞かないから関心が無いのかと思ってたけど、お姉ちゃんなりに気にかけてくれてたんだな。もしかするとイチャイチャを見たくないからとか変な事を言ってるのも私達を出掛けさせる口実なのかも。
「あ、あの、てんちょ、あ、お姉ちゃん。ありがとうございます」
「良いって良いって。その代わりと言っちゃなんだが、今度私の観賞用の衣装を着て撮影させてくれ」
「ヴぇ!?」
「おい」
やっぱりそんな事はないのかもしれない。
それから一通り家事を済ませてから私とぼっちちゃんは大きいショッピングモールまで来ていた。本当はお小遣いも貰ったし遊園地とかでも良かったけど前に未確認ライオットの選考待ちの時に遊園地に行ったらジェットコースターでぼっちちゃんの魂が置き去りになったりしてたし、何より寒いから大人しくショッピングモールでデートにした。ここは映画館とかもあるしね。
「ごめんねぼっちちゃん、お姉ちゃんのせいで急に外出になっちゃって」
「い、いえ。実際虹夏ちゃんとデートって確かに最近出来てなかったので」
「まぁねー。ちょっとくらい二人の時間作るべきだったな」
「リョウさんと喜多ちゃんにも言われてましたもんね」
「そうだねー」
バンド活動が忙しかったのもあるけど私もぼっちちゃんも付き合ったからといって浮かれてバンド活動を疎かにするような事をしたくなかったからより一層気を引き締めたんだけど、リョウと喜多ちゃんから「もう少し二人の時間を作ったら?」って言われちゃったもんな。
二人に失望されたくなかったって気持ちもあったけど逆に気を使われちゃ元も子もない。
「基本首を突っ込んでこないお姉ちゃんにまで心配されちゃったしね。今日はデートを楽しもう」
「で、ですね。……それにしても今日人が多いですね」
「入り口の所にセールって書いてあったしそのせいかもね。だから……」
「おひゃあ!」
ぼっちちゃんの手をギュッと指を絡めて握る。
「はぐれない様にこうやって手を繋いでおかないとね」
「は、ははははい……!」
ふふふ、顔を真っ赤にしちゃって可愛いな。ちょっとしたボディタッチなら慣れてきたみたいだけど公衆の場所で手を繋ぐのはまだ慣れてないみたい。
「でもこうして手を繋いでショッピングモールを歩いてると子供の頃を思い出すよ」
「な、何かあったんですか?」
「子供の頃はよく来てたんだ。お母さんとお姉ちゃんの3人で」
「そ、そうなんですね」
「で、ショッピングモールに来たらいつもフードコートでお昼食べてたんだ。そしたらお姉ちゃんがたこ焼きをね」
「分けてくれたんですか?」
「うぅん。取られた」
「え?」
「たこ焼きを取られたり、ハピネスセット取られたり、アイス取られたり、量が多い方を取られたり……」
「に、虹夏ちゃん……、顔、顔が怖くなってます……!」
おっといけないいけない。ぼっちちゃんを怖がらせちゃう。
「まー意地悪だったんだよね。……ぼっちちゃんはふたりちゃんにそんな事してないよね?」
「わ、私はむしろ取られてます。小学生になってどんどん私を舐めてますので……」
「あはは、甘えてるんだよそれは。たまに帰ると突撃してくるんでしょ?」
「ま、まぁ……」
多少お姉ちゃんに対して生意気なのは妹の特権だもんね。あれはあれで甘えてるんだよ。こないだなんてぼっちちゃんと一緒に実家に行ったらふたりちゃんにお姉ちゃんを取った人みたいな顔されたし。ふたりちゃんとは仲良くしたいしもう少しぼっちちゃんを家に帰らせないとな。
「……でもお母さんが亡くなってからはそれまで絶対手なんか繋いでくれなかったのに、それからはしっかり繋いでくれる様になったんだ」
「へぇ……。やっぱり優しいお姉ちゃんなんですね」
「うん。素直じゃないのは変わらないけどね」
もういい歳なのに何時までツンデレしてるんだか。
……でも何だろう。こうして手を繋いで歩いてるともう一つ何か思い出しそうな……。
「……あ、あれ」
「ん? どうかしたのぼっちちゃん」
急にぼっちちゃんがアクセサリー屋さんの方にふらふらと向かっていく。ぼっちちゃんがこういう店に向かっていくの珍しいな。
「これ、まだ売ってたんだ……」
「んー? それ、ぼっちちゃんが付けてる髪飾り……、とはちょっと違う?」
ぼっちちゃんが付けてるのと色は同じだけど形が違う。今付けてるのは四角だけど、これは星型だ。
「小学生の頃はこれを付けてたんです。よく覚えてないんですけど確かヒモが切れちゃって今のになったんですけど……」
「そうなんだ。可愛いねこれ」
「こ、子供向けの髪飾りですけどね」
「でもぼっちちゃんに似合うんじゃないかな?」
「む、子供っぽいって事ですか?」
ほっぺをぷくっと膨らませて不満げにするぼっちちゃん。
「ごめんごめん。だってぼっちちゃんって基本的に童顔だからさ」
「むぅ……」
ぼっちちゃんって可愛いってよりカッコいいって言われたいタイプだから拗ねちゃった。そういう所が可愛いんだけどね。だからこそ不意に見せるカッコいい顔が堪らなくもある。
でもこの髪飾り、どこかで見たような?
「ねぇぼっちちゃん、その壊れた髪飾りってどうしたの?」
「え? 壊れたから捨てたんじゃないですかね? ……あれ? でも捨てた覚えも無いですね」
「覚えてないの?」
「は、はい。実を言うとこの髪飾りが壊れた時なんか怖い事があって、その時の恐怖でよく覚えてないんです」
「えー……」
一体どんなトラウマが……。
それにしてもどこで私はこれを見たんだろう? 珍しくも無さそうな髪飾りでしたそれっぽいのをどこかで見かけただけなのかな?
「あ、あの、そろそろ行きましょうか。引き留めてすみません」
「ん? あぁ気にしないで。こうやってあちこち見て回るのもウインドゥショッピングの醍醐味だし……、ってうわ!?」
な、なんだ!? 急に人集りに呑まれて……!
「あっちの方で特大セールが始まるザマス!」
「あのブランドは私の物ですわ!」
「抜け駆けは許さぬぅぅぅ!!」
セール目当てのマダム集団の波か!! こ、これはマズイ! 握ってた筈のぼっちちゃんの手の感触も無いしこのままじゃ逸れちゃう!
だけど人波が治まった時には既にぼっちちゃんは見当たらなくなってしまった。
「えーどうしよう……」
これがリョウや喜多ちゃん、というか高校を卒業した普通の人間相手ならそこまで心配する必要無いんだけど、ぼっちちゃんだしなぁ……。
まぁスマホに電話掛ければ大丈夫でしょ。携帯取り出しポパピプペ、と。
ぼっちちゃんの番号に掛けるとコール音が流れてくる。けど中々出ないな……。って、あ。出た出た。
「もしもしぼっちちゃん? 大丈夫?」
『……あー虹夏』
あれ? 違う声だ。この声ってお姉ちゃん? もしかして……。
「もしかしてぼっちちゃんスマホ忘れてる?」
『みたいだな。私も着信がなって気が付いたわ。何かあったのか?』
なんてこった。こうなると探すの結構骨だな。
取り敢えずお姉ちゃんに状況を伝える。
『ふーん。まぁ大丈夫だろ』
「私もそんな深刻には心配してないけどさ、ぼっちちゃんだしちょっとね」
『大丈夫だって、ぼっちちゃんだってあれでもお姉ちゃんなんだしさ。……あ。なぁ虹夏。もしかしてお前リボン落としてないか?』
「は?」
何言ってんの? リボンならちゃんと手首に……、って。あれ?
「な、無い! リボンが無い!」
『やっぱり』
「え、どういうこと? 私もリボン家に忘れてる?」
『いや? ちゃんとお前身に付けてたぞ』
「じゃあ何で分かったの!?」
『いや昔もそんなことあったなーって思って何となく聞いてみただけだったんだけどな。まさかまた無くしてるとは』
ハハハ、と笑うお姉ちゃん。いや笑ってる場合じゃないんだけど!?
「ど、どうしよう……」
「大丈夫大丈夫、すぐ見つかるよ。それよかあんまり変に動き回るなよ。ぼっちちゃんスマホ持ってないんだからお前まで動いたら本当に逸れちまうからな」
んじゃ、と言って通話を切るお姉ちゃん。
むぅ……。今迂闊に動いたらぼっちちゃんと本格的に逸れちゃうのは確かなんだけど、あのリボンを大切にしてるのはお姉ちゃんも分かってくれてる筈なんだけどな。
でも何か気になる事言ってたな。昔にもそんな事があったって言ってたけど、前にも似たような事があってその時にもリボンを失くしたってこと? ……言われてみると確かにそんな事があった気がする。
あの時も確か私、お姉ちゃんと手を繋いでたら人ごみに揉まれてリボンを失くして……。
―――11年前―――
「あっちの方で特大セールが始まるザマス!」
「あのブランドは私の物ですわ!」
「抜け駆けは許さぬぅぅぅ!!」
わー! セール狙いのおばちゃん達の波が!
「あーもう! 虹夏、手を離すなよ!」
「う、うん!」
お姉ちゃんがしっかり私の手を握ってくれる。けどその時。
「あ! リボンが!」
おばちゃん達にリボンが引っかかって取れちゃった! ま、待って! 大事なリボンが!
「あ、馬鹿! 虹夏!」
おばちゃん達に流されながらリボンを追いかける。ついお姉ちゃんの手を離しちゃったけどあのリボンは絶対に失くせないもん!
「ま、待って……!」
だけどおばちゃん達の誰かにリボンが引っかかったまま離れていくリボンを見失って、私の足じゃおばちゃん達に追いつけなくてどこかに行っちゃった……。
しかも気が付いた時には。
「あ、あれ? ここどこ? お姉ちゃん?」
さっきと全然違うとこにいる。リボンを追いかけるのに夢中になって結構走っちゃったんだ。
ど、どうしよう。リボンはどっかいっちゃうしお姉ちゃんとは逸れちゃうし……。
「ぐす……」
うぅ……、ここどこ? リボンはどこ? お姉ちゃんはどこ?
「ひぐっ……、おかあさん……」
もう駄目だ、涙が止まらなくなってきた。そんな時に。
「だ、大丈夫?」
「ふぇ? ……え!?」
顔を上げると青と黄色の星が2個付いてる髪飾りを付けた可愛い洋服を着てる、戦隊物のお面をつけた私と同じ歳くらいの変な女の子が声を掛けてきた。何この子! 怪しすぎる!
「な、なに?」
「あ、えと、泣いてたからどうしたのかなって、思って、それで、あの……」
どんどん声が小さくなってく。すごく人見知りなのかな? 怖がる必要は無さそう、な気がする。
「ごめんね。ちょっと大事な物を探してたら迷子になっちゃって」
「そ、そうなんだ。何を探してたの?」
「赤い水玉のリボン。おばちゃん達に巻き込まれてそのままどこかに……」
お姉ちゃんから貰った、初めて結んでもらった大事なリボンなのに……。
「ひぐ……!」
「あ、な、泣かないで……! えっと、その、私も探すよ!」
「え?」
「ひ、一人で探すより二人で探した方が見つかるよ! た、多分……。だ、だから、その……!」
お面を付けた女の子が泣きそうな私の右手を両手で震えながら握ってくれて、
「大丈夫!」
そう言ってくれた。……不思議。初めて会って、顔も分からないのにどうしてこんなに安心するんだろう。
「わ、私じゃ頼りにならないかもだけど……」
「……うぅん、そんなことないよ」
空いていた左手で声が弱々しくなっていく女の子の手を握る。
「ありがとう。ほんとに一緒に探してくれるの?」
「も、勿論。じゃあ行こう!」
私の手を繋いだまま女の子が歩き出す。
……変な子。繋いだ手は震えてるし、手汗は書いてるし、どう見ても人と話すのが苦手そうなのに泣きそうな私の為に突然現れて助けてくれる。年齢も分からないしこんなに弱々しいのに、お姉ちゃんと手を繋いでるみたいに安心してくる。カッコいい……。
「あ、ねえ。そう言えば君は一人なの? 誰かと一緒じゃないの?」
一人でショッピングモールに来れそうな子には見えないけどな。
「あ、えと。実は私も親と逸れちゃって……」
「ええ!?」
私とほぼ変わんない状況じゃん!! てかそんな自分だって大変なのにそれでも声掛けてくれたのか……。
「じゃあこうしようよ! リボンとお姉ちゃんが見つかったら私も一緒に探すよ!」
「え!? そ、そんな迷惑かけられないよ」
「迷惑なんかじゃないよ! 探すのが迷惑なら今探してくれてるのも迷惑だって思ってるって事になっちゃうけど?」
「ヴェ!? そ、そそそそんな事ないよ!?」
「分かってるよ。だから、私も君の親を探すのは迷惑なんかじゃないよ。分かる?」
「う、うん」
「なら良し」
やれやれ。この子って人の為なら頑張れるけど自分の為には迷惑掛けちゃうって思うタイプなんだろうな。
……そう言えばバタバタしててこの子の名前聞いてなかったな。
「ねぇ、君の名前って」
「あ! あのいっぱい買い物袋持ってるおばちゃん達ってリボン引っ掛けた人だったりしないかな? セール帰りっぽいし」
「え? あ!!」
あの人達だ! 良かった、これでリボンが帰ってくるよ〜。
……って思ってたんだけど。
「ごめんなさいね。私達もセールに夢中になっちゃってリボンの事気付かなかったの。私達の誰も持ってないから途中でどこかに落ちたのかもしれないわ」
「そ、そんな……!」
「本当にごめんね。でも通った道は覚えてるからその通りを辿れば見つかると思うわ。私達もお詫びに探してあげたいけどもう家に帰って晩ご飯の支度をしないといけないから道順だけでも教えるわね」
そう言って道順を教えてくれるおばちゃん達。はぁ、振り出しって訳じゃないけど折角見つかったと思ったのに……。
「だ、大丈夫だよ。道はある程度絞られたしすぐ見つかるよ」
「……うん、そうだね」
そうだ、クヨクヨしてても仕方ない! 絶対お姉ちゃんから貰ったリボンを見つけるぞ、おー!
って意気込んだのは良いものの、通り道のお店の人とかに聞いたりしてもそれらしい情報はなく私達はベンチに座り込んでいた。
「はぁ……、どこ行ったんだろ」
「み、見つからないね……」
もう諦めるしかないのかな。お姉ちゃんとも逸れて結構時間経つから絶対心配してるし、この子も家族と逸れてるんだもんね……。
仕方ない、よね。
「……ごめんね。もう大丈夫だよ」
「え?」
「これ以上探しても見つからなさそうだし、リボンなんか家に沢山あるしさ。君の家族も探さないとだし」
うん、そうだよ。リボンなんか代わりはいくらでもあるもん。これ以上は本当に迷惑になるし。だからリボンはもう諦めよう。
だから、だから……。
「もう大丈夫、だか、ら……」
あ、やば。声、震えて……。
「み、見つける!!」
「え?」
「絶対、わ、私が見つける! た、多分、じゃなくて、絶対!」
今までお面越しでも俯いていたのに、私を真っ直ぐに見てそう言ってくれる。
あ……、少しだけお面の目の所から中が見える。この子の瞳、青色だ。透き通っててすごく綺麗な、青空みたいな目……。
「……は!」
「え?」
だけど急に近付けてた顔を遠ざけてすごい勢いで遠ざかってく。なになになに!?
「わ、私みたいなミジンコが不快な顔を近付けて……! あばばば……」
「気にしてないんだけど!?」
そもそもお面で顔見えないじゃん!
だけど女の子の勢いは止まらずに、モールの中の飾りの茂みの中にひっくり返って頭から突っ込んでしまった。し、死んだ!?
「だ、大丈夫!?」
「あ、う……、何とか……。って、あれ?」
女の子が急にひっくり返ったまま足をバタバタさせながら茂みをガサガサと漁り始める。スカートの中見えちゃうよ!
そしてスカートを抑えてあげながら様子を見ていると、
「取れた!」
と行って茂みからガサガサと這い出てきて、その手には私の大事な赤い水玉のリボンが握られていた。
「こ、これだよね?」
「う、うん!」
良かった、本当に良かった!
「ありがとう!」
嬉しさのあまりにギュっと抱き着く。
「あ、ど、どういたしまして。うへへ……」
「本当にありがとう。代わりなんかいくらでもあるって言ったけど、このリボンすごく大事なものだから……」
「そ、そうなんだ。見つかって良かったね」
「うん! お姉ちゃんに初めて貰った大事なリボンなんだ」
「そっか。じゃあ失くさない様にまた髪に結んでおかないと」
「あ、そうなんだけど。うーん……」
「どうかしたの?」
女の子から離れる。
お姉ちゃんがいつもは下手くそながらに結んでくれるけど、私はまだ自分で結べないんだよな。もっとぐしゃぐしゃになっちゃいそうだし……。
あ、そうだ。
「ねぇねぇ、君髪の毛長いし結んだり出来ないかな?」
「わ、私!?」
「うん。駄目?」
「だ、駄目じゃないけど、私みたいな駄目駄目な人間がそんな綺麗な髪の毛に触れるなんて、死刑は免れないんじゃ……」
「そんな物騒すぎる法律ないよ!」
髪の毛綺麗って言ってくれるのは嬉しいけど!
「駄目じゃないならお願い。ね?」
「う、うん……。でも櫛は持ってないからあんまり綺麗にならないかもだけど」
「良いよ良いよ! 自分でやるよりマシだろうし。横結びで結んでね」
じゃお願いしまーす! と言ってリボンを渡して後ろを向くと、髪の毛を纏めていってくれる。ちょっとぎこちないけど人の髪を結んだりとかしたことなさそうだしそれは仕方ないか。……でも、何で、同じ女の子に髪の毛を触られてるだけなのにこんなにドキドキしてるんだろう?
駄目だ、このままじゃ心臓がもたないや。気になってる事でも聞いて気を紛らわせきゃ。
「そういえばずっと気になってたんだけど、何でお面被ってるの?」
「あ、私人見知りだから人と目を合わせるのとか苦手で……。さっきキャンペーンかなんかでお面貰ったから話しかける時にちょうどいいから被ってたんだ」
「ふーん?」
「そ、それに私たまに変な顔するみたいで、怖がられちゃうから……」
「そっか」
変な顔って何だろう。急ににらめっこみたいなことしちゃうのかな? それとも急に顔が溶けたり顔のパーツがバラバラになったり……、なんて人間がそんな事になる訳ないよね。
「わ、私も聞いていい?」
「ん? なーに?」
「お、お姉ちゃんがいるってどんな感じ? 私一人っ子だから気になってて」
「え? そうなの?」
「う、うん」
ちょっと意外。一緒にリボン探してくれるくらい面倒見が良いからてっきり妹か弟がいるのかと思ってた。優しいし、良いお姉ちゃんになるんじゃないかな?
「うーん、そうだなぁ。お姉ちゃんはちょっと前まですっごく意地悪だったんだ。私の好きなご飯とか横から取ったりするし、私そっちのけでギターばっかりでさ」
「あ、あんまり仲良くないの?」
「前は良くなかったなぁ。でもちょっと色々あって、すごく優しくなったんだ」
「そ、そうなんだ。お姉ちゃんギター弾くんだね」
「うん。すっごく上手なんだ。私が落ち込んで塞ぎ込んでた時にギター弾いてくれて、それがすごくカッコよくて元気が出てきたんだ」
ま、さいきょーなのは音が大きいドラムだけどね! でも一番カッコいいのはギターよりもドラムよりも、ギターを弾いてるお姉ちゃんだなぁ。
「そんなにカッコ良かったんだ」
「うん。キラキラで輝いてた。お姉ちゃんのギターのお陰で私は立ち直れたんだ。あの時のお姉ちゃん、ヒーローみたいに見えたな」
「ヒーロー?」
「うん。すっごくカッコイイヒーロー!」
「そ、そっか。……じゃあギターで助けてくれるヒーローだから、お姉ちゃんはギターヒーローだね」
「ギターヒーロー?」
「う、うん」
ギターヒーローかぁ……。ふふ。ちょっとダサいけど、何かそれ良いかも!
「でもさ、今日は二人目のヒーローに会えちゃった」
「? そうなの?」
「うん。変なお面を付けて、オドオドしてるけど、すごく優しくて頼もしいヒーローにね」
「……え!? そ、それって、私?」
「うん。カッコよかったよ。その、クラスの人気者の男子とか、よりも……」
そこまで言って顔がカァって熱くなる。わ、私何言ってるの!? お、女の子に言う事じゃないよ!
「そ、そうかな? へへ、うへへ……!」
だけど当の本人はだらしなく笑ってる……。まぁ変に気付かれるより良いか。
そして暫くリボンを結ぶのに格闘していたけどようやく結び終わって、結んでもらった髪を窓ガラスに映して見てみる。
「ど、どうかな?」
……うん。ちょっと変だけどお姉ちゃんもこんなもんだし、それに結んでもらえたこと自体が嬉しいしこれで良いか!
「うん大丈夫!」
「よ、良かった」
「どうかな? 似合う?」
「う、うん! 可愛いよ!」
「えへへ! ありがとう!」
可愛いって言って貰っちゃった! お母さんにもよく結んでもらった時に可愛いって言って貰えて胸が温かくなるような嬉しさだったけど、今は胸がドキドキするような違う嬉しさを感じる。どうしちゃったんだろう私。
「ね、ねぇ、もう一つお願いがあるんだけど良いかな?」
「え? 何?」
「私ね、いつか叶えたい夢があるんだ」
「夢?」
「うん」
お姉ちゃんはバンドを抜ける時に将来自分でライブハウスを経営するって言ってた。それはきっと、音楽を始めた私の為なんだと思う。
だから私の夢は、お姉ちゃんに応える為に、お姉ちゃんの分まですごいバンドになる為に頑張りたい。そしてその時お姉ちゃんがいつか作るライブハウスをすっごく有名にしてあげたい。その為には武道館とかでライブが出来るくらいのすっごいバンドを作らないといけない。
「でもそれはすっごく難しくて、まだ何をどうしたらいいのか分からないし、……正直叶えられない可能性の方が高くてちょっと怖いの」
「う、うん」
「だからさ、いつか私が夢を追いかけてる時に不安でいっぱいになったら、また助けてくれないかな……?」
「え!?」
「今日みたいに一緒にいてくれたら頑張れる。そんな気がするんだ」
「わ、私なんかじゃ何の役にも立たないよ……」
「うぅん。そんな事ないよ」
本当になんとなくでしかないけど、この子がいてくれたらきっと私の夢が叶う。だって、私のヒーローだもん。
「信じてる。絶対助けてくれるって」
「……じ、じゃあ自信はないけど、その時は私が出来る事なら、頑張るよ」
「うん! あ、でも君が困ってたら今度は私が助けるから! どこにいたって見つけるからね!」
「う、うん。じゃあ約束」
「ありがとう! じゃあ指切りしよ!」
おずおずと差し出してくれた小指と自分の小指を絡めて誓い合う。名前も知らない女の子と。
「そう言えば名前をまだ……」
「虹夏!!」
あれ? 今の声、お姉ちゃん?
呼ばれた方へ顔を向けると、そこには息を切らせたお姉ちゃんが私の方へ向かってきていた。
「はぁぁぁ、やっと見つけた……! 虹夏お前な!」
わ、わわ! お姉ちゃんかなり怒ってる……! ま、まぁ一人で走り出してずっと逸れてたんだから当然と言えば当然なんだけど。
「一人でフラフラしやがって! どんだけ心配したと思ってんだ!」
「ご、ごめんなさい……」
怒りながらお姉ちゃんがどんどん近づいて来て私の方へ手をのばしてきた。
ゲンコツでもされるのかと思って目を瞑る。だけど予想していた痛みは来ずに、温かい何かに包まれた。お姉ちゃんに抱きしめられたんだ。力が強くて苦しい……。
「お、お姉ちゃん? ちょっとくるし……」
「……頼むから心配させないでくれ。お前にまで何かあったら、私は……」
……お姉ちゃんちょっと震えてる? お姉ちゃん怒ってるんじゃなくて怖がってたんだ。私に何かあったんじゃないかって、心配してくれてたんだ……。
「ごめんなさい……。どうしてもリボン失くしたくなくて……」
「分かってるよ。大事にしてくれてありがとな」
お姉ちゃんが身体を離す。そしてニコッと笑って。
「あいだぁ!!」
脳天にゲンコツを落としてきた。
「それはそれとしてお仕置きのゲンコツな。二度と勝手に一人でどっか行くんじゃねーぞ」
「は、はい……」
いたた……、油断した所にゲンコツは効く……。
「で、でもねお姉ちゃん! 一緒に探してくれた人がいるんだ!」
「ん? そうなのか? それらしい奴が見当たらないけど?」
「え?」
お姉ちゃんに言われて周り見る。あ、あれ? どこ行ったんだろ。ついさっきまで隣に居たのに……、っていた。お店の看板の裏から星形の髪飾りと横髪が見える。
「どうしたのそんな所で?」
「い、いや、あ、あのお姉さんちょっと怖くて……」
怖い? ……確かに私は見慣れてるから何とも思わないけどお姉ちゃんってパッと見チンピラさんだもんなぁ。
「大丈夫大丈夫。寝る時ヌイグルミ抱いて寝るような人だから怖くないよ」
「そ、う、なの?」
「うん。だからこっち来て。お姉ちゃんに紹介したいから」
手を握ってお姉ちゃんの所に戻る。
「……なんだぁ? このお面付けた変なガキは」
「ぴぃ!」
「怖がらせないでよ! 確かにちょっと変だけど私の恩人さんなんだからね!」
「変なのは否定しないのかよ」
だって否定は出来ないし。
「まぁいいや。妹のリボン探すの手伝ってくれたんだろ? サンキューな」
お礼を言いながらお姉ちゃんが頭を撫でようと手を伸ばす。
「ひいいいい!!」
だけど思いっ切り悲鳴をあげながら後ずさってしまった。う、うーん。これは人見知りって言うより、人を怖がってるレベルだなこれ。
「んなビビるこたねーだろ……。てか何でお面被ってんだよ。取れよ」
「いや、あば……! 私の顔なんて人様に見せるような物では……!」
「はぁ?」
やばい、お姉ちゃんがちょっと苛ついてる。お姉ちゃん内気って言うかウジウジしてる人嫌いだもんな。
「怖がらせないでってば。お面も取りたくないのに無理に取らせたら可哀想でしょ」
「む……。まぁ、そうか」
「ごめんね無理言って。そのままでいいから」
「う、うん。ありがとう」
「良いの良いの。じゃあ今度は君のお母さん達を探しに」
レッツラゴー! って続けようとした時、女の子のお面の紐と髪飾りの紐が急に切れて地面に落っこちた。
さっきの茂みに突っ込んだ時に切れ目が入っちゃってたのかな? なんて事を考えも女の子の顔を見た瞬間吹き飛んだ。
「え、可愛い……」
メッチャクチャ可愛い。何この子。変な顔になるとか言ってたから気になってたけど、すんごい可愛いじゃん。
「……え!? あれ!?」
お面が外れた事に気付いた女の子が慌てて顔を真っ赤にしながら隠す。
こんなに可愛いんだから堂々としてたらいいのに。と、そう言ってあげたかったけどこの子の顔を見てるとまたドキドキしてきて、可愛いって言葉が素直に言えなくなる。本当にどうしたんだ私は。
「えっ、と。あのさ……」
上手く言葉が出て来ずに私までしどろもどろになっていると、お姉ちゃんが凄い勢いで女の子に近付いた。
「さっきは怖がらせてごめんな。妹を助けてくれたお礼に是非そこのカフェで甘いスイーツを一緒に……!」
え、なに。何でそんなに鼻息荒くなってんの。目も明らかにヤバいし、お姉ちゃんが変質者にしか見えない。
「ひぃ! あ、あ、あの、そんな、大したことは、してない、ので……!」
「遠慮なんかしなくていいって。好きなだけ奢ってあげるから。はぁはぁ……!」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!!」
ヤバいヤバい!! 良く分かんないけど今のお姉ちゃんヤバすぎる! あの子もすっかり怯えきってるし!
そしてお姉ちゃんが手を掴もうとした時。
「ひあああああああああ!!」
悲鳴をあげて髪留めとお面を拾って全力で逃げ出してしまった。
「ま、待って!」
そう言って追いかけようとしたけど逃げ足が物凄く早く、あっという間に見えなくなってしまった。
「行っちゃった……。ちょっとお姉ちゃんどういうつもり!?」
「ち、ちょっとお礼をしたくてだな」
「めちゃくちゃヤバい顔してたよ!」
「いや、何かあの子の内気そうな可愛い顔を見た瞬間私の中の価値観がグルっと変わったような感じになってな。今までウジウジしたやつなんてウザいって思ってたのに、すっげー唆られた……」
「キモい!!!」
言ってる意味は分かんないけどとてつもなくキモい事を言ってるのは分かる。さっきまでのカッコいいお姉ちゃんはどこ行ったの?
「なぁさっきの子は名前は何て言うんだ?」
「後でゆっくり聞こうと思ってたけどお姉ちゃんのせいで聞けなかったんだよ!」
「なぬ!?」
「てかそんな事言ってる場合じゃないよ! あの子も親と逸れて迷子だったからこれから探す所だったのに!」
「は!? それは普通にマズイだろ!」
「そうだよ! ほら行こう!」
二人で急いで女の子を探し始める。だけどしばらくあちこち探し回ったけど見つからず結局この日、もうあの女の子とは会えず仕舞いだった。そしてあの髪飾りとお面も探している間に片付けられたみたいで、元の場所にはもう残っていなかった。
そして今、さっきのアクセサリー屋さんで星型の髪留めを購入して眺めていた。
そっか……。あの時顔が一瞬しか見れなかったし今と髪飾りも違ってたから思い出せなかったけど、ぼっちちゃんだったんだ。子供の頃助けてくれたあのヒーローはぼっちちゃんだったんだ。
ちゃんと私達、約束守れてたんだな。ぼっちちゃんがひとりぼっちで諦めそうだった時、喜多ちゃんが初ライブ当日にバックレて始まる前に終わりそうだった私の夢を助けてくれた時、あの指切りの約束をちゃんと守れてたんだ。
「虹夏ちゃん!」
そして今もまた、私のヒーローは私を助けてくれる。
「ご、ごめんなさいどっか行っちゃって。リボンがあの人達に引っかかったのが見えて、つい追いかけに……」
「……うぅん、ありがとう。見つけてくれて」
リボンを。そして、私を。
「うへへ……。あ、あれ? 虹夏ちゃんその髪飾り買ったんですか?」
「うん。ぼっちちゃんに返したかったんだ」
「返す、ですか?」
「うん」
あの日私の為に壊れて、失くしてしまったあの髪飾りを。お面の方は流石に無理だけどね。
「よ、良く分からないですけどありがとうございます。大事にしますね」
「うん! あ、そうだ。その髪飾りつけてくれないかな?」
「え? わ、分かりました」
ぼっちちゃんが今付けてるキューブの髪飾りを外して、私に渡された星型の髪飾りを付ける。……ああ、やっぱりあの子だ。星型の髪飾りを付けた綺麗な青い瞳の女の子。昔も今も、私のヒーローはぼっちちゃんだったんだ。
「ど、どうですか?」
「うん、似合ってる!」
「へへ、良かったです」
そして、今なら分かる。あの日ぼっちちゃんにドキドキした私の感情の意味が。その感情を何て言うのか、今なら分かる。
「ねぇぼっちちゃん。私ね、ずーっと言いたいことがあったんだ」
「な、なんですか? もしかして私みたいなミジンコが恋人なんてやっぱり嫌とか……!」
「違う違う! どうしてそうネガティブに考えちゃうかな、まったくまったく」
「す、すみません……」
「私が言いたかったのはさ、まずはお礼かな?」
「お礼ですか?」
「うん。約束守ってくれて、ありがとう」
私を見つけてくれて。
「それから……」
あの日からずーっと、子供の頃からずーっと、ぼっちちゃんの事が。
「大好き!!」