透き通るような青空の下、記憶を失くしたハリネズミ一匹   作:ヒテイペンギン

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どうも、ヒテイペンギンです。

前回からものすご〜〜〜〜〜〜〜〜〜く期間を開けてしまい、大変申し訳ございませんでした……!!
前回銀行強盗終わったあとからの続きになります。

楽しんでいってくださると幸いです!



深まる謎とカイザーの企み、2人の静かな帰り道

 

バンッ!

 

「なんですって…っ!?」

 

人生の中で二度と経験しないであろう銀行強盗の後、僕たちはヒフミと共にアビドス高校に戻ってきた。銀行強盗やら覆面水着団やら、頭が痛くなるようなことが幾つもあったが、当初の目的である集金記録の内容を調べなければならない。

皆で囲んだテーブルに集金記録の書類を置き、アヤネが一つ一つ記録をチェックしながら、アビドスが返済した借金の行方を調べる。

 

が、そこに書かれている項目を確認していく内に、信じ難いことが分かってきた。

 

「アヤネちゃん、もう一回言ってもらっていい…!?」

 

「セリカちゃん!その、落ち着いて…!」

 

「落ち着いてるわよっ!!」

 

「…っ。」

 

" そ、そうだよセリカ!こういう時は冷静にだね…! "

 

「…先生、震えてる。」

 

" うっ… "

 

「…アヤネ、それは確かなのか?」

 

「……うん。手に入った書類を確認したんだけど…。」

 

アヤネが集金記録を机に置く。書類には様々な金の入出が書かれている。

集金、提供、様々な場所で行った金の取引が事細かに書かれていた。

数多ある履歴の中、重要なのはその二つ。

 

「……カイザーローンは、ヘルメット団に資金を流してるみたい。」

 

「………。」

 

一つ目は、"アビドス高等学校への貸付金の集金"。

そしてその真下、"支援金:カタカタヘルメット団への任務補助金提供"

これが意味する所は、つまり……

 

「嘘よ…!だって、それって……アイツら、ヘルメット団は…私たちに銃を向けてきた連中は…!

私たちのお金で、武器を調達してたってことでしょッ!?」

 

アビドスの金は、そのままアビドスを苦しめる要因そのものになっていた、ということ。

 

…有り得ないとしか言いようがない。いくらヤツらが悪徳な金融業者だとしても、自分たちが金を貸し付けている学校からの返済を、そのまま学校を潰すための資金提供に流すなど……端的に言って矛盾している。

 

「……う〜ん、書いてあるね〜。"788万円、集金"…。」

 

「これって…。」

 

「ええ、そうだと思います。」

 

「あ、あの、何か知ってるんですか…?この788万円……

って、もしかして…!?」

 

「…はい。これは私たちが返済したお金です。」

 

「788万円って…!こんなに借金があったんですか…!?」

 

「これは一部。本当は9億。」

 

「まあまあ、それは追い追いお話するとして!

…この書類は、カイザーローンの集金記録。そこに私たちの返済額と同じ、788万円という数字。

これは、私たちの学校に来たあの輸送車の物ですよね…きっと。」

 

「うん。それと、もう一つ。

788万円を集金した後すぐに、カタカタヘルメット団に任務補助金を500万円提供…。」

 

" 任務……カタカタヘルメット団に500万円

渡し、仕事の資金に当てさせた……。"

 

「し、仕事というのは…?」

 

…奴らの絡む仕事など、状況から考えて一つしかない。

 

「……アビドス高校の襲撃。何ヶ月も前から続く、アビドス高校を悩ませる問題の一つだ。」

 

「つまり…」

 

「……私たちの本当の敵は、カイザーローンだったって事よ!」

 

………。

 

「…でも、どういうことでしょう?もし学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに…。」

 

ノノミの言う通り、10億もの金を貸した相手をわざわざ破産に追い込むなど、ヤツらの魂胆が全く見えてこない。異常という他ない行動だった。

ヤツらは、何の目的があってこんなことを…?

 

全員が頭を悩ませる中、シロコはヒフミの方を見ると少し考え込み、一言呟く。

 

「……カイザーローン単独の仕業じゃなさそう。」

 

「それは、どういう事だ?」

 

「カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない。」

 

" ……そうかも、しれないね。"

 

本社…?

……カイザーの矛盾した行動に、本社の息……つまり、10億という額を無視してでも成し遂げたい目的がカイザー本社にあり、カイザーローンを使ってその目的を成し遂げようとしていると……?

 

……だが、そうだとしても、未だカイザーの狙いは検討もつかない。

けれど、嫌な予感だけは以前にも増して胸の中で膨らんでいくのを感じた。

 

 

 

結局、全員が頭を悩ませてもカイザーの具体的な目的はわからずじまい。気づけば夕暮れになり、ヒフミもトリニティに帰ることに。

謎が謎を呼ぶ厄介な状況ではあるが、一先ずヒフミを見送るため、アビドス校門前まで出てきた。

 

「皆さん、今日は色々とありがとうございました!」

 

「いえいえ!こちらこそ、変なことに付き合ってもらって…!」

 

「……悪かったな、阿慈谷ヒフミ。大きな問題に巻き込んで。」

 

「あ、あはは……確かに少し大変でしたけど、皆さんの向き合っている問題が進展したなら良かったです。

…………。」

 

「…?」

 

別れる前に軽く話していると、ヒフミは少し俯き考えるような仕草を見せる。

そして、一つ決意をしたような目で顔を上げた。

 

「……私、このことをティーパーティーに報告しようと思います!」

 

「ヒフミさん…?」

 

「ティーパーティー…トリニティの生徒会にか?」

 

「はい!カイザーコーポレーションは、犯罪者や反社会勢力と何かしら関連がある…その証拠になり得ます。

それに、皆さんのこともここまで知ったのに放っておく訳には……!」

 

" ヒフミ…! "

 

「ありがとうございます!トリニティの生徒会が助けに入ってくれれば、こんなに心強いことはありません!

ね、ホシノ先輩っ!」

 

「………。」

 

「まあ、ちょっと予想外ではありましたけど……まさか借金が10億もあるなんて…。」

 

「そんなにないわよっ!正確には9億6千……」

 

「セリカちゃん、そういう事じゃなくて…!」

 

「あ、あはは……とにかく、このことを知ればティーパーティーもきっと──────

 

「ティーパーティーは知ってると思うけどね〜。」

 

……ホシノ?

 

ヒフミの言葉、思わぬ助け舟を遮るように、ホシノは否定する。

 

「ティーパーティーだけじゃない。ゲヘナもミレニアムも、皆とっくに知ってると思う。」

 

「そんな……知っていたなら、どうして…?」

 

「…知ってて、その上で放っておいてるんじゃない?」

 

「その、上で……?」

 

………確かに、生徒全員が借金やヘルメット団に苦しめられていたアビドスとは違い、他校の生徒会はきちんと機能している。

政治的に危険性のある存在の対処や、自治区内の治安維持も行われているはず。

その上で、カイザーがこれだけ好き放題しているのは……そういうこと、なのか。

 

「ヒフミちゃんの気持ちは嬉しいけど、世の中そんなに甘くないからさ。

たとえ知らせたところで、かえって私たちがパニくる事になりそうなんだよね〜。」

 

「どういうこと…?」

 

「ほら、今のアビドス高校って廃校寸前じゃん?トリニティやゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよ。

……言ってる意味、わかるよね。」

 

「えっと…サポートするという名目で悪さをされても阻止できない、ということでしょうか…。」

 

「…うん。」

 

「ほ、ホシノ先輩、悲観的に考えすぎなのではないでしょうか…?」

 

「そうよ、本当に助けてくれるかもしれないし…!」

 

「私もそう思います!」

 

「でも、万が一って事があるでしょ?」

 

" 万が一……。"

 

「あ、あうぅ……難しいですね……!」

 

………。

もどかしい話だ。たとえヒフミが善良でも、その上がそうとは限らない。助けを求められるかもしれない状況で、その助けを疑わなければいけない。

……僕が来る前からずっと、アビドスはそういう状況だったのだろう。

だからこそ、その万が一を否定できない。

 

" …大丈夫! "

 

……先生。

 

" きっと、方法はあるよ!

……多分、あるんじゃないかな……あるといいな〜……。"

 

「…ハァ、なんでそこでしりすぼみするんだ。」

 

「ちょっともう、ビシッと言ってよこういう時は!」

 

" い、いや、冷静に考えるとね……。"

 

「そこで冷静にならないでよっ!」

 

" み、みんなすごいこっち見るから…! "

 

絶妙に格好が付かないな、この大人は。

…だが、先生のその姿に、先程までの憂鬱な雰囲気も少し晴れたようだ。さっきに比べると皆、肩の力が抜けたような気がする。……いい事なのかはわからないが。

少なくとも、他愛のない雑談ができるような空気には戻れたようだ。格好のつかない先生をイジるように会話に花を咲かせ、緊張した空気もすっかり緩んでいた。皆の顔に笑顔が戻る。

 

「………万が一。そう、万が一ってことをスルーしたから、アビドスは……」

 

ポツリと、ホシノが呟く。

その呟きは先生やセリカの声にかき消されそうな程小さかったが、確かに僕の耳に届いた。

 

チラ、とホシノの顔を見る。

その表情は見たことがないほど暗く、陰が差していた。

 

「…ぁ……。

うへへ、ちょっとちょっと〜!おじさんそっちのけで何の話してんのさ〜!」

 

「あ、聞いてくださいよ!ヒフミさんってば…!」

 

「なになに〜?どうしたのファウストちゃ〜ん。」

 

「ちょっ、やめてくださいその呼び方ぁ!」

 

「そうですよ〜、彼女には覆面水着団のリーダーという立派な……」

 

「も、もっとやめてください!!」

 

「ちょっと、ヒフミが困ってるじゃない!」

 

先程の表情が嘘のように…あるいは、嘘を塗り直すように、ホシノは明るい笑顔で雑談に混ざっていく。

……さっきのは見間違いなんかじゃない。あの表情は……

 

訝しむようにホシノの方を見ていると、不意にシロコと目が合う。シロコも、不安そうな顔をしていた。

…どうやら、さっきの声と表情はシロコも気づいていたらしい。

2人でしばらく顔を見合わせるが、やがて2人とも皆の方へと視線を戻す。

 

さっきのホシノの表情は気になるし、どこか胸騒ぎもする……が、今は問題が山積みだ。僕たちが知らないことも多いと、知ってしまった。

今考えていても、ずっと答えは出ない気がした。

 

「あ、あはは……それじゃあ、私はそろそろ。」

 

「ん…今日は楽しかった。」

 

「楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの…?」

 

「全くもって同意だ。銀行強盗に、覆面水着団とかいう妙な設定に……面倒な一日だった。」

 

「今度遊びに行くから、その時はよろしくぅ〜。」

 

" ヒフミ、頑張ってね。"

 

「皆さんこそ…大変だと思いますが、頑張ってください!応援してますっ!」

 

「「「「「「うん!(はい!)」」」」」」

 

「それでは、また!」

 

しばらく大きく手を振ったあと、ヒフミは振り返り帰路へ着いた。背中がだんだん遠ざかっていく。

…なんだかどっと疲れた。本当に、大変な一日だった。

 

「…大丈夫かな、これから……。」

 

「まあま、今日はもう考えるのやめとこ?あじさんは疲れたよ〜……。」

 

「では、また明日、改めて集まりましょう!」

 

" 皆、今日は帰ってゆっくり休みなよ〜。"

 

「そうですね…!」

 

「ん、賛成。」

 

「徹夜はお肌の敵ってね〜♪」

 

「…じゃあ、また明日にな。」

 

「「「「「は〜い!」」」」」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「いんや〜、今日は疲れたね〜。」

 

「…そうだな。」

 

ホシノと2人、すっかり日の落ちた帰り道を歩く。

時々ホシノが会話を振っては、僕が適当に返す。それ以外に響くのは2人の足音だけ。静かな帰り道。

 

この帰り道もすでに何度も通ってきたが、今日は一層静かに感じていた。

……十中八九、昼の色んな出来事のせいだ。

 

「カイザーの目的は、何なんだろうな。

10億の額を無視できる目的…それも、本社が絡むほど、重要な。

余程のものが無いと、あんな手の込んだことはしない。奴らは一体……」

 

「もう、シャドウ〜?今日は休もうって言ったでしょ?」

 

「そう、だが…アビドスの問題は山積みだ。どうしても気になる。」

 

「難しいことを考え続けたら出る答えも出なくなるって〜。

こういう時こそ、肩の力を抜いて歩こうよ。」

 

「…君はいつもそうだろう。」

 

「うへっ、まあね〜♪

シャドウもちょっとは力を抜いてみたら?アビドスの事を考えてくれるのは嬉しいけどさ、こんな日は星空でも見上げながら気軽に帰ろ?」

 

「星空?」

 

「そうそう〜。ほら、空を見上げると自分たちの悩みがちっぽけに見えてくる、とか言うじゃん!」

 

「にしては、問題が大きすぎるが。」

 

「細かいことはいいの!ほらほら、空を見上げてみて〜?綺麗な星空が一面に広がってるよ〜。」

 

「………。」

 

ホシノの言葉にしたがって、空を見上げてみる。

暗い夜空の中に、沢山の星が光を放っていた。数え切れないほどの星々が、遥か彼方からこの地球に、光を届けてくれている。

…たしかに、綺麗だ。驚くほど。

 

「……綺麗だな。」

 

「でしょ?でしょ〜?

たまにはこうやって星空を見上げるのも悪くないもんだよ。」

 

「…たしかに、そうかもしれない。」

 

視界の端まで、宙の彼方まで、輝く星が埋めつくしている。一等星も、二等星も、三等星も…。

どこを見ても、輝きに満ちていた。まるで……

 

「ダイヤモンドみたいだ…。」

 

「……ダイヤモンド?うへへ、シャドウもロマンチックなこと言うね〜。たしかにキラキラしてて、ダイヤモンドみたい。」

 

「ああ…。」

 

気がつけば足を止めて、頭上に広がる星空にすっかり目を奪われていた。ダイヤモンドみたい、なんて、僕らしくない言葉を口に出してしまっても気にならない程に、目の前の光景に心惹かれてやまなかった。

どこか懐かしさを感じるような、綺麗な星空。暗闇の中で光る一面の輝きに心が満たされていく。

 

「シャドウは、星空が好きなの?」

 

「…どうだろうな、見ていると落ち着くような気はするが。

何でそう思う?」

 

「いつもムッてしてるシャドウの顔が、緩んでたからさ。」

 

「……僕が?」

 

「うん。」

 

その言葉に思わず顔を触り、自分の表情を確認してしまう。僕は、どんな顔をしていたのだろう。

間抜けな顔をしていただろうか。

 

「いつもより優しい目付きになって、口元も笑ってた。心から安心してるみたいな…そんな感じ?」

 

「……ハア、そうか。僕らしくないな。」

 

「ううん、そんな事ない!可愛い顔だったよシャドウ〜?」

 

「うるさい。」

 

「うへへ〜。

ねえ、星空のどんな所が好きなの?」

 

「…そう、だな……。

さっきも言ったが見ているとなんだか落ち着く。あんなに小さな星でも、その光はずっと遠いこの星にも届くんだ、と。

それに…何故か、懐かしくも感じる…。」

 

「懐かしい?」

 

「ああ。星の光がそこにある事が、安心させてくれるような…そんな気になる。」

 

「……そっか。もしかすると、シャドウが記憶をなくす前も、こんな風に星空を見上げるのが好きだったのかもね〜。

ひょっとしたら宇宙の果てまで知り尽くす、星空博士だったかも!」

 

「星空博士…?

…ハッ、面白いな。そんな僕がいたなら見てみたいものだ。」

 

「有り得ない話ではないんじゃない?記憶を無くしても懐かしさを感じるくらいなら、相当シャドウの心にこの星空が残ってたんでしょ〜?

記憶を取り戻した時にさ、もし本当にシャドウが星空博士だったらどうする?」

 

「別に、どうもしない。

…だがまあ、もし本当なら、記憶を取り戻したあとに見る星空はまた違って写るかもな。」

 

「お〜、いいねそれ!素敵じゃ〜ん!

……思えば、巻き込んじゃったのはヒフミちゃんだけじゃなくシャドウもだったね。」

 

「…?」

 

突然、さっきまでのからかうような声音から一変して、ホシノの声はか細く小さいものになる。

横を見れば、星と月に照らされてなお、陰りのある暗い顔をしていた。

 

「君と初めて会ってから三週間ぐらい経つけど、記憶を取り戻せたのは結局最初の時くらいでしょ?

それからは記憶の手がかりも見つからなくて、ずっとアビドスの問題に向き合ってばっかりだったじゃん?」

 

「……言われてみれば、そうだな…特に最近は色々なことがあって、考える暇もなかった。」

 

「記憶をなくしてここで目覚めて、少しでも早く記憶を取り戻したいはずなのに、私たちの事情に本格的に巻き込んじゃったでしょ?最初はちょっとでも借金を返すのを手伝ってくれるってだけだったはずなのに……

セリカちゃんが誘拐されそうになった時は身体を張って戦ってくれたし、銀行強盗にも巻き込んじゃって、カイザーの企みにも真剣に向き合ってくれて…。」

 

「それは、僕がやりたくてやっただけだ。巻き込まれたなど…」

 

「君がそう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、やっぱり悪いことをしちゃったなってさ…。

シャドウが私たちを大切に思ってくれてるのは知ってる。だからこそ、きっと君はこの先もアビドスのために戦ってくれるんだろうなって、わかっちゃうんだ。」

 

「……」

 

「"行く宛てがないなら、アビドスで過ごす中でゆっくり思い出していけばいい"。

……最初は、本当にここまで巻き込むつもりは無かったんだ。なのに、気づけば君にも、ずいぶんと重荷を背負わせちゃったね…。」

 

ホシノ……。

 

…たしかに、最初はここまで大事になるとは思ってもみなかった。借金の額を聞いた時には驚いたものだが、それでも見ず知らずの僕を傍に置いてくれた彼女達に何かを返せたら…そう思っていた。

それから、セリカが誘拐され、ヘルメット団と戦って、便利屋とも戦い…ブラックマーケットに行き、彼女たちの金がアビドスを苦しめるものに変えられていたのを知り、社会の闇を目の当たりにした……。

 

それでも後悔はない。全て自分の意思で決めたことだ。ただ、僕がそうしたかったから。

僕のことを受け入れてくれたから、アビドスのために戦いたいと思えた。たとえ記憶がなくても、どんな敵がいても、ここに居たいと。

 

「…ねえシャドウ、アビドスの問題が片付いて、いつか君の記憶が戻ったらさ、もう一回星を見に行こっか?

今度はもっと綺麗に見える場所で。」

 

…それでもホシノは、アビドスの問題を僕に背負わせたことを後悔してしまうのだろう。

他の誰よりも、責任感のある人だから。

 

「……ああ、悪くないかもな。」

 

「…うへ、今から楽しみだな〜!

知ってた?アビドス砂漠ってね、星空がすっごく綺麗に見えるんだよ〜。ここら辺は市街地だけど、もっと砂漠が広がったところだと透き通るみたいによく見えるんだ〜!」

 

「砂漠で、星空が…。」

 

「うん!同時にすっごく寒くもあるんだけどね…防寒対策はちゃんとして行こっか。

あ、今日買ったダウンジャケットとか着ていけばちょうどいいんじゃない?あれ、本当に似合ってたよ〜?」

 

ホシノは遠足にいく子供のように、楽しそうに語る。

さっきの悲しそうな表情はどこにも残っていない。少なくとも、その顔は"前"を向いていた。

 

「……フッ、子供のようにはしゃいでいるな、ホシノ。

だが、それもこれも問題が片付いてからだ。君の言う通り、今日は帰ってさっさと身体を休めるぞ。

面倒ごとをまとめて片付けるためにな。」

 

「わかってるってぇ。シャドウはせっかちだね全くー。

うへへ、楽しみだな〜……あ、星空だけじゃなくて水族館も行ってみたいよね。おじさんお魚が大好きでさ〜!」

 

「昼にも言っていたな。アクアリウムだったか。」

 

「そーそー!普通の水族館みたいに展示してるだけじゃなくて、トンネルみたいに中を通れる水槽があって、海の底を歩いてるような体験ができる場所があるんだって!」

 

「海の底を…?

…想像もできない。」

 

「でしょでしょ〜?でね、他にもイルカショーとか、お魚のぬいぐるみ屋さんとか…!」

 

…そんな他愛もないことを2人で語りながら、家に向かって歩いていく。

星空がよく見える砂漠、海の中を歩くような水族館…いつか行けたらいいな、なんて、今の苦しい状況には似つかわしくないほど、夢を見るような話ばかり。

けれど、2人であれこれとなんて事ない夢を語りながら帰る道のりは、心地のいい時間だった。

 

いつか……いつか面倒事が全て片付いたら、約束通り見に行こう。

…それまでは絶対に、アビドスのために戦い続ける。どんな敵がいても、どんな闇が広がっていても。

たとえホシノが、僕に背負わせることに思い悩んでいたとしても。

いつかあの6人で、何に囚われるでもなく、こんな風に話しながら過ごせるように。

 





ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

改めて前回から期間を開けてすいませんでした……多分これからもこんな感じの更新スピードになると思います、はい。
他のゲームやらなんやらに浮気することの多い性格なので、たまに思い出して見に来てくださると嬉しいです……
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