ゆるふわお姉さんのGBN探訪録   作:守次 奏

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「昼飯時」の新たなメンバー

「しょ、紹介します! ニィレヤの新しいお友達のっ、シオリちゃんです!」

 

 ログインするなり、いつもの手狭なフォースネストにやってきたニィレヤは、見慣れないクラシカルメイドなダイバールックをしている女の子を連れてきていた。

 ユミカとアヤネは顔を見合わせて、楚々と微笑んでいる、シオリと呼ばれた少女を見遣る。

 露出が極端に少ないクラシカルなメイド服の上からでもはっきりとわかる──どころか、激しく自己主張をしている胸部の膨らみは、例え同性だとしても、二人は目を惹かずにいられなかった。

 

「おお……でっか……」

「どこ見てるの、失礼でしょ」

「えー? アヤネだってガン見してたよね」

「うぐっ、そ、それは……」

「ふふふ、いいのです。お気になさらず。ちなみにこの胸は自前ですので」

「自前!?」

 

 てっきりよくいる、ダイバールックをクリエイトする際に乳スライダーをとりあえず最大にしてみた勢かと思いきや、自前でユミカと同じどころかユミカのそれを上回る立派な胸部装甲をお持ちであるという事実に、アヤネは思わず打ちひしがれる。

 

「どしたの、アヤネ」

「だって……だって、ただでさえユミカと一緒にいるとうちが可哀想な目で見られるのに、そこにシオリちゃんまで加わったら本格的にうちが貧乳みたいじゃん!!!!」

 

 心の底からの嘆きだった。

 本人の言う通り、ユミカとシオリという規格外がいるから目立たない、というよりは相対的に小さく見えてしまうだけであって、一般的にはアヤネのそれも大きな部類に入る。

 あくまでも「ランチタイム」には乳の暴力装置が二人いるし、リアルでもユミカと一緒にいることが多いから、影に隠れて目立たないというだけで。

 

「まあ……傷ついてしまったのですね、でしたらお詫びいたしますわ。さあ、わたくしに甘えて存分に涙を流してくださいまし」

「前後の文脈がまるで繋がってないんだけど!?」

「わたくしは……皆様の『母』になれる女性でありたいと思っているので」

 

 ふんす、と得意げな顔でシオリは打ちひしがれていたアヤネへと言ってのける。

 アヤネは頭上にクエスチョンマークを浮かべ、こてんと小首を傾げる他にできることがなかった。

 一方、皆のママ志望とは大きく出たなあ、とユミカは目を丸くする。

 

「どっかの赤いマザコンシスコンロリコン(赤い彗星のシャア)が喜びそうな言葉だね」

「なにを隠そう、あのお方はわたくしの最推しです」

「そうなんだ」

「あのお方がいつでもこの胸に飛び込んで甘えてくださるよう、日々精進してまいりましたので……」

 

 ぽわぽわと憧れのキャラクターを脳裏に浮かべつつ、赤面しながらシオリはそう語った。

 よくネタにされがちな赤い人だが、まさかネタにされるダメな一面をも含めて本気で愛しているどころか、自分から母になりに行くガチ勢がいるとは、ユミカも思っていなかった。

 自分の胸は特に使い道がないから少しだけ羨ましいな、と思いつつ、ユミカは「じゃあ失礼して」と、その天然物の巨大なお山に顔を埋める。

 

「あっあっ……ダメになる……この感触は人をダメにする……」

「ふふふ……いい子いい子。わたくしの胸でお眠りなさい、ユミカさん……」

「あっあっ、ダメ、強制ログアウトしちゃうぅ……シオリママぁ……」

「アウトだよ!!!! 絵面が18禁じゃん!!!!」

 

 シオリの胸に顔を埋めてそのボディミルクの香りに身を任せていたユミカはすっかり蕩け切った顔を晒していたが、エ駄死の精神を発揮したアヤネに引き剥がされる。

 それにしてもとんでもないお友達を連れてきたものだ、と、アヤネはどことなく心配そうにそわそわしているニィレヤを一瞥する。

 多分、純粋で優しい彼女のことだから、シオリが「ランチタイム」に馴染めるかどうかを気にしているのだろうが。

 

「え、えっと! ニィレヤの……その、お友達の、シオリちゃんを……『ランチタイム』に入れてあげてくれませんかっ!」

「ああ、おっけー。いいよいいよ。大歓迎」

 

 ユミカは早速シオリのフォース加入申請を承諾して、小さく微笑む。

 その包容力に溺れたかったという理由がないかと聞かれて、首を横に振ればそれは間違いなく嘘になる。

 だが、それ以上にニィレヤが自分から「友達」を連れてきてくれたことが嬉しかったのだ。

 

 もしもその「友達」が悪い人だったら秒で蹴っていたところだが、シオリはちょっと変わったところこそあれど穏やかないい子だ。

 ニィレヤも、見ないうちにいい友達を見つけてきたじゃないか。

 と、ユミカは思わず後方保護者面になって、胸を支えるように腕を組んで頷いていた。

 

「まあ、わたくしを仲間に迎え入れてくれるのですね。ありがとうございますわ」

「ニィレヤの友達だし、悪い人じゃなさそうだし。むしろなんでうちみたいなやる気ないフォースに入ってくれたのかが気になるかな、私は」

 

 優雅にスカートの裾を摘んで一礼したシオリへと、ユミカはそう問いかける。

 別にそれがニィレヤと一緒に活動したいとかそういう理由でも構わない……というかなんだっていいのだが、なんとなく聞いてみたくなったから聞いてみただけだ。

 ユミカの問いに、シオリはこてんと可愛らしく小首を傾げると、唇に人差し指を当てて、妖艶な笑みを浮かべる。

 

「ふふ……もちろんニィレヤちゃんと一緒に遊びたいから、というのが一番ですわ」

「二番目は?」

「あなたのことが気になったのです。クラスでいつも暗い顔をしていたニィレヤちゃんを笑顔に変えた、魔法使いさん」

「あっはは、特別なことはなにもしてないよ。一緒に遊ぼう、って誘っただけ」

 

 熱のこもった視線でユミカの瞳を覗き込んでくるシオリに対して、あっけらかんと笑いながらユミカは答える。

 義憤だとか正義感だとか。

 そういう格好つけた理由が全くないといったら嘘にはなるけれど、結局のところ、この「ランチタイム」を作った目的は、昼休みに一緒にお弁当を食べる程度のゆるく仲良くやっていくための場所をこのGBNに作るためだからだ。

 

「私が思うに、ちょうどいい場所っていうのがあると思うんだ」

「ちょうどいい場所、ですか?」

「そ。居心地がよかったり、なんとなく肌に合ってたり、身の丈に合ってたり。そういう場所ってあると思うんだ。だから、私にとってのGBNの、ちょうどいい場所がここなんだ」

 

 今までは三人で駄弁ったりミッションを回したり、特になにもしなかったりしていたフォース「ランチタイム」だが、今回の出来事もそれが四人に増えたというだけだ。

 だから別に新参だからといってシオリがかしこまる必要なんてどこにもない。

 ユミカとしてはいつも通り、自然体のシオリとして接してくれればそれで十分だった。

 

「なるほど、ちょうどいい場所……素敵なお考えですわね。ニィレヤちゃんにとっても、ここは丁度いい場所なのですか?」

 

 暇を持て余してアヤネに喉を撫でられていたニィレヤに向き直って、シオリは問う。

 

「あ、はいっ。ニィレヤにとっては『ランチタイム』が全部ですっ! ユミカさんには、返しても返しきれないぐらいの恩がありますから!」

「別に貸し借りするようなもんじゃないと思うんだけどなー」

「い、いつか必ず……ニィレヤもお役に立って、ユミカさんにもらった恩返しを後するのが夢、なんです」

「そっか。じゃあ楽しみにしてるね」

「は、はいっ!」

 

 ユミカはニィレヤの頭をそっと撫でて微笑んだ。

 別に貸し借りをしたつもりはない、というのもまた偽らざる本心だが、ニィレヤが恩返しをしたい、というなら、その気持ちを否定するつもりもまた、ユミカにはない。

 なんとなく、ゆるく、ちょうどよく。そういうものを保つには、ゆるく認め合うことが大事だからだ。

 

「ちょうどいい場所、ですか。ふふっ。わたくしにとっても収まりがよい場所になるよう、全身全霊をかけてご奉仕いたしますね」

「奉仕って、なにしてくれるの?」

「そうですわね……例えば、膝枕で耳かきをするとかはいかがでしょう、ユミカさん?」

「お、おお……シオリちゃんの魅惑の太ももを枕に耳かきしてもらえるんだ、いいね。お金いくら?」

「うちらはそういう集まりじゃないって言ったのはユミカでしょうが!」

 

 大分いやらしい目でシオリを見ていたユミカの頭を、遠慮なくアヤネはビンタした。

 

「あっ、ダメですアヤネさん、そんなに強く叩いたら、ユミカさんが壊れちゃいます」

「いいのニィレヤちゃん。ユミカはもう壊れてるようなもんだから叩いて直すぐらいがちょうどいいの」

「……そ、そうなんですか……ニィレヤにはよくわからない世界です」

「痛たたた……知らなくていいと思うよ、ニィレヤちゃんは」

 

 ニィレヤには、いつまでも純真で純粋なままでいてほしい。

 それもまたユミカの心からの願いだった。

 壊れたテレビを叩いて直すのなんて何十年前の話なんだと口には出さず突っ込んで、ユミカは乱れた髪を正す。

 

「なにはともあれ、シオリちゃんもこれからは『ランチタイム』の一員としてよろしくね」

「はい。よろしくお願いいたします、皆様」

「うちにはルールとか縛りとかあんまりないし、フォース戦も気分次第って感じだから、ガチるのには向いてないけどね」

「それもニィレヤちゃんから聞いて、承知しておりますわ。気まぐれで風任せ。そういうフォースもあっていいと思いましてよ」

 

 優雅にスカートの裾を摘んで、シオリは一礼する。

 そういえばシオリはどんなガンプラを使うのかだとか、どのガンダム作品が好きだとか、そういう定番の話を振っていないことにユミカは今更気づいたが。

 

「……ま、いっか」

 

 がやがやと他愛もない話題で盛り上がっている中で無理にそんな話をする必要もないと、そう判断した。

 ガンダムが好き。ガンプラが好き。

 でも、好きなものを四六時中語ることだけが「好き」の形じゃない。

 

 気が向いたときに愛でたり熱を入れたり。

 それもまた「自由」であり「好き」の形の一つなのだから。

 そして、ユミカはそんな他愛もなさに、「ちょうどいい」を感じるのだから。




そこのお前! シオリちゃんのバストサイズは100cmだぜ!
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