ご飯を語るな──と言われても、語らずにいられない 作:猫田やなぎ
頭に>がついてるのがチャット、『』がVC、「」がナギです。
深夜三時半。「お茶漬けは“儀式”」と語り終えたナギは、視聴者たちの「おつナギ!」「今日もありがとう!」「寝る前に沁みた…」というあたたかなコメントを見送り、一呼吸置いた。
「──じゃあ、人狼しまーす」
チャット欄が爆発する。
>『!?!?!?!?!?』
>『ゲーム配信!?!?!?』
>『ゲーム初じゃないの!?』
>『飯哲学と人狼が繋がるってマジ?』
>『やっぱナギ、正気じゃない』
>『好き(語彙力)』
ナギは某有名PC人狼ゲームを起動。
ルームを立てながら、飄々と宣言する。
「僕込みで10人でやるよー。あと9人、誰でもどうぞー。常識的なマナーとネタ耐性持ってる人、よろしくね!」
画面は切り替わり、ロビーに集まる凸視聴者たちの名前が次々と並ぶ。
通話機能もONにされ、VCがつながった瞬間、声が上がる。
『ナギくん!? 本物!? 生ナギくんだぁあああ!!』
『人狼になったらナギ狩る!! お覚悟!!』
『ずっと聞いてました!チー牛哲学からの大ファンです!!』
「うわあ……はずかしいねえ」と笑うナギ。
けれどもその声には、ほんのり楽しげな熱が宿っていた。
「……狩られないように頑張ってくよ。じゃあ──始めるね」
第一回戦──「夜這いって言わないで」
ゲームが始まり、役職が割り振られる。
ナギの画面に現れたのは──
“人狼”
「……あ、これ、夜這いしに行くやつだね」
>『“人狼”なのにそんなこと言うなwwww』
>『ナギそれ“アウト”www』
チャット欄には爆笑の嵐──だが、ナギはコメントを見ていない。
VCではナギが軽く咳払いして言う。
「さて、同じ人狼役のみんな、よろしくねー。誰から狩る? いや、じゃなくて──消しに行く?」
“殺意”と“愛嬌”が混在した声に、同じく人狼役のプレイヤーたちが爆笑しながら応じる。
『ナギ怖い!語りから来たのにこの豹変www』
『そのテンションで吊り誘導しないでください!!』
第一回戦の昼──「とりあえずナギ吊る?」
昼が来る。
チャット欄は大盛り上がり──だが、ナギは見ない。
会議が始まるなり、ひとりが言い出す。
『とりあえずナギ吊っときます?』
『いいね。発言人狼っぽいしな』
『ナギはいつも人狼っぽい』
「ちょ、待って?推理も何もないじゃん?ただの風評被害だよ!?“いつも言ってることが人狼っぽい”は偏見でしょ!?」
『“味噌汁は魂の着替え”とか言ってる時点で人間じゃない説ある』
「それは関係ない!」
『いやでも、吊っとく?吊っとくか』
『異議なし(投票ぽちー)』
『じゃあなナギ』
「ねえってばあああああああ!!!!」
ナギ、涙目。
……だが演技かどうかは誰にもわからない。
第二回戦──「わざと人狼っぽく動くムーブ」
村人陣営であるナギ。
だが、その行動は──
「ふふ、僕、誰が誰か、わかっちゃったかも」
『その言い方、完全に予言者じゃなくて黒幕』
「ううん、“予言者のふりをした狂人のふりをした予言者”だよ」
『ややこしいわ!!!!!』
騙しているのか、騙されているのか、誰にも読めない。
『ナギわざわざ人狼っぽいムーブするのなんで』
『人狼見つけるゲームであって人狼なりきりゲームじゃねえぞ!』
「やだなぁ、スパイスだよ。刺激がある方が楽しいでしょ?」
>『狂人より狂人』
>『それで処刑されたら草』
そして本当に処刑された。
「えっ……うそでしょ。僕、ただ味噌汁の話してただけなのに……」
>『それ前の配信の話ーーー!!!!』
>『ここまでがテンプレ、と』
>『くぁあああwwww』
終幕──「笑って吊られて、ゲームは続く」
最終局面。
ナギの“遊び心”に翻弄された村人陣営は混乱し、
人狼たちは巧妙な連携で追い込んでいく。
最終的に──
人狼陣営、勝利。
「いやあ、楽しかったねえ。またやろうかな?」
『やってくれえええええ!!!』
『人狼ナギ、悪魔の笑顔』
『次は騙されない……』
『初見ですが最高でした』
『哲学→人狼の流れ、クセになるな……』
ナギはマイクの向こうでふっと笑い、
「──夜は、静かに語るものだと思ってたけど。こうして、声を重ねるのも悪くないね」
配信の夜は、飯の語りから、
いつしか熱と笑いの戦場へと姿を変えていた。
人狼ゲーム好きなんです。