TSレグルスちゃんがヒロインの話を書きたかった…(無念)

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勢いだけで書いてみました。ラブコメにするためにレグルスちゃんの性格は多少マイルドになってます。口調もちょっと女性よりです。


レグルスちゃんの爽やかな朝

 

「あのさぁ…私が折角朝から君の家に来たというのにその本人が寝てるってどうなのかなぁ?わざわざ、と恩着せがましく言うつもりは勿論ないよ?夫を迎えに行くのは妻の勤め、私もそんな一般常識に則って君を迎えに来たんだ。ちょっと隣の家に来るぐらい大したことない労力だし、満たされた余裕のある私にとって訳ない話さ。…でも、それは私の都合であって君の都合ではないよね?妻が迎えに来ると分かっていたら普通は早く起きてある程度の準備をしておくものじゃないかな?勿論君が君の時間をどう使おうと勝手さ、君が朝遅く起きようと私にそれを咎める権利はない、ぐっすりと寝ているがいいさ。でもさぁ、夫婦ってのは共有財産がある訳。財産といえばお金や家、それに時間だって私と君の共有財産な訳だ。君は私が迎えに来るのを分かっていて、それでいて朝起きていないということは、君だけじゃなく私の時間っていう共有財産を奪う行為な訳。夫婦の共有財産の管理は夫の勤め、そこの所君は分かっているのかなぁ?」

 

これが〇〇年4月上旬午前7時、俺が目覚めて開口1番に飛んできた一言…というには長すぎるセリフだとは誰が思うだろうか。

 

自分の部屋の1人用ベットという、男子高校生ならばおいそれと入ってきて欲しくないパーソナルスペースもなんのその。上半身を起こした俺を見下ろすように、腕を組みながら彼女はそこにいた。

 

長くも短くもない、ある程度揃えられた白髪。日本に住んでいたらまず見ないような髪色、当然のようにそれと同じく日本人とは造形が違う整った顔立ち。普段は少しタレ目で優しげに見える目が、今は大きく見開かれている。

 

「おはようレグルス」

 

俺を起こしにきた彼女が俺の知らない不審者ということは当然なく、レグルス=コルニアスという俺の幼馴染兼許嫁だった。

許嫁なんて現代日本で聞くことはほとんどなく、それに加えて相手が外国人と来れば今の日本だと数えられるくらいなのかもしれない。

 

それは佐藤 明(サトウ アキラ)というちっぽけな純日本人には少し重い間柄だった。勿論これは相手が外国人だからというだけのことではない。

 

「うんうん、確かに挨拶は大事なことだね。人と人との会話の歩み寄りにおいて、まず挨拶から始めるというのは重要なことさ。それは夫婦だって例外じゃない。そんな当たり前のことをできない人間も多いけれど、やっぱり君は違うね。では、そんな君に倣って私もおはようと返そう」

 

彼女の今の話を要約するとおはようということだ。

 

おはようの四文字で済むことすら言葉を尽くさずにはいられないのが彼女という人間だ。

そんな彼女の相手をさせられている…というほど被害者面する気も毛頭ないが、支えるには少し重い相手だった。

 

「…まぁ色々言いたいこともあるかもしれないが、とりあえずすぐ着替えて下行くから先に飯でも食いながら待っててくれないか。母さんがお前の分も作ってるはずだから」

 

「……何故私の行動を君に指定されないといけないのかなぁ?勿論私に君の着替えをマジマジと見る趣味はないし、丁度お腹も空いているからご飯はいただくとするよ。そうなれば結果としてこの部屋から出ていくことにはなるだろうね。でも、それをあたかも君の指示に従って…なんて風にするのは私の行動の自由、意思の侵害だよね?私は私の意思をもって君の部屋から出て行くことにするんだ。そこの所を勘違いされると、いくら穏やかな私といえど看過できないよ?」

 

「はいよ。お前の意思ってことでいいからさっさと行ってくれ」

 

これ以上話されると時間がなくなるので急かすように彼女の背中を押して出口へと押して行く。

まだ多少時間に余裕があるとはいえ、学生の朝の時間は貴重だ。節約出来るところはしないといけない。

 

「なっ!?私を押すなんて重篤な私の行動の自由の侵害だ!言葉だけでなく行動でもするなんて、君は何を考えているんだ!いくら夫婦と言えどやってはいけないことがあるっていうのは常識的に誰もが分かる話だろう!?大体君はいつもーー

 

ガシャリ。

 

まだまだ何か言う彼女を部屋から閉め出して鍵をかける。

扉の外に出したくらいで彼女の口は止まる訳もなく扉の外で声が聞こえるが、一つ壁を隔ててしまえばそれは最早ノイズだ。…普段からほぼノイズだと言われれば否定はできないが。

 

彼女を追い出した後は素早く着替えて階段を降り、ご飯が置いてあるであろう台所へと向かう。テーブルに用意された料理は2人分で、共働きで朝が早い両親はすでにいない。

 

テーブルには既に彼女が座っていた。

 

人の家の台所で我が物顔でトーストを貪る彼女は、先程までブチギレていた様子はどこにいったのか、つまらなそうにテレビを見ていた。

 

熱しやすく冷めやすい、いや普通にニワトリ頭なだけかと心の中で思いながら自らも席について食事を開始する。

 

二枚目のトーストに挑戦する彼女を横目に自らも食事を進める。どうやら彼女はトーストに夢中だ。

食事中は割と静かなのは救いだな…と思うと同時に、これから数時間後には起こるであろう地獄に少しだけ頭が痛くなった。

 

「…なぁレグルス」

 

「…食事中になんだい君は、食事中に喋るのがマナーが悪いなんてことは小学生でも分かる基本的なことだろう?勿論私達の仲だ。ある程度マナーや礼儀は省略してもいいんじゃないか、という君の意見は汲み取れるし尊重出来る所があるさ、それは認めるよ。私はそこの所が分からない器の狭い人間じゃないからね。でもさぁ、それをもし第三者が見たらどうかってことは考えたかな?私は君が第三者から見てマナーが悪い人間になって欲しくないから言ってるんだ。勿論この場に2人きりなのは紛れもない事実だけれども、しかし人間っていうのは普段の行動、癖っていうのが咄嗟に出てしまうものなんだ。つまり私は外で君の癖が出ないように、評判を落とさないためにこうして言ってるんだ。それは勿論君も分かってくれるよね?」

 

「頼むからそれ、学校では抑えてくれよ?家の中なら好きにやって良いからさ」

 

なぁ、というだけでこれだけ言葉が返ってくる人間に学校生活が満足に送れる訳もないことは当然知っているが、被害を少しでも和らげるために言っておく。

言った所で学校に着く頃まで覚えているかは怪しいが、俺に出来ることはこれくらいしかない。

万事を尽くして天命を待つと言うが、俺に出来る万事はこんな小さなことだ。

 

「はぁ?それ、とだけ言われてもいくら私だって汲み取りにくいものがあるね。いや、勿論君の言いたいことは大体は分かっているとも。当然察せれるよ。でも察する、なんてことを人にさせている時点で私だけに負担を強いているのが分からないかなぁ?……まぁ私は優しい人間だからね、君が人に負担をかける人間にならないためにも、もう一度言い直すチャンスをあげるよ。君の真意を、誰にでも分かるように私に言ってごらん」

 

「そうだな…ちゃんと言語化しないのは悪かった。何事にも過剰に言葉を尽くすお前の精神は褒められる所があるのかもしれないが、学校では少し言葉を減らした方が物事が円滑に進むんじゃないかと思ってな」

 

「……そうだね、まずは謝罪と君の配慮の心は受け取ろうか。私はそれを受け取れない人間ではないからね。そして君の言いたいことは分かっていたし弁えていたさ。ただ認識の擦り合わせのために聞いたんだ、認識の擦り合わせっていうのは円滑なコミュニケーションにおいて大事なことだからね。そして、その答えとしては夫婦の間での言動と外の言動が違うなんてことは当たり前のことだってことだよ。誰とでもわけ隔てなく、とは言うけどもそれはあくまで綺麗事、社会で生きていく顔とプライベートの顔を使い分ける、なんてことは人間誰しもがやっていることなんだからね」

 

「そうか、分かってるなら良いんだ。お前も学校でいらないトラブルは起こしたくないもんな」

 

「トラブルを起こしたくはないという平和の心には私も賛同するよ。私は争いが嫌いだからね。平々凡々と穏やかな日々を過ごせればそれで十分、それ以上は望まない。私は私というちっぽけな私財を守るのが精一杯のか弱い女なんだから」

 

そう言うと彼女は満足したのか朝食の残りを食べ始める。

なんだかんだ時間管理というものはちゃんとしているのかもしれない、流石にこのまま喋り続けていたら時間がなくなってしまう所だ。

 

食事を終えて、荷支度を整える。

そうして全ての準備を終えて玄関の前に立つと、もう行かなければいけないのかと少し憂鬱になる。

これが少しだけで済んでいるのは過去に何度も経験したことであるからだ。

小学校、中学校、その他あらゆる初対面の人が多い行事への参加。その経験で、起こりそうなことはすでに予想できている。

予想出来たからって針で刺されるのは痛いもんだが、来ると分かっていれば耐えられないことはない。

 

そんな風に自らを奮い立たせながら、俺は玄関の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

秀麗(しゅうれい)高校。

 

それは俺と彼女がこれから三年間通うことになる高校だ。

眉目秀麗の秀麗という字を使うだけあって語感は頭に良さそうな学校だが、県内でも随一の偏差値が低い高校だ。

秀麗の麗を数字の0と置き換えて0点が集まるゼロ高なんて蔑称もあるらしい。蔑称の割には聞こえは厨二感があってカッコいい、むしろそっちで呼ばれた方が良いかもしれないと少しだけ思う。

 

そして生徒数は大体240人、2、3年が3クラスずつで、1年は2クラスだけらしい。

生徒数が先細りでなんとなく潰れそうな雰囲気を感じる学校だが、まぁ俺が通っている3年間を問題なく運営してくれれば俺としては文句はない。

 

そんな、同窓会をする前にはなくなっているであろうことが確定している学校を俺が受けた理由は2つある。

1つは近いからで、もう1つは彼女、レグルスがいけるレベルの学校がここしかないからだ。

 

あれだけ喋りが回る人間ならもう少し学力があっても良いと思うのだが、小学生の頃に教師が物を教えるということに対して、『教えるというのは私に足りない所があると言っているようなものだよねぇ!?それって人として失礼じゃないかなぁ!?』とキレるような人間であったから、学力もお察しという所だった。

それに対し、現在は授業中基本は黙って座っていられるようになったので相当進歩している。

 

そんな彼女の学力に合わせた学校に通う必要は俺は本来ない。県内一の進学校とまでは行かないが、それなりの所にいける学力が俺にはあるからだ。

 

人生で一度しかない高校生活の満足度を取るならば彼女と別の学校に行くのが正解だったのだろうが、俺が彼女が通う学校ということでこの学校を選んだのは……ぶっちゃけると怖いからだ。

 

それは別の学校を選んだ時に彼女が俺に怒ってくるとかそういうことではなく、彼女を放置するという行為が怖いのだ。

争いごとが嫌いとか言いながらトラブルを工場のように生産していく女だ。放っておいたら人を殺しかねないという妙にリアルな恐怖がある。

 

俺に彼女のトラブルを止める力なんぞあるとは思わないが、彼女がもし怒りに任せて刃物なんかを持ち出した時は、その手を掴むことくらいは出来るかもしれない。それから裁判所で証言して身元引受人くらいまではやってやろうかという気持ちはある。

 

そうして俺が裁判所で言うであろう証言を考えていると、いつの間にか学校の前まできている。

近いというのを選んだ理由にあげただけあって、徒歩で20分もかかっていない。

眠気覚ましにするちょっとした運動としては丁度いい距離だ。

 

ちなみにこの間も彼女は喋っていたが、内容は特に覚えていない。

彼女と付き合う上で、俺は適当に他のことを考えつつ、それでいて彼女に怒られない程度の話に沿った相槌をうてるようになっている。これを世間ではマルチタスクというんだろう。

 

「ふぅ…それにしても新しい環境というのはいつも不快なものだね。そもそも現状に満たされているなら新しい環境、なんていうものに本来手を出す必要はないんだ。満たされている人間ならば本来やるべきことは現状維持、過不足ない満たされた日常を大切にすること、それにこそ重きを置くべきだとは思わない?現状に満足していないから環境の方を変えてやろう、なんてのはいかにも低俗で我欲に満ちた浅ましい考え方だよね。あぁ、勿論私は違うよ?なんたって今私の横には君がいる。思えば君とはもう10年以上の付き合いだ。人生の半分以上の時間を君と過ごしているのだから、もはや私にとっての君は日常そのものなんだ。君がいる以上場所がどこかなんてものは些細な違い、それこそ今が朝か夜か程度の違いのようなものだよ。地球の自転という変えようがないもので起こる、誰にだってどうしようもない変化さ」

 

学校を見上げながら彼女は言う。

特に新しくも古くもない様相のどこにでもありそうな校舎だが、中学校とは一つ規模がでかいからか新鮮味は感じられる。

 

「まぁ俺をそう評価してくれてるのは素直に受け取らせてもらう」

 

「……そう!私は君を評価しているんだ。だってほら周りを見てみなよ、どいつもこいつも学校が変わったくらいでブサイクに笑っちゃたりなんかしてるんだ。私はそれが許せない。環境の変化であたかも人生が変わるなんて他力本願な我儘な欲望が、あの笑顔から滲み出ているんだよ!まぁ、100歩譲って内面で思っているだけなら私だって許すさ。内面のことは私には分からない、分かりようがないことなんだから。でもさぁ、それを表に出すのはいただけないよね。表に出すってことは、私や君がそれを目撃する可能性があるってことなんだから。満ち足りて凛々しい顔をして登校している、出来ている私たちに欲望まみれの顔を見せつけるなんて、到底私は許せない。私の気分を害した、なんていかにも我儘な考えで怒ってるんじゃない。出来てない人間が出来ている人間の足を引っ張る、この道徳心、配慮に欠けた、そして公共の福祉に反した卑劣な行為に怒っているのさ。これは義憤だよ、社会正義のために私は今怒っているんだ」

 

校門を通り過ぎて、同じように校舎に向かう生徒を横目に見ながら、心底嫌そうに彼女は言う。

色々と理由をつけてはいるが、彼女が他人の笑顔を自らが笑われていると思ってしまう被害妄想によるものだろうと俺は思っている。

 

「確かに学校が変わったくらいで何かが変わるなんて俺も思わない。俺にはお前がいるから」

 

お前がいるからをどういう意味で取るかは受け取ったものに任せるとする。

こういう言い回しをする時、もし俺たちが英語圏の人間ならどういう会話になるのだろうかと思う。一度翻訳にでもかけてみてもいいかもしれない。

 

「……っ!あぁ、やっぱり君は私のことを分かってる。私が君を好きなのは顔が良いからだけど、それとは別に君のその献身性は評価すべき点だよ。……勘違いしないでくれよ?別に君に献身性がなくたって私は君のことを愛している。君が殺人鬼でも性格破綻者でもそれは変わらない。何故なら私は君の顔が好きだから。君が今のままの顔でいる限り、私は変わらず君を愛そう。ただ、それとは別に良い行いをした人間は褒められ、認められるべきだってことだよ。あたかも自分が評価する側だ、なんて我儘な考えを無欲な私は到底もってはいないけど、君の善行が評価されないのは社会にとって良くないことだ。だから君の善行を拾えない社会の代わりに今は君のことを褒めよう。良く言った」

 

どうやら良い意味に受け取ってくれたらしい。

まだ授業すら始まっていないというのに不機嫌になられてもたまらないので、これはありがたい。

それと慣れない環境で浮かれる雑多な音で彼女の言葉があまり聞かれていないのも少しだけ良いことだ。遅かれ早かれのことではあるが。

 

上機嫌でクラスへと向かう彼女の後に続き、慣れない校舎を進む。

途中道が分からなくなったのか、さりげなく俺の後ろに周りこむ彼女を引き連れる形でクラスへと向かう。

1-A、そう書かれた看板を確認してクラスへと足を踏み込む。

 

そうするとクラスの視線の大部分がこちらに集まる。普通ならば一瞬で興味をなくし外れるはずのそれは、後ろの非日常的存在に釣られてか中々外れない。

クラスにいる人間は大体20人、1クラスが30人なので過半数以上はいる。偏差値が高くなく校則が自由だからか金色に髪を染めているものが2〜3名いるものの、それと比べても異質な白髪、明らかに外国人だと分かる顔立ちに、クラスの視線を集めてしまうのはしょうがないことだった。

 

あまり視線を集めすぎると怒り出すのが目に見えているので、少し彼女が隠れるような位置取りをする。そうして2〜3秒もすれば人は我に返るもので、視線は外れる。

まだ授業初日ということでグループも固まっていないのかそれほど煩くない教室内を歩きながら、自らの席に着く。

 

俺の席は黒板を正面に見て1番左後ろの席、いわゆる主人公席というものだろうか。本来ならば喜ぶべきところなのかもしれないが、苗字が佐藤だと出席番号順でこの位置になりやすいことは経験上知っている。

あと、ここで大事なのは自分の席ではなくて彼女の席だ。

俺が座った後に座る彼女の席は俺の目の前、これももう何度も見た光景だ。

 

出席番号を決める時に外国人である彼女は、レグルスではなくコルニアスの方で順番が決まる。あいうえお順だとコの次はサであるため、大体俺が真後ろになる。仮に俺の他にサトウがいても名前がアキラでアから始まる俺のが早い。そんな理由があって、記憶上彼女が俺の前の席から外れたことはない。

 

「また君が後ろの席とは…これが数回ならば運命と言えるのかもしれないが、ここまで続くともはや呪いと言うべきものかもしれないな。……いや、もしかしてこれ、君が仕組んでるんじゃないだろうね?別に君の近くにいるのは妻として当然悪い気はしないけれど、ただ作意的に君が私の後ろにいつもつけていると言うのなら、それとこれとは話が別だよ。はっきり言って気持ち悪い。だって、わざわざ私の後ろにつけるなんて、それは肉欲のままに私を視姦して、性の捌け口にしようということに他ならないだろう?そんなの私が、いや女性ならば万人が忌諱する行為だ。私の私に許されたちっぽけな自分を守るという行為を侵害する行為だ。そんなの、いかに相手が君といえど私は許せない」

 

彼女に作為的と言われると少し訂正しづらくはある。

当然の如く俺が彼女で肉欲を満たそうとしたわけではないが、この席順には作為が存在したことが多くある。

小学校、中学校、そして高校と、1年の最初の位置は完全に偶然だと思うのだが、それ以降は大体教師やクラスメイトの作為でこの組み合わせになる。

 

まぁ簡単に言ってしまうとある程度彼女と話せる(?)俺と彼女の組み合わせが第三者視点1番マシに感じるらしい。

腐ったものは同じ箱に、というと俺まで腐っているみたいだが、実際そういうことだ。

 

まとめると彼女の考察はあながち間違いじゃないということだ。……さて、どう返すべきか。

 

「俺にそんな意思はない。信じてくれ」

 

俺は彼女の目をじっと見つめてそう言う。気持ち普段よりも真剣な顔でしっかりと彼女の目を見て言う。

別に言葉を尽くして誤解を解いても良いのだが、経験上怒り始めると何を言っても無理な時は絶対無理で、彼女の罵詈雑言を聞き尽くすまで終わらないのだが、最近はなんとなくこの方法で上手く行くパターンが多い気がする。

 

正直、じゃんけんでチョキ出したら勝てる気がする。くらいのものではあるが、相手を知ればじゃんけんの勝率も少しは上がるものだ。

 

見つめられた彼女は心なしか頬が赤くなってきている。これが照れでなく普通にさらにブチギレる時があるのが彼女が一筋縄でいかないところ。

 

ーーはたして今回はどうだろうか?

 

「あのさぁ、信じてくれなんて言って…君は本当に人を信じさせる気があるのかなぁ!?本当に信じて欲しいならもっと言葉を尽くすべきだろう?考えられる自分が無実である理由を話して、私に全ての審判を委ねるのが人として当たり前の態度だろ!……言うまでもなく私には君を審判する権利があるよ。なんたって裁判を受ける権利は日本国民全員にあって、なおかつ君は現行犯だ。だったら私を審判者として、君が弁明を尽くすのが裁判というものの本来あるべき姿なんだ。信じてくれと言われてはい信じますと言う審判官がどこにいるんだい。君は理由を語れるはずだ、語るべきだ。それが出来るはずなのに君はそれをしなかった。それってさぁ、私には語る価値がないという、私の存在を軽視した行いだよね。……おいおいおいおい、まさか黙秘権なんてちゃちな言葉を使わないでくれよ?だって君は加害者である前に私の夫なんだ、夫なら妻に黙秘なんてことはできないんだよ。だって夫婦ならばお互い話せないことなんてない…そのはずだろう?夫が妻に黙秘権なんてそんな他人行儀なこと、あっていいはずがない!君は私の夫であり、同時に私を視姦した加害者。そうならば君はその2つの義務をちゃんと理解し、果たすべきなんだ。そもそも君は妻が夫を裁くという苦しみを分かっているのか?誰が裁きたくてーー」

 

 

ーーあぁ、だめかぁ。

 

どうやら今回はダメだったらしい。どんなに相手を知ろうと勝率100%のじゃんけんはない、そういう当たり前のことを彼女は気づかせてくれた。

 

そんな教訓を得ながら、俺は明らかに距離が遠くなった周りの机を横目に見た。

 

遅かれ早かれだ。

だからため息は吐かなかった。

 

 

 

 

 




全然話が進みません泣
深夜テンションで上げたので誤字脱字が多かったらすみません

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