クトゥルフを信仰していた蛇人間は考えた。
「主に会えるようにルルイエから家に繋げないと!」
古い浴槽。
山林走る豊かな山地。
その中に丸太小屋があった。
少女が歩いていた。
探検をしながら、落ち葉を拾い集めていた。
少女が小屋を見つけた。
小屋の中はカビや苔が跋扈しており、パッと見ただけでもかなり汚いと感じられ、また木の床に目で見えるほど塵やほこりが堆積している。
元は綺麗だったであろう木で出来た壁は自然に
丸太小屋は浴槽が中央に大きく設置されており、他に何も無いように思える。
少女が扉を開けた。
「だれかいますかー?」
シーンとした静寂が少女を包む。
「だれもいないのかな?」
少女の足取りは軽やかに、足跡を床に着けながら浴槽へと向かっていく。
浴槽は水が張られているものの深く、その深さは一般的な浴槽よりも深いように感じられる。
また、水が黒い不透明な物質に覆われて見えなくなっており、この水面を覗くためには掃除をしなければならないと思える。
「あれ?」
少女の視線が浴槽の前、床に止まる。
「なんだろうこれ」
拾い上げられたそれは木片ではなく、なにか分厚い皮のような物に文字が刻まれた落とし物のようだ。
「んー、しーちゅうるふ?」
皮には文字が刻まれているものの、それは英語だった。
Cthulhu と、刻まれていた。
瞬間、ぶくぶくと浴槽の水が底から泡立ち、
緑色の波が浴槽を彩った。
ざぱあ、と大きな生き物が浴槽から出てきた。
「ええと、こんにちは?」
「しーちゅうるふさん?」
無言で少女を見つめる、
黄色と黒の瞳孔が横になっている目をした蛸。
特筆すべきはその形状が蛸とかけ離れている事。
頭だけが浴槽から出ているもののその姿は異様だった。
6つの大きな目が蛸のような顔に着いていて、
触手が顔の下に大量に出ている。
その数は蛸と言うよりイカ、いやイカよりもっと大きい。
その顔に気だるげさを全面的に出しながらも、少女のあいさつに念話で応えた。
こんにちは
「持って帰っていい?」
蛸は顔を顰めた。
ざぶりと浴槽に再度戻り、そして触手の上に小さな小さなミニ蛸を乗せて少女に差し出した。
眠い おやすみ
短くそう言い残して、まるでなにももとから水なんて無かったかのように浴槽の水が引けていった。
少女はこの全ての状況に揺らがず、手の上のミニ蛸をこねくり回している。
「なんか、不思議?」
怠惰な顔で見つめるミニ蛸。
その見た目はメンダコやヒョウモンダコに近い。
つまり、とても可愛かった。
「帰ろ」
少女が踵を返して水の抜けた浴槽から背を向け、その扉を開けようとした。
すると扉が少女目掛けて倒れてきた。
「わっ!?」
思わず目を瞑ってしまった少女。しかし、扉が倒れることはなかった。
波が空間に立ち、その波が空間と一緒に裂けた瞬間、
扉はそこから飛び出してきた手にむんずと掴まれ、バキバキと音を立てながら紙が繊維に解けるように木の扉がバラバラに分解された。
「助けてくれたの?」
ぎゅっと手の皮を握り存在感を伝えてくるミニ蛸。
その顔は誇らしげだった。
しーちゅうるふ、一体どんな神なんだ…不思議だね!