ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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いやホントにありがとうございます。
こんなに読んでくれる人がいるとは思わなかった。
こんなド下手な文章を読んで下って本当に嬉しいです。

よかった " 私……お気に入り百到達したら…一日に一話投稿するの…… " とか言わなくて。

前回予告した通り、今回は集と葬儀社のメンバー達のからみに焦点を当てた話にしようと思います。

原作だと意外に少なかった気がする日常パート


じゅううううぐおわああああ


#15葬儀社~days~

「何を考えている?」

 

深夜、部屋の中でこの部屋の持ち主が心ここに在らずのいのりにそう声をかけた。

 

「気になるの……?」

 

いのりは裸の上半身に心電図の電極を貼り、腕に輸血の血がつまっていた袋に繋がったチューブが刺している。

無論 本物の医療用器具である。

 

輸血の血はいのりの物だ。

なぜかはいのり本人も知らないが、いのりの血にはアポカリプスウイルスの発症を抑える能力があり涯はなぜかそのことを知っていた。

だから涯は定期的にいのりの血を摂取して自分の体内にあるウイルスを抑えていた。

 

今や日本人のほぼ全ての国民がウイルスに感染しているが、いのりがいなければ涯はとっくの昔にキャンサーが身体に広がって砕け散っていたであろう。

 

「……ますます " あの女 " に似てきたな……」

 

「…………そう……」

 

メンバーが見たら絶句する程弱々しい姿にもかかわらず、涯は普段と変わらない調子で言う。

そんな涯の言葉にいのりの胸に、小さな痛みがはしる。

 

「嫌なのか……?」

 

「…………」

 

( " あの人 " に似る……、私が消える……? )

 

いのりには確かに消えることへの恐怖がおそっていた。

 

「……ここに来たときの人形のようなお前はどこにいった………」

 

「………」

 

涯の言葉にいのりは目を伏せる。

 

「集の側は楽しいか?」

 

「わからない」

 

今のいのりにはそう答えるしか無かった。

集の近くにいる時は、胸の中に穏やかで暖かな気持ちがずっと満たしていた。

時々 集の予測不能の行動に、心臓が止まるかと思う事もあったりした。

 

そして……彼といる時は心から安心でき、自分でも驚くほど自然に笑顔が溢れた。そんなことは涯の近くに居ても無かった。

 

だが今は痛かった。

 

自分が涯のところに向かおうとしていた時の会話、そして彼の表情の全てが胸を締め上げる。

 

『ずっと一緒にいていい?』

 

集が連行される前の自分の言葉、そして施設での銀髪と真紅の眼に変わった集の言葉……。

 

前者は自分が涯から言われ 胸の痛みに耐え唇を噛みながら言った。

そして後者は心から集を愛おしく思い……その心に従い頷いた。

 

しかし今のいのりには、どちらが自分の心のものなのか……

 

 

 

アノヒトモシュウガスキダッタ

 

 

………分からなかった。

 

気付けば涯は寝息を立てていた。

いのりは椅子から立ち上がると、部屋から出て歩き出しいつの間にか集の部屋に立っていた。

 

集ならばこの胸の痛みをなんとか出来る。

集ならば優しく迎えてくれる。

 

そう思いながらもいのりの手が部屋のノブに伸びる事は無かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

四日目、模擬戦まで後5日

 

毎日の習慣として身についてきた時間に集は目覚めた。

もう六月だというのに朝はまだ少し肌寒い。

 

「雨が降って梅雨になれば少しは暑くなるかな?」

 

ベッドから起き上がった集はそんなことを呟く。

時計を見るとまだ六時前、集は まだ寝てようか? とも考えたが、よく思い出すと毎朝欠かさず行っていた朝の鍛錬をここ数日は不測の事態が重なって実践出来ていなかった事を思い出した。

 

集は手を顎に当てて少し考える……この部屋の中で腹筋や腕立てなど簡単に出来るものでもいいが、出来ることならこのアジト内を見てみたい。

 

朝の方針が決まり集はベッドから出ると、椅子に掛けてあった葬儀社の服に着替えると早々部屋から出て行った。

 

 

鍛錬と言ってもさすがに走ってランニングするわけにもいかないので、集は足のヒザが胸にぶつかるまで高く上げ歩き出す。

一見するとかなり間抜けな図だが、けっこう足の筋肉を使う。

 

しかし集はなんだかスッキリしない。

 

「朝の訓練を持久走に出来るか綾瀬さんと掛け合ってみるか……」

 

勝手に外に出て怒られるだけで済めばいいが、万が一アンチボディズの兵士に遭遇したら取り返しがつかない。

外で思う存分鍛錬がしたければ、やはり綾瀬やツグミの助けが必要だ。

 

集はヒョコヒョコ歩きながら ウン と大きく頷いた。

 

 

一時間程たち、だいたいアジト内を見て回った集は最後に食堂に足を運んだ。 ただお世話になるのも落ち着かないな…… と考えた結果、じゃあせめてゴハンでも作っておこうと思い至ったのだ。

 

集はさっそくキッチンの冷蔵庫や棚を開けて材料を確認する。

 

「わっ すごい量……」

 

キッチンの一画にあるドアを開けると、そこは食料庫のようで大量の食料が備蓄されていた。

メンバーの人数を考えれば当然だが、それを考慮しても相当な量である。

これなら一年か二年は安泰だろう……もちろん何事もなければ……だが。

 

集はメンバー達が集まる前に済ませてしまおうと準備を始めた。

 

人数が人数なので集は巨大な鍋やフライパンに、水や油や切った食材を次々に放り込む。

 

と食堂のドアからチラホラとメンバー達が姿を見せ始める。皆キッチンに立つ集を珍しいものでも見る目で見る。

 

「おはようございます 集さん」

 

ふと元気な子供の声が食堂に響く、集が声のした方に目を向けると中学生に上がる前くらいに見える少年が集に笑みを向けていた。

 

「おはよう えっと……」

 

「あっ そういえば こうして話のは初めてでしたね」

 

少年はすみませんとお辞儀する。

 

「僕の名前は (きょう)て いいます。よろしくお願いします」

 

「よろしく 知ってると思うけど桜満集だよ、よろしく」

 

「はい! ……ところで集さん料理出来るんですか?」

 

「うん 、あんまり凝ったものは無理だけど一般家庭レベルなら……」

 

「へ〜 、 すごいですね!」

 

梟は慣れた手つきで鍋とフライパンをかき混ぜる集の手元を、しげしげと眺める。

 

「そんな大層なものじゃないし、難しくもないから梟君もすぐ上手くなれるよ」

 

「ホントですか!!」

 

梟は集の言葉に目を輝かせる。

 

 

「おはよ〜 。あれなんで君がゴハン作ってるの?」

 

「あれ?あんた そんな器用な事出来たの?」

 

しばらくすると 眠い目をこすりながら歩くツグミとその後に続いて、車椅子に乗った綾瀬が現れた。

 

「おはよう。 綾瀬さん ツグミさん」

 

「あはは もう知らない仲じゃないんだから呼び捨てでいいよ」

 

「そう ? じゃあ おはよう 綾瀬 、ツグミ 」

 

「私は呼び捨て許可した覚えはないんだけど?」

 

「ご……ごめんなさい、綾瀬さん」

 

綾瀬の眼光に押された集は慌てて言い直す。

 

綾瀬は ふん と鼻を鳴らすと、

 

「まっ、あんたが模擬戦で勝つような事があったら考えてあげるけど……」

 

少し語気を緩めてそう言った。

 

集とツグミは目を見開き綾瀬の横顔を見る。

 

「ふふ、じゃあ楽しみにしてようかな?」

 

「ええ楽しみにしてなさい、悔しいとすら思えないくらい完膚なきまで叩き潰してあげるから」

 

「それは…ちょっとおとなげないんじゃないかな?」

 

「ゆうべ乙女の秘密に土足で入り込んだ罰よ」

 

微笑み合いながらトゲのある言葉を掛け合う二人を、ツグミと梟が呆然と見る。

 

「な ……なんか二人とも仲良くなってない?」

 

「なに言ってるのよ ツグミ 、どこ見ればそう思うのよ」

 

「そうだよツグミ。綾瀬さんの暴言が聞こえない?」

 

二人のただならぬ雰囲気を纏った満開の笑顔を真正面から受けたツグミは、タジタジと後ろへ下がる。

梟は 喋りながら器用に作業を続ける集の手元に目を向けていた。

「まっ 僕が言いたいことはただ一つで、" もうすぐ出来るから大人しくお座りして待ってろこのやろう " って事だけですよ?」

 

「ええ分かったわ、気にせず準備を続けてね?私にクソマズイ料理を食べさせた反省文を書く準備もついでにね」

 

ツグミは二人の会話が昨日と違い、信頼感が混ぜこぜになっている事(本人達も無意識だが)に気付かず、お互いの言葉を文字通りの意味に受け取り背筋に冷たい冷や汗がダラダラと流れ出す。

 

なにか話を逸らすものは無いかとツグミはあちこちに目を走らせる、 と 食堂内に入るよく知った人影を見つけ救世主を見た気分になる。

 

「あっ 、いのりん おはよう!!」

 

その瞬間 集の身体が固まる。

 

昨夜の事を思い出し、どのような表情をすればいいのか分からなくなり 時間の感覚がなくなる。

 

「手…止まってるわよ」

 

「 えっ ああ」

 

集は綾瀬の言葉で我に返る。

 

「 ふん しっかりしてよね……。黒焦げの朝ごはんなんかゴメンだからね」

 

「はい ……すみません………」

 

綾瀬はきぶすを返すと車椅子を転がしテーブルに向かった。

 

ツグミは二人の纏う雰囲気が変わった事に およ?およ? などと言いながら首を傾げ綾瀬の後に続く。

 

集は手を動かしながら綾瀬を目で追った。

 

「……シュウ……」

 

いのりの声を聞き、集の鼓動が跳ね上がる。

 

「 おはよう…いのり。もうすぐ出来るからちょっと待ってて 」

 

その動揺をなんとか抑え平静を装う。

 

「……シュウ、……あのね……」

 

「……? どうしたの?」

 

集はいのりの様子が少しおかしい事に気付き 集はいのりの言葉を待つ。

 

「………その……ごめんね………」

 

「…えっ?」

 

しかし いのり はそれ以上なにも言わずそのまま逃げるように立ち去ってしまう。

 

「 あっ、いのり!!」

 

集がわけが分からず、立ち去るいのりに呆然とする。

 

「………いのり………」

 

「 集さん なにか手伝う事はありませんか?」

 

梟はそんな集に気遣ったのか……声をかける。

 

「 …あっ。うん、じゃあ味噌取って?」

 

梟は はい と二つ返事で冷蔵庫から味噌を持って来た。

集はいのりの事は気になりながらも思考は頭の端に置いといた。

 

 

 

朝ごはんが完成し、メンバー達がテーブルにつき各々食事を始める、メンバー達は特に味には文句が無いらしく周囲とだべりながら食事を進める。

「わあ すごくおいしいです集さん!」

 

「いや、普通のものを普通に作っただけだし……そんな大げさなものじゃないよ……」

 

梟は集の作った米のご飯 味噌汁 野菜炒め を仕切りに口に運ぶ。

なんて事無いはずの質素で一般家庭に出るような朝ご飯だが梟は大喜びだ。

世渡り上手だなあ などと集は思いながら周囲へ目を向けると、箸で野菜炒めをついばみ口に運ぶ綾瀬が目に入った。

綾瀬は集の視線に気付きジロリと睨む。

 

「何っ?」

 

「い いやあ、口に合ったらいいなって……」

 

「言っとくけど。どんなに良い料理作っても訓練を緩めるつもりはありませんから……」

 

「それはもちろん!」

 

我ながら下手に出る時と、言い争う時でのテンションの差が凄いな と集は自重気味に笑った。

 

「あれ ? でも綾ねえ……」

 

突然声をかけるツグミに綾瀬は なによ と無愛想に返す。

 

「今の言葉って、集の料理が美味しかったって言ってるようにもーーー」

 

ツグミが言い終わる前に、綾瀬はツグミの前にある皿を掴み皿の上にある料理をツグミの口に突っ込んだ。

 

ツグミは ほぐう! という声にならない叫びを上げ水を飲み胸をドンドンと叩きながら食道に流し込む。

 

「余計な事は言わなくていいの!」

 

涙目になるツグミに綾瀬は顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

集はそんな二人の様子を苦笑いしながら眺め、ふと気付いた。

 

「そういえば涯は?」

 

「涯さんが普段 食堂に顔を出すことは滅多にありません…" 自分がいたら思う存分リラックス出来ないだろ? " て言って」

 

「ふーん」

 

(まあリーダーだから色々忙しいんだろうな)

 

集は梟の答えに軽く考え ふと いのりも いない事に気付いた。

一瞬 探しに行こうと考えたが、もうすぐ自分を含めた全員の食事が終わる 。

今行っても時間が無駄になるだけだと思い直し集は残り少ないご飯に箸を伸ばす。

 

 

 

昼間の訓練もつつがなく終了し、晩の食事も済ませた集は薄暗い部屋に戻った。

 

結局この日は朝のあの時以外、いのりに会うことはおろか 視界に入ることもなかった。

いや 何度か いのりの ものらしき視線は感じるのだが、全く姿を捉えられなかったのである。

 

(明日になったら……ちゃんとまた話せるのかな……?)

 

そこまで考えた集は頭を振り、その思考を追い出す。

 

( もう彼女は涯の女だと昨晩知ったはずだろ。これ以上首を突っ込んだら迷惑するのは彼女の方だ )

 

頭ではそう思っていても、やはり集にはいのりを放って置く事が出来なかった。

 

太陽は完全に沈み、空には星が瞬き始めていた。

 

「 ……そうだ、魔力……もう自覚出来るだけで二度あったんだ。次からは自分の意思で操れるようになろう!」

 

集はベッドから身体を起こすと、電気はつけずに床の上で座禅を組んだ。

 

じっくり…深呼吸をして、施設での感覚を思い出す。

 

数分もしないうちに額や背中 脇の下から滝のような汗が流れる。

 

カチン と引き金を引くような音が集の耳に響く。

 

とたんに ゴー という耳鳴りがして、凄まじい勢いで水の底に沈む感覚に襲われた。

 

集からは見えないが、髪は銀髪に 瞳は真紅に染まっている。

 

「 っ……!!」

 

しかし視界が真っ赤に染まるのは集にも分かる。

 

目が些細な光でも吸収しチカチカと目眩をおぼえる。

耳が 上の階 下の階 隣の部屋 の 衣擦れ 水道の音 足音 瞬きの音に至るまで全ての拾わなくていい音を拾い、耳ごと頭を打ち鳴らす。

 

心臓を流れていた血液の赤血球や白血球が刃になり、心臓の壁を切り刻み、その度にその中を流れるチカラの奔流が凄まじい早さで治癒し傷口を塞ぐ。

 

「 ……ぐっ…あが……!」

 

予想外の苦痛と不快な感覚に思わず声を漏らす。

その感覚は次第に全身に広がっていく。

 

「……………っ」

 

集中する。自分の身体の中に蛇口を作り加減なくで漏れ出す魔力の弁を少しづつすぼめる。

 

すると全身を切り刻む感覚は、嘘のように薄くなり身体が一気に楽になった。

「……ずあっ!!?」

 

しかし気を抜くと、すぐに刃の血液が身体を内側から切り刻む感覚が全身を襲う。

 

集は自分に流れる魔力を一定の流れに乗せ、ゆっくり目を開ける。

視界はまだ赤かったが、身体中に流れる魔力は赤いオーラのような形で目視に成功した。

 

「やった……」

 

集が十年間の修行でも一度も成功しなかった魔力の制御が、遂に実を結んだ事に集はまた一歩ダンテに近付けた気がした。

 

集は頭の中で蛇口を閉め、魔力を完全に閉め切る。

髪や瞳が元の色に戻った途端に強烈な疲労感が襲い 集は床に崩れ落ちた。

 

「はあ……はあ…これは……思ったよりきつい……」

 

集はなんとか手足を動かし、ベッドにやっとの思いでよじ登った。

時計を見ると座禅を組んでから四時間近く経っていた。

集は仰向けに転がり深く息をつく。

 

「はあ〜……明日に響かなければいいなあ……」

 

呟くと同時に集の意識は疲労感に負け、落ちていった。

 

 

 

 

五日目、模擬戦まで後4日

 

朝は昨晩 集が心配したような疲労感も無く、朝の訓練も特に問題なく済んだ。

ただ ツグミは "こんな朝早くにやるの!?" などと昨日集の申し出をあっさりok出した事を若干後悔した。

その後 集は綾瀬とツグミと梟に手伝ってもらいながら、朝ご飯の支度を済ませた。

 

メンバーが集まり食事を始めるてから終わる時まで、集はいのりを探したが結局食堂に現れることは無かった。

 

夕方になり、午後の訓練も一通り済ませた集はただあてもなくブラブラ通路を歩いていた。

 

「あっ集さん、次はなんの訓練なんですか?」

 

その通路を慌ただしく駆け回っていた梟が集に声をかけた。

 

「いや 今日の訓練はもう終わったよ、せっかくだからなにか手伝える事があったら手を貸すよ」

 

「いいんですか? ……じゃあそこのダンボール箱持てますか?」

 

梟は壁の端に置かれた箱を指し示す。

 

集は はいよ と短く答え箱を持ち上げる。

 

「 っとと けっこう重いな……」

 

「集さんって力ありますね。その箱 僕じゃあ引きずって運ぶのがやっとで苦労してたんです」

 

梟の言う通りダンボール箱はかなりの重量で、あまり長時間持っていると跡がつきそうな程だった。これでは集の胸にも頭が届かない小柄な梟にはきついだろうである事は想像に難くない。

 

「まあ、普段から鍛えてるしね……」

 

「集さん って運動系の部に所属してるんですか?」

 

「いや文系だよ?現代映像文化研究会 っていう…」

 

「どんな事をするんですか?」

 

「色々だよ?素材を集めて切ったり貼ったりして映像を作ったりとか……。僕を含めた 2…3…4……あと幽霊部員を一人の5人でやってるんだよ」

 

集は頭に 祭 ・颯太 、そして谷尋の顔を思い浮かべる。

ちなみに幽霊部員とは花音のことである。

 

「へー 楽しそうですね」

 

「うん 、……楽しいよ?」

 

「 …………、大丈夫ですよ 集さん!!」

 

「え?」

 

集の横顔からなにかを感じ取ったのか、梟は突然 キッ と引き締まった顔をして声を張り上げる。

 

「 きっと涯さんなら集さんを元の生活に戻せますよ !!」

 

「 …………」

 

大声で豪語する梟に面食らっていた集だったが、梟の気遣いが純粋に嬉しくなり笑みを浮かべる。

 

「 ……うんっ…ありがとう梟君。梟君は本当に涯の事を尊敬してるんだね………」

 

「はい 次は涯さんと一緒に任務なので。一緒に戦えます。……と言ってもただの物資補給なので大して危険ではないですけど」

 

「ふーん」

 

集は心の中で安堵のため息をつく。

 

「……ただ、任務は四日後なんですよね……」

 

「…模擬戦の日取りと重なっちゃうね」

 

「はい……見られなくて残念です……」

 

(ん〜 そんな顔されるとなんとかしてあげたくなるな……)

 

梟は本当に残念そうだ。

 

「じゃあさ 梟君が帰ってきたら、祝勝会かやけ食いに付き合ってよ。」

 

「ホントですか!?」

 

「うん 腕をふるうよ。梟君には色々助けられてるし」

 

「ありがとうございます!本当に集さんは優しいです!」

 

梟と集は広い部屋の前で立ち止まる。おそらく倉庫だろう。

 

「ここまででけっこうです。それはその台座に乗せてくれれば……」

 

こう? と集は梟の指す場所にダンボール箱を置く。

 

「はい お疲れ様です。それにしても学校……楽しそうですね」

 

「………梟君……」

 

「この戦いが終わったら……僕も学校行ける様になりますかね………」

 

梟はどこかさみしそうに笑った。

 

「……なれるよ……きっと」

 

集の言葉に梟は本当に嬉しそうに笑う。

 

「さっ 手伝ってくれてありがとうございます。もう頼むことは無いので、後はゆっくり明日のために英気を養ってください」

 

「そっか……じゃあまたね……」

 

集は梟と別れ、元来た道を戻っていく。時々後ろを振り返ると梟は集の姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 

 

 

「ん?」

 

日も完全に沈んだ後、集は風呂から自室に戻る最中に見知った人影を見つけた。

 

「アルゴさんと……大雲さん?」

 

二人はベランダの柵から外側を向いてなにかやっている。近付いてみる。

 

「 えっと こんばんはアルゴさん 大雲さん」

 

「……おう」

 

「こんばんは集」

 

アルゴは無愛想に……大雲は大仰にあいさつを返す。

 

「なにをしてるんですか?」

 

「見てわかんねえか?」

 

アルゴに言われ集がアルゴの手元に視線を向けと、釣り竿が握られていることに気が付いた。

 

「釣り……ですか?」

 

ああ とやはりアルゴは集の言葉を無愛想に返す。

 

「釣れるんですか?」

 

「いやあ?」

 

「えっ、じゃあなんでこんな事を?」

 

「気分転換だよ。物事全てに意味を求めるのは馬鹿のやることだ」

 

「…………」

 

「…………」

 

アルゴの言葉を最後に三人の間に沈黙が流れる。

 

「我々は見張りですよ」

 

その沈黙を指でキーボードを鳴らしていた大雲が破った。

 

「見張り?」

 

集は大雲の背後に回り込み画面を覗き込むと、画面には円の中を中心を支点を棒状のものがグルグル回転している。よくテレビで見るソナーそのものだった。

 

「ああ〜じゃあ僕お邪魔ですね。部屋に戻ります」

 

「まあ待て、暇なんだよ話し相手になってくれや」

 

アルゴは自分の隣に置かれた椅子を叩いて示す。

集は黙ってそれに従う。

 

「集、綾瀬のエンドレイヴの記録映像を見たが……、ヴォイドって凄えな」

 

「はい?」

 

「ヴォイドって誰からでも取り出せるのか?」

 

「まあ……十七歳以下なら……アルゴさんっていくつでしたっけ」

 

アルゴは集の髪を ガッシリ 掴み、自分に引き寄せる。

 

「てめえとタメっつてんだろ」

 

「あだだだ、すみませんアルゴさんってちょっと歳上っぽいから……」

 

「だろ?」

 

「…………」

 

アルゴが自信満々とかの表情だったら、まだ集もリアクションが取れたが、真顔でこんな事言われても冗談なのかなんなのか分からない。

 

「しかし どういうトリックなんだろうな。ヴォイドもそうだがおめえの髪の色が変わんのも凄えな」

 

「え?」

 

アルゴの言葉に集は、メンバー達が悪魔の力をヴォイドの力だと認識していると初めて気が付いた。

 

「おめえ倒れたんだろ?もう平気なのか?」

 

「ええ もう大丈夫です」

 

集はアルゴを粗暴で乱暴な性格だと思っていたから、正直この気遣う言葉には驚いた。

 

そのまま会話は無く、集はアルゴに 湯冷めする前に部屋に戻るよう言われ、集は自室に戻った。

 

集はその夜も魔力の制御の修行に励んだ。

最初から蛇口を作っていたせいか、昨夜と比べると疲労は浅く時間感覚の狂いも軽かった。

 

 




はい思ったより長くなりそうだったので、前編後編で分ける事にします。

軽い息抜き回のつもりだったのに……

どうしてこうなったし
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