ようこそ雪のいる教室へ 作:きーちゃん
Cクラスの偵察を終え戻ってきた俺たちはベースキャンプの整備に取り掛かった。
一日寝てみてわかったがテントの中でもマットがないから地面が硬い。これから過ごしていくのは身体への負担が大きいと判断してどうするかクラスで案を出し合うとビニール袋を大量に敷くことでマシになるのではないかとなった。
ビニールは簡易トイレ用に学校から無料で提供されるものを使ったが量が量だけに流石に良い顔をされなかった。だからそこはビニールの中にビニールを詰めることで新品同然のものを終わってから返すことで話がついた。
「あっ、結構楽になったかもー!」
「そうだねー。ないよりは断然良いね!」
クラスからの評判も上々。
テントを移動させる必要があったからキャンプにいる生徒総出でやったが中々の重労働だった。けれどやる価値はあったと言えるだろう。
「神崎くんたちお帰りー」
ひと段落ついて休憩していると、神崎たちが戻ってきた。彼等にはAクラスの動向を探りに行ってもらっていた。
「お疲れ。どうだった?」
労いつつ聞いてみたが神崎は首を横に振った。
「見事に隠されていてわからなかった。まさか洞窟の入り口にビニールを張っているとはな」
「ふむ」
各クラスマニュアルでアイテムの価格は把握しているから、キャンプの様子を見てそのクラスがどれだけポイントを消費したか大雑把にだが予想することはできる。しかしそんなことしたところで誰も途中経過なんて気にしない。
なら、Aクラスには周りから隠したいことでもあるのかもしれない。
「ところで、金田はどうだ?」
「あそこで楽しくやってるよ」
指で示した先には金田が渡辺たちと周囲の地面に水を振りまいてる。夏真っただ中で気温が高いから水を使って少しでも涼しくしようという思惑だ。幸い水は井戸からたくさん持ってこれる。
最初は他クラスというだけあって金田も口数少なめに活動していたが、Bクラスの陽キャ集団につられるように今では積極的に動いて喋っている。
「そうか。あのまま普通にしてくれればいいがな」
「そうだね」
誰もそんな身内以外だからといって人を疑いたくはない。その思考はこのクラスが顕著だと思うがその通りだろう。だからこそ周りから疑われ恨まれるような行動ばかりをとる龍園が嫌われている。まぁあの性格で好かれてたらそれはそれでおかしく思うがな。
*
「やっほー。堀北さん、綾小路くん」
作業をしているとキャンプにDクラスの堀北と綾小路が来た。
一之瀬が堀北とポイント事情について情報交換している間に俺は綾小路に話しかけた。
「そっちの調子はどう?」
「あまり良いとは言えないな。まだまだ纏まりに欠けている部分が多い」
少し想像していたがDクラスはまだ人間関係の部分でも苦労が多そうだな。やはりポイント不足による余裕のなさが出ているのだろう。
1ポイントでも残したいと考える生徒と多少の消費は仕方ないと思う生徒で分裂しているそうだ。
「えっ! 高円寺くんリタイアしちゃったの?」
「ええ。残念なことにね」
あっちの会話が聞こえてきて綾小路も困ったようにしている。
「あいつはオレたちの悩みの種だ」
「彼、直前まで船上で肌を焼いてたけどそんなことになってたんだ」
「ん? 高円寺と会ったのか?」
「うん。妙に絡まれるというかなんというか。傍から見てて愉快だよね」
「その思考が羨ましいな」
高円寺は自我が強いからちょっとやそっとで行動を改めないだろう。本当にDクラスには同情が尽きない。
「そういえばCクラスの様子は見てきたか?」
「見て来たよ。龍園くんは相変わらず奇抜なことをするなって驚かされたよ」
綾小路たちもここに来る前に見て来たようだ。
「椿さん。あなたはCクラスのことをどう思ってるの?」
「どうって?」
「一之瀬さんはCクラスのことは警戒に値しないと判断しているようだけど、どう思ってるの?
あなたは鋭い観察眼を持っていて、全ては教えてくれないどこかさんと似た人だから何か知ってるんじゃないの?」
そのどこかさんは隣にいる人か。どうやら日頃から綾小路に腹を据えかねているようで、やり口が似ている俺にも矛先が向いたようだ。確かに俺も一之瀬たちには自分の考えをあまり教えず彼女等の思うままにやらせてるな。
「推測にはなるけど、Cクラスは今日中にみんなリタイアするんじゃないかな。あそこにいるCの金田くん以外はね」
「あなたたちもCの生徒を保護してるの?」
「えっ、堀北さんたちも?」
「ええ。伊吹さんという女子をね。頬を赤くしていて、殴られたらしいわ」
「こっちも同じだ」
ここまで綺麗に二クラスにCの生徒が分散しているのは怪しい気がする。金田と伊吹、その二人共が龍園のやり方に納得がいかず追い出されたのに何故行動をともにしてないのか。異性だから警戒したのか? それで別々に歩いて各々別クラスに保護された? 出来すぎだな。
「お話し中すみません。一之瀬さん。中西くんはどこにいるかわかりませんか」
「中西くんは今海の方に行ってるけど、どうしたの?」
「手が空いたのでお手伝いをしたくて」
「ありがとう。でも入れ違いになるかもしれないから、あっちの千尋ちゃんたちの助けに行ってくれる? 私に言われたって言えば大丈夫だから」
「承知しました」
仕事を求めに来た金田は言われた通りに千尋たちの方に行った。一応千尋はリーダーだから普段より気を張っているが大丈夫だろうか。
「彼は随分献身的なのね」
「あっ、違うんだ。私がお手伝いを頼んだんだ。最初保護するって言っても聞かなくて。申し訳ないからって。だから衣食住の代わりに働いてって言ったんだ」
「そう……」
誰にでも対して慈愛的な一之瀬に堀北は理解できないといった顔をした。この様子なら伊吹は浮いた存在なのか。いや、よそ者は普通そうなるか。
「あまり長居しても悪いから私たちは行くわ。情報ありがとう」
「こちらこそ。最終日まで頑張ろうね」