あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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記念すべき100話目がこんなんでいいのだろうか……。







100:あきつ丸、着地ス!

 

 キラーを加えたパーティは、ついにギャングの拠点に突入する。

 高さのある華美な屋敷で、持ち主のセンスの悪さが物理的にギラギラ光っている。当然内部にも戦闘員がいるが、閉所戦闘の練習台とさせてもらった。

 戦闘奴隷もちらほらとおり、襲ってきたが、こちらは気絶だけさせて、屋敷の外に放り投げる。あとでまとめて枷を外そう。

 

「……つまり、利害の一致で協力関係を組んだのか」

 

 戦闘員を始末しながら、ざっとキラーにこれまでの経緯を話した。

 キッドは、平気そうにしているものの、メイスによる骨折や傷は見逃せるものではない。なるべく戦闘は俺とミホークが行なっている。

 キラーは、一瞬で片付いていくギャングに驚きながらも、冷静に話を聞いていた。

 キッドとは違い、俯瞰的で理性的な部分は、船長の右腕としてはピッタリだろう。今も、キッドの傷が大きい方に並び、流れ弾を弾いている。

 

 マスクこそしていないが、このまま成長すれば立派な殺戮武人になるだろう。

 そんな潜在能力の高さも窺い知れる。

 キラー曰く、捕まった時はサビサビの能力者だけでなく、部下らしい他の男達も同時に襲ってきたらしいから、そりゃ流石に今だとキツイだろうな。逆に子ども二人に大の大人が能力者込みで複数人参加してようやく捕まったのは、戦闘センスの差を感じる。

 大人気ないというか、情けない奴らだ。

 

「キッドを助けてくれてありがとう。おれの首輪も」

「当然のことをしたまで。ギャング共の行いは、自分の行く路に反するものでありましたから」

「道中、キッドが何か失礼なことをしなかっただろうか」

 

 キラーのその言葉に、にぎやかな戦場にここだけ沈黙が降りる。

 キッドとミホークから向けられる微妙な目線が、先頭をいく俺の背中に刺さって痛い。キラーは首を傾げているが。

 

「いえ……むしろ、自分が困らせてしまって申し訳ないであります」

「弟子の無遠慮な態度に関しては、師匠のおれでも治すのは無理だ。耐えろ」

「……?」

 

 クッ、ミホークの師匠面チャンスを与えてしまった。あからさまに「師匠も困ってるんだけどね」みたいなため息をやめろ!

 あ〜やれやれみたいな諦めと妥協の態度が、嫌に腹立つ。俺が悪いのはわかってるけども。

 コイツだって真剣を持たせるまで毎回不満げな顔をするわ、ガキなのに酒を飲みたがるわ色々やってたのに……!!

 さも、自分はまともですってツラしやがって……。

 

「あきつ丸とミホークは師弟なんだろ? 何を教えてんだ?」

「もちろん、この剣であります」

「へぇ、おれ達がよく見る剣とは違う……細いし、長いな」

「“刀”という剣種で、扱いにはコツがいるのであります」

 

 ミホークの場合は、どんな刃物でもあらかたマスターしてるんだろうがな。俺はこれ一本だ。

 秋茜は包丁どころか、鉛筆削りの小刀にも嫉妬するレベルだ。それこそ、別の刀なんて使ったら、俺もその刀もどうなるかわからない。

 束縛の激しい奴だが、切れ味は抜群だし、俺の手に吸い付くみたいに扱い易いから困る。

 こうして考えると、俺の周りには問題児が多い。

 

 ワンピースの世界では、問題児にならないとやっていけないか……。

 どこか尖った部分があるから、大海でも名を馳せれるんだろう。

 俺はマシな方だと思うけどな。俺はな。

 

「ボスの居場所は、守りの硬さからして最上階……。階段で一気に上がるであります、狭い中での流れ弾には気をつけて」

「ああ」

 

 艦娘として、室内での戦闘は正直かなりやりにくい。陸地も、やれはするが一番全力を発揮できるのは、やはり海だろう。

 砲撃も艦載機も、室内ではまともに使えない。

 故に、刀や肉体での暴力に限られてしまう。

 そういう戦闘はあまり経験が無く、得意でもない。やれる時に経験値を積んでおかないと、いつかやらかしそうだ。

 気楽に一閃したら、うっかり建造物丸ごと輪切りにしてしまう。

 ここは壊しても良い建物だが、今後破壊を抑えて戦わないといけなくなった時に手出しができなくなるからな。

 秋茜のハッスルをよくよく抑えておかないと。

 

 何十段の階段を駆け上がり、横から飛び出す構成員をぶちのめして行けば、最上階へは案外早く着いた。

 ミホークの攻撃も合わさって、捌くのが早かったんだろう。

 最上階、豪勢な飾りをゴテゴテと貼り付けた室内では、ボスらしき男が椅子にふんぞり返っていた。

 

「貴方がギャングのボス、でありますか」

「そうだとも。ここまで散々暴れてくれたようだな、女」

 

 偉そうなボスは、何やらニタニタと笑っている。ここまで来て、何か逆転の手段が残されているというのか?

 

「余裕そうでありますね。もう、残すはあと一人、という状況だと言うのに」

「ここまで来たのは素直に褒めてやろう。優秀なボディーガード達が、こうもあっさり退けられるとは」

「……で?」

「だが、貴様らは敵にしてはならない存在を敵に回した……! おれ達の取引相手を知ってるか? 天竜人だ!! 奴らに逆らった以上、お前たちは禁忌を破った!!」

 

 ボスが高笑いを上げるが、おれとしては、特に何かリアクションする事も無かった。

 天竜人? いるね、そんなやつら。

 

「……で??」

「……?? 天竜人だぞ!? 奴らに逆らえば即座に海軍大将が呼ばれる! 天竜人と取引をしているおれ達に逆らえば、それは天竜人に逆らったも同じ──」

「はい、自分は天竜人に逆らうとわかってここを襲撃しているであります。海軍大将の件も承知しております。……で???」

「で!?!? か、海軍大将だぞ!? 海軍の最大戦力で、四皇も恐れる──」

「やはり大将が来るのか。いつ戦闘する?」

 

 おう黙ってろミホーク院。

 キッドとキラーには、その脅しは少し効いたらしいが、俺とミホークには特に何の恐怖も及ぼさない。

 三人来たらヤバいかもだが、現状奴らにそんな余裕あるかね?

 ゴリゴリに白ひげやビック・マムは現役だし、なんなら全盛期だ。

 

 天竜人に逆らったとしても、今はまだ直接害している状態では無い。

 通報しても、相手も立場がギャングなら、どちらも潰す形で証拠隠滅を図りそうなもんだ。海軍政府がギャングと取引してたなんて、絶好のビッグ・ニュースだろう。

 

 俺たちに天竜人の威光が効かないとわかったボスは、わかりやすく調子を崩した。

 高笑いはどこへやら、怯えと恐怖が滲み切った顔をしている。

 

「こわ……怖くないのか!? 天竜人だ! 世界貴族だぞ!!?」

「少なくとも、この土地に天竜人がいても、自分は同じ行動をしたでありますな」

「く、狂ってる……!!」

 

 天竜人の影響力はやはり桁違いだな。

 だとしても、俺は世界貴族という権能に胡座を描いているだけの奴らに従うのは御免だ。

 天竜人にも、良いやつや、これから思想を変えてくれる奴もいるだろう。

 だが、コイツらの後ろにいるのは、奴隷を楽しみ、他者を搾取することで悦に浸る下衆だ。恐れてなんになる。

 天竜人もまた……人間なのだ、昔から。

 

「クッ、クソ!! クソォオオオオオ!!!」

「っ!?」

 

 絶望したボスは、絶叫を上げて机に隠してあった赤いボタンを押した。

 瞬間、正面に雷でも落ちたかのような揺れと轟音が響き渡る。そして、それが俺たちのいる最上階へ上がってきていた。

 

 ──爆発。

 

「自爆を図りましたか!」

「この屋敷ごと……全て無くなってしまえェエエエ!!!」

 

 発狂したボスが爆炎に包まれた。

 俺は、こちらに向かう炎と衝撃をなんとか「斬り捨てる」。キッドとキラーには当たってはいけない。

 

「っ……!!」

「あきつ丸!!」

「おれたちを庇って……!」

 

 少し傷は負ったものの、爆発に巻き込まれることは避けれた。

 ミホークも自力で爆炎を斬り捨てて無傷だ。こう言うところも、まだ俺が弟子であるしかない証拠だ。

 爆発の脅威は去った──かに思われた。

 

「っ床が!!」

「落ち、るぅ〜〜!!」

 

 爆発によって、地上から最上階までの床は吹き抜けに変わり、俺たちの足元は、全て空気へと燃え尽きていた。

 遅れて、強烈な浮遊感と叫び声。

 落下しているとわかれども、空中での姿勢制御はかなり難しい。自分で飛んだわけでも無く、空中に飛び乗れそうな足場も無い。

 

 俺は、このまま落ちても大した傷は負わないだろう。この高さでも、艦娘の装甲は硬い。

 ミホークは、剣で衝撃を緩和するなりできるだろう。コイツほんと何でもできて腹立つな……。

 キッドとキラーは、そんな装甲も技術も持っていない。

 

 屋敷の最上階から地面へは、ざっとビル10階レベルの高度がある。死なないかもしれないが、死ぬかもしれない高さだ。

 なんとか後方にいたキッドとキラーへ体を向けた時には、既にかなりの速度が乗っていた。

 そんな中、俺は咄嗟に叫ぶ。

 

「キッド殿!! 磁気を!!」

「っ!!」

 

 キッドが反射的に能力を発動する。

 鉄が、引き寄せられる。

 俺が、引き寄せられる。

 俺の手が、二人に、届く距離まで。

 

「ッよし!!」

 

 俺は、二人を両腕でキャッチし、キッドに引き寄せられた鉄板を足場として、跳んだ。

 自力での跳躍により、姿勢制御が効く。

 二人の身体をしっかりと腕で抱き寄せ固定し、なるべく勢いを殺して着地した。

 大きく髪が揺れる。

 

 足元にデカめのクレーターこそできたものの、秋茜に頼らず衝撃を弱めることには成功した。しっかり抱き留めている二人にも怪我は無い。巨大な浮遊感は感じただろうが。

 

「セーフ……であります!」

「ああ、()()()な」

「はぇ?」

 

 先に、やはり剣で衝撃を斬り着地していたミホークにドヤ顔を披露すると、ため息と共にキッドの能力を初めて見た時と同じ視線が返ってきた。

 それに能力者本人へ視線を向けると、また、真っ赤になったまま固まっている。もう片方に抱えたキラーも、髪で見えづらいが耳まで真っ赤になっていた。

 

「かお、うま……」

「むっ……やわら……」

「死んだな」

「ア゛ーッ!! ごめんであります二人とも〜!!」

 

 ボロボロになった吹き抜けに、今度は俺の叫び声が貫通した。

 

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