自称アウトローと新たなツチノコ
ルルハマ・リッカはアウトローに憧れていた。
どんなときもクールにダーティな仕事をこなし、しかしながら独自の美学のもとに動く、いわば悪のカリスマ性に惹きつけられてやまなくなったのである。
リッカがアウトローに憧れたきっかけは「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に描かれた任侠の生き様からだったが、その後、よくわからないまま読んだ「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」に描かれた様々な大人たちの策謀と政治劇がそれを悪化させたのだ。
──と、リッカの幼馴染であるオウマエ・ムツミは今日もGBNで長い赤毛をかき上げ、細い肩にコートをかけて、廃墟同然のフォースネストでボロボロのソファに座っているリッカこと、ダイバーネーム「ルル」を見つめて思い返していた。
「あら、なにかしら? 私の顔になにかついてる?」
「いや、別に? 今日もルルちゃんはルルちゃんだなーって」
ムツミにはこれといった願望もない。
ただ、アウトローを目指して七転八倒するルルが面白くて愛おしいから、一緒に付き合ってGBNをやっているだけだ。
強いていうならルルにはルルの美学があるとはいえ、この廃墟同然のフォースネストからはそろそろ引っ越ししたい、というぐらいか。
「ふふ、当たり前よ。私はいつでもクールなアウトロー。GBNのバッドガールよ」
「そうだねそうだね〜、でもさ、そろそろ営業活動かけないとお客さんも来ないし、このボロボロなフォースネストから引っ越しできないよ?」
「うっ……わ、わかってるわよ! でも、本当に垢BANされそうな依頼とかきたら困るでしょ!?」
一応、ルルがリーダーとして結成しているフォース「ゼクスフローネ」は、GBNの「便利屋」を名乗って、傭兵活動を中心にダイバーたちからの依頼を請け負っているが、あまり知名度は高くない。
と、いうのも単純な話で、ルルは思ったよりも常識人で小心者なのだ。
GBNの外を覗けば、ダイバーランク上げ代行やら憎いあいつのPK依頼だとか、そういった非合法にして真にアウトローと呼ぶべき依頼はゴロゴロ転がっている。
だが、そんなものに手を出した日にはガードフレームに捕まって垢BAN、それどころか警察沙汰にもなりかねない。
ルルはあくまで「それっぽい」ことがしたいだけで、本当の悪党に成り下がりたいわけではないのだ。
はぁ、と小さく溜息をつくルルに、ムツミは一つのウィンドウを立ち上げてその肩を叩く。
「そんなルルちゃんにろうほーう! 今話題の『賞金首』を倒して一攫千金しちゃわない?」
「『賞金首』?」
裏の世界ではトップランカーたちをPKできたらそれに応じた報酬が支払われるという依頼があるとかないとかいう噂だったが、GBNの中でも話題になるのは珍しい。
ムツミが提示してきたウィンドウに記されていたのは、GBN内の掲示板に書き込まれたログだった。
ルルがログを一読すると、運営による検閲があるコンテンツにもかかわらず、そこには確かに「賞金首」と呼ばれるダイバーへの怨嗟が綴られている。
「これ、ハードコアディメンション・ヴァルガの話よね? ムツミ?」
「うん。リスキルリンチPKキルスティールもなんでもあり! 真のアウトローに相応しい場所だなーってムツミちゃんは思ってたり」
「ヴァルガ、ねぇ……確かにあそこはルール無用だけれど……」
ハードコアディメンション・ヴァルガ。
ムツミが話題に上げたその場所は、公式が作った無法地帯ないし隔離地域みたいなもので、「無制限のフリーバトル」が許可されているのだ。
つまるところ、一歩でもディメンションに足を踏み入れれば周囲は全員敵となり、あらゆる手段を使ってダイバーポイントをもぎ取りにかかってくる、まさに世紀末の様相を呈している。
「でも、ヴァルガで暗殺依頼なんて珍しいわね」
「そうなのそうなの! あそこは殺された次の瞬間には高速修復材使って殺し返しに行くような場所だからね!」
殺し合いこそがヴァルガにおけるコミュニケーションであり、そこで殺されたなら運が悪いか腕が足りないと諦めるか、殺してくれた相手にお礼参りへ行ってくるか。
そんな殺伐とした魔境だからこそ、「基本的にはなにがあっても恨みっこなし」という暗黙の了解が成立しているはずだと、ルルは記憶していた。
実際、外の掲示板でもヴァルガにおけるトラブルは当事者同士で勝手に解決してくれ、がテンプレに入っているぐらいだ。
「で、その『賞金首』はなにをしたのかしら」
「24時間ぶっ続けでダイブして0キルのまま死体の山を築いてるんだってねー、別に殺されるのは構わないけどこいつが死んでないことが癪だ! って連中が多いみたい」
「そう……でも、『賞金首』を仕留められれば一等地にフォースネストを建てられるだけのビルドコインを払ってくれるのね」
24時間ダイブし続けて一度もキルを取られることなくヴァルガで暴れ回れるような化け物がいるとはにわかには信じがたい。
だが、掲示板で何度も目撃証言と怨嗟の声が積み重なっていれば、実在を疑う方が無理がある。
そんな相手を「暗殺」できれば、スレ民たちが必死にかき集めた、その額なんと1000万ビルドコインという破格の報酬が手に入る、というのは、中々夢があって魅力的な話だった。
実際、「賞金首」暗殺チャレンジは何度も遂行されているが、一度も成功していないらしい。
ここで華麗に自分が「賞金首」を討ち取れば、フォース「ゼクスフローネ」の評判も、ルルのアウトローとしての評判も鰻登りなのは間違いなしだ。
ヴァルガとはいえ、半ば公然と出されているPK依頼を受けるかどうかは悩んだが、メリットとデメリットを天秤にかけて、ルルは前者を選び取ることにした。
「わかったわ。準備しなさい、ムツミ。『賞金首』は私たちが討ち取るわ」
「りょーかーい! そうでなくっちゃ! にひひ」
長い赤毛を掻き上げて歩き出したルルの一歩後ろに、銀髪のサイドテールを揺らしながらムツミは付き従う。
果たしてどんな波瀾万丈が待ち受けていることやら。
ルルは自分にどんな顔を見せてくれるのやら。
ムツミの胸は、溢れんばかりの期待で一杯だった。
†
「相変わらずここはルールもなにもあったものじゃないわね、もう……!」
ハードコアディメンション・ヴァルガに降り立つなり、いわゆる「出待ち」と呼ばれる、スポーン明けの無敵時間が切れたタイミングを狙っての狙撃を回避しつつ、ルルは愛機であるゲルググ・イェーガーをベースにゲルググ・ウェルテクスのバックパックをコンバートした「ゲルググ・ロッソベリアル」の構えたスナイパーライフルで「出待ち」を逆に撃墜する。
「さっすがルルちゃん、やるー!」
「このぐらい、真のアウトローたるこの私の前では朝飯前のことよ」
出待ちから生き残れないようでは、そもそもヴァルガに潜る資格がない。
範囲攻撃に巻き込まれて蒸発するようではそもそも運がない。
地獄を仮想世界に顕現させた無法の聖地は、今日も闘争がダイバーたちの血肉を沸き立たせ、天地を満たしていた。
「とはいえ、余裕こいてられないのも事実なのよね……!」
一緒に潜った味方以外は全て敵、なんなら一緒に潜った味方も敵なことが珍しくないこのヴァルガと、足を止めて敵機を撃ち抜くスナイパースタイルの相性は極めて悪い。
上手く大規模な戦いや敵の動き、地形、状況を観察した上で狙撃ポイントを見つけなければ、戦いに飢えた狂犬どものおやつにされるだけだ。
背中にファンネルコンテナを搭載した、ムツミの「ローゼスケンプファー」とデータリンクを維持しつつ、ルルは適当にそこらのヴァルガ民をあしらいながら「賞金首」を狙撃するポイントを探す。
「ねえねえルルちゃん、あっちのビルなんかいいんじゃない?」
「確かにいいかもしれないけど、配置的にステルス持ちが何機か隠れてるわね」
「くふふ、さっすが! じゃあ狙い撃っちゃうよ!」
ローゼスケンプファーのファンネルコンテナから射出されたファンネルが、ステルスで潜んでいたのであろう敵機にアバウトな当たりをつけてビームの網を張る。
悲鳴と共に爆散する機体を一瞥し、ムツミはその口元にイタズラっぽい笑みを浮かべた。
だが、その余裕はすぐに崩れ去る。
「……っ!」
「どうしたの、ムツミ!?」
「ファンネルが墜とされてる、中々やれるのがいるよ……!」
ファンネルのシグナルが次々とロストしていくのを確認し、ムツミは焦りにぎり、と歯噛みする。
GBNにおけるステルススキルはいくつかあるが、最も基本的な「ステルス」は移動した時点でレーダーに反応が映ってしまう。
しかし、ルルのゲルググ・ロッソベリアルのレーダーにも、ムツミのローゼスケンプファーのレーダーにもなにかが動いた様子はない。
つまり、その場から動かずにファンネルの網を対処できるだけの技量を持った相手か、もしくはステルスの上位互換であるミラージュコロイド持ちが、絶好の狙撃ポイントには陣取っているということだ。
「……どうするべきかしら」
ロッソベリアルは狙撃戦だけがなにも本領ではない。
ムツミのローゼスケンプファーも同じく、近接格闘戦はある程度こなせるだけのスペックを誇っている。
だが、手動操作のファンネルをその場から動くことなく捌けるだけの手練れが相手となると、二対一でかかっても少々面倒だし、なにより「賞金首」との戦いを前に消耗したくはない。
「なら、面白い方を選ぶのがルルちゃんでしょ?」
ムツミの言葉にルルは、はっと目を見開く。
そうだ。怯懦や打算を優先させるぐらいなら、よりアウトロー的な──格好よくてスカッとする選択肢を選ぶ。
それが自分の美学だったはずだ。アウトローの星になろうと決めたあの日から、貫こうとしてきたことだったはずだ。
「そこにいるステルス機! やるわね、あなた! その腕前を見込んで提案があるの!」
ルルは、覚悟と共にオープンチャンネルで通信回線を開き、今も廃墟に潜んでいるであろう敵へと呼びかけた。
自分はその気になればいつだってお前を撃ち殺せるぞ、という威勢を張りつつ、あくまでもその上で「戦う以外の選択肢がある」と提示する。
ルルが選んだ答えは、「交渉」だった。
『……いきなりファンネル飛ばしてきて提案もなにもないと思うけど』
「それはこちらの非礼ね、謝るわ。でも、あなた……見たところ『賞金首』を狙っているのでしょう?」
『……』
「ふっ……沈黙は正解の暗喩、よ」
ルルは極めてアウトロー的な(主観による)笑みを浮かべて、ステルス機に乗っている、推定少女にそう言ってのける。
「泥沼に足を囚われた二頭の獅子が互いに相争えば、ただ沈んでいくだけよ。ここは共同戦線を張ることがお互いにとっていい選択……そうは思わない?」
『……いい例え方だね、気に入った』
(よ、よかったー! 断られなくて!)
ルルは涼しい顔で余裕の笑みを浮かべていたが、内心は心臓がばくばくとうるさくて、余裕など欠片も持ち合わせていなかった。
とりあえず今は敵対しない──ことヴァルガにおいて「約束」ほど脆いものはないが、ルルはこれを戦士が交わした「契約」と見て、ステルス機の少女を信頼する。
その証としてスナイパーライフルを下ろし、無防備な状態でルルは廃ビルに突入した。
「あら、素敵な妖精ね」
『ガンダム・フェアリー。私の愛機』
そこで待っていたステルス機──ガンダム・ピクシーをベースにジオン系のパーツをいくつか組み込んだミキシングモデルを駆る少女は、どこか誇らしげにその名を口にする。
「いい名前ね、私はルル。傭兵集団『ゼクスフローネ』を率いる盟主よ、あなたは?」
『……カヨ。ただの野良の一匹狼』
「くひひ、恥ずかしがり屋さんなんだねー、でもムツミちゃんのファンネルを捌いたその腕は見込んでるよ! 賞金はちゃんと半分ずつ山分けってことで!」
『……了解』
カヨ、と名乗った少女は短く答え、ただひたすらに「賞金首」が通りすがるのを待つ。
まるで、獲物を前に睨みを効かせる捕食者のように冷たく、獰猛な目だ。
このカヨという女の子は、アウトロー指数が極めて高い。この一時だけの共同戦線なのが惜しいぐらいだ、とルルは心の底からそう思った。
ヴァルガには今、「賞金首」を狙うダイバーとその「賞金首」狙いのダイバーを狙うダイバーと、関係なくいつも通り無秩序に暴れ回るダイバーの三つの勢力図ができている。
普段は無秩序に暴れ回っているダイバーたちがいくつかの派閥に分かれたことで、互いを信頼するというのは尚更無理筋だろう。
それでも、カヨは自分たちを信頼してくれた。
スナイパーライフルのスコープを覗き込みながら、ルルは「賞金首」が通りすがるのを、カヨと同じ捕食者の瞳でひたすら待ち続ける。
この信頼は、そこにある意味はきっと、この地獄においてはなによりも大きい。
外で核爆発が起きようと、ダインスレイヴが落ちようと、今は「仲間」と呼べる存在と合わせて獲物がレンジに飛び込んでくるのを待つ──その余裕は、少なからず信頼からくる安心が生み出したものだった。
と、ルルが小さく笑ったまさにその瞬間だった。
『死んでくださいぃぃぃぃ!!!!』
極めて物騒なことを口走りながら、スコープ越しに全力でスラスターを噴かしてショットガンを乱射している紫色のイフリートと、放たれた散弾をひらりひらりと踊り舞うようにかわし続ける、バルギルの改造機──「賞金首」のガンプラである「バルギル・グレイシア」の姿が映る。
あのイフリートは恐るべきことに自分に近づいてきた漁夫の利狙いや平常運転のヴァルガ民を蹴散らしながらバルギル・グレイシアに肉薄しているのだが、「賞金首」はそれ以上だ。
度胸と技量を持ち合わせた相手の攻撃をただの遊びの如くいなして、ファンネルでいたぶり続けているのだから。
『し、死んでくださいぃ……あなたを仕留められないとわたしはまたお仕置きされるんですぅ……』
イフリートの改造機を駆る少女は、眦に涙を浮かべながら切実に訴える。
だが、「賞金首」がその話を聞くことはなかった。
返事の代わりにファンネルを飛ばし、バタフライ・エッジを投擲して、少女のイフリートを攻撃し続けている。
ここはヴァルガだ。
相手をいかに嬲ろうがいたぶろうが、知ったことではないという倫理の2文字をゴミ箱に捨て去った掃き溜めでしかない。
だが、掃き溜めだからといって、許されることと許されないことがあるだろう。
ルルの左手に力が籠る。
今このタイミングで弾を放てば、こちらの位置がバレて作戦は台無しだ。
申し訳ないが、イフリートの少女にはデコイになってもらって、こっちの距離までバルギル・グレイシアを引きつけてもらうことが最善の選択肢なのはわかっていた。
「こっちを見なさい、『賞金首』!」
それでも、ルルは──少女を助けるためだけに、意味のない引き金を引くことを決めた。
ビームの閃光が少女のイフリートと、バルギル・グレイシアの間に割って入り、炸裂する。
当たり前だ。どちらにもダメージを与えられない、ただ戦いの均衡を破るためだけの意味のない一撃でしかないのだから。
──だが。
「それでこそルルちゃんだよね! そこのイフリートの子、ムツミちゃんが加勢するよ!」
『……ああもう、最悪……こうなれば死なば諸共……!』
位置を気取られた以上、暗殺は無理だと判断したカヨは、げっそりした様子でそう呟いていたが、ムツミは満面に笑顔を咲かせていた。
アウトローを自称しながらも、誰よりも義憤と正義感で動く。
それが、ルルという少女だった。
四対一では分が悪いと踏んだのか、ファンネルを飛ばすことに終始していたバルギル・グレイシアは手にしていたGNパルチザンⅡを構えて、背後からの奇襲を試みるカヨを一撃で貫き仕留める。
『なっ……!?』
「はっや……!? って、ええっ!?」
困惑しているその隙に、ムツミのローゼスケンプファーをも貫いて、バルギル・グレイシアは流れるように、ショットガンのトリガーを引き続ける少女に肉薄した。
『あっああ、た、弾切れ……!?』
「下がってなさい!」
しかし、ショットガンの弾は既に撃ち尽くされていて、不発音が虚しく空を切るだけだった。
絶体絶命かと思われた刹那、ルルは背中のブーストバインダーを含めた全てのスラスターを全開にして、少女とバルギル・グレイシアの間に割って入る。
この行為にも意味はない。どうせまともに正面から戦っても、「賞金首」に自分たちは勝てない。
そんなことはわかっていた。
わかっていたが、心の奥で沸騰する「なにか」が、ルルを突き動かしていたのだ。
GNパルチザンⅡの一撃で半身を失いながらも、ルルは左手に持ったスナイパーライフルを鈍器代わりに、バルギル・グレイシアの脳天を思い切りぶっ叩いた。
『これでぇぇぇッ!!!!』
そして、体勢を崩した「賞金首」の土手っ腹に、少女が腰を入れた渾身の蹴りを入れる。
だが、所詮は武器を持たない、ヤケクソになっただけの攻撃だ。
バルギル・グレイシアがカウンターとして繰り出してきたファンネルの一撃で、ルルたちはあえなくロビー送りにされるのだった。
†
「強かったわね、流石の『賞金首』だけはあるわ」
ロビーの片隅にある手すりに寄りかかりながら、ルルは戦いを振り返る。
そこにはちょうど同じようなタイミングでロビー送りにされたムツミとカヨ、そしてイフリートの少女がいた。
結局、自分たちの手に負えるような化け物じゃなかったということがわかっただけだったが、それでも、最後に一矢報いただけで大金星だ。
「あ、あのぅ……」
「あら、どうしたのかしら」
おずおずと手を挙げたイフリートの少女が、ルルへと問いかける。
「ど、どうしてわたしなんかを助けてくれたんですか? わたしなんて役立たずでいつもフォースメンバーの足を引っ張ってばかりの存在なのに……」
「あなたが? とても信じられないわね」
見たところ、少女のイフリートはかなり頑健な装甲かつ継戦能力と制圧力に長けたカスタムをしている。
いわゆるタンク役としては最適だろう。
それにもかかわらず、彼女を役立たず扱いしたり、あまつさえ「お仕置き」なんてものを企んでいるフォースがまともだとは、とてもルルには思えなかった。
「で、でも……わたしが虫ケラ以下の役立たずだっていうのは、皆から言われてるから、事実なので……」
「だったらあなた、私と来なさい」
「……へ?」
「そんな見る目のないフォースなんか辞めて、この私と一緒に……いえ、栄誉ある『ゼクスフローネ』の盟主として私にはあなたを迎え入れる用意があるわ」
「えっあっ、そ、そんな……」
「来なさい。私はルル、いずれGBNの全土に名を轟かせるアウトローよ」
有無を言わさず、ルルは少女の震える手を取った。
「……ぁ……っ……」
たったそれだけの、客観的にはなんの慰めにもならないと思える声が、ぬくもりが、少女にとっては、救い主からの祝福に思えてならなかった。
「教えてちょうだい、これから私の片腕となるあなたの名前を」
「……は、ハルナ……ハルナですっ! ルル総帥!」
「いい名前ね、さあ! ゼクスフローネの新たな船出よ!」
「はいっ!」
二人だけで盛り上がっているルルとハルナを横目に、ムツミは苦笑した様子で、カヨは呆れた様子でその光景を見つめる。
「せっかくだから、カヨちゃんもくる?」
「なんで私まで……」
「ルルちゃんはああいう子だから」
答えるムツミは、全てを見透かしているような目をしていた。
確かに、ルルは無謀で無茶で馬鹿なことをやっていたのかもしれない。
だが──格好よかった。その格好つけた生き方と信念を貫く真っ直ぐな姿勢が。
それは、カヨの偽らざる感情だった。
「……わかったよ。私、ソロ勢だから」
「そんなことだと思った、にひひ」
「……はぁ、なんか致命的に選択を間違えた気がする……」
イタズラっぽく笑ってルルの背中を追いかけていくムツミを見送りながら、カヨは小さく溜息をつく。
だが。
その口元は、微かに緩んでいた。
オムニバスと言いつつユミカ視点が続いていたので