ありそうでなかった、風の谷のナウシカと艦これのクロスオーバー物。トルメキア軍の船が艦これの世界で活躍する姿を描きたかっただけです
一発物です。続きはないです。


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第1話

 

 

─某海域にて

 

 

 その日も海は美しかった。

 自由気ままに、何処かへと吹き抜けていく爽やかな風。

 それに煽られ右へ左へ揺れながら、時折ぶつかって砕ける漣。

 

 今この瞬間も、どこかで殺し合いが行われているとは到底思えない静かな海であった。

 その静寂を破ったのは、海上を滑る独特な音と、海を我が物顔で蹂躙する機械音であった。

 

 

 海上を進む、5つの黒い影。

 人間の女性を模した歪な人形(ヒトガタ)。鯨と魚を融合させ、ひしゃげたような異形。

 この世の理から乖離した者達は腹の中にどす黒い憎しみを宿し、海を凌辱していた。

 

 この異形達は、これより敵の補給路を断つ通商破壊作戦の任を受けていた。

 異形、とはいえ一定の知性があるのか、陣形のようなものを組んであたりを警戒しながら進んでいるようだった。

 

 どうやら指揮を取っているのは、頭に海月(クラゲ)兜蟹(カブトガニ)を足して割ったような生き物を乗せた女の人形(ヒトガタ)らしい。手にした指揮棒を振ったり、ときおり小さく口を動かして周りの仲間達に何らかの指示を出しているように見受けられる。

 

「…」

 

 異形のリーダーらしき女の人形(ヒトガタ)は耳に手を当て、離しを繰り返していたが、突然ギシリと口角が上がり下卑た笑みを浮かべる。

 小さく何らかの言葉を発し、それを周りの異形達も確認すると、異形の艦隊は一気に増速してとある場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

─結論から言おう。この後異形達は跡形もなく殲滅される。しかし、異形達の目論見は意外な形で実を結ぶ事になる。

 

 

 

 この海域には、彼らの他にもう一つの勢力が隠れていたのだ。

 狩人のように息を殺して身を隠し、その存在を絶対に気づかれまいとしていた、ある勢力が。

 

『………』

 

 誰も気づかぬ雲の中。黒い影が静かに動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─!」

 

 遂に、艦娘達の船団が目視での観測が可能になるまでに近づいた。

 まさかこの海域に出没するとは思っていなかったのだろう。焦って必死に離脱し逃れようと陣形が乱れているようだ。

 奴らの空は既に愛しい我が子(艦載機)達が支配していた。奴らに逃げ場はない。

 四方八方から押し寄せる攻撃の波の前になすすべなく流されている。空に閃く鬱陶しい対空砲火も、なんの意味も成さない。

 

 

─シズメ

 

 怨嗟が溢れる。

 

─…シズメ

 

 敵を前にして、どす黒い殺意に火が付く。

 沈めば。

 一隻たりとも逃してはならぬ。

 

─シズメ。

 

 沈め、沈めと。

 

 

─シズメ!

 

 

 

 皆一様に怨みを叫び、脆い獲物を喰い殺さんと海を滑る。それを見送りながら、逃げ惑う奴らの哀れな姿を侮蔑の目で眺めていた。

 

「─…?」

 

 違和感に気づいたのはその時だった。何やら、様子がおかしい。

 我が子(艦載機)の数が減っている。いや、減っているどころかいつの間にかその全てが撃墜され、空から姿を消している。

 

「ッ!?」

 

 何が。何故。誰が。

 疑問が頭を支配する。

 

 それは仲間たちも同様であり、速度を落として困惑しながらこちらと船団を交互に見ている。

 

 馬鹿な。

 対空砲火に撃ち落とされた?

 考えてすぐに、それは無いと断言する。この海域は、奴らにしてみれば「絶対安全」として油断しきっている海だ。それ故、護衛の質も落ちる。

 あの船団の対空砲火など、豆鉄砲に等しい。

 艦載機達が悠々と空を跋扈していた事が何よりの証明だ。では何故?と再び疑問が頭を支配する。まさか、敵の援軍?この短時間で?

 

 しかし、すぐに思考の海から叩き出される事となった。

 突如、被弾したのだ。凄まじい衝撃と熱が加わり、頭に備わった艦載機を管理する艤装が破壊され、もはや艦載機の発着艦が不可能になったと知る。 

 

 額から流れる熱い液体を抑えて呆然と空を見上げると、そこには黒鉄(くろがね)の翼を持つ怪鳥達が飛び回っていた。

 なんだ、あれは。

 

 黒い怪鳥達は、対空砲火を掻い潜ってロケット弾のようなものを的確に撃ち込み、次々と仲間たちを葬り去っていく。

 巨大な水柱と爆炎に囲まれ、艤装を破壊されて艦載機を出せないワタシは呆然とそれを眺めているしかなかった。

 

 

 

 さきほどの轟音と水柱が嘘のように静まり、周囲には私しか残されていなかった。

 怪鳥のように見えた黒い影は、よく見てみると4枚の翼を持った歪なタンデム機や、先尾翼式のものとV字尾翼式の単翼機であった。

 それらの表面からはいくつもの機銃の銃口が飛び出しており、小窓からは搭乗員の小さな影が動いていた。

 飛行機と呼ぶにはあまりに重武装かつ重装甲なそいつらは、タンデム機を残してすべて艦娘の方へ飛び去っていった。

 

 4つの翼を持った鋼鉄の怪鳥は上空をゆっくりと旋回すると、正面へと滑り込んできた。

 胴体の下部には4つの砲門のような穴が開いており、その中に装填された弾が黒光りしていた。ガラス越しに黒い影が蠢いており、いずれも搭乗員であることが伺える。

 大勢で操るその飛行機の様子を見て「(ふね)」という言葉を連想させた。

 

 操縦席にいる何者かの腕が動き、引き金らしきレバーに手をかける。

─ここまでか

 そう悟ると怨嗟を込めた視線を迫りくる鋼鉄の怪鳥へと向ける。

 

─…シズメ

 

 

 恨みがましくそうつぶやき、眼前へと迫ったロケット弾を憎たらしげに睨んだ。

 

 

 

 

 

■□■

 

 

 

 

 

 

 深海棲艦の艦隊を殲滅した謎の飛行機群は、離脱した船団へと接近していた。

 雲の中に紛れ、隊列を整える。窓越しにチカチカと点滅する光は、何らかの暗号のようだ。

 

 雲の切れ間から海面を覗くと、先ほどの船団が確認できた。

 這々の体、と言った様子でもはや戦う力はほとんどなさそうだ。だが、この狩人達にとってはここまでが計画の内であった。

 4つの翼を持つタンデム機が他の機体に先ほどの暗号で何かを合図すると、雲を飛び出し、5機の飛行機は獲物に飛びかかる猛禽類の如く一斉に船団へ急降下した。

 

 

 不意を突かれた船団は、先ほどの戦いで消耗していたのもあって何の抵抗もできなかった。

 5機の漆黒の飛行機は速度を落としつつ、物資を持っていそうな艦に狙いを定め、ホバリングをしながら接舷した。

 接舷された艦娘は何か訴えるように口を開こうとしたが、接舷した飛行機の中からは無数の武装した妖精が飛び出し、洗練された動きで艦内にいる妖精を制圧しつつ物資を根こそぎ持っていった。

 

 そのまま飛行機の中に簒奪した物資と特殊部隊を詰め込むと、さっさと立ち去ろうとしたが、ある艦娘に呼び止められる。

 

「ま、待って!あなた達はいったい…」

 

 白い紋様が入った青いバンダナのようなものを額に巻いた少女。彼女の名は神威といい、この船団を構成する補給艦の1隻である。

 

 戦力を失い、更には必死で守った物資さえも何の抵抗もできずに奪われ、このまま黙っていてはたまらないと叫ぶ。

 しばらく反応はなかったが、飛行機の見張り台のような場所から金色の甲冑を被った1人の妖精が出てきた。

 どうやら彼?彼女?がリーダーのようである。その妖精は甲冑を外すことなく、たった一言。

 

『……我らは、ただ狩るのみ。』

 

 甲冑によりくぐもった声色でそれだけ言うと、飛行機は発進し、空の彼方へと消えていった。それに呼応して周りの飛行機達も去っていった。

 

 

 


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