アナハイム社ホビー部門   作:雁木まりお

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バイオセンサー

 アナハイムが売り出したモビルドールとバトル用の筐体が普及し、ガンプラバトルが世間に浸透し始めた。ガンプラバトルは兵器マニアや子供用の玩具という枠組みを超え、大人から子供まで楽しめるコンテンツとして人気を博した。そしていつからかこんな都市伝説がガンプラビルダーの中で流れ始めた。

 

『パチ組みより手間をかけたガンプラのほうが強い』

 

 モビルドールの運動性はプラスチック外骨格ではなく素体に依存する…武器を装備すれば攻撃力、装甲を増やせば防御力は上昇するが素体の強さが変わることはない。そのため単なる都市伝説として多くのビルダーは切り捨ててきたが、ごく一部には「塗装する前と後で動きが違う」「意思のようなものを感じた」などにわかには信じがたい意見を述べる者もいた。

 そしてそのごく一部の中にガンプラバトルのトップユーザーが多数いたことで多くのビルダーも単なる噂話として片付けられなくなってきた。しかし多くのビルダーは効果を実感できず、「やはり単なる噂話」として扱われるようになったが…

 

「うーん、やっぱり単なる都市伝説なのかな?」

「ロマンはあるんですけどねえ」

 

 アナハイム社ホビー部門のオフィスではいい年した大人たちがガンプラを片手に語り合っていた。おもちゃについて話し合うことは彼らの仕事の一環ではあるものの、まだホビー部門が小さかった頃は他の部署から冷たい目で見られていた。

 

「ガンプラバトルが強い人は作るのも上手というだけなのでは?」

「まあそうでしょうね…個人的には信じたいんですが非科学的すぎますからね…ガンプラの出来が良ければ勝てるというわけでもないですし」

 

実は以前にもホビー部門はその説を検証したことがある。プロモデラーに製作を依頼し、そのガンプラと同じ商品のパチ組と運動性能を比較する実験を行ったのだ。その結果どちらも性能差は全く同じ…その時はやはりこんなものかと結論付けられ、それ以後話題が挙がることもなかった。

 

「ガンプラの構造を理解しているから性能を引き出せている…といったところでしょうか」

「まあでも強いて言うなら…一生懸命作ったガンプラのほうが強い気がしますね。覚えてますか?この前昼食をかけたガンプラバトルを」

「ああ、あれですか…パチ組みのガンダムが勝ったやつ」

「あの二人の操縦技術は互角…まあ、その…手先の器用さは雲泥の差ですけどね。ただ、玄人が片手間に作った作品と、素人が必死に作った作品には込められた熱が違うと思いませんか?」

「あれは力作を壊したくないからシャアザク側が躊躇していたのでは?」

「ああ…そうか、そうですよね」

 

それもそうだ…むしろその考え方のほうが論理的だ。自分は何を熱くなっているんだろうか?

 

「いや、お恥ずかしい…なんだか思考が飛躍しすぎていたみたいで」

「いやいやそんなことないですよ。これも仕事の内、熱心さは自分も見習わなくてもいけません…そうだ、昼休みが終わる前に一度バトルルームに行きませんか?確かメンテナンスは午前中だけでしたよね」

「いいですね!今なら冷静なプレイングができる気がします!」

 

 現在バトル用の筐体は数日にわたるメンテナンス中、そのためホビー部門の面々は息抜きのガンプラバトルをできずにいたのだ。その日のガンプラは、なんだかいつもより自分に応えてくれる気がした。

 

 

 

 

 

 彼らは知らない。筐体の中に搭載されたあるシステムを。その名はバイオセンサー…本来モビルスーツに搭載されるそれは操縦者の意思を機体に反映させ、反応速度やコントロール精度を上昇させる効果をもつ簡易型サイコミュである。アナハイム上層部は密かに小型化に成功したバイオセンサーを筐体の中に搭載した。

 目的はニュータイプを見つけ出すこと。限られた兵士の中からニュータイプを見つけるより一般人の中からニュータイプを探すほうが数が多い分見つかる数が多い。人工的にニュータイプを作るより安上がりだ。手間をかけたガンプラが強いのは、ガンプラの製作者であるニュータイプの感情が高ぶっているからにすぎない。

 ニュータイプの未来がどうなるか…それはまだ未定である。

 

 

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