──この出会いが貴方にとって最良のものである事を祈ろう。
我が魂のフリーゲームである『DIABOLI-Ca』の二次小説がハーメルンに存在しない現状が許せなかったので、自分で書きました。
少しでも『DIABOLI-Ca』の魅力が伝わってくれたら嬉しいです。
サキュバスちゃん、可愛い。
「よくぞいらした、ご客人。新たなる悪魔との出会いをお望みか?」
ボロい布で全身を隠した怪しさの擬人化みたいな人物が、俺に話しかけてくる。
「ああ、まあね。俺、新米
いかん、いかん。いつもの悪い癖が出た。
自分の発言に対して先に笑ってしまうと、どんな爆笑ギャグでもダダ滑りだ。
少し浮き足立ってたかもな。
「承った。それでは召喚の儀式を選ぶのだ」
無反応かよ。商売向いてないぜ、あんた。
「そもそも、選べって言われても召喚カード1枚しか持ってないよ。一番お手頃な召喚の儀一択だって」
新人が降魔カードとか天魔カード持ってたら、それはそれで問題だろ。
どんなルートで手に入れたんだよ。
「召喚の儀か。召喚カードを1枚頂こう。よろしいか?」
「よろしい!」
「確かに。ご客人、この出会いが貴方にとって最良のものである事を祈ろう」
またスルーかよ。新人相手だからって舐めやがって。
「あのさ。言っとくけど、俺は悪魔1体で満足するような男じゃないぜ」
儀式の邪魔にならない程度に、怪しい男に近付いて宣言しておく。
「運には自信がないから、最初はどうせDランクの雑魚悪魔だろうけどさ。じゃんじゃか稼いで、直ぐにSランク悪魔でハーレム作ってやるからよ」
よく聞けよ。俺は有言実行の男だ。頭の中には輝かしいビジョンもある。
アイボリー修道会の依頼を片っ端から周回して、凄腕の悪魔祓いとして名を轟かせて。
アリーナでクラスをガンガン上げて、それから……。
「あ、人間。って事は召喚されたんだ」
……?
「もう、人気者はつらいなぁ」
輝くような銀髪に、黒い角。
ダウナーな雰囲気。
「あたし、淫魔サキュバス」
悪魔には羞恥心がないのか、堂々と裸身を晒している。
身長は低く……悪く言えば幼児体型だが、そんな事が気にならないほどの美しさ。
「任せて、気持ち良くしてあげる」
いつの間にか、俺の意識の全ては、目の前の悪魔──いや、運命の女性に奪われていた。
「待っ、ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
「何?あたしに魅力がないとか、興奮しないとか言い出すわけ?」
サキュバスの機嫌が悪くなる。だが、これだけは言っておかなくては。
「俺は今、コインがない!」
「は?……はぁ?」
「君を養えるだけの大金が貯まるまで、色々と保留にしてくれないか!?ほら、恋人としてデートとか諸々するのにも、コインがかかるからさ!!」
「恋人になるのは確定なんだ……。ま、良いよ。そこまで真剣に求愛されたら、悪い気はしないし」
サキュバスの機嫌が直った。勝ったな。
「──これは運命だ。俺の悪魔は君だけで良い」
ここで、もう一押し。初手プロポーズという荒業を叩き込む。
どうせ長考したところで、俺の恋愛経験値は底辺だからな。開幕ぶっぱ安定。俺の座右の銘はフルアタだ。
「……自分の言葉の意味、理解してるの?悪魔祓いは三体まで悪魔を編成できる。たった1体、しかも、あたしはDランクの……」
「できる」
俺は確信した。ここが、俺の人生の正念場だ。
もう俺の目には、サキュバスしか映っていない。
……嘘。視界の隅にボロ布野郎がチラチラ映ってる。無理だよ、この存在感を脳から締め出すのは。
「愛に不可能はないんだぜ?」
「ついさっき、会ったばかりの癖に」
「だから、もっと好きになる」
「……馬鹿」
可愛い。
これは……告白成功か……?
駄目だ。
とりあえず、俯いたサキュバスをエスコートしながら、次の目的地に向かうか。
次の目的地……あれ、何処だっけ?
「錬成の間」
そうだ。装備を作成しに行くんだった。
サキュバスショックで、完全に忘れてたぜ。
「流石、俺の恋人はデキる女だ」
「ふふ、まだ予定だからね、キープ君」
おお、ちょっと良い雰囲気じゃね?
「また新たな出会いを求めたならば訪れよ。それまでご機嫌よう、ご客人」
「二度と来ねぇよ!」
彼女持ち(予定)に出会い系を勧めるのは間違っているだろうが。
「しかし、直ぐにSランク悪魔でハーレムを作ると……」
「錬成の間、行くぞぉ!」
サキュバスを抱えて、急いで撤退する。
ちゃんと聞いてたんなら、少しくらいリアクションしろや。
「
サキュバスの高位魔法が大気を凍結させ、ブリザードを巻き起こす。
「
更に、大気を帯電させて、敵のボスに稲妻を落とした。
「いや、かなり強くなったな」
「はぁはぁ……。ねぇ、本気で言ってる?」
サキュバスが睨んでくる。だけど、これは俺じゃなくて自分への怒りだな。
意外とストイックなんだ、彼女は。
「あたしの火力だと苦しい敵が増えてきた。魔法を撃つためのSPも枯渇気味。単純に
泣きそうな顔で訴えてくる。
「貴方は頂点を目指してるんでしょ?だったら、変なこだわりは捨てちゃいなよ」
彼女の主張は正しい。DランクとAランクなら、後者が強い事はマンドラゴラでも分かる。
覆しようのない、絶対の種族差。
「あたしは所詮、燃費の良い魔法を撃てる高ランク悪魔の下位互換……」
「それは違う」
と、言うと思ったか!馬鹿め!
「サキュバス。君の
「えっ……?スィートデビルだけど……」
サキュバスは困惑しながら答える。可愛い。
「最大で魔法攻撃力+30%。ただし、SP消費率も1.5倍。数発でSP切れになるから、敢えて特性を解放してないけどね」
「そして、もう一つ。君の固有魔法があるだろう?」
「小悪魔キッスの事?魔法攻撃力の0.3倍だけSPを吸収する、あたしの固有魔法」
やっぱ、しっかり勉強してるんだよな。割りと感覚で力を振るう悪魔も多いのに。
「更に!こんなものがあります!半永久型高純度魔力結晶こと、賢者の石!」
「賢者の石?……け、賢者の石!?」
「が、3個」
「3個!?馬鹿なの!?」
首根っこを掴んで揺さぶられる。
いや、だって悪魔に装備させられる装飾品は最大3個だし。
入手難易度が死ぬほど高くても、積むだけ積むでしょ、そりゃ。
「あと、武器はこれね。禁書ネクロノミコン」
「!?」
絶句しておる。
ちなみに、最近の彼女は裸ではなく、ケープを着て、腕にガントレットを付けているから、棒立ちしても卑猥は一切ない。
これはこれで、凛々しくて好き。
「つまり、こういう事だ」
俺はこの時を待っていた。
「魔法攻撃力だけ見てくれ」
禁書ネクロノミコン、+40。
スィートデビル、+30%。
賢者の石、+30%の3倍。
「ここまで来れば、小悪魔キッス。魔法攻撃力の0.3倍だけSP吸収も、超速の回復手段になる。そして何より、ははは」
おっと、いけない。悪い癖が。
「ラスボスだろうが何だろうが、この火力なら一撃で葬れる」
サキュバスは俺に頭突きをしてきた。
「ぐえっ」
なんでぇ……?
「いくら、使ったの?」
「ははは、いや、言えない感じの金額です」
軽く掴まれてるだけで、体が動かない。怖い。
魔法型とはいえ、成長したサキュバスさんの悪魔パワーは、俺のじたばたパワーを大きく上回っている。
「本当に、大馬鹿なんだから。それだけのコインがあれば、もっと高ランクの悪魔だって……」
「仕方ないだろ、悪魔は50種類以上いるらしいけど」
俺は人生で一番、格好付けて言った。
「君は一人だけなんだから。ははは」
サキュバスは目尻を拭って笑う。
「前から思ってたけど、自分の言葉に自分で笑う癖、直したら?」
彼女は堂々と、俺の隣に並んでくれた。
「癖って直らないんだよな。あっ、でも癖が出る度にキスしてくれたら直るかも、なんて。はは……っん!?」
数秒が経って、俺を引き寄せる彼女の腕力から、ようやく解放される。
「行きましょ。
「……まあ、この戦術に穴がないのか、実際に検証する必要はあるんだけどね」
「大丈夫」
まあ、ここまで色々と語ったわけだけどさ。
結論だけまとめてしまうと、これは俺にとって、実にシンプルな物語だった。
要するに──。
「愛に不可能はないんだぜ、なーんてね。ふふふ」
サキュバスちゃんの可愛さが
「ところで、Sランク悪魔でハーレムって何?」
あの召喚野郎、マジで口が軽いな。
守秘義務とかないのかよ。
「ははは」
俺は土下座した。