透き通るような青空の下、記憶を失くしたハリネズミ一匹   作:ヒテイペンギン

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どうも、ヒテイペンギンです。

大変お待たせ致しました…!長らく期間を開けてしまって申し訳ございません。
シャドウ×ブルアカの小説更新です!

どうか楽しんでいってくださると幸いです!



闇市の闇銀行、カイザーの繋がり、銀行強盗。

 

「はむっ、もぐもぐ……んく。ご馳走様でした!

…しかし、皆さんがお探しの戦車、あれだけ探しても情報が出てこないなんておかしいですね…。」

 

全員がたい焼きを食べ終わった頃、ヒフミがふと疑問を声に出した。

たい焼きの話から戻り、例の戦車に関することだ。

 

「そんなに妙な事なのか?」

 

「はい。販売ルート、保管記録、明確な記録は全て何者かが意図的に隠している……そんな気がします。

ブラックマーケットの住人の方いわく、ここ数日はコソコソとした連中が増えていてきな臭い動きがありそう、なんて噂もありましたが…そのどれもあやふやな情報ばかりで、あてになりませんし……。」

 

「流通の痕跡や目撃情報、その他一切の情報を隠匿……。

…そんなこと、出来るものなのか?ただの一企業が、この広大な闇市で?」

 

「どうでしょうか…たとえここを牛耳っている企業だとしても、ここまでやるのは現実的じゃないかと……。」

 

「異常なことなの?」

 

「というよりかは、普通ここまでやりますか?って感じですね…。

ここの企業はある意味開き直って悪さをしてますから、逆に変に隠したりしないんです。」

 

…つまり、表向きには隠したい勢力……完全な裏社会で動いている組織ではない、ということか。

 

「たとえば、あそこのビル!」

 

ヒフミが指さした先を見ると、全面黒い壁で覆われたいかにも怪しい建物がある。

看板には"BLACK MARKET BANK"と書かれていた。

 

「あれがブラックマーケットの中でも、一際有名な闇銀行です。」

 

「闇銀行…。」

 

「聞いた話ですと、キヴォトスの犯罪に関わる金融資産の15%近くが、あそこに流されているそうです。」

 

「…15%も?それほどまでに巨大なのか、ここの組織は…?」

 

「横領、強盗、誘拐など、様々な犯罪によって獲得されたお金が、武器や兵器に変えられて他の犯罪に使われる……そんな悪循環が続いているんです。」

 

「………。」

 

…反吐が出るような話だ。

誰かから奪った金が、更に犯罪を助長するための資金源になり、銀行がそれを回している……聞いただけで虫唾が走る。

 

「そんなの、銀行が犯罪を助長しているようなものじゃないですか…!?」

 

「その通りです…ここでは、銀行も犯罪組織なんです。」

 

「……フン、野蛮なヤツらが集まる場所には野蛮な組織がいる、ということか。」

 

 

……ブロロロロ……

 

 

「……?」

 

どこからか、自動車の走行音が聞こえてくる。

この辺りは一般車の通りも少なかったはずだが…。

 

突然聞こえてきた走行音に当たりを見回していると、遠くの方に車両が見えた。

そしてその車を指さし、ヒフミが声をあげる。

 

「…!あれは、マーケットガード!」

 

「マーケットガード、ですか…?」

 

「ここの治安機関でも、最上位の組織です!」

 

「……車を護衛してる。現金輸送車だね。」

 

ヒフミの言うマーケットガードと呼ばれた者たちが、遠くの道路からこちらに向かって走ってくる。

全身が装甲で覆われた自動人形(オートマタ)、頭部には白いエンブレムが描かれており、警備用の大型バイクに跨った奴らが四台で現金輸送車を護衛していた。

犯罪蔓延るブラックマーケットだけあり、厳重な警備だ。

 

護衛されている真っ白な現金輸送車には洒落たマークがプリントされている。企業のマークだろうか。

……だが、あのマーク、どこかで…

 

……!?あの輸送車……まさか……!

 

「…!あれは…!?」

 

「ウチに集金にくる銀行員…!」

 

現金輸送車から人が降りてくる。

いや、正確には人ではない。頭部のモニターに簡易な表情が映し出された自動人形。

僕たちが今朝金を渡した、アイツだ。

 

奴は車から降りたあとスタスタと闇銀行の方へ向かい、闇銀行の行員と話し始める。

 

「お待たせしました、今月の集金です。」

 

「……ご苦労様。では、こちらの書類にサインを。」

 

「はい。」

 

輸送車から下りてきた自動人形が、サラサラと書類にサインしていく。

それが終わると、銀色のアタッシュケースを行員に手渡した。

 

「…カイザーローンと闇銀行が、繋がってる……?」

 

「え…!カ、カイザーローン!?」

 

「ヒフミちゃん、知ってるの?」

 

「え、えっと…かの悪名高いカイザーコーポレーションが運営する、高利金融業者ですよね……!?」

 

「まずい所なの?」

 

「はい…カイザーグループは、違法と合法の間のグレーゾーンで上手く振舞っている、多角化企業で…!」

 

" ……あまり褒められたものじゃなさそうだね。"

 

「み、皆さんはカイザーローンから融資を……?」

 

「あはは…話すと長くなるんだよね〜……。」

 

「思えば返済が現金だけだったのは、履歴が残らず足が付きにくいから…?」

 

…口座での返済ではデータとして残り、ハッキングやデータ抜き取りなどでバレる可能性もある。現金でのやり取りなら、残るのは書類だけでいざとなれば消失させやすい……という事か。

ふざけた事をしてくれる…!

 

「まさか、闇銀行に流れてたなんて…。」

 

「てことは、私たちはずっと犯罪資金を提供し続けてたってこと!?」

 

『ま、まだそうハッキリとは……カイザーローンが私たちのお金を闇銀行に運んだという証拠がありませんし…!』

 

「……あ!集金の際は、受領証明書が出ますよね?

その発行の記録が見つかれば、証拠になりませんか!?」

 

" ああ…! "

 

「あ、でも考えてみたら書類はもう銀行の中ですし、無理ですよね…

ブラックマーケットの中でも強固なセキュリティを誇る銀行の中、となってしまうと……う〜ん……。」

 

奴らの尻尾を掴むには書類を手に入れなければならない。が、当然見せろと言われて見せてもらえる訳もない。かといって、アビドスの金が犯罪に使われているかもしれないと警察や連邦生徒会に掛け合ったところで、ここは長年犯罪の温床となっているブラックマーケット…取り合ってもらえる可能性は低い。

その間に証拠を消されてしまう可能性だってある。

ヒフミは腕を組んで考え込み、他のメンバーもまた沈黙してしまう。

 

今すぐに、あの銀行の中にしまわれた書類を確認する方法……。

……………。

 

………アレの出番か。

 

「……その書類を、入手すればいいんだな?」

 

「…へ?た、確かにそうですけど、でも銀行の人が持って行ってしまった書類を確認する手段なんて……」

 

「方法はある…シロコ。」

 

「うん?」

 

「……ようやく君の出番が来た、という事だ。」

 

「…!なるほど、流石シャドウ。良い選択。」

 

僕の曖昧な言葉に、しかしシロコは真意を汲み取り、力強く頷いた。

 

「うへ?それってどういう……ああ!もしかしてアレ?」

 

「…あ、なるほど!確かにあの方法なら!」

 

「アレ?アレってみんな何の………エ゙ッ゙、まさかアレやるつもり…!?」

 

" ……それって、あのことじゃないよね……? "

 

「あ、あのぅ……お話が、全然見えてこないんですけど……?」

 

突然アビドスメンバーが"アレ"だのなんだのと話し始め、ヒフミは状況を理解できずに狼狽える。

そんなヒフミの方に振り返り、この状況を解決できる唯一の策を提示する。

 

「銀行の中に保管されてしまった書類を手に入れる方法は……」

 

「たった一つしかない。」

 

「へ…?え……?」

 

シロコがゴソゴソと懐を漁り、例の"アレ"を取り出す。

 

 

 

 

「「銀行を襲う…!」」

 

懐から出されたその手には、目出し帽が握られていた。

 

 

 

 

「………はいぃぃぃ!!??」

 

" し、シロコ?シャドウ!?ちょっと待って!!?

他にもなにか方法が…! "

 

「大丈夫。犯罪の証拠を明らかにするだけ。」

 

「奴らが今まで行ってきた悪行に比べれば、可愛いものじゃないか?」

 

" そ、それは……そう、なのかな…? "

 

『し、シャドウさん?いつもシロコ先輩を止めてくれてた貴方はどこに行っちゃったんですか…?』

 

「そこらの銀行を襲うのは論外だ。

…が、僕たちに舐めた真似をしてくれた奴らを、このまま野放しにはしておく訳にはいかない。」

 

『それは、そうかもしれませんが…!

……はあ、了解です。止めても聞いてくれそうにありませんし…。』

 

「ハッ、当然だ。ここまで来て黙って帰る訳にはいかないからな。」

 

「え、ええっと、その……」

 

「ごめんヒフミ。」

 

「え…?」

 

「私の想定が甘かったせいで、ヒフミの分の覆面が無い。」

 

「ぃ、えっ!?私も!??」

 

「仲間はずれだなんて、それはかわいそすぎますっ!」

 

「い、いやいやいや!私は全然気にしませんから…!!」

 

「ヒフミちゃん!……こちらをどうぞ☆」

 

「いや、ち、ちょっと、待ってくださ……むご!?」

 

想定もしていなかっただろう、まさかの"銀行強盗"に巻き込まれそうな状況に、必死で抵抗し後ずさるヒフミ。

だが、ヒフミの抵抗もむなしく、ノノミはズイズイと距離を詰め続け、ヒフミの頭に無理やり何かを被せる。

 

「うん、これならバッチリですね☆」

 

「あ、あうぅ……これは、やっぱり私もご一緒するんですか……?」

 

そこには、たい焼きの袋を即席の覆面として被せられたヒフミの姿があった。

両目の位置には穴が開けられ、額には"6"と書かれている。

これで、ヒフミもメンバーの一員だ。

 

「な〜に言ってんのさヒフミちゃん。さっき約束したじゃ〜ん?"今日は私たちを手伝う"って〜!」

 

「う、ううぅ……わ、私……!

もう生徒会の方々に合わせる顔がありません…!!」

 

「大丈夫っ!私たちは悪くないし!」

 

「…先生はどうする?」

 

" ………私も参加するよ。君たちのお金が犯罪に使われているとしたら、それは由々しき問題だしね。"

 

((((((コクリ))))))

 

「それでは……覆面水着団の皆さん!」

 

ノノミの掛け声に各々、アサルトライフル、ミニガン、ショットガンなど自分の愛銃を構え、戦闘準備に入る。

 

「出発です☆」

 

アビドスを陥れたこと、後悔させてやる…!

 

 

 

 

 

「………言っておくが、僕はその帽子は被らないからな。普通のマスクを付けていく。」

 

「え………」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

………遅い。

再びアビドスと戦うための資金を得るために、わざわざブラックマーケットの闇銀行にまで来たって言うのに……

 

なんで六時間も待たされてるのよ!?

ずっと待ちぼうけを食らってるウチの社員もさっきからあくびばっかりしてるし!私だって何回寝落ちしかけたか分からないわよ!?

融資の審査にこんっっっなに時間かかることあるの!!??

別にそこまで混んでる訳でもないのに、いつまでかかるのよ…!

 

苛立つ気持ちが表に出ないように抑えながら、腕を組み待つこと数時間。

受付の奥の方からコツコツと誰かが歩いてくる。

……こうやって期待して結局まだ終わらない、っていうのも何回目かしら……。

 

しかし、今回こそは正真正銘、私たちの融資の審査が終わったことを知らせに来た人だったらしい。銀行審査官のロボットは、私の目の前にある椅子に腰掛けながら声をかけてきた。

 

「お待たせしました、お客様。」

 

「…!ええ、待ちに待ったわ……。

それで、結果はどうなの?早めにまとまった資金が必要なのだけど…!」

 

「誠に残念ながら、今回はご縁がなかったということで。」

 

「えっ……ちょっと待って!!それって融資できないってこと!?」

 

「左様でございます。」

 

「ちょ、ちょっと…!ちゃんと事務所も構えてるのにどうしてよっ!?」

 

「資料によりますと事務所は賃貸、資産と呼べるものは重火器類のみ。これでは融資のしようがありません。」

 

「え、ええ…っ!?」

 

「担保できる財産、あるいは貴女に信用があれば融資は可能なのですが……

まず、その前に日雇いの期間工などなさってはいかがでしょう?」

 

「は、はあ!??」

 

銀行審査官の人は営業スマイルを崩さず、あくまで丁寧な口調で提案してくる。

だけど、今の私にはその態度さえ苛立ちを増す要因でしか無かった。

 

ム、ムカつく…!!

もういっそ大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら……!?

 

……いや、それはダメね…そこら中にマーケットガードがいるし…

でも、もしかしたら実は大したことない連中かもしれない。私たち4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も…!

…はあ、やっぱり無理……ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ……。

 

もう、何よこれ。情けない……。

キヴォトスで一番のアウトローになるって、そう心に決めたのに……融資だのなんだの、こんなつまらない事ばかりに悩まされて……。

 

………私が望んでいるのはこれじゃない。

何事にも恐れず、何者にも縛られない。ハードボイルドなアウトローに……!

そう、なりたかったのに……

 

 

ガチャン!

 

「…?」

 

何もかも上手くいかない自分に不甲斐なさを感じて俯いていた時、突然銀行のシャッターがしまった。

まだ私たちも、他のお客さんもいるのに、なんで…?

 

パッ……

 

「!?」

 

「な、何事ですか!?停電!?」

 

「パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」

 

突如としてシャッターが閉まったかと思えば、今度は銀行内の照明が落ちた。真っ暗で何も見えない。

何?何が起こってるの…?

 

他のお客さんはおろか、銀行員やマーケットガードですら困惑して、只事ではない事態に異様な雰囲気が漂い始める。

 

──────ドカアアアアアアン!!

 

ダダダダダダダッ!

 

「ぐわあああっ!?」

 

「があっ!!」

 

何!?ば、爆発?銃声…!?

ぎ、銀行の入口の方から聞こえたわよね…?

 

咄嗟に座っていた椅子の裏に隠れながら、入口の方へ目をやる。

シャッターごと破られた銀行の扉からは光が差し込み、逆光によって何人かの人影を写し出していた。

 

パッ!

 

ブレーカーが復旧したのか、それとも予備電源に切り替わったのか、再び銀行の明かりが付く。そのおかげで入ってきた人達の姿もより鮮明に見ることができた。

アサルトライフルを構えた人が3人、ミニガンを構えた人が1人、ショットガンを構えた人が1人。

その全員が銃を構え、目出し帽で顔を隠していた。

 

ま、まさか、あれは…!!

 

「銀行強盗…!?」

 

「……全員武器を捨てて、その場に伏せて!」

 

「言うことを聞かないと、痛い目にあいますよ〜☆」

 

「え、えっと…皆さん怪我をされないように、大人しく伏せててくださいね…っ!」

 

嘘でしょ、ここはブラックマーケットでも有名な銀行なのよ…?マーケットガードだって大量にいる。にも関わらず、ここを襲うなんて…!?

 

「……う、ぐ……クソっ……!」

 

爆発の衝撃によって吹き飛ばされ、気絶していたマーケットガードが目を覚まし武器を取ろうとする。

が、手を伸ばしたその瞬間にまた1人銀行に入ってきて、すごいスピードでマーケットガードに蹴りを食らわせた。

 

「があっ!?ぐぅ……」

 

「…武器を捨てろと言ったのが聞こえなかったのか?そこで大人しくしていろ。」

 

……!すごい…!

 

武器を取ろうとしたマーケットガードは、再び力なく地面に伏せる。

蹴りを入れた人はマーケットガードの持っていたアサルトライフルを拾い上げ、他の警備員に銃口を向けた。

 

敵を倒して即席の武器を調達……なんて破天荒な…!

 

「さぁ〜て、ここまでは計画通り!次のステップに進もうかね〜?

さあ、リーダーのファウストさん!指示を宜しくぅ〜!」

 

「エ……ええっ!?ファウストって、わ、私ですかっ!?私がリーダーですか?私が…!?」

 

「うむ、もちろん…っ!」

 

あの子が、あのメンバーのリーダーなの…?

一見柔らかな物腰で、そんな風には見えないけど……

…!いいえ、犯罪においてはむしろ、その方が相手の隙を突きやすい…?

 

「ヒフm………いえ、ファウストさんがリーダーです!ボスです!

ちなみに私は、クリスティーナだお♧」

 

クリスティーナ、ですって…?

ファウストに、クリスティーナ……間違いなくコードネーム…彼女たちは"本物"だわ……!

 

な、なんてことなの……

まさか、この目で銀行強盗を目にする日が来るなんて、思いもしなかった…!

 

ヒソヒソ……

 

(あれ、あの子たちって…)

 

(アビドスの……)

 

(か、返り討ちにしちゃいましょうか…!?)

 

(いや、ターゲットは私たちじゃないみたい……あの子たち、どういうつもり…?)

 

「…監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、全て頭に入ってる。全員、無駄な抵抗はしないこと。」

 

青い目出し帽を被りアサルトライフルを持った人は、一般市民や既に倒されたマーケットガードには目もくれずスタスタと銀行員の近くまで歩み寄り、銃口を突きつける。

 

「ひいぃぃ!?」

 

「さあ、そこのあなた。このバッグに、さっき到着した現金輸送車の……」

 

「わ、わかりました!何でも差し上げます!!

金塊でも、現金でも、債権でもいくらでも持って行ってくださいいぃぃ!!!」

 

「え、いや、私たちが欲しいのは集金記録だけ……。」

 

や、や……ヤバーい!この人たち何なの!?

ブラックマーケットの銀行を襲うなんて…!

この厳重な警備からどう逃げるつもりかしら?

 

いやそれ以前に、こんな大胆な計画を立てちゃうアウトローが、未だに存在したのね…!!めちゃくちゃ手際いいし、超プロフェッショナル……。

かっ、カッコイイ…シビれる〜…!これぞまさに真のアウトロー!

うわあ、涙でそう…!

 

「でっ、できました!これでもかと詰め込みました!これでどうか命だけは、命だけは…っ!」

 

『──────?』

 

「…あ、うん…でも…」

 

「何をしてる、さっさと引き上げるぞ。近くのマーケットガードにも嗅ぎつけられたら面倒だ。」

 

め、面倒…?

ブラックマーケットの住人でさえ目をつけられないよう避けているマーケッドガードが、ただの"面倒"、ですって…!?

 

やっぱりこの人たち、歴戦のアウトローなんだわ…っ!マーケットガードでさえ敵にならないほどの!!

あー最高!!!

 

「よ〜し、じゃあ全員撤収〜!」

 

「アディオ〜ス☆」

 

「け、ケガ人はいないようですし……さ、さようならっ!」

 

目的のブツを回収し終えると、彼女らは足早に銀行を去っていった。先に5人の女性が銀行から出たのち、残り一人の男性…?が、追いかけ消えていく。

 

「…………。

や、奴らを捕らえろっ!!道路を封鎖、帰ってきてるマーケットガードに──────

 

ダァンッ!

 

「ぐっ!?うあ……」

 

「……面倒事を起こすな、しばらく寝ていろ。」

 

…っ!?

 

銀行審査官の人がマーケットガードに通報しようとした瞬間、既にドアの外へと消えたはずの彼が戻ってきて、審査官の額に一発銃弾を撃ち込み黙らせた。

残っている銀行員たちを、その紅い瞳で睨みつける。

 

撤退したのを見届け通報しようとした仲間が、あっという間に撃ち抜かれてしまった。その念入りな警戒心と驚くべき手際に、もはや誰も動けない。

それを確認すると、彼は今度こそコートを翻し銀行の外へと走っていく。

 

…去り際までカッコイイ……

はわわ…ナ、ナイスアウトロー…!

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

『…マーケットガードの手が及ぶ地帯を通過。皆さん、お疲れ様でした!』

 

通信からアヤネの声が届く。どうやら安全な場所まで退避できたらしい。

これで、最初で最後の銀行強盗は、無事終了だ。

 

「やった!大成功〜!」

 

" 先生として、これで良かったのかな〜… "

 

「あ、あうぅ……」

 

「…仕方ないだろう、奴らの行いを知ったままこの先何百年と返済していく訳にもいかない。

掴めるチャンスは掴むんだ。」

 

" うう、確かにそうだけどさぁ…! "

 

「シロコちゃん、集金記録は?」

 

「ん…。」

 

シロコは肩にかけていたバッグのファスナーを開け、中を見せる。

さっきの様子だと上手くいったはずだ、目当ての集金記録は──────

 

「…!?」

 

「な……なんじゃこりゃー!?」

 

「うえええっ!?シロコ先輩、お金盗んじゃったの…!?」

 

バッグの中には、これでもかと言うほどギッシリと、札束が詰め込まれていた。

バッグの中にあるのは札束、札束、札束。もはや目当ての集金記録が見えないほどに札束で溢れている。

 

「ち、違う。目当ての書類はちゃんとある…。

このお金は銀行の人が間違って入れちゃっただけで……。」

 

「うへ〜、軽く一億はあるね…。」

 

一億……アビドスの膨大な借金が、一割以上返せてしまう額……。

 

「やったあ!!早く持って帰ろっ!」

 

" …!セリカ、ちょっと待って! "

 

「もう、何?これがあれば借金が……」

 

『そんなことしたらダメだよセリカちゃん!!』

 

「…っ、何でよ!!?」

 

『…!』

 

「このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金じゃん…!それがあの闇銀行に流れてったんだよ!?」

 

「……確かにそのままにしておいたら…」

 

「犯罪者の武器や兵器に変えられたかもしれません…。」

 

「そうよ!悪人のお金を盗んで何が悪いの!?」

 

……………。

 

「私も、セリカちゃんの意見に賛成です…。

犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方が……。」

 

「それにこれだけあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」

 

…セリカの言うことにも一理ある。奴らが悪事に使うはずだった金を、至極真っ当な借金を返すために使う。元の使い道に比べればずっとマシだ。

返済まで300年以上もかかると言われたあの借金を、一気に減らせるまたとない機会。これを逃す手もない。

……だが………

 

" …本当に、それでいいのかい? "

 

「……っ。」

 

「………シロコちゃんはどう思う?」

 

「ん、答えるまでもない。ホシノ先輩が反対する。」

 

「え…?」

 

「流石はシロコちゃん、私のことよくわかってるね〜。私たちに必要なのは書類だけ、お金じゃない。」

 

………。

 

「今回は悪人の資金だからいいとしたら、次はどうする?その次は?

コレに慣れちゃうと、この先またピンチになった時に"仕方ないよね〜"とか言いながら、やっちゃいけない事に手を出しちゃうと思う。

……おじさんとしては、可愛い後輩がそうなっちゃうのはイヤだな〜。」

 

「………。」

 

ホシノが優しい笑顔でセリカを諭す。

例え悪人の金だったとしても、それが元々アビドスの金だったとしても、後輩に犯罪の道を進ませる訳にはいかない……ホシノらしい考え方だ。

 

…けれど、その選択がこれ以上ないチャンスを逃すものであることに変わりはない。

 

「……君の言いたいことはわかった、ホシノ。

だがその言い方なら、この金に限って、使い方を誤らなければ、次からは必ずしないと誓うなら……この金を使ってもいいという風にも、聞こえるが?」

 

「うへ〜…ま、それはそうなんだけどね。そのお金も結局は騙して奪われたお金だし。

でも、追い詰められた人間は何をするかわからないものだよ。もしも次があったら、もしもエスカレートしていったら……なんて、そんな可能性を後輩に背負わせたくないのさ。」

 

「つまり、あるかもわからない"可能性"を背負わせない為だけに、この一億を捨てる……と?

これは、間違いなく悪用されるはずだった金だぞ。善良な市民に向けられる銃口だったかもしれない。

…いや、銃だけじゃない。この間の戦車や、もっと強力な兵器にもなったはずだ。それが、僕たちに向けられる事もあったかも。

そんな物に使われるはずだった金を一切の後腐れなく使えるチャンスだ。それを……君は後輩の未来のために、捨てるというのか?」

 

「…うん。大事な後輩にそんなことはさせられないよ。」

 

「………。」

 

「………。」

 

ホシノの目を見つめ、問いかける。絶望的な状況に差した光を、この現状をひっくり返せるかもしれない手を、それでも手放す選択をするのかと。

もしもこの書類を、有効活用することが出来なかったら。もしもカイザーの犯罪の証拠を、明かせなかったら……アビドスはこの先何百年、変わらず借金を返し続けていかなければならない。

その先に、僕たちの居場所が残っている確証などどこにもない。

 

けれど、ホシノの瞳は、そこに宿る意思は揺るぎなく。ただひたすらに、真っ直ぐに僕を見つめ返してくる。

……どうしても、諦めないか。

 

「……ハア………わかった。好きにすればいい。」

 

「ち、ちょっと、シャドウまで…!」

 

「……セリカ、君の気持ちはわかる。

確かにアイツらは悪人だ。その金だって、本来であれば犯罪資金に使われる物だっただろう。

…だが、明確な"悪"の存在は、時として善悪の判断を鈍らせる。いくら奴らが悪事を働いていても、奴らの金を力ずくで奪い使うことが、全く悪事にならない訳じゃない。

犯罪を示す書類を奪うためだったとはいえ、僕たちがやったことだって紛れもなく犯罪だ。たとえ倫理観が許しても、法は許してくれない。」

 

「……っ!」

 

「今ここでその金に甘えれば、無法者が無法者を取り締まるマーケットガードのように、汚れた者同士で汚れた金の奪い合いが続くだけ。

選ぶなら、きっと今しかない。そのバッグの中身は、アビドスの金が正しく返済されていないことを証明するためだけに使った方がいい。

……僕としては、有効活用してやりたい所だがな。」

 

「う……けど…!」

 

「…やっぱり、シャドウは良い子だね。

それにね、こんな方法を使うくらいなら、私たちはノノミちゃんの持ってる燦然と輝くゴールドカードに最初から頼ってたはずだよ〜。」

 

「…!そう、でしたね……私も一度提案して、けれどホシノ先輩は反対されました。

"きちんとした方法で返済しない限り、健全なアビドス高校ではなくなってしまう"と。」

 

「うへへ、しょゆこと〜♪」

 

" ……じゃあ、貰うのは必要な書類だけ!それでいい? "

 

「「「うん!(はい!)」」」

 

「……わかったわよ、もう……すっごくもどかしいけど!!

こんな大金を捨てていくなんて、変なところで真面目なんだから!」

 

「…フン。そもそも借金に苦しめられている状況でも、得体の知れない僕を拾うような奴だぞ。

ホシノのどうしようもないお人好しは今に始まったことじゃない。」

 

「…はあ、そうね。そうだったわ。

挙句の果てには記憶喪失のアンタを自分の家に置いちゃうんだもん。あの時はビックリしたわよ。」

 

「ハッ、全くだ。」

 

「はふぅ……皆さんの事情はよく知りませんが、このお金を持っているとトラブルに巻き込まれるかもしれません。災いの種、みたいなものでしょうから……。」

 

ヒフミのその言葉に、ホシノも深く頷いていた。

 

…一度は裏社会に流れてしまった金だ。これを持ち込めば、この先僕たちが、あるいは未来の後輩がどれだけ足掻こうが"健全なアビドス"は取り返せなくなる。惜しくはあるが、捨てていくのが正解なのかもしれない。

あとは、この集金書類がアビドスにとって良い結果をもたらしてくれる事を祈るだけ……

 

 

 

「──────ちょっと待って!」

 

…!

 

この金の行方を決めた矢先、僕たちの後ろから声がかかる。

後ろ…つまり僕たちが逃げてきた方、ブラックマーケットの方からだ。

追っ手か…?危険地帯は突破したはずだ、まだ追いかけてくる奴がいたのか?

 

咄嗟に外していたフードとマスクを付け直し、他のメンバーも覆面を被り直す。

先生は数m離れた木の裏に急いで隠れた。

 

やがて、声をかけてきた者が僕たちの目の前まで駆け寄ってくる。

…コイツは……

 

「はあ、ふぅ……あ、ああ、心配しないで!私は敵じゃないから…!」

 

便利屋の社長、陸八魔アル……なぜコイツがここにいる…?

 

ヒソヒソ……

 

(なんでアイツが…?)

 

(撃退する…?)

 

(敵じゃないって言ってる相手を叩くのもねぇ〜…。)

 

(…だが、アイツに声をかけられた時点で厄介な予感しかしないぞ。)

 

(み、皆さんのお知り合いですか……?)

 

(はい。ちょっとした縁で…。)

 

「あの…!」

 

「……何の要件だ。」

 

「えっと、さっきの襲撃、見せてもらったわ…!

ブラックマーケットの銀行をものの数分で攻略して、見事に撤収…稀に見るアウトローっぷりだったわ……。

正直、すごく衝撃的だったというか…!あんな大胆なことが出来るなんて感動的というか…!!」

 

……?

 

「わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂!

私もそんなアウトローになりたいからっ!」

 

………??

 

感動的?自由な魂…?アウトロー……?

 

(………コイツは何の話をしてるんだ。意味がわからない。)

 

(さぁ〜…?おじさんにもさっぱり…。)

 

「そ、そういうことだから……な、名前を…!

貴女たちの名前を教えて!」

 

「名前…?」

 

「その、組織というか、チーム名とかあるでしょ?

私が今日の勇姿を、心に深く刻んでおけるように…!」

 

「……はい!仰ることはよ〜くわかりました!」

 

(のっ、ノノミ先輩!?)

 

(……待て、まさかあの名前を名乗るつもりじゃないだろうな…!?)

 

「おい、待────」

 

「私たちは人呼んで……覆面水着団!!」

 

「ふ、覆面水着団…!?

や、ヤバい…!超クール!カッコよすぎるわッ!!」

 

ノノミは決めポーズと共に、高らかと自信満々にその名を叫ぶ。その有り得ないネーミングセンスに陸八魔アルもご満悦のようだ。

目をキラキラと輝かせて、羨望の眼差しを送ってくる。

 

………思わず天を仰ぐ。

そのメンバーには僕も含まれてるんだぞ、何だこの阿呆な光景は。恥という他ない。

 

「…うへ〜、本来はスクール水着に覆面が正装なんだけどね。今日はちょっと緊急だったもんで、覆面だけなんだ〜。」

 

変な設定を付け足すな、やめろ…。

 

「そうなんです!普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!

そして、私はクリスティーナだお♧」

 

「"だお"…!?き、キャラも立ってる……!?」

 

「ふふふのふ…!目には目を、歯には歯を!無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く!

これが私らのモットーだよ…!!」

 

「か、カッコイイ〜〜……!!」

 

ダメだ、どんどん阿呆な設定が付け足されていく。頭が痛い。リミッターリングの事を思い出した時やセリカが誘拐された日に力を使った時よりも痛い。

天を仰いでも仰ぎ足りない。

 

 

「……何してるの、あの子たち……。」

 

「わー、アルちゃんどハマりしちゃってるじゃん!特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」

 

 

(も、もういいでしょ…?適当に逃げようよ!)

 

(……ああ。さっさと帰ろう。)

 

「それじゃあ、私たちはこの辺で。アディオ〜ス☆」

 

「行こう!夕日に向かって!!」

 

「…夕日、まだですけど……。」

 

「もう黙っていてくれ…。」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

走り去っていく彼女らの後ろ姿を、沈みゆく夕日を眺めるような、寂しく、だけれど清々しくもあるような気持ちで見つめていた。

覆面水着団……嵐のように現れ、嵐のように去っていった。私が目指していた"アウトロー"を体現したような自由な人たち……。

 

「…我が道の如く魔境を行く。その言葉、魂に刻むわ!私も頑張るっ!」

 

ああ、銀行での姿を思い出すと今でも胸が高鳴る。私も、あんな風に…!

 

(……いつ言う?)

 

(面白いからしばらく放置で♪)

 

(…?)

 

「あ、あの……。」

 

「?ハルカ、どうかしたの?」

 

「これ、忘れ物でしょうか…?」

 

ハルカが指さした先には、地面に置かれたままの大きな黒いバッグがあった。

…!これって、あの人たちの…?確かあの人たちが、銀行の人に詰め寄った時にテーブルに置いていたあのバッグ!

 

「こ、これはまさか……覆面水着団が、私のために…!?」

 

「…いや、そんな訳ないでしょ。ただの忘れ物じゃないの?」

 

「んしょ…結構重いね、何が入ってるんだろ?」

 

そういってムツキは遠慮なくバッグを開けようとする。

勝手に見てしまうのは彼女達には少し悪い気もする……けど、彼女達が置いていったものだとするなら、中身は何なのだろう…?

好奇心に負け、ムツキが開けるのを固唾を飲み見守る。やがて、その中身が明らかとなった。

 

「「「「……!!?」」」」

 

バッグの中には、これでもかと詰め込まれた札束。ファスナーを閉じていなければ溢れてしまうのではないかと思うほどに、バッグ一杯の札束があった。

 

「……?もしかして、これでもう食事抜かなくても済みますか……?」

 

 

 

その日の夕暮れ、結局あのお金を持ち帰ってきてしまった。

彼女たちが忘れていったお金は使えないし、結局銀行の融資も受けられなかったけれど……私の心は彼女達に奪われて、そんなことを気にする暇もなかった。

 

事務所の窓にかけられたブラインドから夕日を眺める。こうしていると、また彼女達の姿が鮮明に脳裏に思い浮かぶ。

 

我が道の如く、魔境を行く。

 

「…紙に書いて貼っておこうかしら♪」

 

「……アル様、帰ってからずっと覆面水着団の事ばかりですね……。」

 

「クフフ、いつ気づくかな〜♪」

 

目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に……ウフフッ♪はぁぁ〜…!

 

「……社長、覆面水着団の事だけど。あれアビドス高校の連中だよ…。」

 

「ん…?へぇ〜、そうなのね。」

 

カヨコはよく知ってるわね、気が付かなか……エ!??

 

「な、ななななな………

 

何ですってぇぇぇぇ!!!???

 

アビドスは私たちのターゲットで、一度負けた相手で、私がリベンジを誓ったあの子達が……覆面水着団!?

 

「あははははっ!アルちゃんショック受けてる、超ウケるー♪」

 

「そ、そんなぁ……!!」

 

「………はぁ。」

 





ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

長い間期間を開けてしまって、重ね重ねすいませんでした……ずっとナイトレインやってました……
あと今もやってます、常夜の王楽しすぎワロチャ……
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