【書籍発売】汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず 作:鋼我77
昔々、あるところに時間を操る竜蛇クロック・ブラックというものがおりました。時間を操る能力は大変珍しく、対応できる者はめったに居ない。おかげでクロック・ブラックはやりたい放題。ついには六大竜王の一匹に挑んでしまいます。
クロック・ブラックは狡猾でした。自分が一番勝ちやすい竜王を狙ったのです。その竜王は、速さが自慢でした。どれほど速く動けても、時間を操れば意味が無くなります。まんまと相手の強みを潰したクロック・ブラックは竜王を倒し、地位も財産も巣穴も奪ってしまいました。
かくして広々とした巣穴に自分の趣味百%の街を作りました。それが愚者楽土です。馬鹿が集まって俺のために金を持ってこい。そんな意味で名前を付けたそうです。
竜王にして覇王となったクロック・ブラックはたいそうイキりました。俺は最強。いつか
残り五匹の竜王は、これをたいして気にもとめませんでした。若いとそういう所あるよね、とかつての自分を思い出したりしながら静観しました。竜王
怖い竜王からの呼び出しのお手紙、もとい安い挑発に乗るクロック・ブラックではありません。格式で侮られぬよう丁寧な返信を返して、来るべき時のために力を蓄えます。
そうして勢力を広げていたクロック・ブラックの前に、あのドラゴンが現れたのです。名乗らず、語らず、ただ侵攻する。異世界の竜、スティールドラゴンです。
実際問題、彼は困ったドラゴンでした。コミュニケーションが取れず、ただひたすら鉱物を探し食べ続ける。邪魔する者は実力で排除。そんな彼がクロック・ブラックの領地にやってきたのは……日頃の行いが悪かったからとしか言い様がありません。
クロック・ブラックは配下の蛮王を何人も送り出しました。束になってかかれば勝てるだろう、と。しかし、駄目でした。鱗は堅く、怪力無双、スチームブレスで被害甚大。このままでは彼の名声は地に落ち、下剋上を狙うドラゴンたちが押し寄せてきます。
これではいけない、と重い腰をあげたクロック・ブラックはスティールドラゴンと対峙しました。この時点で彼はまだ事態を甘く見ていました。自分が時間を操れば、暴れるだけの能なしドラゴンなど楽に倒せると。
ですがやっぱり、駄目でした。堅い鋼の鱗には、爪も牙も通りません。時間を操っても、ダメージを与えられなければ意味が無い。しかもこのスティールドラゴン、常に身体から蒸気を噴出している。クロック・ブラックもドラゴンの端くれ、ちょっとやそっとの熱では倒されません。でも熱いのは間違いない。時間を操ってもこれはどうしようもありませんでした。
事ここに至って、クロック・ブラックは焦り出しました。一度愚者楽土に引き返すと、部下に命じて宝物庫を開けさせました。きっとそこには、望みの品があるはずだと。
そして竜王から奪った宝の中にそれがありました。竜殺しの剣です。相手もドラゴンならば、こればかりは無敵ではいられない。クロック・ブラックは配下の蛮王に厳重に呪いを掛けて、竜殺しの剣を渡しました。何故呪ったか? それはもちろん、裏切られないためです。クロック・ブラックの辞書に信用信頼の文字はありません。
こうして迎えた最終決戦。悪魔の血を引いていると嘯くこの蛮王は自分の仕事を果たしました。無敵の防御を切り崩し、スティールドラゴンに致命傷を与えたのです。なお、止めはクロック・ブラックが横からかっさらいました。そしてその時しくじって、自慢の牙を折っています(マリアンヌが取引で手に入れた牙は、この時のものです)。
こうしてなんとかスティールドラゴンを退治できたのですが、クロック・ブラックの腹の虫は収まりません。より完璧に、自分が勝利したと感じられねば傷ついた自尊心が癒やされないのです。
彼は各地から腕利きの鍛冶師を招集し、スティールドラゴンの素材で武器防具を作らせました。何せ堅すぎるし、特殊すぎる素材です。多くの鍛冶師がハンマーを投げました。しかし遠方よりやってきた奇妙な一団は、どんどん素材を使って武器防具を仕上げていきます。
春夫が使った武器の全ては、この一団が作った代物です。そしてあのドラゴンアーマーも、彼らの仕事でした。仕事の集大成として凄い物を作れと言われた一団は、言われたとおり最高傑作を作り上げたのです。
一通りの仕事を終えた一団は、報酬を受け取って去って行きました。本当は閉じ込めるつもりだったのですが、いつの間にか幻のように消えてしまいました。その一団が何者だったのか、クロック・ブラックは生涯知ることはありませんでした。
その後、ドラゴンアーマーは件の蛮王が使うことになりました。連戦連勝、向かうところ敵なし。これにはクロック・ブラックもにっこりです。しかしそこは駄目覇王、嫉妬の虫がうずきます。あんまり自分より有名になられると腹立たしい。
なので彼の武勇伝はだいぶボカされることになりました。後世に情報が残っていない理由がこれです。春夫が聞いたら彼の評価を最下位に落とすのを躊躇わないでしょう。
さて破竹の進撃をしていたドラゴンアーマーの蛮王ですが、ある日コロリとやられてしまいました。残念ながら詳細は不明で、重すぎる鎧だけがその場に残されました。なおこの時、使っていたグレートソードが行方不明となっています。そして流れ流れ、観月里奈の手に渡るのですがそれはまた別のお話。
この後、鎧を扱えるものがおらず仕方なく宝物庫行き。まあそのうち現れるだろうとのんびりしている間に新しい異世界を発見。よし、そこを侵略してさらに躍進するぞと息巻いていたら、いきなり未来の自分から『おまえ殺されるで』とメッセージが飛んできて。
これは不味いぞと計画をやり直し。対策を練っていたら、恨みと呪いをひっさげて一樹達がエントリー。哀れクロック・ブラックは討ち取られたのでした。なお、鎧を使える者をしっかり探していれば結果は変わっていました。慢心は竜をも殺す。
とっぴんぱらりのぷう。
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おまけのおまけ ミナカタ社 七章終了時点 強さトップテン
一位 藤ヶ谷一樹
多分、作品終了まで不動の一位。描写できていないけど、コツコツ地道に努力を続けています。
二位 マリアンヌ・ヴァルニカ
我らが魔女。ドスケベヒロイン1。手数の多さなら一樹を上回る。不老は失ったが、戦闘能力に陰りは無い。
三位 観月里奈
我らが断神様。ドスケベヒロイン2。こと切断に関しては理不尽な能力を発揮する。
暫定三位 入川春夫(ドラゴンアーマー)
ドラゴンアーマーを装備したときのみ、このランクに上昇する。ただし氷結系魔法、アビリティ、マジックアイテムを持ち込まれるとあっさり負ける。
バカ攻撃力、バカ防御力、バカ機動力、バカ回復力、バカ大量武器というバカの集大成。こいつだけジャンルが違う。
五位 国友道明
春夫が三位入ってるので飛ばして五位。日本の英雄。今回仕事が忙しくて異世界探索参加できなかった人。大変悔しがっています。こと速度という点においてはミナカタ最速。ただし長距離移動では流に軍配が上がる。
六位 御影小百合
今回生まれがはっきりしてしまった我が作品のマスコット。トントン拍子に能力が上がってきたがそろそろ鈍化する。これは成長限界ではなく、魔法の学習をより専門化しなくてはいけないため。なお、身体能力に関してはマナがある限り衰えはしない。永遠の美少女。
七位 御影勝則
才能では小百合に負けるが、魔法の理解度という点では上回る。また氷使いなのでドラゴンアーマー着た春夫の天敵でもある。絶対勝てないが、春夫自身は大変満足そうに頷く。そうでなきゃな、うん。
八位 乙川とわ
実は六位から八位まで実力は団子状態である。武功を学べば学ぶほど、彼女はアップグレードする。そして最近ミナカタに出没するようになった武仙様。あとはわかるな?
九位 梧桐三郎
ミスターマッスルマン。彼がこの位置にいる最大の理由は、上の連中にことごとく相性が悪いせい。やっぱりパワーキャラは辛いね。投げに吸い込みがつけばワンチャン。
十位 芦名宏明
ぶっちゃけ、九位以下はさらに団子であるため、半分ネタで彼を記載しておく。しかし超能力という対人特化能力は決してネタでは終わらない。大量に人間のモブ敵が出てくるとコイツが輝くってわけですよ。