透き通るような青空の下、記憶を失くしたハリネズミ一匹   作:ヒテイペンギン

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どうも、ヒテイペンギンです。
前回ホシノに引き取られることが決定した所から続き、今回は少し時間が経った所からスタートとなります。

シャドウが歩む新たな日常。
どうか楽しんでいってくださると幸いです。


普通の生活、そして新たな日常…?

太陽の光で目が覚める。

窓から差し込んでくる、少し眩しいくらいに僕を照らしつけるその日差しは、夢を見ることなく熟睡していた僕の意識を覚醒させるには十分だった。

 

朝起きて最初に目にするのは、天井。

どこの家にでもある、シンプルな木でできた天井だ。

 

「…この光景にも、少し慣れてきたな」

 

そう言いながら、僕はベッドから起きる。

 

ホシノが僕をアビドス高校に通わせると言ってから、2週間ほどが経った。

最初は学校で寝泊まりすることになるだろうと思っていたが、怪我人であり、同じ高校に通うことになる仲間である僕を高校に放置しておく訳には行かないとホシノが言い張った結果、僕はホシノの家に招かれることとなった。

 

深手を負っていた僕の体は未だに完治はしていないが、ホシノが療養に良い環境を用意してくれたおかげで、今では"軽い運動"くらいならできるほどに体調も回復していた。

 

固くないベッド、普通の家。

本来なら当たり前の環境であるのだろうそれを、ホシノは与えてくれた。

道端で拾っただけの、自分の記憶も思い出せない僕に。

ここまで順調に回復したのは、紛れもなくホシノのおかげだろう。

 

2週間の暮らしですっかり見慣れた部屋を出て、静かな廊下を歩き、一度リビングを経由して洗面所へ入る。

 

顔を洗い、歯を磨き、鏡を見ながら軽く身なりに乱れがないかチェックする。

…寝癖が付いていたのに気づき、少しトゲの形を整える。

 

「……これが普通の生活か。」

 

普通の家で目を覚まし、普通の生活をして、普通の学校に通う。

…以前の僕も、こうしていたのだろうか、僕の知らない誰かと。

あるいは、あの金色の髪の少女がそうだったのか?

 

…考えても仕方ない事もそこそこに、ホシノを起こすため洗面所を後にする。

 

ホシノは時々、夜遅くにどこかに出かけているようだ。

できるだけ気配を消して行動しているのは、僕にそのことを気づかれたくないのだろう。

 

この2週間でホシノが悪事に手を染めるような人間でないことはわかった…と、思う。

それでも同じ家に住む僕に気づかれたくないことがあるならば、僕もそっとしておくが吉だろう。

 

だが、そのせいかホシノは常に寝不足らしい。

学校で昼寝をしていつもセリカに怒られているのも、夜遅くのその行動が原因なのだろう。

 

リビングの時計を見れば、とっくに8:30を回っている。

身支度にかかる時間と学校への距離を考えれば起床の時間としては少し遅いが、ホシノの睡眠時間を考えるとこれくらいは寝かせてやってもいいだろう。

 

ホシノの部屋をノックし、声をかける。

 

「ホシノ、僕だ。起きてるか?」

 

…数秒待ったが、反応がない。

やはりまだ寝ているか。

 

もう一度ノックする。

 

「ホシノ、起きろ、学校に遅刻するぞ。」

 

…今度は部屋の中から小さく"うへ〜…"という声が聞こえた。

どうやら、なんとか起きてくれたらしい。

ドアから離れ、少し待機する。

 

数十秒の後、ドアが開かれ、部屋の主が顔を出す。

 

「うへ、おはようシャド〜……

相変わらず早起きだねぇ、おじさんまだ眠いよ〜〜……」

 

"ふわあぁぁ"と、大きな欠伸をしながらホシノが出てきた。

 

「ああ、おはよう。

ホシノが遅いだけだ、普通はこんなにギリギリの時間にはならない。」

 

「うぅ、我が家のお母さんは厳しいね〜…

おじさんもっとゆっくり寝てたいよ〜。」

 

「誰が君の母だ。

そろそろ行かないと遅刻するぞ、身支度を整えてこい。」

 

「は〜い……」

 

ショボショボとした目を擦りながら、ホシノが洗面所へ入っていく。

僕は朝食を作るため、キッチンの方へ向かう。

 

と言っても、僕はまだ簡単なものしか作れない。

ホシノやアヤネ、セリカなどに料理を教えてもらい、簡単な朝食を作れるようになった程度だ。

 

今日は焼いたパンとベーコンエッグ、サラダにしようか。

少し行儀は悪いが、これならパンの上にベーコンエッグを乗せて、あまり時間をかけずに悪くない栄養を取れるだろう。

そんなことを考えながらキッチンで準備をして、いざ朝食を作りにかかる。

 

まずはフライパンでベーコンに火を通す。

油が出始め、いい匂いが漂ってくる。

ベーコンがいい具合に焼けてきたら、次はそこへ卵を落とす。

黄身が割れないように、ベーコンの大きさからはみ出しすぎないように、慎重に。

 

無事に落とすことができた、殻が入ることも無く、綺麗な形に収まっている。

我ながら、悪くない出来だ。

…つまらないことを考えながら、ベーコンエッグを焼いているフライパンにわずかに水を入れ、蓋をしてしばらく蒸し焼きにする。

 

その間に、今度はパンの準備にとりかかる。

この時間で卵が固まりすぎないよう、できるだけ急いでパンとトースターを準備する。

とはいっても、やることは少ないが。

 

パンを袋から取り出し、トースターの中へ焦げができないような配置で並べ、蓋をして時間を設定し、焼くだけだ。

 

そろそろ卵が固まってきた頃だろうが、まだ少し早い。

この間にサラダの具材だけ取り出しておこう。

冷蔵庫からレタス、タマネギ、プチトマト、味付けのドレッシングを取り出し、冷蔵庫の蓋を閉めて具材をキッチンの上に並べる。

ついでに棚から皿も取りだしておく。

 

さて、そろそろいい頃合いだろう。

ベーコンエッグを焼いていたフライパンの蓋を開け、中の様子を確かめる。

料理の出来は……。

 

「……フッ、悪くない。」

 

黄身は固まりすぎず半熟で、しかし白身はプルプルとした弾力を残す程度に火が通っている。

悪くない出来だ。

 

出来上がったベーコンエッグを皿に移し、今度はサラダの方へと移る。

だが、こちらもやることは少ない。

野菜を適当に切り分け、皿の上に盛り付け、ドレッシングをかけるだけだ。

 

セリカから教えてもらった切り方、ねこのて……という技術を使い、効率的に野菜を切っていく。

レタス、タマネギを切り終えた頃、トースターから焼き上がりを知らせる音が鳴る。

 

包丁を置きトースターの方へ。蓋を開けパンを取り出す。

焦げはついていない、だが焼き残した部分もない。

こちらも悪くない出来だ。

 

焼きあがったパン、切り終わったサラダを皿へよそい、サラダには仕上げのプチトマトとドレッシングをかける。

最後に、ホシノには温かいお茶を、僕はインスタントのコーヒーを入れ、皿や飲み物をお盆に乗せる。

 

この2週間で、ホシノを始めとしたアビドス生たちは、僕に"普通の生活"というものを教えようと手を尽くしてくれた。

普通の一日がどんなものか、ということから始まり、自分だけの楽しみ、趣味があると生活が楽しくなるというのも教えてもらった。

その中で知り、気に入ったのが、このコーヒーだ。

初めてコーヒーを飲んでからというもの、僕は毎日コーヒーを嗜むようになった。

この苦味が苦手な者は少なくないらしいが、僕にとってはこの苦味が不思議と落ち着きをもたらしてくれるのだ。

 

朝食の準備も終わり、お盆を持ってリビングの方へと向かう。

そこには既にホシノが着席していた。朝食を作っている間に身支度を終えていたようだ。

 

「待たせたな、朝食ができた。」

 

「おぉ〜、待ってましたぁ〜!

今日はパンとベーコンエッグとサラダかぁ〜、シャドウも順調に成長してきてるねぇ。

お母さん嬉しい、嬉しくて涙が出ちゃうよ、ホロホロ…」

 

「…さっきは僕のことを母だとか言ってなかったか?

ふざけてないでさっさと食べるぞ、遅刻する。」

 

「は〜い、シャドウは相変わらずお堅いねぇ〜。

でも冷めちゃったらもったいないし、そうしよっか!いただきま〜す!」

 

「…いただきます。」

 

ホシノに倣ったように手を合わせたあと、ベーコンエッグを乗せたパンを頬張る。

パンのサクサクとした食感と、ベーコンの旨み、とろけだす黄身とプルプルとした白身。

一つの料理に詰め込まれた食材の全てがお互いの味を引き立てている。

片手で効率よく食べれるため、その点でも朝食に適している。

最初にこれを試した者は、よくこんなものを閃いたものだ。

 

最初の一口をよく味わった後、今度はコーヒーへ手を伸ばし、その奥深い味とわずかな苦みを堪能する。

…やはり美味い。落ち着く味だ。

もしかすると、記憶をなくす前もこうしてコーヒーを飲んでいたのだろうか?

だとしたら、僕のコーヒー好きは魂に染み付く程のものなのだろうな。

 

そんなことを考えながら朝食を食べ進めていると、ホシノから声をかけられる。

 

「そういえばシャドウ、今日の放課後は初めてのバイトだっけ?

こないだセリカちゃんから君の体力のことは聞いたけどさ、本当に無理はしてないんだよね?」

 

「ああ、セリカに紹介してもらった飲食店で、今日から出前のバイトだ。

体調に関しても問題ない。激しい動きさえしなければ、身体も痛まない。」

 

「うへぇ〜、何回聞いてもすごいね、"アレ"で軽い運動って……」

 

そう、体調が回復してきた僕は、アビドスの中で一番バイトに精を出しているというセリカに紹介してもらい、アビドスへの恩返しのためにバイトをすることにしたのだ。

 

あれは、4日ほど前……。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「…え?バイトがしたい?」

 

「ああ、何処か良いバイト先はないか。」

 

アビドス高校での一日の活動が終わり、各々が自分の好きなことをする時間、放課後になった頃。

今まさに昇降口から帰ろうとしているセリカに、自分でも働ける場所がないかを尋ねてみた。

 

「いやいや、たしかにあの時はアンタの身体が治ったら協力してもらうって言ったけど、まだ2週間も経ってないじゃない。

もう少し休んだら…?」

 

「身体の方は問題ない。

日常生活にも支障はないし、軽い運動ならできるくらいには回復した。」

 

「う〜ん、まあそれならいいけど…

となると、まだ普通の生活に慣れてないアンタでもできる仕事を探さないとね…」

 

「…そうだな。

バイト先は飲食店、接客業、事務作業などが候補に挙がることが多いと聞いたが…

……正直、どれも上手くいく気がしない。」

 

「でしょうね、アンタ無愛想だし、事務仕事もできるほど慣れてないし、トラブるのが容易に想像できるわ…

じゃあ、アンタなにか得意な事とかないの?それを活かせるバイト先を見つけるとか。」

 

「フム……身体能力には自信がある。

今はまだ完治しきっていないから戦闘はできないが、足の速さなら怪我をすることも無く活かせるだろう。

…出前、と言ったか?飲食店から客の家に料理を運ぶ仕事、アレなどどうだ。」

 

「足の速さ…?まあ、たしかに出前なら悪くないかもしれないけど。

足の速さって言っても、出前は普通自転車とかお店から貸してもらうバイクでやるものよ?

いくらアンタが足に自信があっても、それじゃ出前に向いてるとは言い難いわよ」

 

「問題ない。そこらの自転車やバイク程度なら、今の僕でも追い越せる。」

 

「…はぁ?

いやいやいや、アンタ、キヴォトスの外から来たんでしょ?

キヴォトスの外の人はキヴォトス人よりだいぶ弱いって聞くし、一部のキヴォトス人ならともかく、そんなこと出来るわけないでしょ!

まあ、アンタは人って言っていいのかわからないけど…」

 

「それなら、実際にその目で見てみたらどうだ。

ちょうどグラウンドもある、そこで僕の力を見せてやろう。」

 

「…へぇ、随分自信があるじゃない。

いいわ、そこまで自信があるなら、アンタに出前が務まるかどうか、先輩として見定めてあげる!

出前を募集してるお店には心当たりがあるから、アンタが私の試験に合格できたら、店長に話を通してあげるわ!」

 

面白い、記憶を無くしてから初めての"運動"だ。

今の僕に出せる力などたかが知れているが、先輩のお眼鏡にかなうよう全力でやってやろう。

 

「シャドウ、今からこのグラウンドの一周、300mを全力で走って来なさい。それも五週よ。

出前を自分の足でやるっていうなら速さだけじゃ足りないわ、持久力も必要になる。

目標を達成するのにかかった時間で、アンタに出前が務まるかどうかを見てあげる。

準備はいい?」

 

「了解した、いつでもいい。」

 

セリカの声に従い、グラウンドのスタートラインでクラウチングスタートの姿勢を取る。

それと同時に、わずかに気合いを入れる。

…よし。

 

「それじゃあ行くわよ?

あれだけ大口叩いたんだから、精々頑張りなさいよね!」

 

セリカはいつの間にかスマホを手に持っていた。

おそらくストップウォッチの機能を使って、僕のタイムを計るのだろう。

 

「さあ、よ〜い……」

 

その声を合図に、頭の中を目の前の道に集中させ、足に力を込め始める。

必ず、やり遂げる…!

 

「スタート!」

 

──────瞬間、爆発と見紛うような勢いで砂煙が巻き上がる。

 

「きゃあ!?けほっけほっ…

え、何が起こったの!?シャドウ!?」

 

エンジンを起動してジェット噴射を開始したエアーシューズを駆使し、グラウンドを駆け抜けていく。

このエアーシューズは、ジェット噴射によってホバー状態となり、ローラースケートのような独特な足運びによって高速での移動を可能にするものだ。

 

…だがやはり身体は衰えているのか、自分が覚えている全力には程遠い速度しか出せない。

しかし、問題はない…!

 

今の僕に出せる全力は時速100kmと少し、秒速にして約27mと言ったところ。300mの一周にかかる時間は10秒くらいか?

 

その速さを維持したまま、僕は文字通り地面を滑るように走っていく。

 

10秒経つ、まずは一周。

 

「え、え…?」

 

足に込める力をさらに高め、足を交互させるスピードを上げていく。

身体全体にエネルギーが巡っていく感覚がする。

 

二週……三週……四週……五週目。

 

目標の五週目を終え、ゴールラインを超えた直後に急ブレーキをかける。

そのせいでまた砂埃が舞い上がってしまったが、まあいい。

体感時間は…50秒ほどだったか。

…やはり遅いな。

 

それに加え、身体に決して少なくない疲労を感じる。

怪我の方も、やはりまだ回復しきっていなかったようだ。もう少しスピードを落とさなければいけないか…?

 

セリカが計っていた正確なタイムはどうなっただろう?

僕はセリカに近づいていき、タイムと試験の合否を確かめる。

 

「セリカ、タイムはどうだった?

………セリカ?」

 

声をかけても固まっていて返答は無い。

心なしか表情が強ばってヒクヒクと痙攣しているような気もする。

 

…答えてくれないのでは仕方ない。

セリカの後ろに周り、ストップウォッチの表示を見る。

そこには……

 

「…おい、ストップウォッチの計測を止めていないようだが。

結局、僕の合否はどうだったんだ?」

 

とっくにゴールしたにも関わらず、止められていないストップウォッチがあった。

これでは正確なタイムがわからない、なぜセリカはずっと呆けている…?

 

「セリカ、試験の合否は…」

 

「……な、な、な……」

 

…なんとなく嫌な予感がして咄嗟に耳を塞ぐ。

 

「なんなのよそれええぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

……塞いでなお耳が痛い。

これがキヴォトス人の声量か。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

あの後僕の身体能力や、エアーシューズについて問い詰められたり、セリカの叫び声を聞いた皆が何事かと飛び出してきたりと一悶着あったが……。

なんとかセリカには出前としての腕を認めてもらえた。

 

バイト先の店長も最初は疑っていたが、セリカの証言でなんとか信じてくれたらしい。

"ウチの店も常連さんはよく来てくれるが、都会の中にあるって訳じゃあないからなぁ。

これだけ心強い出前のバイトが入ってくれるなら、もっと多くのお客に料理を届けられるってもんだ!"と言っていた。

 

…通常の岡持では中身が零れてしまうため、僕専用の配達用容器を作ることになったらしいが。

少し申し訳なく思う。

 

その上、中身を乱しすぎないようにスピードを落とす都合上、時速約60〜70km程度に速度を落とさなければならないことになったが、それも了承の上で雇ってもらえた。

 

「あの時が怪我を負って目覚めてから初めての運動だ。

軽く、ほんの肩慣らし程度のつもりだったが…」

 

「うへ、にしてもすごいよね〜、最初はおじさんも耳を疑ったよ。

300mのグラウンドを一周10秒、五週1.5kmを50秒ほどで走っちゃったって言うんだもん。

いくらキヴォトス人でも、そこまで速い人はいないんじゃないかなぁ…?

しかも、病み上がりの体で……こりゃおじさん、とんでもない後輩を拾ってきちゃったかもね〜」

 

「身体が完全に治ればもっと速い速度も、それこそ戦闘もできるが…完治には、まだ一週間ほど療養が必要になるだろうな。」

 

「それもすごいよね〜、あれだけ怪我してたのにたった二週間でここまで回復して、あと一週間で完治って…ろくな治療もできてなかったのに…

シャドウって本当にキヴォトスの外から来たのかな?」

 

「僕のような者がキヴォトスにいれば、噂くらい立つだろう。

それに、あれだけの怪我を負う事態があったとなれば尚更な。」

 

「うへ、まあそれもそっか〜。」

 

怪我の治療に関しては、おそらくリミッターリングのおかげもある。

これは元々、自分の体を蝕むほどのカオスエネルギー、つまり余計なエネルギーを使わないように抑制するための代物。

療養でエネルギーを使わないうちに、放出されていないエネルギーが僕の生命力の回復に回された、といったところか。

 

…ホシノには感謝しなくてはならないな。

あのままリングを嵌めず、深手を負ったまま過ごしていたら、僕は今度こそ死んでいただろう。

ホシノがこのリングを見つけてくれて本当に良かった。

 

そんなことを考えているうちに、いつの間にか2人とも朝食を食べ終えていた。

…あの時の喧しさや自分の体の事について考えているうちに、思ったよりも時間が経っていたようだ。

 

「うへ〜美味しかった〜。

ごちそうさまでした〜。」

 

「お粗末さまでした。」

 

2人して手を合わせ、食事を終える。

すっかり空になった皿たちを流し台へと運び、水につけておく。

今日の放課後は初めてのバイトだ、皿を洗うのはホシノに任せるとしよう。

 

「シャドウ、そろそろ学校に行くよ〜、準備できた〜?」

 

「ああ、問題ない。」

 

そう言って僕は、昨日のうちに用意していた鞄を持つ。

中には色々な教科書や書類が入った、ホシノと同じ鞄。

アビドス高校に通うことになった時に、ホシノがくれた物。

制服は諸々の都合で用意できなかったが、せめて鞄だけでも同じものを使おうと渡してくれた。

 

利便性に優れたデザインのため、鞄としての機能は申し分なく、ホシノの言葉に甘んじてこうして使っている。

…なんだか本当に家族になったようで、少し変な感じがするのは黙っておく。

 

「それじゃあ出発しようか〜。行ってきま〜す。」

 

「…行ってきます。」

 

こうしてホシノとアビドスに向かい、他の4人と合流しアビドスで過ごすのも、もう慣れた日常だ。

だが、今日は初めてのバイトがある。

また、"普通の生活"への一歩を、踏みしめることになる。

その事実に、僕の心は柄にもなく少し浮き足立っていた。

 

そしてホシノと一緒に、僕たちの居場所へと歩き出す。

新しい、"普通の生活"へ。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「ん、おはようみんな。」

 

「…え?」

 

「…え」

 

「…おやぁ?」

 

「え、え…?」

 

「………。」

 

アビドス高校の教室、廃校対策委員会室。

僕たちの居場所、普段なら廃校対策を出し合うか談笑でもしているはずの、その場所に…。

 

「し、し、し……」

 

6人の中で一番最後に到着したシロコは…。

 

「シロコ先輩が死体運んできたぁー!?!?」

 

…ぐったりと力なくシロコの背にもたれかかる、大人を連れてきた。

 

…普通の生活を手に入れるのは、どうやらまだ先らしい。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はシャドウの新たな日常、他愛のない普通の生活を書いてみました。
次回からようやくアビドス本編スタートとなります…!

実は本格的にブルアカのストーリーを書いていくのに備えて、アニメの履修に加えてよう〇べで原作ストーリーの履修も始めまして。
アビドス編は一先ず、両方の知識を活用しながら頑張って書いていきたいと思います。

……いや、わかってはいるんですよ。
「さっさと自分でプレイしろこのにわか」っていうのは。
………戦術シミュレーション的なゲームめちゃくちゃ苦手なんです……。
某FG〇もそれが理由で途中でやめちゃったので、絶対無理だろうなと。
なのでどうしようもないエアプにわかなのは変わらないのですが、自分なりに頑張って書いていきたいと思います…。
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