JK&JK   作:ペッタンコ将軍

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異変

8月の暑い日、都内の女子校である聖桜学園に通う今井涼香はクラスメイトかつ親友の近藤明美と一緒に銀座にいた。

新しくできたお菓子の店「スイート・ラパン」に寄る約束を果たすためだ。

 

既に学校は夏休みに入っていたが、彼女ら二人は白い半袖ブラウス、濃紺のセーラーカラー、赤いスカーフ、膝上丈のミニスカートの制服姿であった。

これは単に『制服が可愛いから毎日着ていたい』と言う女の子らしく可愛らしい理由からだ。

 

「スイート・ラパン」は銀座に新たに出来た店で、カラフルなマカロンや動物型のクッキーが評判であり、またゆっくりできるカフェも併設されていた。

店内に入ると、冷房が効いてとても涼しく、灼熱地獄のような外を一時忘れる事が出来た。

ショーケースに並ぶ様々な動物の形をしたクッキーを眺めながらはしゃぐ少女達。

「明美、見て! このウサギのクッキー可愛い!」

「私はこれが好き、このキツネのやつ!」

二人はしばらくの間カフェでお茶やお菓子を前にしながら楽しく雑談にふけった。

その後「お母さんも喜ぶだろうな」とお土産用にマカロンやクッキーを買った。

袋を手に提げて「また来ようね」と約束し、店を出る。

そこまでは普段と変わらない女の子同士の楽しい時間であった。

 

だがその日は違った。

 

遠くからこれまで聞いた事がないような鳴き声とも金切り音ともわからない音が鳴り響く。

そのあまりにも不快な音に、一瞬耳を塞ぐ二人。

「何?何の音?」

それと同時に大勢の群衆が悲鳴を上げながら、逃げ惑う光景が二人の目に入った。

「なに?何が起こってるの!?」

混乱する二人の真上に、更に巨大な鳥の様な影が横切った。

「今のは一体何?」

「わからない!でも早くここから離れよう!」

涼香は明美の手を引っ張り、その場から駆け出した。

次の瞬間、古代ギリシャ、あるいはローマの兵士の様な鎧兜で固めた謎の集団が、路上に流れ込んできた。

彼らは剣や槍を手に銀座の通りを駆け、民間人を襲い始めた。

「急いで逃げよう!!」

二人は手を繋いで走り出した。

気温36度の暑さの中、アスファルトが熱を放ち、汗が額を流れる。

混乱は瞬く間に広がり、逃げ惑う人々が押し合い、ワイバーンの咆哮が空気を震わせた。

涼香が「明美、こっち!」と引っ張ろうとした瞬間、人波に押され、手が離れた。

「明美!?」

振り返ったが、明美の姿は見えなくなっていた。

涼香は「明美、どこ!?」と叫んだが、群衆の叫び声にかき消された。

恐怖で足が震え、買ったばかりのお菓子の袋を落とし、マカロンが地面に散らばる。

鎧の兵士らが近くまで迫り、無抵抗の市民を切りつけ、槍で串刺しにしながら蹂躙するのが見えた。

涼香はすっかり恐ろしくなり、近くに倒れていた看板の陰に隠れ震えた。

「(一体、何が起こってるの!?お願い早く終わって!!)」

どれくらい時間がたっただろうか、周囲から市民の叫び声が遠のいた。

ゲートから侵攻してきた帝国軍により周囲一帯が制圧されたのだ。

「(明美…無事でいて)」

涼香はじっとしながら親友の無事を祈る。

そこへ鎧が揺れる音と共に足音が近づいてきた。

「!!!」

涼香は息を止め、じっとする。

足音は涼香の隠れた看板まで迫ってきた。

「(お願い、気付かないで!!)」

目を閉じ必死に祈る。

足音が止まった。

「(・・・・・?)」

恐る恐る目を開け顔を上げると、彼女の目の前には鎧で固めた屈強な男が数人立って、涼香を見下ろしていた。

「!!!!」

見つかってしまった。

帝国兵らはお互い顔を合わせるとニヤニヤしながら何かを話し合う。

それは英語ともどこの言葉ともわからない言語だった。

「・・・いや・・・」

帝国兵はゲスな笑みを浮かべながら震える彼女の腕を掴み、看板から引きずり出した。

 

周囲では沢山の帝国兵たちが店や市民の亡骸から戦利品を略奪していた。

他に捕まった二人の女性——20代のOL風の女性と、30代の主婦らしき人——が帝国兵に拘束され、泣き叫んでいる。

帝国兵は涼香の清楚で可憐な容姿——綺麗な黒髪と白い太ももが見えるミニスカート姿を相当気に入ったのか、彼女を二人と一緒に引っ張っていった。涼香は「放して!」と必死に抵抗したが、年端もいかない少女が屈強な大人の男の力にかなうはずもなく、連行されていく。

 

涼香たちが連れてこられたのはビルの間の路地裏であった。

帝国兵はまずOLからその魔の手を延ばす。

一人が剣を突き付け涼香たち二人を見張りつつ、順番で『戦利品』を楽しんでいった。

 

3人目の帝国兵がおぞましいお楽しみを済ませた時点で、

餌食となったOLは汚されたショックからか完全に放心状態となっていた。

次の瞬間、最後に彼女の体を楽しんでいた帝国兵は衝撃的な行動に出る。

ナイフを取り出し、放心状態の彼女の喉を掻っ切ったのだ。

『ぐべぇ・・・』

OLは首から血を吹き出し、暫く苦しんだ後に息絶えた。

幸か不幸か、涼香には直接見える位置ではなかったが、それでも

OLの断末魔の声から何が起こったかの予想は付いた。

 

そして二人目の主婦も帝国兵らの慰み者にされ、同じように帝国兵全員が楽しみ終えると喉を掻っ切られ殺されてしまった。

 

そしてとうとう涼香の番がやってきた。

どうやら帝国兵らは幼さを残す彼女を一番の楽しみにと考えていたようだ。

不気味な笑みを浮かべ、涼香に手を延ばす。

「嫌!!放して!!」

彼女は必死に抵抗するも、制服のブラウスを力づくで引き裂かれる。

スカートも引っ張られ裂けてしまう。

下着が見えてしまうがそんなことはもはや気にしている状況ではなかった。

「やめてぇ!!」

その時だった。

 

パパパパパ

 

外からか、微かに乾いた連続音が聞こえてくる。

 

「?」

 

この場にいる帝国兵らも聞いた事がない音のようだ。

彼らは一旦三人で何か話し合うと、一人が様子を見るために路地から出て行った。

残る二人は、続きをしようと言わんばかりに涼香にせまる。

「いや!!」

満身の力を込めて帝国兵を突き飛ばす。

帝国兵は激昂するどころか、寧ろ楽しさが増したかのようにニタリと笑うと、鞘から血に染まった剣を引き抜き、涼香に剣先を向け近づく。

「嘘・・・やめて・・・」

足に力が入らず、そのまま尻もちをついてしまう。

剣先が涼香に迫ってきた。

「お、お母さん・・・助け・・・て・・・」

涼香はいつの間にかポケットのキーホルダーを握りしめていた。

それは幼い頃母親から『きっと涼香に似合うわね』と家の鍵用にもらったお気に入りのハート型のチャーム。

涼香の脳裏に大好きだった優しい両親の顔が浮かぶ。

(いや・・・死にたくない!!)

彼女は目を閉じる。

その時だった。

 

「おい、やめろ!!」

 

不意に若い男の声が涼香の耳に入る。

声のした方向を向くと、どこかで見たような斑模様の服を着た三人の男の姿があった。

「!!」

それは陸上自衛隊の隊員だった。

声を上げた先頭の一人が、威嚇として空に向け1発発砲する。

お楽しみの所を邪魔された帝国兵は自衛官らの方を向くと、激昂し剣を振り上げ彼らに突進していった。

だが途中で彼の頭に軽快な金属音が鳴り響くと同時に、力なくその場に倒れた。

「!!!!」

それを見たもう一人の帝国兵は怖気づき、剣を落とすと反対側に向かって逃げ出した。

後続の自衛官が発砲するも、弾は外れたようだ。

「深追いするな!危険だ!」

自衛官らは周囲の安全を確認すると、膝をついたままの涼香の下に駆け寄ってきた。

「大丈夫?ケガは無い!?」

そう言って帝国兵を倒した自衛官が涼香の前に座り込む。

その顔はまだ若く、とても優しそうな青年だった。

「・・・・・あ・・・・あ・・・・あああああああああ!!!」

涼香はこらえきれず、彼の胸に抱き付き大声で泣きじゃくった。

「怖かったんだな、でももう大丈夫だ・・・」

そう言って彼は優しく彼女の頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

涼香たち生存者を乗せた陸自のトラックは、臨時避難所となっている上野公園に到着した。

公園の周りは民間人を守るため、武装した自衛官や警察の機動隊によって固められていた。その光景を見た生存者たちはようやく安心する。

「もう安全だ!!」

敷地内に入りトラックから降りると、現地に居た自衛官が上着の代わりのシャツを貸してくれた。

着替え終わり『これ着せてもらってたんです、お返しします』と防弾ベストを係員の自衛官に渡す。

多分全てが終わった後で彼に渡してくれるはずだ。

防弾ベストは返してしまったが、それに貼り付けてあったワッペンと『K.SATO』の文字は

少女の目にしっかりと焼き付いていた。

 

「こちらへ進んでください!緊急の手当が必要な場合はすぐに言って下さい!」

 

涼香は他の避難民と共に、誘導員に従い公園の中と進んでいった。

途中で再び、煙が燻ったままの銀座の方を振り向く。

 

「明美・・・」

 

未だ安否のわからぬ親友の名を呟くと、涼香は再び公園の奥へと進んでいった。

 

 

 

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