透き通るような青空の下、記憶を失くしたハリネズミ一匹 作:ヒテイペンギン
なぜか投稿始めてからブルアカのアニメだけ履修し始めるという奇行を成してるんですけど、ブルアカのアニメ面白いですね。
今黒服初登場のあたりです。
あとアニ先の顔と声が良すぎてストーカーしたい
…ギターの音が聞こえる。
激しい音では無い、むしろ心地のいいような、元気をくれるような…そんな音だ。
頭の中に、ぼんやりと誰かが映る。
金色の髪、優しい笑顔、「シャドウ」と、僕の名前を呼ぶ声。
そして、もう1人。
その少女の隣にいるのは、人ではなかった。
黒い身体に、紅い模様と大きなトゲ。
紛れもない、僕自身だ。
彼女の隣にいる僕は、不器用な笑顔で笑っている。
……これは、何だ?
見たことは無い、だが彼女と過ごす僕の姿を見ていると、不思議と心が安心に満ちる。
君は、一体──────
暖かい光が差し込む。
先程までとは違い、僕の意識を若干の不快感と共に覚醒させる。
暗く深い眠りに入り込んできたそれは、どうやら太陽の光であるようだ。
「っぐ……ここは……?」
目覚めには悪くない天気だったが、身体のあちこちが痛む、ご機嫌な朝とはいかなさそうだ。
起きてすぐ目に飛び込んできたのは白い天井、見たことの無いものだ。
しかも、自分の身体をよく見れば包帯が巻いてある。
ご丁寧に怪我をしているところのほとんどに包帯が巻いてあり、ほとんどぐるぐる巻きの状態だ。
「…誰かに治療を受けたのか、僕は。」
そう言いながら、記憶を遡ろうとして…気づく。
何もないのだ。
当然最後の記憶にこの場所のことがあるはずもないが、それよりも前、眠りにつく最後の瞬間に何をしていたのか。
それ以前に、自分がどこから来たのか、何をしていたのか、何も覚えていない。
微かに、何かが心に引っかかるような気もしたが……それすら、手を伸ばせばすぐにほどけて消えてしまう。
明確に覚えているのは自分の名前と…この身体で出来ることだけ。
「…記憶喪失、というやつか?
面倒な事になったものだな…」
覚えていないものは仕方がない、と半ば無理やり納得し、今度は周囲の状況の観察に移る。
治療を受けていたことからどこかの医療機関かと思ったが、どうやらそういう訳ではないらしい。
薬品の匂いもしないし、それどころか人の気配もほとんどない。
どちらかといえば、廃墟、の方が近いだろうか。
「奇妙な場所だ。
一体誰が、僕をここに運んできた…?」
自分の身体の状態、記憶喪失の現状、医療機関ではないにも拘わらず辛うじて怪我の処置が施されている現状。
様々なことを鑑みて推察をしていた時、部屋の外から人の気配が近づいてくるのを感じる。
「話を聞きたい所だが…相手が味方とは限らない。」
鈍い痛みの走る身体に鞭をうち、僕は床へと降りて、ベッド代わりにされていたソファを挟むようにして扉へと向かい合う。
もしも相手がこちらに危害を加えてくる、あるいはこの力を利用しようとする者であれば、即座に逃亡しようという考えだ。
コツコツと足音が響く、一層警戒を強める。
ガラガラ。
「おや〜?
うへ、起きてたんだね〜……ってなんでそんな警戒態勢なの!?」
入ってきたのは、ピンク髪の少女だった。
背丈は低め、目は左右で色が違う、オッドアイと言うやつだろうか?
頭の上には、何かの模様、目のようなモノが淡く光を放っている。
アレは…ホログラムか何かか…?
頭の上の物には奇妙と言わざるを得ないが、それだけならそこまで警戒するものでもなかっただろう。
だが、何よりも目を引いたのは…その手に握られたショットガンだった。
「……君が僕をここへ連れてきたのか?」
警戒を解かないまま相手に質問をした所、相手は少し驚いているようだった。
「う、うん、そうだよ〜、君をここに連れてきたのはおじさん。
それに怪我してるみたいだったから治療も。
といっても、うち貧乏だから応急処置程度しか出来なかったけどね〜……」
……奇妙な話し方だ。
自分を"おじさん"と呼称していることもそうだが、意図的に気の抜けるような話し方をしているようにも見える。
まだ気は抜けない、か…。
「怪我の処置については礼を言う。
…だが、それならなぜここに連れてきた?
僕の身体の状態からして、応急処置だけで済ませるべきではないと判断するのが自然だろう。
なぜ医療機関に連絡しなかった?」
正直な所、それも仕方ないとは思いつつ質問をしてみる。
なにせ、こちらは得体の知れない生物だ。
いきなりそんな者を見つけて、医療機関に連絡すれば、医療以外に実験やら研究やらに巻き込まれた可能性もある。
それに関しては、こちらとしても助かったとしか言えない。
人間である彼女が手当てをしてくれただけ、ありがたいのかもしれない。
「う〜んと……恥ずかしい話なんだけど、うちの土地にまともな医療機関っていうのが残ってなくてさ〜、うちで応急処置するしかなかったんだ。
君をあのまま放っておく訳にもいかないし…ほら、うちアビドス高校だから。」
「……アビドス高校?」
どうやら今すぐ危害を加えようという気はないようだが、聞きなれない言葉が出てきた。
"アビドス高校"
自分の名前やこの身体以外にも、有名な国や街、ある程度の地名は覚えているが…そのどれにも該当しないものだ。
それに、相手の話し方からして、その名前を出せばこちらも合点がいくだろう、という思考を感じるのも妙な点だ。
「…あれ、もしかして知らない感じ?」
「ああ、聞いたこともない。」
「うへ〜、これでも結構有名な方だと思うんだけどな〜、おじさんが言うのもなんだけど悪い意味で…」
悪い意味?
一体どういう……頭の中で少し思考を巡らせる。
すると、今度はあちらから問いが返ってきた。
「えっと、とりあえず君の容態を確認しておきたいんだけど、怪我の具合はどうかな?
それと、脳内、主に記憶に関して違和感とかあったりする?」
その質問は、手に持ったものに似合わず純粋にこちらの容態を心配しているようだった。
…少なくとも、今すぐ敵対することは無さそうだ。
「…怪我は少し痛むが、問題ない。
だが……この部屋で目覚める以前の記憶がない。
恐らく、記憶喪失というものだろう。」
「うへ、やっぱりか〜…そりゃうちの事も知らないわけだ…。
昨日アビドス自治区内のパトロールをしてたら倒れてる君を発見して、ここに連れてきたんだよ。
ここはアビドス高等学校、そこの空き教室だよ。」
高校に…自治区?
微かな記憶を辿ってみるが、僕の記憶している限り、学校という物はあくまで学び舎であり、それ自体が自治区を持つようなものでは無いはずだ。
にも拘わらず自治区を持っており、なのにまともな医療機関はないような有様だという…。
僕の中の常識との乖離が激しい…もう少し話を聞かないといけないか。
「…僕の知る限り、学校とは単なる学び舎で、自治区を持つようなものではないはずだ。」
「…そっか、もしかしてキヴォトスのことも…
え〜っとね、それに関してなんだけど…どこから説明したらいいかな〜…」
僕は静かに彼女の返答を待つ。
その時──────
ドオオオオオオオオン!!!!
「ッ!?」
「うへ〜、また来たのか〜ヘルメット団め〜。
こっちは忙しいって言うのに…」
「おい、一体何が…!」
突然の轟音に解けかけていた警戒心を戻しながら、目の前の少女に問いかける。
あれほどの轟音となれば、音源は手榴弾か、戦車の類だろうか?
彼女は先程"ヘルメット団"と言った。
"団"と名乗るからには、相手は複数人で構成された武装グループであるのだろう。
だが、それほどのものが突然、ただの学校に攻め入ってくる訳もない。
…それに、どうやら彼女の反応からして以前にも今回の様なことがあったらしい。
ただの学生が、殺傷武器を持った者に攻め込まれて、怯えるでもなく、ただ面倒くさそうな表情を浮かべている。
本当に、何なんだ、ここは…。
「ごめんね、おじさんちょっと用事できちゃった。
ここに関してのことは、後でアイツらのことも含めて説明するから、少しここで待ってて。
…あ、そうだ、その前に〜っと…」
彼女は僕への説明を後回しにし、先程の轟音の元凶の対処に向かうようだ。
だが、一度振り返ると彼女はゴソゴソと懐に手を入れ、何かを探し始めた。
「これ、見覚えあるかな?
昨日君が倒れてた場所のすぐ側に落ちてたんだけど…」
そういって彼女が取り出したのは、淡い金色で蝶番の付けられた、2つのリングだった。
それを見た瞬間──────
──────これが正しいことをする、最後のチャンスなんだ!
「!?っぐ…」
「え!?ち、ちょっと、大丈夫?」
彼女は心配そうな目でこちらを見つめてくる。
…その顔も、僕の頭痛を加速させた。
だが、少し頭を抑えていると頭痛はすぐに治まった。
…たしかに、あのリングは僕のもので間違いない。
リミッターリング、僕の身体に宿る強大なパワーから僕自身を守るもの…だったはずだ。
だが、あの記憶は…?
あれはたしかに、僕の声だった。
だが……いつそんなことを言ったのか、"最後のチャンス"とはなんなのか、もう一度記憶を探ってみても、やはり答えは出ない。
「っ…ああ、大丈夫だ。少し頭痛がしただけで…
そのリングは、たしかに僕のものだ。今の今まで忘れていたが…」
「うへ、やっぱりそうだったんだ。
じゃあこれは君に返しておくね、はい。」
彼女からリミッターリングを手渡される。
これは、僕にとって無くてはならないもの。
もしこれを外した状態で力を使い過ぎれば、僕自身の生命活動にも影響が出る。
そんなものを、今の今まで忘れていたのだ。
先程の頭痛は、無くしていた記憶を取り戻したことに起因するものだったのかもしれない。
…だとすれば、彼女の顔を見た瞬間にも頭痛が走ったのは何故だ…?
僕と彼女は知り合いだったのか?
いや、彼女の態度からしてそれはありえない、だが…。
僕が考え込んでいたのをまだ体調が悪いと判断したのか、彼女が声をかけてくる。
「アイツらはおじさん"達"が何とかしてくるから、君はここで休んでて。
危ないから窓から顔を出したりしちゃダメだよ〜」
「あ、ああ、わかった…」
…結局、この土地についても、彼女のことについても、彼女が持っていたショットガンのことも、全て聞きそびれてしまった。
携帯していたショットガンに、先程の爆音…。
彼女は少年兵のようなものなのだろうか…?
「…少し、様子を見てみるか。」
彼女の言いつけを破ることにはなってしまうが、今は一刻も早く情報が欲しい。
決意を固めた僕は、リミッターリングをつけ直しながら窓辺へと近寄り、先程の襲撃者であろう者たちに見つからないように、窓際に身を隠すようにして外の様子を観察し始めた。
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「……何なんだ、これは…」
そこにあったのは何とも異様な光景だった。
どうやら先程の轟音は、ヘルメットを被った少女たち、"カタカタヘルメット団"なる不良生徒のグループが引き起こしたものだったらしい。
やはり、その全員が武器を装備していた。
アサルトライフル、ピストル、サブマシンガン…。
様々な銃火器で武装している。
そして、このアビドス高校に所属していると思われる先程の少女を含めた4人の少女が、前線で応戦していた。
先程のピンク髪の少女に加えて、銀髪に獣耳を生やした少女、長い黒髪で同じく獣耳を生やした少女、栗色の長い髪を団子結びにしている少女の4人だ。
それに加え、どうやらもう1人の生徒がサポートをしているらしい。
そして彼女らもまた、銃で武装していた。
ピンク髪はショットガンと大盾、銀髪の獣耳と黒髪の獣耳はアサルトライフル、栗色の髪の生徒はガトリングガンを両手持ちで携帯していた。
また、彼女らの近くにはドローンも展開されている。
それによる支援射撃なども行われているようで、人数こそ少ないが相当なタフなのか、あの人数を前にして持ちこたえていた。
そして、銃火器で武装した少女たちによる命をかけた戦争が始まる……と、思っていたのだが。
「……あれだけの銃弾を浴びて気絶、だと?」
そう、死者はおろか血さえ流れていなかった。
銃弾に被弾したものは「痛ってぇー!?」だの「くっそ、やってくれたなぁ!」だの言っているが、それだけだ。
本来であれば身体が吹き飛んでもおかしくないような銃弾の雨も、彼女らを気絶させるだけに留まっている。
命を奪うはずの武器が、まるでただの喧嘩道具のように扱われている。
いや、もしかするとそれよりも軽い扱いなのかもしれない。
目の前の光景に絶句している間に、どうやら戦闘は終わったようだった。
結果はアビドス高校の生徒たちの辛勝、カタカタヘルメット団と呼ばれていたもの達はそそくさと撤退していったようだ。
彼女達の動きを見ている限り、どうやら弾薬費を節約したいらしい。
随所の動きに躊躇や慎重さが見えた。
だが、彼女達は互いのことをとても大事に思っているのだろう。
全員がお互いを信じ、逆境に耐え忍ぶ姿には目を見張るものがある。
あれだけの人数差や物資の差があったにも拘わらず、校舎を守り、ヘルメット団を撃退してしまった。
…そう、撃退なのだ。
結局死者の1人すら出さず、戦闘は終わってしまった。
相手を殲滅する訳でもなく、ただ売られた喧嘩を買い、相手を黙らせただけ。
僕の記憶に残っている銃撃戦とは、あまりにもかけ離れていた。
「……有り得ない。」
一体、何がどうなっている……?
僕が目の前の光景について考え込んでいると、戦い終わった彼女達の姿が目に入った。
互いの健闘を讃え、戦闘で負った傷の心配をし合っている。
いくら頑丈な身体とはいえ、やはりあの人数を相手にすればそれなりに損耗はしているようだ。
先の戦闘でも思ったが、やはり彼女たちの結束は決してヤワなものではないらしい。
…その光景が少し、眩しく思えた。
チクリ。
「…?」
胸の奥、僕にも分からないような、僕自信の奥深く。
何かが締め付けられるような、そんな感覚がした。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
「シャドウTUEEEEEE」がしたくて始めた今作ですが、重症をおった所を拾われたところから始まる都合上、いきなりTUEEEEEEできないのが苦しいところですね
おうシャドちゃん、例のアレ(ワープ)見せたってくれや
あとやっぱり小説って難しいですね
綺麗な話の流れを作れる人ってやっぱりすごいんだなって再確認しました