「失礼します、先生。」
夕方のシャーレ。春原シュンはいつものように先生……剣持刀也の元を訪れていた。
「ああ、春原さん。今日も……ですか。」
「はい……お恥ずかしながら。」
そう言うと、シュンは剣持の側による。
「何度も言いますけど……本当は僕もこういう事は恥ずかしいんですよ。」
「でも、先生はしてくれるのですよね?」
「……そうだけれど。」
「だったらいいじゃないですか。今だけは、先生より年下のシュエリンを可愛がってください。」
いつものように、仕事の疲れをシュンは癒しに来ていた。普段は甘えられない立場だから、自分より年下の先生、よりさらに年下になった時、こうして甘えることで。2人とも、少し倒錯しているとは思っていた。けれどある種の満足があり、こうして何度も続けているのだ。
剣持は仕事をこなしつつ、シュエリンを可愛がってかまう。が、明らかに慣れていない。普段見せないような、甘い態度声をしているが明らかに無理があり、顔が強張っている。
「先生、人を可愛がるの、まだ慣れていませんね。」
「……僕はただの男子高校生だから。そんなどこぞのホストみたいには出来ない……よ。」
「ふふ。それでも頑張ってくれるんですね。」
「年相応に子ども扱いされたいのは、分かりますから。学生の身で仕事もするストレスも。」
「あら。なら……」
と、シュンは薬を飲み、元の姿に戻って言った。
「お姉さんが甘やかしてあげましょうか?」
「いえ。結構です。」
「つれないですね。ココナちゃんにはあんなに甘いのに。」
「それは……年下相手には甘くなってしまうじゃないですか。ほら。」
「ふふ。そうですね。」
シュンは笑い、剣持は慌てたように話題を変える。
「そうだ、今日の玄龍門からの相談で……」
そんな先生の様子に、シュンは少し悪い考えが浮かんでしまう。
(もし、小さい私が今の私みたいに……先生を甘やかそうとしたら、先生は甘えてくれるのでしょうか?)
まあ、それでも。先生はなびくことは無いだろう。
けれど、それは少しつまらないような気もするのだった。
「先生?このあと夕ご飯を食べに行きませんか?」
「いいですよ。他の人も……」
「2人で、です。」
「それは……」
渋る剣持の手を引き、シャーレから連れ出すシュン。剣持はその手を振りほどくこともできず、連れ出されるままになる。
(これくらいは青春、ですものね?)
普段は押さえている我儘も、今くらいは許されるだろう。
そうして高校生の後輩と2人きりで街を歩きだすのだった。
年上の幼女、をちゃんと子供としては見れるけれど
真っ当に可愛がれるかと言われたらそうではない。
甘い態度は取れても甘やかすことは慣れてなさそう。
それでも生徒の頼みは無下にしないし、
自分に好意のある女性の押しには弱そうだが一定のラインは
決して踏み越えない。
そんな剣持はシュンときっと相性がいいと思います。
本人が好きなのはココナやイブキだと思うけど。