ご飯を語るな──と言われても、語らずにいられない 作:猫田やなぎ
深夜三時。
いつもの時間、いつもの画面。
白系セーラー服の青年──味見野ナギが、今日も配信を始める。
「こんばんは〜。……寒いね。冬が来るって感じだ」
コメント欄がふわりと色づく。
>『こんナギ!』
>『寒い日はナギの配信であったまるのです』
>『この時間、布団の中で見るナギの声が正義』
ナギは、湯気の立つマグカップを手に、ふっと笑う。
「じゃあ今日は……“お茶漬け”について、語ろっか」
>『出たぁ!』
>『突然の語りモード』
>『でもめっちゃ気になる』
>『さあ、今夜もナギくんに飯を哲学にされる時間です』
ナギは画面の向こうで、少しだけ表情を引き締める。
「お茶漬けってさ、“儀式”だよね」
コメント、一瞬止まる。
>『え、なに?』
>『どういうこと??』
>『やめてくれ(語って)』
>『なんだこの既視感……』
ナギはゆっくりと語り出す。
「炊いたご飯を、お茶や出汁で流し込む──それだけの行為なのに、なぜだろうね、“締め”とか“整え”とか、何かを終わらせるための動作にしか思えないんだよ。……それってさ、“儀式”じゃない?」
>『確かに……』
>『ラーメン屋の〆に食べるやつ……』
>『夜中にこっそり作って食べるとき、ちょっと背徳感あるのも“儀式感”かも』
>『チー牛の儀式感を思い出した』
ナギは静かに頷きながら、続ける。
「梅干し入れる?海苔を足す?ワサビを溶かす?一つ一つの動作が、“私的な作法”になってる。誰にも教えられてないのに、自然と形が決まってるんだよ。──それが、お茶漬け。……つまり、心をリセットするための“再起動スイッチ”なんだよね」
>『夜食という名の禊』
>『“さらさらと流し込む=気持ちの整理”……うわ』
>『お茶漬け=供養食説』
ナギは、ほんの少し微笑んで、語りに区切りを入れる。
「──ということで、今日の語りはここまでにしよっか」
>『おつー!』
>『めっちゃわかる話だった』
>『お茶漬け食いたい』
>『おやすみナギくん!』
>『おつナギ!』
ナギは目元を細めながら、ふっといたずらっぽく笑った。
「……じゃあ、人狼しまーす」
コメント欄が弾けるように沸いた。
>『は?』
>『!?!?!?』
>『語りからの人狼!?』
>『ギャップすごすぎて脳が追いつかんwww』
>『初ゲーム配信!?』
ナギが、画面に人狼ゲームのロビー画面を映す。
「僕込みで10人でやるよー。あと9人、誰でもどうぞー。常識的なマナーとネタ耐性持ってる人、よろしくね!」
>『わああああ参加したい!』
>『PC起動した!!』
>『スペック足りないけど観戦勢で楽しむわ!』
>『いつもの語りリスナーが人狼で集うってすごない?』
こうして、味見野ナギ史上初のゲーム配信が幕を開ける。
次回は人狼でナギがリスナーときゃっきゃっ()